ノイバラ果実エキスとは…成分効果と毒性を解説

保湿成分 美白成分 抗炎症成分 抗老化成分 収れん成分 消臭剤
ノイバラ果実エキス
[化粧品成分表示名称]
・ノイバラ果実エキス

[医薬部外品表示名称]
・エイジツエキス

バラ科植物ノイバラ(学名:Rosa multiflora 英名:Japanese rose)の果実からエタノールBG(1,3-ブチレングリコール)、またはこれらの混合液で抽出して得られるエキスです。

ノイバラ果実エキスの成分組成は、抽出方法や天然成分のため国や地域および時期によって変化がありますが、主に、

  • フラボノイド類:ムルチノシドA,B、クエルシトリン
  • タンニン
  • カロテノイド:リコピン

などで構成されています(文献1:-;文献2:2017)

ノイバラは、漢方ではエイジツと呼ばれる最も一般的な野生のバラで、果実は偽果ですが、薬用には赤く成熟する一歩手前の少し青みがかったものを採取し、それを乾燥して用います。

漢方では、通便・利水消腫・活血・解毒の効能があり、脾腫、脚気、瘡毒、月経痛などに用います(文献3:2011)

中国ではあまり用いられず、日本の民間薬として古くより便秘や浮腫の瀉下・峻下薬として知られ、今日でも家庭薬の下剤にしばしば配合されています(文献3:2011)

また、腫れ物やざ瘡には煎液で洗ったり、冷湿布としても用いられます(文献3:2011)

化粧品に配合される場合は、

これらの目的で、スキンケア化粧品、メイクアップ化粧品、ボディ&ハンドケア製品、リップケア製品、洗浄製品、シート&マスク製品、足用消臭製品などの製品に使用されます(文献1:2006;文献6:2015;文献7:2015;文献8:2017)

フィラグリン産生促進による保湿作用

フィラグリン産生促進による保湿作用とは、以下の肌図をみてもらえるとわかりやすいと思うのですが、

NMF(天然保湿因子)の産生の仕組み

皮膚の角層における保湿成分として有名なアミノ酸であるNMF(天然保湿因子)は、同じく表皮顆粒層に存在しているケラトヒアリンが角質細胞に変化していく過程でフィラグリンと呼ばれるタンパク質になり、このフィラグリンが角層に近づくとともに分解されてアミノ酸(NMF)になります(文献5:2002)

また、フィラグリンを構成しているアミノ酸のうち最も多いグルタミンは、保湿力の高いピロリドンカルボン酸となります。

ノイバラ果実エキスには、フィラグリンの産生を促進する作用が明らかにされており(文献1:-)、フィラグリンの産生が増加することで角層のアミノ酸も増加され、結果的に水分量増加による保湿作用を有すると考えられます。

SLC45A2遺伝子発現抑制による色素沈着抑制作用

SLC45A2遺伝子発現抑制による色素沈着抑制作用に関しては、まずSLC45A2遺伝子について解説しておきます。

SLC45A2は、近年ヒトの見た目に関するゲノム関連解析によって肌色の決定に寄与していることが明らかになった遺伝子で、メラニン生合成量にも深く関わっていることが明らかになっています(文献8:2017)

2017年にロート製薬によって報告されたOCA2ならびにSLC45A2発現抑制によるメラニン生合成量の検証および植物エキスによるSLC45A2発現抑制作用検証によると、

ヒトメラノーマ細胞を用いてOCA2ならびにSLC45A2遺伝子の発現を抑制し、細胞内メラニン含有量を測定したところ、以下のグラフのように、

OCA2ならびにSLC45A2遺伝子発現抑制時のメラニン生合成量

有意にメラニン生合成量が低下することが認められた。

次に植物エキスライブラリを用いてSLC45A2遺伝子発現抑制作用を検証したところ、以下のグラフのように、

エイジツエキスの肌色遺伝子発現への影響

エイジツエキスに有意なSLC45A2遺伝子発現抑制作用が認められました。

このような検証結果が明らかになっており(文献8:2017)、エイジツエキス(ノイバラ果実エキス)にSLC45A2発現抑制によるメラニン生合成量低下作用(色素沈着抑制作用)が認められています。

