ゼニアオイ花エキスとは…成分効果と毒性を解説

保湿
ゼニアオイ花エキス
[化粧品成分表示名称]
・ゼニアオイ花エキス

[医薬部外品表示名称]
・ゼニアオイエキス

アオイ科植物ウスベニアオイ(学名:Malva sylvestris 英名:common mallow)の花からエタノールBG、またはこれらの混液で抽出して得られる抽出物植物エキスです。

ウスベニアオイ(薄紅葵)は、ヨーロッパを原産とし、古来より粘膜を保護し風邪による喉の痛みや腫れを和らげる目的で用いられてきた歴史があり、中世には重要な薬草として盛んに栽培されたことから現在では1000種もの変種が存在します(文献1:2018;文献2:2016)

ゼニアオイ花エキスは天然成分であることから、地域、時期、抽出方法によって成分組成に差異があると推察されますが、その成分組成は主に、

分類 成分名称
その他 粘液質
フラボノイド フラバノール アントシアニジン
タンニン 詳細不明

これらの成分で構成されていることが報告されています(文献2:2016;文献4:2012)

ウスベニアオイの花の化粧品以外の主な用途としては、飲料分野においてハーブティーにすると含有されているアントシアニジンによって綺麗な青色となり、この青色は酸化していくことで青 → 紫 → ピンク色と変化することから(∗1)「ブルーマロウティー」として広く知られています(文献2:2016;文献3:2015)

∗1 ブルーマロウティ-は酸性であるレモンを浮かべたり、レモン汁を数滴加えただけですぐにピンク色に変化し、またアルカリ性である重曹などを加えると明るい水色に変化します。

化粧品に配合される場合は、

これらの目的で、スキンケア化粧品、ボディ&ハンドケア製品、メイクアップ化粧品、日焼け止め製品、シート&マスク製品、洗顔料、洗顔石鹸、クレンジング製品、アウトバストリートメント製品、シャンプー製品、トリートメント製品、ボディソープ製品など様々な製品に汎用されています。

皮表柔軟化による保湿作用

皮表柔軟化による保湿作用に関しては、まず前提知識として皮膚最外層である角質層の構造と役割について解説します。

直接外界に接する皮膚最外層である角質層は、以下の図のように

角質層の構造

天然保湿因子を含む角質と角質の間を細胞間脂質で満たした、レンガとモルタルの関係と同様の構造となっており、この構造が保持されることによって、外界からの物理的あるいは化学的影響から身体を守り、かつ体内の水分が体外へ過剰に蒸散していくのを防ぐとともに一定の水分を保持する役割を担っています(文献5:2002;文献6:2001)

一方で、老人性乾皮症やアトピー性皮膚炎においては、角質細胞中のアミノ酸などの天然保湿因子が顕著に低下していることが報告されています(文献7:1989;文献8:1991)

このような背景から、皮表を柔軟化することは肌の乾燥の改善ひいては皮膚の健常性の維持につながると考えられています。

ゼニアオイ花エキスは、粘液質多糖の含有量が多いことから(文献2:2016;文献4:2012)、皮膚を保護・柔軟化する保湿効果が高く(文献9:2012;文献10:2020)、皮表柔軟化による保湿効果目的でスキンケア化粧品、ボディケア製品、ハンドケア製品、メイクアップ化粧品、洗顔料、クレンジング製品、シャンプー製品、トリートメント製品、アウトバストリートメント製品、ボディソープ製品などに使用されています。

ただし、保湿効果についての適切なヒト試験データがみつからなかったため、みつかりしだい追補します。

複合植物エキスとしてのゼニアオイ花エキス

ゼニアオイ花エキスは、他の植物エキスとあらかじめ混合された複合原料があり、ゼニアオイ花エキスと以下の成分が併用されている場合は、複合植物エキス原料として配合されている可能性が考えられます。

原料名 ファルコレックスBX51
構成成分 BGアルニカ花エキスキュウリ果実エキスセイヨウキズタ葉/茎エキスゼニアオイ花エキス、パリエタリアエキス、セイヨウニワトコ花エキス
特徴 角層水分量増加および経表皮水分蒸散抑制による保湿作用およびSOD様活性による抗酸化作用にアプローチし皮膚の健常性を保持するよう設計された6種の複合植物抽出液

