タウリンとは…成分効果と毒性を解説

保湿 バリア改善
タウリン
[化粧品成分表示名称]
・タウリン

[医薬部外品表示名称]
・タウリン

化学構造的にアミノ基(-NH2)とスルホ基(スルホン酸基:-SO3H)をもつ双性イオン化合物(∗1)であり、分子量125.15の水溶性含硫アミノ酸様化合物(アミノスルホン酸化合物)(∗2)です(文献2:1994;文献3:2007)

∗1 双性イオン化合物とは、両性イオン化合物とも呼び、一つの分子内にプラス電荷とマイナス電荷の両方を持ち、全体としては中性イオンを示す化合物を指します。タウリンは弱塩基性を示すアミノ基(-NH2)が正電荷を、強酸性を示すスルホ基(-SO3H)が負電荷をもつ双性イオン化合物です。

∗2 アミノ酸は、化学構造的にアミノ基とカルボキシル基の両方の官能基を持つ有機化合物の総称であり、タウリンはアミノ基はもちますがカルボキシル基を持たないことから厳密にはアミノ酸に分類されませんが、生体内では含硫アミノ酸であるシステインやメチオニンの代謝により生合成される最終代謝産物であることから、含硫アミノ酸関連物質として分類されます。ただし、栄養学などではタウリンをアミノ酸や含硫アミノ酸に分類しているものもみられます。

タウリンは植物や細菌には存在しませんが、ほとんどすべての動物の生体内に存在し、とくに魚介類、イカ、タコといった軟体動物に豊富に含まれます(文献3:2007)

また、ヒトにおいては体重の約0.1%がタウリンに相当するとされており、基本的にすべての組織に分布していますが、とくに心臓、骨格筋、肝臓、脳、網膜などの組織に高濃度に存在します(文献4:1992)

ヒト生体内におけるタウリンの主要な生理機能としては、胆汁酸の抱合、浸透圧調節作用、抗酸化作用、神経伝達物質様作用などをはじめ、極めて多岐にわたる作用が報告されています(文献4:1992;文献5:2006)

一般的な用途としては、医薬品分野において医薬部外品を含む滋養強壮・栄養補給ドリンク剤の主成分(1,000-2,000mg/100mL配合)や点眼薬として汎用されており、食品分野においては天然物由来タウリンがエナジードリンクや育児用粉ミルクなどに用いられ、飼料分野においては養魚用配合飼料などに使用されています(文献1:2008;文献6:2015)

化粧品に配合される場合は、

これらの目的でスキンケア化粧品、シャンプー製品、ヘアトリートメント製品、クレンジング製品、洗顔料、、ボディソープ製品、ボディ&ハンドケア製品、シート&マスク製品、アウトバストリートメント製品など様々な製品に使用されています。

角質層の水分増加による保湿作用

角質層の水分増加による保湿作用に関しては、まず前提知識として皮膚最外層である角質層の構造と役割について解説します。

直接外界に接する皮膚最外層である角質層は、以下の図のように、

角質層の構造

角質と角質の間を細胞間脂質で満たした、レンガとモルタルの関係と同様の構造となっており、この構造が保持されることによって、外界からの物理的あるいは化学的影響から身体を守り、かつ体内の水分が体外へ過剰に蒸散していくのを防ぐとともに一定の水分を保持する役割を担っています(文献7:1990;文献8:2002)

2010年にニベア花王によって報告されたタウリンの角質層における保湿効果検証によると、

タウリン、ヒアルロン酸Naグリセリンの各水溶液を同一濃度で前腕内側部に塗布し、塗布30分および1時間後に角層水分量を測定し、続けて試験部位を石鹸水で洗浄し、再度角層水分量を測定したところ、以下のグラフのように、

 タウリンの保湿効果

タウリン塗布部の角層水分量はいずれもグリセリンより高く、また洗浄後の角層水分量は未塗布部、グリセリン、ヒアルロン酸Na塗布部よりも有意に高かった。

この結果から、タウリンの保湿効果は短時間で角層内部に浸透し、洗浄処置に対しても角層の水分を保持できたものと考えられた。

このような検証結果が明らかにされており(文献11:2010)、タウリンに角質層水分量増加による保湿作用が認められています。

タウリンは、アミノ酸類と同様に水溶性低分子の両性イオン化合物であり、一般的に電荷を有した物質は皮膚や生体膜を透過しにくく、その透過率は電荷を持たない物質と比較して1/1000といわれており(文献12:1984)、アミノ酸類は皮膚浸透に時間がかかり即効性のある保湿剤ではありませんが、この試験データをみるかぎりではタウリンは非常に短時間で皮膚浸透することが示されているため、即効性のある保湿剤であると考えられます。

