スギナエキスとは…成分効果と毒性を解説

保湿 色素沈着抑制 抗白髪成分
スギナエキス
[化粧品成分表示名称]
・スギナエキス

[医薬部外品表示名称]
・スギナエキス

トクサ科植物スギナ(学名:Equisetum arvense 英名:Common Horsetail)の全草からエタノールBG、またはこれらの混液で抽出して得られる抽出物植物エキスです。

スギナ(杉菜)は北半球の温帯に広く分布し、日本においては北海道から九州の平地・山地に広く自生しており、早春に姿を現すツクシはスギナの胞子茎で、春の訪れを告げる風物として日本人には広く親しまれています(文献1:2011;文献2:2011)

スギナエキスは天然成分であることから、地域、時期、抽出方法によって成分組成に差異があると推察されますが、その成分組成は主に、

分類 成分名称
無機質 ケイ酸、ケイ酸カリウム、ケイ酸マグネシウム、マグネシウム、カルシウム、鉄、銅 など
フラボノイド フラボノール イソケルシトリン
サポニン エキセトニン

これらの成分で構成されていることが報告されています(文献1:2011;文献3:1997;文献4:2016)

スギナの全草(生薬名:問荊)の化粧品以外の主な用途としては、漢方分野において清熱・止咳・利尿の効能があることから鼻血、下血、咳嗽、喘息、泌尿器疾患などに用いられ、日本の民間医療分野において古くから利尿、鎮咳、解熱、止血薬として知られていることから膀胱炎、浮腫、気管支炎、痔出血などに用いられています(文献1:2011)

また、ハーブ医療分野においてはドイツでは外傷後の浮腫、膀胱炎や尿道炎などの泌尿器系疾患に内用され、外用では局所の止血や骨折、捻挫、リウマチ、関節炎や治りにくい傷や爪、髪の弱質化に湿布などで用いられます(文献4:2016)

ほかに飲料分野においてはスギナ茶として広く飲用されています(文献2:2011)

化粧品に配合される場合は、

これらの目的でスキンケア化粧品、ボディ&ハンドケア製品、メイクアップ化粧品、シート&マスク製品、洗顔料、洗顔石鹸、ボディソープ製品、シャンプー製品、コンディショナー製品、カラートリートメント製品、ネイル製品など様々な製品に汎用されています。

皮膚柔軟化による保湿作用

皮膚柔軟化による保湿作用に関しては、スギナエキスにはケイ酸やケイ酸塩をはじめとするミネラル類が10-20%ほど含まれており、とくにケイ酸やケイ酸塩などの含有量が高く、これらが角質層に吸収され皮膚を柔らかくし、滑らかにする保湿効果を有することが報告されており(文献5:1992)、古くから様々な化粧品に使用されています。

チロシナーゼ活性阻害による色素沈着抑制作用

チロシナーゼ活性阻害による色素沈着抑制作用に関しては、まず前提知識としてメラニン色素生合成のメカニズムおよびチロシナーゼについて解説します。

以下のメラニン生合成のメカニズム図をみてもらうとわかりやすいと思うのですが、

メラニン生合成のメカニズム図

皮膚が紫外線に曝露されると、細胞や組織内では様々な活性酸素が発生するとともに、様々なメラノサイト活性化因子(情報伝達物質)がケラチノサイトから分泌され、これらが直接またはメラノサイト側で発現するメラノサイト活性化因子受容体を介して、メラノサイトの増殖やメラノサイトでのメラニン生合成を促進させることが知られています(文献6:2002;文献7:2016;文献8:2019)

また、メラノサイト内でのメラニン生合成は、メラニンを貯蔵する細胞小器官であるメラノソームで行われ、生合成経路としてはアミノ酸の一種かつ出発物質であるチロシンに酸化酵素であるチロシナーゼが働きかけることでドーパに変換され、さらにドーパにも働きかけることでドーパキノンへと変換されます(文献6:2002;文献8:2019)