ただし、試験はin vitroで濃度や期間なども不明であり、一般的に化粧品配合量は1%未満であるため、試験よりも穏やかな抑制作用であると考えられます。

Ⅶ型コラーゲン減少抑制および産生促進による抗老化作用

Ⅶ型コラーゲン減少抑制および産生促進による抗老化作用に関しては、まずⅦ型コラーゲンについて解説しておきます。

まず以下の肌図をみてほしいのですが、

真皮におけるコラーゲンの種類

  • Ⅰ型コラーゲン:真皮内に網目状に張りめぐらされている強硬なコラーゲン。肌の弾力やハリを保持
  • Ⅲ型コラーゲン:真皮の乳頭層に多く含まれる細くて柔らかいコラーゲン。肌に柔らかさを付与
  • Ⅳ型コラーゲン:基底膜の膜状構造を維持するための骨格の役割をするコラーゲン

というように、皮膚のコラーゲンは表皮の基底層(基底膜)から真皮にかけて、それぞれ異なった役割をもつコラーゲンが存在しており、大部分は網の目を形成するⅠ型コラーゲンになり、またⅣ型コラーゲンは表皮を支え正常に機能させる土台として働きます。

そして、基底膜に存在するコラーゲンをさらに詳細にみていくと、以下の基底膜の拡大図をみてもらえるとわかるように、

基底膜におけるコラーゲンの仕組み

表皮の支えであり土台でもあるⅣ型コラーゲンに連結する形でⅦ型コラーゲンが連なっているのが確認できますが、このⅦ型コラーゲンは真皮側に存在し、真皮から基底膜へ栄養を受け渡す働きをすることが明らかになっています。

また、生理的老化および光老化のいずれにおいても減少することが知られており、これに伴って皮膚の老化がおこると考えられています。

2015年に佐藤製薬によって報告されたエイジツエキス(ノイバラ果実エキス)のⅦ型コラーゲン産生促進作用検証によると、

約300種類の植物エキスからⅦ型コラーゲンの遺伝子発現を促進する素材を選別したところ、エイジツエキスにその作用を見出した。

表皮角化細胞にエイジツエキスを添加し、24時間培養後のⅦ型コラーゲンの遺伝子発現量を測定したところ、以下のグラフのように、

ノイバラ果実エキスによる表皮角質細胞のⅦ型コラーゲン産生促進作用

エイジツエキスを表皮角化細胞に添加したところ、濃度依存的にⅦ型コラーゲンの遺伝子発現量の促進が認められた。

また、三次元培養表皮モデルに紫外線(UVB)を照射または炎症性サイトカイン(IL-1β、TNF-α)を添加後にエイジツエキス150μg/mLを添加し、24時間培養後のⅦ型コラーゲンの遺伝子発現量を測定したところ、以下のグラフのように、

ノイバラ果実エキスのUVB照射によるⅦ型コラーゲンの減少抑制作用

ノイバラ果実エキスのサイトカインによるⅦ型コラーゲンの減少抑制作用

エイジツエキスは三次元培養表皮モデルのUVB照射によるⅦ型コラーゲンの減少と炎症性サイトカインであるIL-1βとTNF-αによるⅦ型コラーゲンの減少抑制が認められた。

炎症性サイトカインというのは、以下の肌図をみてもらえるとわかりやすいと思うのですが、

炎症の仕組み

皮膚における炎症が起こるプロセスにおいて、炎症を誘発する特殊なタンパク質の総称で、今回の試験で検証されたIL-1βやTNF-αの他にも様々な種類があります。

このような検証結果が明らかになっており(文献6:2015)、ノイバラ果実エキスにⅦ型コラーゲン産生促進作用と紫外線(UVB)および炎症性サイトカイン(IL-1β、TNF-α)によるⅦ型コラーゲン減少抑制作用が認められています。

ただし、一般的に化粧品配合量は1%未満であり、試験よりも穏やかな作用であると考えられます。

イソ吉草酸アルデヒド発生抑制による消臭作用

イソ吉草酸アルデヒド発生抑制による消臭作用は、足のニオイの消臭作用ですが、一般的に足のニオイの原因はイソ吉草酸が知られています。

そこで、2015年にロート製薬が20~50代の男女の足汗から採取したニオイ物質の量と足臭の強さの相関を調べたところ、様々なニオイ物質の中でもとくにイソ吉草酸アルデヒドの量が多いほど足のニオイが強いことが明らかになっています(文献7:2015)

