トレハロースとは…成分効果と毒性を解説

保湿成分 感触改良
トレハロース
[化粧品成分表示名称]
・トレハロース

[医薬部外品表示名称]
・トレハロース、トレハロース液

マルトースから直接生成、またはデンプンを原料とした酵素糖化法により得られる、グルコースが1,1-グリコシド結合してできた非還元性の二糖類(オリゴ糖)です。

復活草と呼ばれるselaginella lepidophylla(イワヒバの一種)などは、50年以上乾燥環境におかれても水を与えると活発に成長し始め、また完全に乾燥しているクマムシが水を得ることにより活発に動き回るなどの例は、生体内に高濃度のトレハロースが存在することで、そのトレハロースが細胞内に何らかの働きかけをし、乾燥や極低温などの外敵環境より生体を保護しているのではないかと考えられています。

身近な例でいうと、乾燥しいたけは約20%のトレハロースを含んでおり、乾燥状態で何ヶ月おいた後でも少量の水で元の状態に戻りますが、これもトレハロースの働きのためといわれています。

皮膚用化粧品に配合される場合は、

これらの目的で、スキンケア化粧品、メイクアップ化粧品、ボディ&ハンドケア製品、洗顔料&洗顔石鹸、洗浄製品、シート&マスク製品など様々な製品に使用されます(文献1:1998;文献3:1994)

乾燥における皮表細胞・細胞膜保護による保湿作用

乾燥における皮表細胞膜保護による保湿作用に関しては、1998年に一丸ファルコスによって報告されたトレハロース溶液の乾燥環境下におかれた細胞に対する保護効果によると、

培養モルモット正常皮膚線維芽細胞を用いて、乾燥環境時で経時的に減少する生存細胞数の変化における無処理時の生存細胞数を100としたときの0.3%トレハロース溶液処理時の細胞生存数の割合を計測したところ、以下の表のように、

  生存細胞数(×10⁴Cell/mL)と有効率(%)の経時変化
0時間 1時間 2時間 3時間 4時間 5時間
無添加 11.56 8.00 6.06 2.72 1.67 0.44
0.3%トレハロース溶液 11.61 11.44 9.94 5.33 3.55 1.78
有効率(%) 100.43 143.00 164.03 195.96 212.57 404.55

乾燥環境下において健常な培養線維芽細胞は、経時的に減少していくことが確認される。

しかし、トレハロース溶液で処理した線維芽細胞においては、乾燥により経時的に減少する細胞の少ないこと、つまり生存細胞数が多いことが確認され、また細胞に対する毒性作用がないことも確認された。

このような検証結果が明らかにされており(文献1:1998)、トレハロースに乾燥環境下における皮表細胞・細胞膜保護による保湿作用が認められています。

ただし、皮膚との親和性および皮膚への浸透性は低く、また吸湿性もほとんどないため、一般的な保湿剤の作用である角層の柔軟化や水分量の増加または保水能などはほとんど認められておらず、保湿剤の役割としては異色です。

粉末メイクアップ化粧品における保湿作用

粉末メイクアップ化粧品における保湿作用に関しては、1994年に資生堂によってトレハロース配合のアイシャドー、チークまたはパウダーファンデーションを美容技術者20人に使用してもらい、しっとりさ、ベタつきおよび化粧持ちを評価してもらったところ、トレハロースを配合することで粉末メイクアップ化粧品は、皮膚をしっとり瑞々しく仕上げ、ベタつかず、化粧持ちに優れていることが認められたと報告されています(文献3:1994)

感触改良剤

感触改良剤に関しては、ムコ多糖類(ヒアルロン酸Naコンドロイチン硫酸Naなど)とトレハロースを併用することで、ムコ多糖類のベタつきを抑制することが報告されています(文献4:1994)