ドーパキノンは、システイン存在下の経路では黄色-赤色のフェオメラニン(pheomelanin)へ、それ以外はチロシナーゼ関連タンパク質2(tyrosinaserelated protein-2:TRP-2)やチロシナーゼ関連タンパク質1(tyrosinaserelated protein-1:TRP-1)の働きかけにより茶褐色-黒色のユウメラニン(eumelanin)へと変換(酸化・重合)されることが明らかにされています(文献6:2002;文献8:2019)

そして、毎日生成されるメラニン色素は、メラノソーム内で増えていき、一定量に達すると樹枝状に伸びているデンドライト(メラノサイトの突起)を通して、周辺の表皮細胞に送り込まれ、ターンオーバーとともに皮膚表面に押し上げられ、最終的には角片とともに垢となって落屑(排泄)されるというサイクルを繰り返します(文献6:2002)

正常な皮膚においてはメラニンの排泄と生成のバランスが保持される一方で、紫外線の曝露、加齢、ホルモンバランスの乱れ、皮膚の炎症などによりメラニン色素の生成と排泄の代謝サイクルが崩れると、その結果としてメラニン色素が過剰に表皮内に蓄積されてしまい、色素沈着が起こることが知られています(文献6:2002)

このような背景から、チロシナーゼの活性を阻害することは色素沈着の抑制において重要なアプローチであると考えられています。

1996年に資生堂によって報告されたスギナエキスのチロシナーゼおよび紫外線照射後のヒト皮膚への影響検証によると、

マウス由来B16メラノーマ細胞を含む培地に各濃度のスギナエキス溶液を添加し、培養後にチロシナーゼ活性阻害率を測定したところ、以下のグラフのように、

スギナエキスのチロシナーゼ活性阻害作用

スギナエキスは、濃度依存的にチロシナーゼ活性阻害作用を示し、0.01%濃度で有意にチロシナーゼ活性の阻害作用を示した。

次に、1日2時間2日にわたって夏期の太陽光に晒された24人の被検者を8人1グループとして上腕内側部皮膚に、太陽光に晒された日の5日より各濃度のスギナエキス配合製剤、または対照としてスギナエキス未配合製剤をそれぞれ1日2回4週間にわたって塗布した。

4週間後に使用後の色素沈着抑制効果を「◎:著効および有効を示す割合が80%以上」「○:著効および有効を示す割合が50%以上80%未満」「△:著効および有効を示す割合が30%以上50%未満」「☓:著効および有効を示す割合が30%未満」この判定基準に基づいて評価したところ、以下の表のように、

試料 配合量(%) 被検者数 色素沈着抑制効果
スギナエキス配合製剤 0.1 8
1.0 8
スギナエキス未配合製剤(対照) 8

0.1%濃度以上のスギナエキス配合製剤塗布グループは、未配合製剤塗布グループと比較して過剰なメラニン色素の沈着を防ぐことがわかった。

このような試験結果が明らかにされており(文献9:1996)、スギナエキスにチロシナーゼ活性阻害による色素沈着抑制作用が認められています。

メラニン生成促進による抗白髪作用

メラニン生成促進による抗白髪作用に関しては、まず前提知識として白髪の定義および毛髪色素のメカニズムについて解説します。

白髪とは、色のなくなった毛髪と定義されており、色素が失われて無色になった毛髪が光を全反射する結果として白くみえることから白髪と呼ばれています(文献10:2005)

毛髪に色素が与えられるメカニズムについては、まず以下の毛髪の構造図をみてもらうとわかりやすいと思うのですが、

毛髪の構造

毛髪は、皮膚の外に出ている毛幹と皮膚内の毛包に大別され、毛包内の少し膨らんだ最下部は毛球と呼ばれますが、毛球には毛乳頭と呼ばれる間葉系細胞(∗1)の塊があり、その周囲に存在する毛母細胞が増殖分化し次々に分裂してできる新しい細胞によって表面に押し上げられるというメカニズムによって形成されています(文献10:2005;文献11:2002)

