トマト果実エキスとは…成分効果と毒性を解説

保湿 抗酸化
トマト果実エキス
[化粧品成分表示名称]
・トマト果実エキス

[医薬部外品表示名称]
・トマトエキス

ナス科植物トマト(学名:Solanum lycopersicum 英名:Tomato)の果実から、BG、またはこれらの混液で抽出して得られる水溶性抽出物植物エキス、あるいはエタノール酢酸エチルまたはこれらの混液で抽出して得られる油溶性抽出物(植物エキス)です。

トマトは、南アメリカのアンデス山脈高原地帯(ペルー・エクアドル圏)を原産とし、15世紀にはヨーロッパに伝わったものの初期は観賞用として扱われましたが、18世紀末に米国に伝えられたことをきっかけに急速な品種分化を遂げ、現在は中国、インド、アメリカ、トルコなどを中心に栽培されています(文献1:2017;文献2:-)

日本においては18世紀初期にトマトの記録があることから17世紀末には導入されていたと推定されていますが、野菜として利用され始めたのは明治、さらに一般に普及したのは1930年代に入ってからとされており、現在では熊本県、北海道、茨城県、千葉県、愛知県などを中心に栽培されています(文献1:2017;文献3:2010)

トマト果実エキスは天然成分であることから、地域、時期、抽出方法によって成分組成に差異があると推察されますが、その成分組成は主に、

分類 成分名称
糖質 単糖 グルコース、フルクトース
有機酸 クエン酸リンゴ酸
ビタミン アスコルビン酸
アミノ酸 γ-アミノ酪酸グルタミン酸アスパラギン酸ヒスチジン など
カロテノイド リコペン(赤色色素)、β-カロテン(黄色色素)

これらの成分で構成されていることが報告されており(文献1:2017)、トマト果実エキスにおける糖質、有機酸、アスコルビン酸は水溶性、カロテノイドは油溶性に分類されます(∗1)

∗1 アミノ酸は種類によって水溶性のものと油溶性のものに分かれます。

トマト果実の化粧品以外の主な用途としては、食品分野において新鮮なものは生食用として冷やしてそのまま、またはサラダ、サンドイッチ・ハンバーガーの具材、肉料理の付け合わせなどに用いられ、加熱調理・加工品としてはスープ、ソース、ピューレ、煮込み、ケチャップ、ジュースなど非常に広範囲に用いられます(文献1:2017)

化粧品に配合される場合は、

これらの目的で、スキンケア化粧品、ボディ&ハンドケア製品、メイクアップ化粧品、化粧下地製品、シート&マスク製品、日焼け止め製品、洗顔料、クレンジング製品、ボディソープ製品、トリートメント製品など様々な製品に使用されています。

また、天然植物をコンセプトにした製品にも配合されています。

皮表柔軟化による保湿作用 [水溶性]

皮表柔軟化による保湿作用に関しては、まず前提知識として皮膚最外層である角質層の構造と役割について解説します。

直接外界に接する皮膚最外層である角質層は、以下の図のように

角質層の構造

天然保湿因子を含む角質と角質の間を細胞間脂質で満たした、レンガとモルタルの関係と同様の構造となっており、この構造が保持されることによって、外界からの物理的あるいは化学的影響から身体を守り、かつ体内の水分が体外へ過剰に蒸散していくのを防ぐとともに一定の水分を保持する役割を担っています(文献4:2002;文献5:2001)

一方で、老人性乾皮症やアトピー性皮膚炎においては、角質細胞中のアミノ酸などの天然保湿因子が顕著に低下していることが報告されています(文献6:1989;文献7:1991)

このような背景から、皮表を柔軟化することは肌の乾燥の改善ひいては皮膚の健常性の維持につながると考えられています。

水溶性トマト果実エキスは、皮膚にうるおいを与える保湿効果を有していることから(文献8:2012;文献9:2020)、スキンケア化粧品、ボディケア製品、ハンドケア製品、メイクアップ化粧品、化粧下地製品、シート&マスク製品、洗顔料、クレンジング製品、ボディソープ製品、トリートメント製品など様々な製品に使用されています。

ただし、保湿作用に対するヒト使用試験データがみつからないため、みつかりしだい追補します。

過酸化脂質抑制による抗酸化作用 [油溶性]

過酸化脂質抑制による抗酸化作用に関しては、まず前提知識として過酸化脂質の発生メカニズムと過酸化脂質の皮膚への影響について解説します。

皮膚に対する紫外線曝露によって産生される活性酸素種である一重項酸素(¹O₂)やヒドロキシルラジカル(HO)は、細胞膜と反応して過酸化脂質(lipid peroxide)を生成することが知られています(文献10:2018)

過酸化脂質の発生メカニズムについては、以下の図をみるとわかりやすいと思いますが、

過酸化脂質発生メカニズム(脂質過酸化反応)

発生したヒドロキシルラジカル(HO)が脂質(LH)から電子を奪い、水素原子と結合して水(H₂O)と脂質ラジカル(L・)を生成することからはじまり、生成された脂質ラジカルは酸素分子(O₂)と速やかに反応して脂質ペルオキシルラジカル(LOO・)となります(文献10:2018)