実際の配合製品数および配合量に関しては、海外の2013-2014年の調査結果になりますが、以下のように報告されています。

ちなみに表の中の製品タイプのリーブオン製品というのは付けっ放し製品という意味で、主にスキンケア化粧品やメイクアップ化粧品などを指し、リンスオフ製品というのは洗浄系製品を指します。

トレハロースの配合製品数と配合量の調査結果(2013-2014年)

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トレハロースの安全性(刺激性・アレルギー)について

トレハロースの現時点での安全性は、

  • 外原規2006規格の基準を満たした成分が収載される医薬部外品原料規格2006に収載
  • 10年以上の使用実績
  • 皮膚刺激性:ほとんどなし
  • 眼刺激性:ほとんどなし
  • 皮膚感作性(アレルギー性):ほとんどなし
  • アクネ菌増殖性:ほとんどなし

これらの結果から、化粧品配合量および通常使用下において、一般的に安全性に問題のない成分であると考えられます。

以下は、この結論にいたった根拠です。

皮膚刺激性について

林原生物化学研究所の安全性試験データ(文献2:2009)によると、

  • [動物試験] ウサギを用いた一次皮膚刺激試験において皮膚刺激性なし

と記載されています。

試験データをみるかぎり、皮膚刺激なしと報告されているため、一般的に皮膚刺激性はほとんどないと考えられます。

眼刺激性について

林原生物化学研究所の安全性試験データ(文献2:2009)によると、

  • [動物試験] ウサギを用いた一次眼刺激試験において眼刺激性なし

と記載されています。

試験データをみるかぎり、眼刺激性なしと報告されており、また海外ではドライアイの改善目的でトレハロース配合目薬も販売されているため(日本製もありますが、価格が高く一般的ではない)、眼刺激性はほとんどないと考えられます。

皮膚感作性(アレルギー性)について

試験データはみあたりませんが、保湿剤としての10年以上の使用実績があり、さらに食品、医薬品などにも使用される中で、皮膚感作の報告がないため、皮膚感作性(アレルギー性)はほとんどないと考えられます。

ニキビの原因となるアクネ菌の増殖性について

2009年にサティス製薬によって公開された研究調査によると、

ニキビ用化粧品の開発に役立つアクネ菌(Propionibacterium acnes)の資化性試験を用いて研究調査を行った。

資化性(しかせい)とは、微生物がある物質を栄養源として利用し増殖できる性質であり、化粧品に汎用されている各保湿剤がアクネ菌の栄養源になりうるかを検討するために、14種類の保湿剤(BGグリセリンDPGジグリセリン、トレハロース、グルコースソルビトールプロパンジオールキシリトールPCA-NaベタインラフィノースGCS(グリコシルトレハロース/加水分解水添デンプン混合物))をアクネ菌に与えてその増殖率を測定したところ、以下のグラフのように、

アクネ菌の保湿剤に対する資化性

縦軸の資化性スコア(吸光度)が高いほど菌が増殖していることを示しており、無添加と同等の増加率の場合はアクネ菌に対する資化性は非常に低いと考えられ、トレハロースは無添加と同等の増加率であるため、アクネ菌の増殖性は認められなかった。

このような検証結果が報告されており(文献5:2009)アクネ菌増殖性はほとんどないと考えられます。

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トレハロースは保湿成分にカテゴライズされています。

成分一覧は以下からお読みください。

参考:保湿成分

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文献一覧:

  1. 竹内 叶, 他(1998)「トレハロースの新たな機能と香粧品への応用の可能性」Fragrance Journal(26)(7),39-47.
  2. 株式会社林原生物化学研究所(2009)「トレハロース」安全性データシート.
  3. 株式会社資生堂(1994)「固型粉末化粧料」特開平6-40845.
  4. 株式会社資生堂(1994)「皮膚外用剤」特開平6-122621.
  5. “株式会社サティス製薬”(2009)「化粧品でアクネ菌が増える?」, <http://www.saticine-md.co.jp/exam/trustee_service/release/20090519.html> 2019年1月5日アクセス.

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