また同じく2015年にロート製薬によって報告されたイソ吉草酸アルデヒドを防ぐ植物エキスの検証によると、

表皮ブドウ球菌をL-ロイシンおよび植物エキスとともに培養し、植物エキス無添加の場合と比較したときのイソ吉草酸アルデヒドの発生抑制率を測定したところ、以下のグラフのように、

植物エキスによるイソ吉草酸アルデヒド発生抑制効果

セージエキス、エイジツエキスにイソ吉草酸アルデヒドの発生を有意に抑制する作用が認められました。

このような検証結果が明らかになっており(文献7:2015)、エイジツエキス(ノイバラ果実エキス)にイソ吉草酸アルデヒド発生抑制による足の消臭作用が認められています。

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ノイバラ果実エキスの安全性(毒性・刺激性・アレルギー)について

ノイバラ果実エキスの現時点での安全性は、医療上汎用性があり有効性および安全性の基準を満たした成分が収載される日本薬局方に収載されている漢方生薬であり、また外原規2006規格の基準を満たした成分が収載される医薬部外品原料規格2006にも収載されているため、化粧品配合量および通常使用下において、一般的に皮膚刺激および皮膚感作性(アレルギー性)はほとんどないと考えられます。

ただし、詳細な試験データがみあたらず、データ不足のため詳細は不明です。

以下は、この結論にいたった根拠です。

皮膚刺激性および皮膚感作性(アレルギー性)について

化粧品配合量および通常使用下において、一般的に皮膚刺激および皮膚感作性(アレルギー性)はほとんどないと考えられますが、詳細な安全性試験データがみあたらず、データ不足のため詳細は不明です。

眼刺激性について

詳細な試験データはみあたらず、データ不足のため詳細は不明です。

化粧品毒性判定事典による毒性判定について

化粧品成分名 判定
ノイバラ果実エキス 毒性なし

参考までに化粧品毒性判定事典によると、ノイバラ果実エキスは毒性なし(∗1)となっており、安全性に問題はないと考えられます。

∗1 毒性判定事典の毒性レベルは「毒性なし」「△」「■」「■■」となっており、△は2~3個で■1個に換算し、■が多いほど毒性が強いという目安になり、製品の毒性成分の合計が■4つ以上なら使用不可と判断されます。

∗∗∗

ノイバラ果実エキスは保湿成分、美白成分、収れん成分、抗老化成分にカテゴライズされています。

成分一覧は以下からお読みください。

参考:保湿成分 美白成分 収れん成分 抗老化成分

∗∗∗

文献一覧:

  1. “丸善製薬株式会社”(-)「エイジツ」技術資料.
  2. 原島 広至(2017)「エイジツ(営実)」生薬単 改訂第3版,254-255.
  3. 鈴木 洋(2011)「営実(えいじつ)」カラー版 漢方のくすりの事典 第2版,31.
  4. 大野 みずき, 他(1993)「オウゴン及びエイジツ抽出液の活性酸素による核酸傷害の抑制効果について」
    日本化粧品技術者会誌(27)(2),159-165.
  5. 朝田 康夫(2002)「アミノ酸とは何か」美容皮膚科学事典,102-103.
  6. “佐藤製薬株式会社”(2015)「エイジツエキスにⅦ型コラーゲン産生促進作用を確認」, <http://www.sato-seiyaku.co.jp/newsrelease/2015/150915/> 2018年8月10日アクセス.
  7. “ロート製薬株式会社”(2015)「足臭の原因物質を抑える植物由来エキスとパウダーを発見」, <https://www.rohto.co.jp/news/release/2015/1209_02/> 2018年8月10日アクセス.
  8. “ロート製薬株式会社”(2017)「美容施術「IPL治療」による美白作用の新たなメカニズムを発見」, <https://www.rohto.co.jp/news/release/2017/1218_01/> 2018年8月10日アクセス.

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