表皮ケラチノサイトの浸透圧調整による保湿作用

表皮ケラチノサイトの浸透圧調整による保湿作用に関しては、まず前提知識として表皮ケラチノサイトおよび表皮におけるタウリンの役割について解説します。

表皮とは、以下の肌図をみてもらうとわかるように、

皮膚の構造と皮膚の主要成分図

基底層から皮膚の最外層にあたる角質層までをいいます。

表皮に存在する表皮ケラチノサイトとは、表皮の90%以上を占める角化細胞であり、基底層で生成され、その次に生成された基底細胞に押し上げられながら、基底細胞 → 有棘細胞 → 顆粒細胞 → 角質細胞と形、成分、働きを変えつつ、角質として角質層にとどまった後に角片として剥がれ落ちていきます(文献9:2002)

次にタウリンは、生体内に広く分布しており、その生理機能は循環器系および消化器系に対する薬理作用をはじめ多岐に渡りますが、皮膚においては表皮顆粒層および有棘層に存在が認められています(文献10:2003)

表皮におけるタウリンの主な機能は、以下の図をみるとわかりやすいと思いますが、

表皮ケラチノサイトにおけるタウリンの浸透圧調整のメカニズム

何らかの要因で肌の乾燥が進行し、細胞内より細胞外の浸透圧が高くなることによって表皮ケラチノサイト内の水分喪失が進行し細胞が縮小した場合に、細胞膜に存在するタウリン輸送体(taurine transporter:TAUT)を介して表皮ケラチノサイト内に取り込まれることで、浸透圧を調整することです(文献11:2010)

つまり、健常な肌状態の場合は、細胞内と細胞外の浸透圧がほとんど同じ(浸透圧ストレスなし)であり、タウリンは細胞外に存在していますが、肌の乾燥が進行し細胞内外の浸透圧の均衡が崩れると、タウリンが細胞内に入り込み、浸透圧を調整することで細胞内に水分が保持される、細胞内外の浸透圧の変動に応じて浸透圧調整作用を発揮し表皮の恒常性を維持するというメカニズムです。

このようなメカニズムの背景から、健常な皮膚を有する場合はタウリンの塗布によって浸透圧の調整作用が働かないため、浸透圧調整による保湿効果は得られないと考えられますが、乾燥肌の場合や一時的に皮膚が不安定化している場合などでは表皮の浸透圧調整作用が働くと考えられます。

細胞間脂質合成促進によるバリア機能改善作用

細胞間脂質合成促進によるバリア機能改善作用に関しては、まず前提知識として皮膚バリア機能の構造と役割について解説します。

以下の皮膚最外層である角質層の構造および細胞間脂質におけるラメラ液晶構造図をみてもらうとわかりやすいと思うのですが、

角質層の構造

細胞間脂質におけるラメラ構造

角質層は天然保湿因子を含む角質と角質の間を細胞間脂質で満たした、レンガとモルタルの関係と同様の構造となっており、細胞間脂質は主にセラミドコレステロール、遊離脂肪酸などで構成されています。

角質層のバリア機能は、これら細胞間脂質が角質細胞間に層状のラメラ液晶構造を形成することで発揮されると考えられており、このバリア機能は、皮膚内の過剰な水分蒸散の抑制および一定の水分保持、外的刺激から皮膚を防御するといった重要な役割を担っています。

一般的にバリア機能は肌荒れや皮膚炎をはじめ、年齢を重ねることでも低下傾向にあり、その結果として角層水分蒸散量が増え、角層水分蒸散量が増えることで最終的に角質細胞が規則的に並ばなくなり、そこに生じた隙間からさらに水分が蒸散し、バリア機能・保湿機能が低下することが知られています(文献13:2002)

このような背景から、健常なバリア機能を保持することは非常に重要であると考えられます。

2006年にHenkelによって報告された細胞間脂質に対するタウリンの影響検証の検証によると、再構築表皮においてタウリン(0.3mM)添加から17-22日後に細胞間脂質量を測定したところ、未添加と比較してタウリンの添加が細胞間脂質の構成成分であるセラミド、コレステロールおよび脂肪酸の合成を顕著に促進したことが報告されています(文献14:2006)

次に、2010年にニベア花王によって報告されたタウリンの角質層における肌保護効果検証によると、

乾燥処置した肌にタウリン配合ボディ乳液、プラセボを3週間連用塗布し、未塗布部位を含め表皮の水分蒸散量を測定し、さらに連用後に再度乾燥処置を行い表皮水分蒸散量を測定したところ、以下のグラフのように、