脂質ペルオキシルラジカル(LOO・)は、他の脂質(LH)と反応して水素を引き抜き、自らは過酸化脂質(脂質ヒドロペルオキシド)となり、同時に新たに脂質ラジカル(L・)が生成され、脂質過酸化反応が連鎖的に繰り返されます(文献10:2018)

このような連鎖的反応によって生成された過酸化脂質は、皮膚に対して炎症、浮腫、壊死、色素沈着などを起こすことが知られています(文献11:1991)

また、皮膚表面に存在する皮表脂質(∗2)においても紫外線などの曝露によって発生する一重項酸素により過酸化脂質が増加することが知られており(文献12:1991)、皮表脂質の過酸化脂質量は20代を最小としそれ以降は年齢とともに増加することも明らかにされています(文献13:1995)

∗2 皮表脂質とは、表皮細胞(角化細胞)の分化過程で産生されるコレステロール、コレステロールエステルなどの表皮脂質と皮脂腺由来の皮脂が皮膚表面で混ざったもののことをいいます。

皮表脂質の成分組成は、ヒトによって含有量が異なり、また同じヒトであっても日によって変動がありますが、

由来 成分 含量(%) 含量範囲(%)
表皮細胞
(角化細胞)
コレステリルエステル 2.5 1.5 – 2.6
コレステロール 1.5 1.2 – 2.3
皮脂腺 スクアレン 10 10.1 – 13.9
ワックス 22 22.6 – 29.5
トリグリセリド 25 19.5 – 49.4
モノグリセリド、ジグリセリド 10 2.3 – 4.3
(ジグリセリドのみ)
遊離脂肪酸 25 7.9 – 39.0

このように報告されており(文献14:1990;文献15:1969)、皮脂腺由来の脂肪が約90%を占めることから、広義には皮表脂質も皮脂と呼ばれています。

皮表脂質では、スクアレンが酸化の第一標的となることが明らかにされており、ヒト皮膚再構築モデルを用いてこのスクアレン過酸化物の皮膚刺激性を検討したところ、皮表接触4時間後では障害反応は起こりませんが、接触24時間後では特異的に障害反応を示し、その障害範囲は表皮ケラチノサイトだけでなく真皮線維芽細胞にも及んでいることが報告されています(文献13:1995)

スクアレン過酸化物が皮表接触24時間後で線維芽細胞まで障害を起こすメカニズムとしては、スクアレン過酸化物由来の脂質過酸化反応の連鎖により真皮まで伝播していき、線維芽細胞の細胞膜構成脂質を酸化し破壊するという反応系であると考えられています(文献13:1995)

アトピー性皮膚炎においては、健常皮膚と比較して皮表の抗酸化能が劣っている(過酸化脂質産生量が多い)ことが明らかにされており、皮膚の状態と皮表脂質過酸化の進行度合いは相関することが示唆されています(文献13:1995)

このような背景から、紫外線の曝露時および曝露後に過酸化脂質を抑制することは、皮膚の酸化ストレス障害を抑制し、ひいては光老化、炎症および色素沈着などの抑制において非常に重要であると考えられます。

2010年にイスラエルのリコレッドによって報告された油溶性トマト果実エキスの過酸化脂質およびヒト皮膚に対する影響検証によると、

in vitro試験において皮脂構成成分であるスクアレンに各濃度のトマト果実エキスを添加してガラス瓶に入れ、経時的に過酸化物価(POV:peroxide value)(∗3)を測定したところ、以下の表のように、

∗3 過酸化物価とは、空気中の酸素やUVなどにより酸化が進むと上昇する値であり、油や脂質の自然酸化度合いを測りたいときに用いられます。

試料 濃度(%) 過酸化物価:POV(meq/kg)
1日 1週間 4週間
油溶性トマト果実エキス 0.05 4.5 6.0 6.0
0.10 4.5 6.0 5.0
1.00 4.5 5.0 4.5
スクアレンのみ(対照) 5.0 100 100以上

油溶性トマト果実エキスは、過酸化物の生成抑制効果が認められた。

次に、100人の女性被検者(22-43歳)を20人1グループとし、0.1%油溶性トマト果実エキス、1.0%トマト果実エキス、10.0%水溶性トマト果実エキス、10.0%トマト果汁のそれぞれを配合したクリームおよび対照としてトマト果実エキス未配合クリームをそれぞれのグループに1日2回(朝晩)4週間にわたって顔面に適量を塗布してもらった。

4週間後に「有効:ツヤ・ハリが改善された」「やや有効:ツヤ・ハリがやや改善された」「無効:試験前と変化なし」の基準で評価したところ、以下の表のように、

試料 濃度(%) ハリ・ツヤ改善効果(人数)
有効 やや有効 無効
油溶性トマト果実エキス 0.1 10 7 3
油溶性トマト果実エキス 1.0 15 4 1
水溶性トマト果実エキス 10.0 1 8 11
トマト果汁 10.0 0 7 13
クリームのみ(対照) 0 5 15

