ビオチンとは…成分効果と毒性を解説

保湿
ビオチン
[化粧品成分表示名称]
・ビオチン

[医薬部外品表示名称]
・ビオチン

ビタミンB群の一種であるビタミンB7(∗1)として知られている水溶性有機化合物であり、化学構造的に2つの五員環の結合がシス配置した化学式C10H16N2O3Sで表される分子量244.32の複素環式化合物(補酵素)です(文献3:1994)

∗1 以前は皮膚と関連が深いビタミンとしてビタミンH(この「H」はドイツ語で皮膚Hautを意味します)と呼ばれていましたが、現在はビタミンB7と呼ばれています。

ビオチンは、ヒト生体内においてカルボキシラーゼ(∗2)の補酵素として分子のカルボキシル化反応を行う役割を担っており、脂肪酸の合成、糖新生、分岐鎖アミノ酸の代謝など種々の生理機能に関連しています(文献2:2014;文献4:2011)

∗2 4つのカルボキシラーゼ、すなわちピルビン酸カルボキシラーゼ、プロピオニルCoAカルボキシラーゼ、メチルクロトニルカルボキシラーゼおよびアセチルCoAカルボキシラーゼが知られています。

食品(∗3)にも広く含まれており、また腸内細菌によっても産生されるため、一般的に不足することは少ないと考えられていますが、ビオチンが不足すると脂漏性湿疹、脱毛、皮膚炎が発現するため、乾癬やアトピー性皮膚炎などとの関連が指摘されています(文献4:2011)

∗3 ビオチンは、レバー、イワシ、大豆、卵黄、落花生、クルミなどに多く含まれ、またローヤルゼリーにも多く含まれています(文献4:2011)。

主な用途として、医薬品分野において湿疹、乾癬、ざ瘡などの皮膚疾患の経口投与治療薬として用いられてきた実績があり、主に経口抗皮膚炎ビタミン剤として使用されています。

また、食品分野においては保健機能食品として”皮膚や粘膜の健康維持を助ける栄養素”という表示が可能であり、母乳代替食品や保健機能食品に使用されています(文献2:2014)

化粧品に配合される場合は、

これらの目的で、スキンケア化粧品、アウトバストリートメント製品、ヘアスタイリング製品、頭皮ケア製品、リップケア製品、シート&マスク製品、洗顔料、シャンプー製品、コンディショナー製品、ボディソープ製品、クレンジング製品など様々な製品に配合されています。

保湿作用

保湿作用に関しては、まず前提知識として皮膚最外層である角質層の構造と役割について解説します。

直接外界に接する皮膚最外層である角質層は、以下の図のように、

角質層の構造

角質と角質の間を細胞間脂質で満たした、レンガとモルタルの関係と同様の構造となっており、この構造が保持されることによってバリア機能を発揮すると考えられています。

このバリア機能は、皮膚内の過剰な水分蒸散の抑制および一定の水分を保持し、物理的あるいは化学的外的刺激から皮膚を防御するといった重要な役割を担っています(文献5:2002;文献6:1990)

一般的にバリア機能は肌荒れや皮膚炎、または年齢を重ねることでも低下傾向にあり、その結果として角層水分蒸散量が増え、角層水分蒸散量が増えることで最終的に角質細胞が規則的に並ばなくなり、そこに生じた隙間からさらに水分が蒸散し、バリア機能・保湿機能が低下することが知られています(文献5:2002)

このような背景から、角質と細胞間脂質が適切に保持されることは皮膚の恒常性において重要であると考えられます。

1998年に東北大学・大学院農学研究科・農学部および牧野皮膚科クリニックによって報告されたビオチンの経皮吸収性検証によると、

アトピー性皮膚炎を有する20人(平均20.5歳)の患者および健常な皮膚を有する11人(平均25.5歳)の被検者のほぼ全身に0.3%ビオチンを含む軟膏を1日7gずつ連用塗布し(アトピー性皮膚炎患者は希釈したステロイド軟膏剤を併用)、血清中のビオチン量を定量した。

ビオチン軟膏塗布前のアトピー性皮膚炎患者の血清中ビオチン量は、健常者のビオチン量と比較して20人中9人は健常者と同程度のビオチン量であったが、残りの11人は有意に低値であった。

ビオチン軟膏の連用塗布により、血清中のビオチン量は健常者で11人中11人が上昇し、アトピー性皮膚炎患者で20人中18人が上昇した。

とくにビオチン量の低いアトピー性皮膚炎患者において顕著な上昇が認められた。

これらの結果から、ビオチンは健常者およびアトピー性皮膚炎患者において経皮的に吸収されることが示された。

このような検証結果が明らかにされており(文献7:1998)、皮膚の状態に関わらずビオチンに経皮吸収が認められています。

次に2004年にトキコクリニックによって報告されたドライスキンに対するビオチン外用の評価検証によると、

アトピー性皮膚炎、脂漏性皮膚炎、皮脂欠乏性皮膚炎、尋常性ざ瘡のいずれかを有する60人の患者の顔面全体に0.2%ビオチンを含むジェル製剤または1%ビオチンを含む軟膏を1日2回(朝晩)塗布してもらい、外用の前後で顔面写真を撮り目視で評価した。

評価基準は、ドライスキンに対して著効、有効、変化なし、悪化の4段階で評価し、著効と有効の合計をドライスキンに対する有効率として算出した。

評価の結果、ドライスキンに対するビオチン配合製剤の有効率は、著効・有効63%、変化なし31%、悪化6%であり、さらに著効・有効の約半数は著効であった。

今回の結果は、角質水分量や経表皮水分蒸散量(TEWL)などの測定を行っておらず、科学的なビオチンの保湿効果として評価されるべき性格のものではないことをお断りしておく。

