ナツメ果実エキスとは…成分効果と毒性を解説

保湿成分 バリア改善成分 細胞賦活 育毛 抗白髪成分
ナツメ果実エキス
[化粧品成分表示名称]
・ナツメ果実エキス

[医薬部外品表示名称]
・タイソウエキス

クロウメモドキ科植物ナツメ(学名:Ziziphus jujuba 英名:Jujube)の乾燥させた未成熟果実からエタノールBG(1,3-ブチレングリコール)、またはこれらの混合液で抽出して得られるエキスです。

ナツメ果実エキスの成分組成は、抽出方法や天然成分のため国や地域および時期によって変化がありますが、主に、

などで構成されています(文献1:2006;文献2:2016;文献3:2011)

ナツメの名の由来は初夏に芽が出ることによるとされ、また茶道具のナツメは器の形がナツメの実に似ているためといわれています。

中国では紀元前よりモモやアンズとともに重要な五果のひとつとして栽培され、子どもの誕生にこの樹を植えて嫁ぐときに持参するという風習があり、日本では奈良時代に渡来し、今日でもよく庭に植えられています。

薬理作用としては、抗アレルギー、抗潰瘍、抗ストレスのほか細胞内のc-AMP(サイクリックAMP)を増加させる作用が報告されています(文献3:2011)

漢方では、脾胃を補い、精神を安定させ、刺激の強い薬性を緩和する効能があり、食欲不振、下痢、動悸、ヒステリーなどに用います(文献3:2011)

化粧品に配合される場合は、

これらの目的で、スキンケア化粧品をはじめ、ボディ&ハンドケア製品、洗顔料、洗浄製品、化粧下地、メイクアップ化粧品、ヘアケア製品など幅広く様々な製品に使用されます(文献1:2006;文献4:2006;文献6:2005;文献8:2006)

また、2013年に資生堂によってまつ毛の成長速度促進によるまつ毛伸長作用(まつ毛を長くする作用)が発見され、まつ毛美容液、アイメイクアップ化粧品などに使用されています(文献5:2013)

セラミド合成促進による保湿・バリア改善作用

セラミド合成促進による保湿・バリア改善作用に関しては、まず前提知識としてセラミドについて解説します。

以下の角質層の構造および細胞間脂質におけるラメラ構造図をみてもらうとわかりやすいと思うのですが、

角質層の構造

細胞間脂質におけるラメラ構造の仕組み

角質層のバリア機能は、生体内の水分蒸散を防ぎ、外的刺激から皮膚を防御する重要な機能であり、バリア機能には角質と角質の隙間を充たして角質層を安定させる細胞間脂質が重要な役割を果たしています。

細胞間脂質は、主にセラミド、コレステロール、遊離脂肪酸などで構成され、これらの脂質が角質細胞間に層状のラメラ構造を形成することによりバリア機能を有すると考えられています。

セラミドは、細胞間脂質の50%以上を占める主要成分であり、皮膚の水分保持能およびバリア機能に重要な役割を果たしており、バリア機能が低下している皮膚では角質層中のセラミド量が低下していること(文献9:1989)、またアトピー性皮膚炎患者では角質層中のコレステロール量の減少は認められないがセラミド量は有意に低下していることが報告されています(文献10:1991;文献11:1998)

またヒト皮膚には7系統のセラミドが存在することが確認されており、全種類のセラミドが角質層に存在する比率で補われることが理想的ですが、セラミドを適正な比率で補充することは技術的に困難であるため、生体内におけるセラミド合成を促進することが重要であると考えられています。

2006年に日本メナード化粧品によって公開された技術情報によると、

生体内におけるセラミド合成を促進する成分・物質を検討したところ、コメクズアンズスイカズラユキノシタ、テンチャ、ラフマ、サンザシイザヨイバラ、エゾウコギ、ナツメ、シソオウレンサイシン、コガネバナ、キハダクワボタンシャクヤクチンピムクロジチョウジユリダイズシロキクラゲの抽出物によりセラミド合成が促進されることを見出した。

in vitro試験において、マウスケラチノサイト由来細胞を培養した培地を用いて、試料未添加のセラミド合成促進率を100とした場合の試料添加時のセラミド合成促進量を計測したところ、以下の表のように、

