パセリエキスとは…成分効果と毒性を解説

保湿 抗酸化
パセリエキス
[化粧品成分表示名称]
・パセリエキス

[医薬部外品表示名称]
・パセリエキス(1)

セリ科植物パセリ(学名:Petroselinum crispum 英名:parsley)の葉からで抽出して得られる抽出物植物エキスです。

パセリは、地中海沿岸を原産とし、ヨーロッパでは紀元前から香辛料として利用され、現在は世界各地で栽培されています(文献1:2017)

日本においては、江戸時代にに著された「大和本草」「和蘭芹(オランダゼリ)」として記録されていますが、実際に導入されたのは明治時代以降、本格的な栽培および一般への普及は戦後であり、現在は長野県、千葉県、静岡県、福岡県香川県などで栽培されています(文献1:2017;文献2:2011)

パセリエキスは天然成分であることから、地域、時期、抽出方法によって成分組成に差異があると推察されますが、その成分組成は主に、

分類 成分名称
無機質 カリウム、カルシウム など
ビタミン アスコルビン酸 など
フェニルプロパノイド アピオール など
テルペノイド モノテルペン β-フェランドレン など

これらの成分で構成されていることが報告されています(文献1:2017;文献3:2017)

パセリの化粧品以外の主な用途としては、食品分野において鮮やかな緑色と形の美しさから料理の飾りとして、また細かく刻んだものがスープやサラダにさらしパセリとして用いられます(文献1:2017)

化粧品に配合される場合は、

これらの目的で、スキンケア化粧品、ボディケア製品、シート&マスク製品、洗顔料などに使用されています。

皮表柔軟化による保湿作用

皮表柔軟化による保湿作用に関しては、まず前提知識として皮膚最外層である角質層の構造と役割について解説します。

直接外界に接する皮膚最外層である角質層は、以下の図のように

角質層の構造

天然保湿因子を含む角質と角質の間を細胞間脂質で満たした、レンガとモルタルの関係と同様の構造となっており、この構造が保持されることによって、外界からの物理的あるいは化学的影響から身体を守り、かつ体内の水分が体外へ過剰に蒸散していくのを防ぐとともに一定の水分を保持する役割を担っています(文献4:2002;文献5:2001)

一方で、老人性乾皮症やアトピー性皮膚炎においては、角質細胞中のアミノ酸などの天然保湿因子が顕著に低下していることが報告されています(文献6:1989;文献7:1991)

このような背景から、皮表を柔軟化することは肌の乾燥の改善ひいては皮膚の健常性の維持につながると考えられています。

2000年に太陽化学によって報告されたパセリエキスのヒト皮膚に対する影響検証によると、

100人の女性被検者(19-43歳)に5%パセリエキス(水抽出)配合化粧水を1日2回(朝晩)3ヶ月にわたって顔面に塗布してもらった。

3ヶ月後に「有効:肌のうるおいを実感」「やや有効:肌のうるおいをやや実感」「無効:使用前と変化なし」の基準で評価したところ、以下の表のように、

試料 ヒト皮膚うるおい改善効果(人数)
有効 やや有効 無効
パセリエキス配合化粧水 1 58 41

5%パセリエキス配合化粧水の塗布により、肌のうるおいの改善傾向が示された。

このような試験結果が明らかにされており(文献8:2000)、パセリエキスに皮表柔軟化による保湿作用が認められています。

ただし、試験データは5%濃度において「やや有効」が大部分を占め、また「無効」も約40%を占めることから、実際の製品における配合濃度においてはかなり穏やかな作用であると考えられます。

SOD活性による抗酸化作用

SOD活性による抗酸化作用に関しては、まず前提知識として皮膚における活性酸素種、活性酸素種の酸化還元反応およびSODの役割について解説します。

活性酸素種(ROS:Reactive Oxygen Species)とは、酸素(O₂)が他の物質と反応しやすい状態に変化した反応性の高い酸素種の総称であり(文献9:2002;文献10:2019)、酸素から産生される活性酸素種の発生メカニズムは、以下のように、

酸素から産生される活性酸素発生メカニズム

酸化力を有する酸素(O₂)が、比較的容易に電子を受けてスーパーオキシド(superoxide:O₂⁻)を生成し、さらに酸化が進むと過酸化水素(H₂O₂)、ヒドロキシルラジカル(HO)を経て、最終的に水(H₂O)になるというものです(文献11:2019)

この一連の反応を酸化還元反応と呼んでおり、正常な酸化還元反応において発生したスーパーオキシド(superoxide:O₂⁻)は少量であり、通常は抗酸化酵素の一種であるスーパーオキシドジスムターゼ(superoxide dismutase:SOD)により速やかに分解・消去されます(文献11:2019)

一方で、紫外線の曝露など(∗1)によりスーパーオキシド(superoxide:O₂⁻)を含む活性酸素種の過剰な産生が知られており(文献12:1998)、過剰に産生されたスーパーオキシドはスーパーオキシドジスムターゼ(superoxide dismutase:SOD)による分解・消去が追いつかず、紫外線の曝露時間やスーパーオキシドの発生量によってはヒドロキシルラジカル(HO・)まで変化することが知られています。

∗1 皮膚において活性酸素種が発生する最大の要因は紫外線ですが、他にも排気ガスなどの環境汚染物質、タバコの副流煙などの有害化学物質なども外的要因となります。

発生したヒドロキシルラジカル(HO)は、酸化ストレス障害として過酸化脂質の発生、コラーゲン分解酵素であるMMP(Matrix metalloproteinase:マトリックスメタロプロテアーゼ)の発現増加によるコラーゲン減少、DNA障害や細胞死などを引き起こし、中長期的にこれらの酸化ストレス障害を繰り返すことで光老化を促進します(文献11:2019;文献13:1996;文献14:2013)