油溶性トマト果実エキス配合クリームの塗布は、水溶性トマト抽出物およびトマト果実エキス未配合クリームと比較して、肌のツヤ・ハリを付与することがわかった。

さらに、日焼けに対する光抗老化効果を検討するために、60人の女性被検者(22-43歳)を20人1グループとし、0.1%油溶性トマト果実エキス、1.0%水溶性トマト果実エキスのそれぞれを配合した日焼けオイルおよび対照としてトマト果実エキス未配合日焼けオイルをそれぞれのグループに1日1回(昼)2週間連続で顔面に適量を塗布してもらった後に1時間日光浴をしてもらった。

2週間後に「有効:ツヤ・ハリが改善された」「やや有効:ツヤ・ハリがやや改善された」「無効:試験前と変化なし」「やや悪化:ツヤ・ハリがやや減少した」の基準で評価したところ、以下の表のように、

試料 濃度(%) ハリ・ツヤ改善効果(人数)
有効 やや有効 無効 やや悪化
油溶性トマト果実エキス 0.1 0 3 16 1
水溶性トマト果実エキス 1.0 0 1 9 10
日焼けオイルのみ(対照) 0 0 3 17

油溶性トマト果実エキスの塗布は、日焼けによる皮膚光老化に対しても抑制する効果があることが確認された。

このような試験結果が明らかにされており(文献16:2010)、油溶性トマト果実エキスに過酸化脂質抑制による抗酸化作用が認められています。

トマト果実エキスの安全性(刺激性・アレルギー)について

トマト果実エキスの現時点での安全性は、

  • 外原規2021規格の基準を満たした成分が収載される医薬部外品原料規格2021に収載
  • 10年以上の使用実績
  • 皮膚刺激性:ほとんどなし(データなし)
  • 眼刺激性:詳細不明
  • 皮膚感作性(アレルギー性):ほとんどなし(データなし)

このような結果となっており、化粧品配合量および通常使用下において、一般的に安全性に問題のない成分であると考えられます。

以下は、この結論にいたった根拠です。

皮膚刺激性および皮膚感作性(アレルギー性)について

医薬部外品原料規格2021に収載されており、10年以上の使用実績がある中で重大な皮膚刺激および皮膚感作の報告がみあたらないため、化粧品配合量および通常使用下において、一般的に皮膚刺激および皮膚感作性(アレルギー性)はほとんどないと考えられますが、詳細な安全性試験データがみあたらず、データ不足のため詳細は不明です。

眼刺激性について

詳細な試験データがみあたらず、データ不足のため詳細は不明です。

∗∗∗

トマト果実エキスは保湿成分、抗酸化成分にカテゴライズされています。

成分一覧は以下からお読みください。

参考:保湿成分 抗酸化成分

∗∗∗

参考文献:

  1. 杉田 浩一, 他(2017)「トマト」新版 日本食品大事典,550-552.
  2. “トマト大学”(-)「トマトの主な生産国」, <https://www.kagome.co.jp/syokuiku/knowledge/tomato-univ/itnl/> 2020年1月31日アクセス.
  3. 熊本県(2010)「統計アラカルト」, <https://www.pref.kumamoto.jp/uploaded/attachment/13978.pdf> 2020年1月31日アクセス.
  4. 朝田 康夫(2002)「保湿能力と水分喪失の関係は」美容皮膚科学事典,103-104.
  5. 田村 健夫, 他(2001)「表皮」香粧品科学 理論と実際 第4版,30-33.
  6. I Horii, et al(1989)「Stratum corneum hydration and amino acid content in xerotic skin」British Journal of Dermatology(121)(5),587-592.
  7. M. Watanabe, et al(1991)「Functional analyses of the superficial stratum corneum in atopic xerosis」Archives of Dermatology(127)(11),1689-1692.
  8. 鈴木 一成(2012)「トマトエキス」化粧品成分用語事典2012,311.
  9. 宇山 侊男, 他(2020)「トマト果実エキス」化粧品成分ガイド 第7版,131.
  10. 藤沢 章雄(2018)「活性酸素種と抗酸化物質」Fragrance Journal(46)(7),51-58.
  11. 遠藤 正行, 他(1991)「角層中における過酸化脂質及び皮表脂質の分布と洗浄による除去」油化学(40)(5),422-426.
  12. 河野 善行, 他(1991)「化学発光検出器を用いたHPLCによるヒト皮表脂質過酸化物の定量」油化学(40)(9),715-718.
  13. 河野 善行・高橋 元次(1995)「皮膚における過酸化反応とその防御」油化学(44)(4),248-255.
  14. 鈴木 敏幸(1990)「スキンケアと界面化学」表面科学(11)(4),260-264.
  15. D.T. Downing, et al(1969)「Variability in the Chemical Composition of Human Skin Surface Lipids」Journal of Investigative Dermatology(53)(5),322-327.
  16. Lycored(2010)「新規化粧料」特開2010-159298.

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