試料 抽出方法 10μg/mLあたりのセラミド合成促進率(%)
コメ 熱水 110
エタノール 115
クズ 熱水 133
エタノール 145
アンズ 50%BG水溶液 123
エタノール 137
スイカズラ 熱水 116
エタノール 122
ユキノシタ 熱水 121
テンチャ エタノール 115
ラフマ エタノール 114
サンザシ 50%BG水溶液 130
イザヨイバラ 熱水 112
エタノール 115
エゾウコギ 熱水 129
ナツメ 熱水 162
エタノール 152
シソ エタノール 187
オウレン 熱水 150
サイシン 熱水 145
エタノール 165
コガネバナ 50%BG水溶液 118
熱水 121
キハダ 熱水 178
エタノール 195
クワ 熱水 129
エタノール 145
ボタン 熱水 116
50%BG水溶液 126
シャクヤク 熱水 112
チンピ 熱水 111
エタノール 117
ムクロジ エタノール 115
チョウジ 熱水 114
ユリ 50%BG水溶液 115
ダイズ エタノール 120
熱水 129
シロキクラゲ 熱水 125

ナツメ抽出物は、無添加と比較してセラミド合成促進効果を示した。

このような検証結果が明らかにされており(文献8:2006)、ナツメ果実エキスにセラミド合成促進による保湿・バリア改善作用が認められています。

ターンオーバー増殖促進による細胞賦活作用

ターンオーバー促進による細胞賦活作用に関しては、2006年に丸善製薬によって角層細胞の面積が角層ターンオーバー時間と相関するかどうか、また加齢にともない細胞面積が大きくなるかどうか検証報告によると、

年齢と角層細胞面積の相関について15人の男性被検者(20代~40代)の左右上腕内側部の角層を採取し測定した結果、年齢と角層細胞面積に相関が認められた。

次に、健常男性被検者5人の左右上腕内側に1%ナツメ果実エキス配合水溶液と無配合水溶液をそれぞれ1日2回、27日間にわたって連続塗布し、27日後に角層を採取し角層細胞面積を測定したところ、1%ナツメ果実エキス配合水溶液塗布部において細胞面積が有意に減少し、一方で無配合水溶液塗布部では変化が認められなかった。

この結果からナツメ果実エキスはメラニン排出にかかわる角層ターンオーバーを促進し、シミやくすみに対して有効であると思われる。

このような試験結果が明らかになっており(文献4:2006)、ナツメ果実エキスにはターンオーバー促進による細胞賦活作用があると考えられます。

ただし、試験は1%濃度で行われており、一般的に化粧品配合量は1%未満であるため、穏やかなターンオーバー促進作用であると考えられます。

まつ毛の成長速度促進によるまつ毛伸長作用(まつ毛を長くする作用)

まつ毛の成長速度促進によるまつ毛伸長作用に関しては、2013年に資生堂の報告により、長いまつ毛ほど成長速度が速いという関係が明らかにされており(文献5:2013)、この知見に基づいてまつ毛の成長期の成長速度を高めることによってまつ毛を長くする成分を検証したところ、