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ゼニアオイ花エキスの安全性(刺激性・アレルギー)について

ゼニアオイ花エキスの現時点での安全性は、

  • 外原規2006規格の基準を満たした成分が収載される医薬部外品原料規格2006に収載
  • 10年以上の使用実績
  • 皮膚刺激性:ほとんどなし
  • 眼刺激性:詳細不明
  • 皮膚感作性(アレルギー性):ほとんどなし(データなし)

このような結果となっており、化粧品配合量および通常使用下において、一般的に安全性に問題のない成分であると考えられます。

以下は、この結論にいたった根拠です。

皮膚刺激性について

一丸ファルコスの安全性試験データ(文献11:2002)によると、

  • [動物試験] 3匹のウサギの剪毛した背部に乾燥固形分濃度0.5%ゼニアオイ花エキス水溶液0.03mLを塗布し、塗布24,48および72時間後にDraize法の判定基準に基づいて一次刺激性を評価したところ、いずれのウサギも紅斑および浮腫を認めず、この試験物質は皮膚一次刺激性に関して問題がないものと判断された
  • [動物試験] 3匹のモルモットの剪毛した側腹部に乾燥固形分濃度2%ゼニアオイ花エキス水溶液0.5mLを1日1回週5回、2週にわたって塗布し、各塗布日および最終塗布日の翌日にDraize法の判定基準に基づいて皮膚刺激性を評価したところ、いずれのモルモットも2週間にわたって紅斑および浮腫を認めず、この試験物質は皮膚累積刺激性に関して問題がないものと判断された

と記載されています。

試験データをみるかぎり、皮膚刺激なしと報告されているため、一般に皮膚刺激性はほとんどないと考えられます。

眼刺激性について

試験結果や安全性データがみあたらないため、現時点ではデータ不足により詳細は不明です。

皮膚感作性(アレルギー性)について

医薬部外品原料規格2006に収載されており、10年以上の使用実績がある中で重大な皮膚感作の報告がみあたらないため、化粧品配合量および通常使用下において、一般的に皮膚感作性(アレルギー性)はほとんどないと考えられますが、詳細な安全性試験データがみあたらず、データ不足のため詳細は不明です。

∗∗∗

ゼニアオイ花エキスは保湿成分にカテゴライズされています。

成分一覧は以下からお読みください。

参考:保湿成分

∗∗∗

文献一覧:

  1. ジャパンハーブソサエティー(2018)「コモンマロウ」ハーブのすべてがわかる事典,186.
  2. 林 真一郎(2016)「ウスベニアオイ」メディカルハーブの事典 改定新版,20-21.
  3. 北野 佐久子(2005)「マロー」基本 ハーブの事典,177-178.
  4. J.C. Gasparetto, et al(2012)「Ethnobotanical and scientific aspects of Malva sylvestris L.: a millennial herbal medicine」Journal of Pharmacy and Pharmacology(64)(2),172-189.
  5. 朝田 康夫(2002)「保湿能力と水分喪失の関係は」美容皮膚科学事典,103-104.
  6. 田村 健夫, 他(2001)「表皮」香粧品科学 理論と実際 第4版,30-33.
  7. I Horii, et al(1989)「Stratum corneum hydration and amino acid content in xerotic skin」British Journal of Dermatology(121)(5),587-592.
  8. M Watanabe, et al(1991)「Functional analyses of the superficial stratum corneum in atopic xerosis」Archives of Dermatology(127)(11),1689-1692.
  9. 鈴木 一成(2012)「ゼニアオイエキス(ウスベニアオイエキス)」化粧品成分用語事典2012,298.
  10. 宇山 侊男, 他(2020)「ゼニアオイ花エキス」化粧品成分ガイド 第7版,124.
  11. 一丸ファルコス株式会社(2002)「エラスターゼ活性阻害剤及び化粧料組成物」特開2002-205950.

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