このような検証結果が明らかにされており(文献8:2004)、ビオチンにドライスキンに対する保湿作用が認められています。

ただし、ビオチン塗布によるドライスキンに対する作用メカニズムが、純粋な水分増加によるものなのか、またはバリア機能の改善に関連しているのか現時点では明らかにされておらず、分かり次第追補します。

複合ビタミン原料としてのビオチン

ビオチンは、他のビタミンおよびビタミン関連物質とあらかじめ混合された複合原料があり、ビオチンと以下の成分が併用されている場合は、複合ビタミン原料として配合されている可能性が考えられます。

原料名 ASEBIOL LS 9853
構成成分 、ピリドキシンHCl、ナイアシンアミドグリセリン、パンテノール、加水分解酵母タンパク、トレオニンアラントインビオチンフェノキシエタノールソルビン酸Kリン酸2Naクエン酸
特徴・主な用途 皮膚および頭皮の油っぽさやベタつきを減少させる目的で設計された、皮脂を抑制するビタミンおよびアミノ酸複合体
原料名 ROVISOME Biotin
構成成分 エタノール、パンテノール、レシチン酢酸トコフェロール、カフェイン、ビオチン
特徴・主な用途 頭皮と毛根領域に効果的に輸送され、成長期と休止期の毛周期比率を正常化し発毛密度を改善する目的で設計されたビタミン複合体
原料名 TRICHOGEN VEG LS 9922
構成成分 アルギニン、アセチルチロシン、PEG-12ジメチコン、パントテン酸Ca、グルコン酸亜鉛、ナイアシンアミド、オルニチンHCl、ポリクオタニウム-11、シトルリン、加水分解ダイズタンパク、グルコサミンHCl、アルクチウムマジュス根エキス、オタネニンジン根エキスビオチンフェノキシエタノールコハク酸2Na
特徴・主な用途 抜け毛を予防し毛髪の発育を促進する目的で設計された複合体

実際の配合製品数および配合量に関しては、海外の1998-1999年の調査結果になりますが、以下のように報告されています。

ビオチンの配合製品数と配合量の調査結果(1998-1999年)

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ビオチンの安全性(刺激性・アレルギー)について

ビオチンの現時点での安全性は、

  • 医療上汎用性があり有効性および安全性の基準を満たした成分が収載される日本薬局方に収載
  • 外原規2006規格の基準を満たした成分が収載される医薬部外品原料規格2006に収載
  • 20年以上の使用実績
  • 皮膚刺激性:ほとんどなし
  • 眼刺激性:ほとんどなし-わずか
  • 皮膚感作性(アレルギー性):ほとんどなし(データなし)

このような結果となっており、化粧品配合量および通常使用下において、一般的に安全性に問題のない成分であると考えられます。

以下は、この結論にいたった根拠です。

皮膚刺激性について

Cosmetic Ingredient Reviewの安全性データ(文献1:2001)によると、

  • [動物試験] モルモットの腹部皮膚にビオチンを0.1cc皮内注射したところ、注射部位に皮膚刺激は認められなかった(Crittenden,1948)

と記載されています。

試験データをみるかぎり、皮膚刺激なしと報告されているため、一般に皮膚刺激性はほとんどないと考えられます。

眼刺激性について

Cosmetic Ingredient Reviewの安全性データ(文献1:2001)によると、

  • [動物試験] ウサギの眼に0.1%d-ビオチン(pH7.3)を適用したところ、わずかな一過性の刺激しか生じなかったと報告されたが、研究の詳細は提供されなかった(Crittenden,1948)

と記載されています。

試験データをみるかぎり、0.1%濃度(pH7.3)においてわずかな眼刺激が報告されているため、一般に0.1%濃度(pH7.3)において眼刺激性は非刺激-わずかな眼刺激を引き起こす可能性があると考えられます。

皮膚感作性(アレルギー性)について

日本薬局方および医薬部外品原料規格2006に収載されており、医薬品として副作用などの報告が認められないこと、ビオチンの摂取が原因と考えられる有害事象の報告が認められていないことから(文献2:2014)、化粧品配合量および通常使用下において、一般的に皮膚感作性(アレルギー性)はほとんどないと考えられますが、詳細な安全性試験データがみあたらず、データ不足のため詳細は不明です。

∗∗∗

ビオチンは保湿成分にカテゴライズされています。

成分一覧は以下からお読みください。

参考:保湿成分

∗∗∗

文献一覧:

  1. Cosmetic Ingredient Review(2001)「Final Report on the Safety Assessment of Biotin」International Journal of Toxicology(20)(4_Suppl),1-12.
  2. 食品安全委員会(2014)「ビオチン」添加物評価書.
  3. 大木 道則, 他(1994)「ビオチン」化学辞典,1119.
  4. 鈴木 洋(2011)「ビオチン」カラー版健康食品・サプリメントの事典,243.
  5. 朝田 康夫(2002)「保湿能力と水分喪失の関係は」美容皮膚科学事典,103-104.
  6. 田村 健夫, 他(1990)「表皮」香粧品科学 理論と実際 第4版,30-33.
  7. 古川 勇次, 他(1998)「アトピー性皮膚炎患者におけるビオチンの経皮吸収」ビタミン(72)(10),579-580.
  8. 小村 十樹子(2004)「ビオチン配合外用製剤のドライスキンへの応用」Fragrance Journal(32)(2),29-34.

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