200種以上の植物抽出エキスについて毛の細胞増殖を活性化する作用を調べたところ、ナツメ果実エキスにその効果が高いことを発見した。

さらに、ナツメ果実エキス配合製品と未配合製品を4ヶ月連続使用する試験を行ったところ、以下のグラフのように、

ナツメ果実エキスのまつ毛の成長速度促進効果

ナツメ果実エキスが1日あたりのまつ毛の成長速度を有意に高めることが示された。

このような研究結果が明らかにされており(文献5:2013)、ナツメ果実エキスにまつ毛の成長速度促進によるまつ毛伸長作用が認められています。

ただし、試験では濃度が不明であり、化粧品配合量は一般的に1%未満であるため、試験よりも穏やかなまつ毛伸長作用であると考えられます。

メラニン産生促進による抗白髪作用

メラニン産生促進による抗白髪作用に関しては、まず前提知識として毛髪における黒髪(黒色色素)のメカニズムとチロシナーゼについて解説します。

以下の毛髪の構造図をみてもらうとわかりやすいと思うのですが、

毛髪の構造

毛髪の黒化は、色素細胞であるメラノサイトの活性によって行われていますが、白髪はメラノサイトがメラニンの産生を停止することで起こります(文献7:2002)

メラノサイト内でのメラニン黒化は、皮膚と同様以下のように、

チロシンがメラニンに変化するメカニズム

メラノサイト内に存在するアミノ酸の一種であるチロシンとチロシナーゼという酵素が結合することでドーパ → ドーパキノンと変化していくことで生合成されるため、これらのプロセスのいずれかまたは複数の作用を促進することで人為的に白髪の発生を抑制することが可能であると考えられています。

2005年に花王によって公開された技術情報によると、

白髪の発生の防止、改善効果に優れ、かつ安全性にも優れた白髪防止剤の検討を行ったところ、スギナスイカズラヒキオコシ、ブドウ、ヘチマ、セイヨウニワトコナギイカダおよびタイソウの抽出物にその作用を見出した。

in vitro試験においてマウス色素細胞を培養した培地に各植物抽出物1%と所定濃度のメラニン前駆物質を加え、2日間の培養後にっメラニン前駆物質の細胞内取り込み量を無添加を100として測定したところ、以下の表のように、

試料 メラニン前駆物質取り込み量
無添加 100
スギナ 221
スイカズラ 141
ヘチマ 177
ヒキオコシ 144
ブドウ 133
セイヨウニワトコ 152
ナギイカダ 126
タイソウ 136

タイソウ抽出物は、メラニン前駆物質の取り込み量増加がみられたため、メラニン生成を増大させることがわかった。

配合量は一般的に0.0001%~10%の範囲内が好ましく、とくに0.001%~5%の範囲内が好ましい。

このような検証結果が明らかにされており(文献6:2005)、ナツメ果実エキスにメラニン産生促進による抗白髪作用が認められています。

複合植物エキスとしてのナツメ果実エキス

プランテージ<ホワイト>という複合植物エキスは、以下の成分で構成されており、

効果および配合目的は、

  1. 紫外線を浴びることで産生されるメラニン生成を加速させる紫外線情報伝達物質であるエンドセリン-1の抑制
  2. メラニンの生合成に必須の酵素であるチロシナーゼの阻害
  3. できてしまったメラニンの排出を促進し、肌へのメラニン蓄積を防ぐためのターンオーバーの促進

とされており、それぞれ美白ポイントの違う植物エキスの相乗効果によってメラニン産生抑制およびくすみや色素沈着を多角的に予防するもので、化粧品成分一覧にこれらの成分が併用されている場合はプランテージ<ホワイト>であると推測することができます(文献4:2006)

プランテージ<ホワイト>EXという複合植物エキスは、以下の成分で構成されており、

効果および配合目的は、

  1. 紫外線を浴びることで産生されるメラニン生成を加速させる紫外線情報伝達物質であるエンドセリン-1の抑制
  2. メラニンの生合成に必須の酵素であるチロシナーゼの阻害およびメラニン産生抑制
  3. できてしまったメラニンの転送を抑制
  4. できてしまったメラニンの排出を促進し、肌へのメラニン蓄積を防ぐためのターンオーバーの促進

とされており、それぞれ美白ポイントの違う植物エキスの相乗効果によってメラニン産生抑制およびくすみや色素沈着を多角的に予防するもので、化粧品成分一覧にこれらの成分が併用されている場合はプランテージ<ホワイト>EXであると推測することができます(文献4:2006)

