ベニバナ花エキスとは…成分効果と毒性を解説

保湿 着色
ベニバナ花エキス
[化粧品成分表示名称]
・ベニバナ花エキス

[医薬部外品表示名称]
・ベニバナエキス(1)

キク科植物ベニバナ(学名:Carthamus tinctorius 英名:Safflower)の花からエタノールBG、またはこれらの混液で抽出して得られる抽出物植物エキスです。

ベニバナ(紅花)はエジプトを原産とし、エジプトにおいては紀元前2500年頃のミイラの墓で発見された麻のリボンの黄または淡紅色がベニバナで染められたものであることが確認されており、また2700年以上前のサッカーラ遺跡からベニバナの花弁と化粧用につくられた紅色色素が出土していることから、非常に長い歴史をもつ天然の染料・着色料であることが広く知られています(文献1:2004)

古くからインド、メキシコ、アメリカ、中国などで栽培されていますが、生産の約50%はインドであり、これらの栽培の多くは種子油の採取を目的としています(文献1:2004)

日本においては奈良時代に渡来し、江戸時代には多くが最上地方で栽培されたことから「最上紅花」として有名となり、現在でも山形県を象徴する県花として大部分が山形県で栽培されています(文献2:2011)

ベニバナ花エキスは天然成分であることから、地域、時期、抽出方法によって成分組成に差異があると推察されますが、その成分組成は主に、

分類 成分名称
フラボノイド カルコン カルタミン(紅色色素)、サフロールイエロー(黄色色素)(∗1)
フラバノン カルタミジン

∗1 カルタミン(carthamin)はカーサミン、サフロールイエロー(safloryellow)はサフラワーイエローとも呼ばれることがあります。

これらの成分で構成されていることが報告されています(文献2:2011;文献3:2013)

ベニバナの花(生薬名:紅花)の化粧品以外の主な用途としては、漢方分野において血流を良くして月経を通じる効能や瘀血(∗2)を除いて止痛する効能があることから月経異常や瘀血による痛みなどに用いられています(文献2:2011;文献4:2016)

∗2 瘀血(おけつ)とは、血行障害もしくは婦人科系の代謝不全により体内に非生理的血液が残り、それによって起きる様々な症状(月経不順、冷え、のぼせ、こり、痛みなど)や疾病を指します。

食品分野においては、黄色色素を食用酢の着色に、紅色色素を食紅の着色に、花弁はベニバナ茶として用いられています(文献5:1992)

化粧品に配合される場合は、

これらの目的でスキンケア化粧品、ボディ&ハンドケア製品、メイクアップ化粧品、化粧下地製品、シート&マスク製品、ボディソープ製品、シャンプー製品、トリートメント製品、洗顔料、クレンジング製品など様々な製品に使用されています。

角質層水分量増加による保湿作用

角質層水分量増加による保湿作用に関しては、まず前提知識として皮膚最外層である角質層の構造と役割について解説します。

直接外界に接する皮膚最外層である角質層は、以下の図のように

角質層の構造

天然保湿因子を含む角質と角質の間を細胞間脂質で満たした、レンガとモルタルの関係と同様の構造となっており、この構造が保持されることによって、外界からの物理的あるいは化学的影響から身体を守り、かつ体内の水分が体外へ過剰に蒸散していくのを防ぐとともに一定の水分を保持する役割を担っています(文献6:2002;文献7:1990)

一方で、老人性乾皮症やアトピー性皮膚炎においては、角質細胞中のアミノ酸などの天然保湿因子が顕著に低下していることが報告されていることから(文献8:1989;文献9:1991)、角質層の水分量を増加することは、肌の乾燥の改善、ひいては皮膚の健常性の維持につながると考えられています。

このような背景から、角質層の水分量が低下している場合において角質層の水分量を増やすことは、肌の乾燥の改善ひいては皮膚の健常性の維持につながると考えられています。

1997年にトリニティ・インベストメントによって報告されたベニバナ花エキス(水抽出)のヒト角質層水分量への影響検証によると、

健常な皮膚を有する被検者の前腕屈側部に2%ベニバナ花エキス(水抽出)水溶液、比較対照として保湿剤として知られているグリセリンPCA-Naを2%濃度水溶液として塗布し、さらに比較対象としてを塗布し、それぞれの30分後の角質層水分量を塗布前を100とした際の相対値で評価したところ、

