ヒアルロン酸Naとは…成分効果と毒性を解説

保湿
ヒアルロン酸Na
[化粧品成分表示名称]
・ヒアルロン酸Na

[医薬部外品表示名称]
・ヒアルロン酸ナトリウム

生体内に存在する酸性ムコ多糖類(∗1)の一種で、分子量10万-200万のヒアルロン酸ナトリウム塩(高分子多糖体)です。

∗1 ムコ多糖類は狭義ではグリコサミノグリカンとも呼ばれます。

ヒアルロン酸は、1934年に初めて牛の硝子体(Hyaloid:ギリシャ語)から単離され、ウロン酸(Uronic Acid)を含むことからヒアルロン酸(Hyaluronic Acid)と命名されました(文献3:1934)

生体内においては、細胞間、繊維間の結合組織を埋めるゲル状高分子接合物質として多量に存在しており、皮膚においては、以下の皮膚の構造図をみてもらうとわかるように、

皮膚の構造と皮膚の主要成分

真皮に多量に存在し、また表皮でも真皮の約半分量の存在が確認されています(文献4:1985)

真皮においては、規則的に配列したコラーゲンとエラスチンの繊維間を充たし、水分を大量に保持することで、皮膚に弾力性と柔軟性を与えており(文献5:2002)、また表皮層・角質層においては、密接に隣接した細胞間に網目状に存在し、酸素、イオン、栄養成分、生理活性成分、代謝老廃物などの移動や拡散に関わっていると考えられています(文献6:2009)

ヒアルロン酸Naの保水性は、1gで6Lの水を保持する強力な保水性と多量に存在する結合水(∗2)による相対湿度の変化を受けにくいことによるものですが、この保水性は分子量が大きくなるにしたがって低下し、分子量が80万以上でほぼ一定になることが報告されています(∗3)(文献7:1986)

∗2 結合水とは、たんぱく質分子や親液コロイド粒子などの成分物質と強く結合している水分であり、純粋な水であれば0℃で凍るところ、角層中の水のうち33%は-40℃まで冷却しても凍らないのは、角層内に存在する水のうち約⅓が結合水であることに由来しています(文献8:1991)。

∗3 一般的なヒアルロン酸Naの分子量は5-150万ほどで、分子量が大きいほど粘度(とろみやベタつき)は上がりますが、保水性は上がりません。

また湿度の影響を受けにくい点は、以下の表をみてもらうとわかるように、

物質名(分子量) 吸湿性(単位:H₂O mg/100mg)
48時間後の含水量
(湿度80%)
一次結合水 二次結合水
ヒアルロン酸Na(80万) 23.4 6.76 80.8
ポリペプチド(8,000) 16.8 3.76 45
PCA-Na 1.48 13.2
グリシン 1.5(注:24時間後) 0.98
セリン 5.5(注:24時間後) 1.57
正常角質層 22.4 5.00 38.2

ヒアルロン酸Naの含水量は、正常角質層と同程度で、また一次結合水も同様ですが、大きく異なる点はヒアルロン酸Naが80%もの二次結合水を有していることです(文献9:1985)

二次結合水は自由水と異なり、ヒアルロン酸Naと水和しているため、湿度の変動に対して影響を受けにくい要因になっていると考えられ、一方で同表のPCA-Naは、このような水和水をほとんど有していないために、吸湿量が大きいものの湿度の影響をうけやすいと考えられます。

化粧品に配合される場合は、

これらの目的で、スキンケア化粧品、メイクアップ化粧品、ボディ&ハンドケア製品、洗顔料&洗顔石鹸、シート&マスク製品など様々な製品に使用されます(文献1:2016;文献9:1985;文献10:1985)

皮表柔軟化および保護膜形成による保湿作用

皮表柔軟化および保護膜形成による保湿作用に関しては、1985年にポーラ化成工業によって報告されたヒアルロン酸ナトリウムの保湿性検証によると、

ヒアルロン酸Naの吸湿性および保水性を検討した。

吸湿性は、相対湿度80%(20℃)に調整したデシケーター中に乾燥した各試料(ヒアルロン酸Na,ポリペプチド,グリセリン,PEG4000,PCA-Naおよびソルビトール)1gを放置し、10分単位で60分までの短時間と1日単位で5日までの長時間の吸湿量を測定したところ、以下のグラフのように、