フルーツリンクルプロテクトエッセンスという複合植物エキスは、以下の成分で構成されており、

効果および配合目的は、

  1. ターンオーバー促進(表皮角化細胞増殖促進)
  2. ターンオーバー促進(CE(Cornified Envelope)強化因子産生促進)
  3. 色素沈着抑制(メラノサイト活性化因子mRNA発現抑制)
  4. 抗菌力向上(ヒトβディフェンシン3(hBD3)mRNA発現促進)

とされており、皮膚の生まれ変わり(ターンオーバー)を促進し、古くよどんだ皮膚を排出、そしてメラニン産生を予防することで新しい皮膚の明るさを維持し、抗菌力を高めてニキビのできにくい皮膚にすることで、総合的に健やかな皮膚に生まれ変わらせるもので、化粧品成分一覧にこれらの成分が併用されている場合はフルーツリンクルプロテクトエッセンスであると推測することができます。

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ナツメ果実エキスの安全性(刺激性・アレルギー)について

ナツメ果実エキスの現時点での安全性は、

  • 医療上汎用性があり有効性および安全性の基準を満たした成分が収載される日本薬局方に収載
  • 外原規2006規格の基準を満たした成分が収載される医薬部外品原料規格2006に収載
  • 10年以上の使用実績
  • 皮膚刺激性:ほとんどなし(データなし)
  • 目刺激性:詳細不明
  • 皮膚感作性(アレルギー性):ほとんどなし(データなし)

これらの結果から、化粧品配合量および通常使用下において、一般的に安全性に問題のない成分であると考えられます。

以下は、この結論にいたった根拠です。

皮膚刺激性および皮膚感作性(アレルギー性)について

化粧品配合量および通常使用下において、一般的に皮膚刺激および皮膚感作性(アレルギー性)はほとんどないと考えられますが、詳細な安全性試験データがみあたらず、データ不足のため詳細は不明です。

眼刺激性について

詳細な試験データはみあたらず、データ不足のため詳細は不明です。

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ナツメ果実エキスは保湿成分、バリア改善成分、細胞賦活成分にカテゴライズされています。

成分一覧は以下からお読みください。

参考:保湿成分 バリア改善成分 細胞賦活成分

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文献一覧:

  1. 日光ケミカルズ(2006)「植物・海藻エキス」新化粧品原料ハンドブックⅠ,376.
  2. 原島 広至(2017)「タイソウ(大棗)」生薬単 改訂第3版,300-301.
  3. 鈴木 洋(2011)「大棗(たいそう)」カラー版 漢方のくすりの事典 第2版,303-304.
  4. 川嶋 善仁(2006)「高機能植物コンプレックス(オウゴン,タイソウ,カンゾウフラボノイド)の美白効果」Fregrance Journal(34)(8),69-73.
  5. “資生堂”(2013)「資生堂、まつ毛を長くする成分を発見 -ナツメ果実エキスがまつ毛の成長速度を促進-」, <https://www.shiseidogroup.jp/releimg/2119-j.pdf> 2018年8月1日アクセス.
  6. 花王株式会社(2005)「白髪防止剤」特開2005-068159.
  7. 朝田 康夫(2002)「毛の形態に関する疾患は」美容皮膚科学事典,383-384.
  8. 日本メナード化粧品株式会社(2006)「セラミド合成促進剤」特開2006-111560.
  9. G Grubauer, et al(1989)「Transepidermal water loss:the signal for recovery of barrier structure and function.」The Journal of Lipid Research(30),323-333.
  10. Imokawa G, et al(1991)「Decreased level of ceramides in stratum corneum of atopic dermatitis: an etiologic factor in atopic dry skin?」J Invest Dermatol.(96)(4),523-526.
  11. Di Nardo A, et al(1998)「Ceramide and cholesterol composition of the skin of patients with atopic dermatitis.」Acta Derm Venereol.(78)(1),27-30.

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