このような背景から、紫外線の曝露時および曝露後にスーパーオキシドジスムターゼ(superoxide dismutase:SOD)の活性を増強することは、皮膚の酸化ストレス障害を抑制し、ひいては光老化、炎症および色素沈着などの抑制において非常に重要であると考えられます。

2000年に太陽化学によって報告されたパセリエキスのSOD活性およびヒト皮膚に対する影響検証によると、

in vitro試験においてパセリエキス(水抽出)のSOD活性をチトクロームCの還元速度を50%阻害する量を1単位として測定したところ、以下のグラフのように、

試料 抽出方法 SOD(単位/mL)
パセリエキス 260 ± 8.41

パセリエキスは、SOD活性を示すことが確認された。

次に、100人の女性被検者(19-43歳)に5%パセリエキス(水抽出)配合化粧水を1日2回(朝晩)3ヶ月にわたって顔面に塗布してもらった。

3ヶ月後に「有効:肌のシミ・ソバカスが目立たなくなった」「やや有効:肌のシミ・ソバカスがやや目立たなくなった」「無効:使用前と変化なし」の基準で評価したところ、以下の表のように、

試料 ヒト皮膚色素沈着改善効果(人数)
有効 やや有効 無効
パセリエキス配合化粧水 0 52 48

5%パセリエキス配合化粧水の塗布により、色素沈着の改善傾向が示された。

このような試験結果が明らかにされており(文献8:2000)、パセリエキスにSOD活性による抗酸化作用が認められています。

ヒト試験は皮膚色素沈着の改善を指標としていますが、皮膚色素沈着は紫外線の曝露が主な原因であり、紫外線の曝露によってシミが形成されるメカニズムはいずれも活性酸素種の発現増加を起点とするため、ここでは抗酸化作用の指標として用いられています。

ただし、試験データは5%濃度において「やや有効」が大部分を占め、また「無効」も約40%を占めることから、実際の製品における配合濃度においてはかなり穏やかな作用であると考えられます。

パセリエキスの安全性(刺激性・アレルギー)について

パセリエキスの現時点での安全性は、

  • 外原規2021規格の基準を満たした成分が収載される医薬部外品原料規格2021に収載
  • 20年以上の使用実績
  • 皮膚刺激性:ほとんどなし
  • 眼刺激性:詳細不明
  • 皮膚感作性(アレルギー性):ほとんどなし

このような結果となっており、化粧品配合量および通常使用下において、一般的に安全性に問題のない成分であると考えられます。

以下は、この結論にいたった根拠です。

皮膚刺激性および皮膚感作性(アレルギー性)について

太陽化学の安全性試験データ(文献8:2000)によると、

  • [ヒト試験] 30人の被検者にパセリエキス溶液を対象にパッチテストを実施したところ、いずれの被検者も皮膚刺激反応および皮膚感作反応を示さず、この試験物質は安全性が高く、皮膚化粧製品に配合し得るものであることが明らかとなった

と記載されています。

試験データをみるかぎり、皮膚刺激および皮膚感作なしと報告されているため、一般に皮膚刺激性および皮膚感作性はほとんどないと考えられます。

眼刺激性について

試験結果や安全性データがみあたらないため、現時点ではデータ不足により詳細は不明です。

∗∗∗

パセリエキスは保湿成分、抗酸化成分にカテゴライズされています。

成分一覧は以下からお読みください。

参考:保湿成分 抗酸化成分

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参考文献:

  1. 杉田 浩一, 他(2017)「パセリ」新版 日本食品大事典,615-616.
  2. 鈴木 洋(2011)「パースリー(Persley)」カラー版健康食品・サプリメントの事典,140.
  3. J.D. Craft, et al(2017)「The volatile components of parsley, Petroselinum crispum (Mill.) Fuss」American Journal of Essential Oils and Natural Products(5)(1),27-33.
  4. 朝田 康夫(2002)「保湿能力と水分喪失の関係は」美容皮膚科学事典,103-104.
  5. 田村 健夫, 他(2001)「表皮」香粧品科学 理論と実際 第4版,30-33.
  6. I Horii, et al(1989)「Stratum corneum hydration and amino acid content in xerotic skin」British Journal of Dermatology(121)(5),587-592.
  7. M. Watanabe, et al(1991)「Functional analyses of the superficial stratum corneum in atopic xerosis」Archives of Dermatology(127)(11),1689-1692.
  8. 太陽化学株式会社(2000)「皮膚化粧料」特開2000-119164.
  9. 朝田 康夫(2002)「活性酸素とは何か」美容皮膚科学事典,153-154.
  10. 河野 雅弘, 他(2019)「活性酸素種とは」抗酸化の科学,XⅢ-XⅣ.
  11. 小澤 俊彦(2019)「活性酸素種および活性窒素種の発生系」抗酸化の科学,123-138.
  12. 荒金 久美(1998)「光と皮膚」ファルマシア(34)(1),30-33.
  13. 花田 勝美(1996)「活性酸素・フリーラジカルは皮膚でどのようにつくられるか」皮膚の老化と活性酸素・フリーラジカル,15-35.
  14. 小林 枝里, 他(2013)「表皮の酸化ストレスとその防御機構」Fragrance Journal(41)(2),16-21.

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