ベニバナ花エキスの角質層水分量増加作用

ベニバナ花エキスは、水および他の一般的な保湿剤と比較しても優れた角質層水分量の増加効果を示した。

このような試験結果が明らかにされており(文献10:1997)、ベニバナ花エキスに角質層水分量増加による保湿作用が認められています。

紅色の着色

紅色の着色に関しては、ベニバナの花弁は紅色色素であるカルタミン(carthamin)と黄色色素のサフロールイエロー(safloryellow)を有しており(文献2:2011;文献3:2013)、一般に天然紅色色素であるカルタミンが口紅・リップ製品をはじめとするメイクアップ化粧品に使用されています(文献5:1992;文献11:2002)

ただし、カルタミンは溶液状態で不安定であることから通常はセルロースに吸着させた粉末状態で原料化されており、セルロースとともに配合されている可能性が考えられます(文献12:1999)

複合植物エキスとしてのベニバナ花エキス

ベニバナ花エキスは、他の植物エキスとあらかじめ混合された複合原料があり、ベニバナ花エキスと以下の成分が併用されている場合は、複合植物エキス原料として配合されている可能性が考えられます。

原料名 ファルコレックスMSTC
構成成分 エタノールBGクララ根エキスチャ葉エキスマグワ根皮エキスベニバナ花エキス
特徴 UVBに対する紫外線吸収能(吸収極大:270-300nm)を有するとともに、4種類の異なる色素沈着抑制作用を有した植物抽出液を組み合わせることで、多角的な色素沈着抑制にアプローチするよう設計された複合植物抽出液

ベニバナ花エキスの安全性(刺激性・アレルギー)について

ベニバナ花エキスの現時点での安全性は、

  • 医療上汎用性があり有効性および安全性の基準を満たした成分が収載される日本薬局方に収載
  • 外原規2006規格の基準を満たした成分が収載される医薬部外品原料規格2006に収載
  • 20年以上の使用実績
  • 皮膚刺激性:ほとんどなし(データなし)
  • 眼刺激性:詳細不明
  • 皮膚感作性(アレルギー性):ほとんどなし(データなし)

このような結果となっており、化粧品配合量および通常使用下において、一般的に安全性に問題のない成分であると考えられます。

以下は、この結論にいたった根拠です。

皮膚刺激性および皮膚感作性(アレルギー性)について

日本薬局方および医薬部外品原料規格2006に収載されており、20年以上の使用実績がある中で重大な皮膚刺激および皮膚感作の報告がみあたらないため、化粧品配合量および通常使用下において、一般的に皮膚刺激および皮膚感作性(アレルギー性)はほとんどないと考えられますが、詳細な安全性試験データがみあたらず、データ不足のため詳細は不明です。

眼刺激性について

試験結果や安全性データがみあたらないため、現時点ではデータ不足により詳細は不明です。

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ベニバナ花エキスは保湿成分、着色剤にカテゴライズされています。

成分一覧は以下からお読みください。

参考:保湿成分 着色剤

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参考文献:

  1. 大津 玉子(2004)「花びらの染料紅花」繊維学会誌(60)(11),P547-P552.
  2. 鈴木 洋(2011)「紅花(こうか)」カラー版 漢方のくすりの事典 第2版,134-135.
  3. 御影 雅幸(2013)「コウカ」伝統医薬学・生薬学,107.
  4. 根本 幸夫(2016)「紅花(コウカ)」漢方294処方生薬解説 その基礎から運用まで,165-166.
  5. 吉積 智司(1992)「ハーブ系化学的合成品以外の着色料(天然色素)の特性と応用」Fragrance Journal臨時増刊(12),182-187.
  6. 朝田 康夫(2002)「保湿能力と水分喪失の関係は」美容皮膚科学事典,103-104.
  7. 田村 健夫, 他(1990)「表皮」香粧品科学 理論と実際 第4版,30-33.
  8. I Horii, et al(1989)「Stratum corneum hydration and amino acid content in xerotic skin」British Journal of Dermatology(121)(5),587-592.
  9. M Watanabe, et al(1991)「Functional analyses of the superficial stratum corneum in atopic xerosis」Archives of Dermatology(127)(11),1689-1692.
  10. トリニティ・インベストメント株式会社(1997)「保湿剤」特開平09-175929.
  11. 中林 治郎(2002)「口紅の有用性と製品化技術」日本化粧品技術者会誌(36)(3),184-191.
  12. 大野 友道(1999)「植物性色素」Fragrance Journal臨時増刊(16),77-81.

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