タウリンの肌水分蒸散抑制効果

タウリン配合ボディ乳液を塗布した部位は、表皮の水分蒸散量が有意に低下しており、さらに連用後の再乾燥処置においても同様の結果が確認された。

このような検証結果が明らかにされており(文献11:2010)、タウリンは乾燥肌に対して細胞間脂質合成促進によるバリア機能改善作用を有していると考えられます。

タウリンの表皮水分量蒸散抑制メカニズムは、セラミド、コレステロールおよび脂肪酸など細胞間脂質の合成促進だけでなく、肌の乾燥時に発揮される浸透圧調整作用も関連していると考えられ、複合的なバリア機能改善作用であると考えられます。

複合アミノ酸原料としてのタウリン

タウリンは、他のアミノ酸とあらかじめ混合された複合原料があり、タウリンと以下の成分が併用されている場合は、複合アミノ酸原料として配合されている可能性が考えられます。

原料名 P.P.A.A.-C
構成成分 タウリンリシンHClアラニンヒスチジンHClアルギニンセリンプロリングルタミン酸トレオニンバリンロイシングリシンアラントインイソロイシンフェニルアラニン
特徴・主な用途 プラセンタに含まれるアミノ酸組成を模して構成されたアミノ酸混合物

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タウリンの安全性(刺激性・アレルギー)について

タウリンの現時点での安全性は、

  • 医療上汎用性があり有効性および安全性の基準を満たした成分が収載される日本薬局方に収載
  • 外原規2006規格の基準を満たした成分が収載される医薬部外品原料規格2006に収載
  • 20年以上の使用実績
  • 皮膚刺激性:ほとんどなし(データなし)
  • 眼刺激性:ほとんどなし(データなし)
  • 皮膚感作性(アレルギー性):ほとんどなし(データなし)

このような結果となっており、化粧品配合量および通常使用下において、一般的に安全性に問題のない成分であると考えられます。

以下は、この結論にいたった根拠です。

皮膚刺激性および皮膚感作性(アレルギー性)について

ヒト用医薬品、医薬部外品を含むドリンク剤の主要成分および食品添加物として使用されており、またEUやアメリカなど諸外国においても食品添加物として認められており、20年以上の使用実績がある中で重大な皮膚刺激および皮膚感作の報告がみあたらないため、化粧品配合量および通常使用下において、一般的に皮膚刺激および皮膚感作性(アレルギー性)はほとんどないと考えられますが、詳細な安全性試験データがみあたらず、データ不足のため詳細は不明です。

眼刺激性について

一般向け点眼薬の有効成分として配合されており、20年以上の使用実績がある中で重大な眼刺激の報告がみあたらないため、化粧品配合量および通常使用下において、一般的に眼刺激性はほとんどないと考えられますが、詳細な安全性試験データがみあたらず、データ不足のため詳細は不明です。

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タウリンは保湿成分、バリア改善成分にカテゴライズされています。

成分一覧は以下からお読みください。

参考:保湿成分 バリア改善成分

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文献一覧:

  1. 食品安全委員会(2008)「タウリン及び飼料添加物として使用されるタウリンの食品健康影響評価について」飼料添加物評価書.
  2. 大木 道則, 他(1994)「タウリン」化学辞典,801.
  3. 薩 秀夫(2007)「タウリンの多彩な生理作用と動態」化学と生物(45)(4),273-281.
  4. R Huxtable(1992)「Physiological actions of taurine」Physiological Reviews(72)(1),101-163.
  5. T Bouckenooghe, et al(2006)「Is taurine a functional nutrient?」Current Opinion in Clinical Nutrition and Metabolic Care(9)(6),728-733.
  6. 村上 茂(2015)「タウリン研究と産業利用の歴史」タウリンリサーチ(1)(1),7-8.
  7. 田村 健夫, 他(1990)「表皮」香粧品科学 理論と実際 第4版,30-33.
  8. 朝田 康夫(2002)「角質層のメカニズム」美容皮膚科学事典,22-28.
  9. 朝田 康夫(2002)「表皮を構成する細胞は」美容皮膚科学事典,18.
  10. W Siefken, et al(2003)「Role of Taurine Accumulation in Keratinocyte Hydration」Journal of Investigative Dermatology(121)(2),354-361.
  11. 宮本 英和, 他(2010)「タウリンの保湿メカニズムとボディケア製品への応用」Fragrance Journal(38)(3),15-21.
  12. J Swarbrick, et al(1984)「Drug Permeation Through Human Skin Ⅱ: Permeability of Ionizable Compounds」Journal of Pharmaceutical Sciences(73)(10),1352–1355.
  13. 朝田 康夫(2002)「保湿能力と水分喪失の関係は」美容皮膚科学事典,103-104.
  14. B Anderheggen, et al(2006)「Taurine improves epidermal barrier properties stressed by surfactants – A role for osmolytes in barrier homeostasis」Journal of Cosmetic Science(57)(1),1-10.

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