ヒアルロン酸Naの短時間における吸湿性

ヒアルロン酸Naの長時間における吸湿性

ヒアルロン酸Naは、短時間においては吸湿量が最も大きいが、長時間においてはPCA-Naやグリセリンのほうが大きく、中程度の吸湿量であることが示された。

次に保湿性試験として、各試料1gに0.1gの水を加えたものを相対湿度0-80%中に24時間放置し、測定重量の変動より保湿量を求めたところ、以下のグラフのように、

各試料の保水性

ヒアルロン酸Naの保水性は、PCA-Naほど大きくなく、また比較的湿度の影響を受けにくいと考えられた。

さらに成膜性を検討したところ、ヒアルロン酸Naは、ほかの水溶性高分子物質よりも強くて伸長性に富んだフィルムを形成することが認められ、また湿度に対しても高湿度下ではより柔軟に、より強くなる傾向を示しており、皮表に適用した場合、保水性がありかつ柔軟で強い保護膜を形成する可能性を有している。

このような検証結果が明らかにされており(文献9:1985)、ヒアルロン酸Naに皮表柔軟化および保護膜形成による保湿作用が認められています。

ヒアルロン酸Naの保水性は即効性があり、さらに保護膜を形成するため、しっとりとなめらかな質感を与えますが、一方で柔軟持続性に乏しく、時間がたって乾くにつれて被膜形成の影響で皮膚につっぱり感を与え、最初の状態より皮膚が固くなることも明らかになっています。

ただし、1985年に資生堂によって報告された技術情報によると、ヒアルロン酸Naとグリセリンを併用することで単独使用の柔軟効果をはるかに上回る柔軟効果とその持続性をもたらす相乗効果が得られることが明らかになっています(文献10:1985)

このように、ヒアルロン酸Naは短所を補うまたは長所を活かすために数種のアミノ酸やグリセリンなど他の保湿剤と組み合わせて配合されることが一般的です。

実際の配合製品数および配合量に関しては、海外の2005年の調査結果になりますが、以下のように報告されています。

ヒアルロン酸Naの配合製品数と配合量の調査結果(2005年)

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ヒアルロン酸Naの安全性(刺激性・アレルギー)について

ヒアルロン酸Naの現時点での安全性は、

  • 外原規2006規格の基準を満たした成分が収載される医薬部外品原料規格2006に収載
  • 10年以上の使用実績
  • 生体内に存在しているヒアルロン酸のナトリウム塩
  • 皮膚刺激性:ほとんどなし
  • 眼刺激性:ほとんどなし(データなし)
  • 皮膚感作性(アレルギー性):ほとんどなし

これらの結果から、化粧品配合量および通常使用下において、一般的に安全性に問題のない成分であると考えられます。

以下は、この結論にいたった根拠です。

皮膚刺激性および皮膚感作性(アレルギー性)について

キューピーの安全性試験データ(文献2:2016)によると、

  • 皮膚一次刺激性および累積皮膚刺激性なし、ヒトパッチテスト異常なし
  • 皮膚感作性は陰性

と記載されています。

試験データをみるかぎり、皮膚刺激および皮膚感作性なしと報告されているため、一般的に皮膚刺激性および皮膚感作性はほとんどないと考えられます。

眼刺激性について

安全性データはみあたりませんが、生体内にも存在しているヒアルロン酸のナトリウム塩であり、医薬品の点眼薬にも使用されているため、一般的に眼刺激性はほとんどないと考えられます。

∗∗∗

ヒアルロン酸Naは保湿成分にカテゴライズされています。

成分一覧は以下からお読みください。

参考:保湿成分

∗∗∗

文献一覧:

  1. 日光ケミカルズ(2016)「肌荒れ防止剤」パーソナルケアハンドブック,511.
  2. キューピー株式会社(2016)「ヒアルロンサンHAシリーズ」技術資料.
  3. K.Meyer, et al(1934)「The polysaccharide of the vitreous humor.」Journal of Biological Chemistry(107),629-634.
  4. 木花 光(1985)「ヒト表皮中の酸性ムコ多糖の分析および培養ヒト表皮細胞における酸性ムコ多糖の合成」日本皮膚科学会雑誌(95)(9),979-984.
  5. 朝田 康夫(2002)「真皮の変性と加齢の関係は」美容皮膚科学事典,132-133.
  6. 井上 紳太郎(2009)「皮膚ヒアルロン酸の不思議」グルコサミン研究(5),4-10.
  7. 赤坂 日出道, 他(1986)「バイオポリマーとしてりヒアルロン酸の特性と応用」Fragrance Journal(14)(3),42-47.
  8. Imokawa G, et al(1991)「Stratum corneum lipids serve as a bound-water modulator.」Journal of Investigate Dermatology(96)(6),845-851.
  9. 外岡 憲明(1985)「ヒアルロン酸ナトリウムの保湿性」皮膚(27)(2),296-302.
  10. 尾沢 達也, 他(1985)「皮膚保湿における保湿剤の役割」皮膚(27)(2),276-288.

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