∗1 間葉系細胞とは、上皮性細胞以外の中胚葉細胞を指し、未分化細胞の形態を示す多分化能をもった細胞です。

毛髪色素の主体は、毛乳頭周辺に存在する色素細胞(メラノサイト)内で生合成されるメラニン色素であり、以下の毛周期(ヘアサイクル)図をみてもらうとわかりやすいと思いますが、

毛周期(ヘアサイクル)

メラニン色素は、成長期 → 退行期 → 休止期を経て再び成長期に戻る毛周期の中で、成長中期に盛んに合成されることで成長する毛幹に供給され、退行期には先立ってその合成活性が停止されたのち、休止期にはアポトーシス(∗2)や抜け毛とともに離脱することによって色素細胞の数そのものが減少し、次の成長初期には新たな色素幹細胞の供給により分裂増殖し、成長中期には再びメラニン合成の活性化により毛幹に供給され、毛髪の色を維持していると考えられています(文献10:2005)

∗2 アポトーシスとは、あらかじめ遺伝子で決められたメカニズムによる細胞の自然死現象のことです。

一方で、個人差や老化の進行度により異なるものの、30代後半-50代後半にかけて白髪化が生じ、50歳までに約50%以上の毛髪に白髪が認められることが知られており(文献12:2001)、白髪化の主な原因としてはすべてが解明されているわけではありませんが、加齢にともなって毛母の色素細胞のメラニン合成系が何らかの原因により低下することや色素細胞数がしだいに減少すると同時にメラニン色素量が減少することが明らかにされています(文献13:2010;文献14:2018)

このような背景から、毛乳頭周辺に存在する色素細胞のメラニン合成を促進することは、白髪の抑制や改善において効果を発揮する場合があると考えられます。

1999年に花王によって報告されたスギナエキスのおよびヒト白髪への影響検証によると、

マウス由来色素細胞培養液に乾燥固形分1%濃度のスギナエキス溶液または対照としてと所定濃度の放射性メラニン前駆物質を加え、培養後に毛細胞を洗浄・溶解し放射性メラニン前駆物質の細胞内取り込み量を測定し、試料無添加の場合を100として比較したところ、以下のグラフのように、

スギナエキス添加における毛細胞内へのメラニン前駆物質取り込み効果

スギナエキスは、無添加と比較して優れた毛細胞へのメラニン前駆物質取り込み効果を示した。

次に、白髪のある21人の男性被検者(31-52歳)に0.5%スギナエキス配合ヘアトニックと対照としてスギナエキス未配合ヘアトニックをそれぞれ頭部の左右別々に1日2回3ヶ月間塗布してもらい、塗布部位の頭髪を試験前後で比較した。

白髪改善効果を「3:著効」「2:やや改善」「1:わずかに改善」「0:ほとんど改善なし」これら4段階で肉眼判定し、0.5%スギナエキス配合ヘアトニック塗布部位の結果を平均値で表したところ、以下の表のように、

試料 濃色度
0.5%スギナエキス配合ヘアトニック 2.0
ヘアトニックのみ(対照)

0.5%スギナエキス配合ヘアトニックの塗布は、白髪の改善効果を示す傾向が観察された。

このような試験結果が明らかにされており(文献15:1999)、スギナエキスにメラニン生成促進による抗白髪作用が認められています。

複合植物エキスとしてのスギナエキス

スギナエキスは、他の植物エキスとあらかじめ混合された複合原料があり、スギナエキスと以下の成分が併用されている場合は、複合植物エキス原料として配合されている可能性が考えられます。

原料名 ファルコレックスBX46
構成成分 BGレモン果実エキススギナエキスホップエキスセイヨウアカマツ球果エキスローズマリー葉エキス
特徴 角質層水分量増加および経表皮水分蒸散抑制による保湿作用、エラスチン保護による抗老化作用、SOD様作用および過酸化脂質抑制による抗酸化作用など、紫外線による皮膚障害から多角的に皮膚を保護する5種類の混合植物抽出液

実際の使用製品の種類や数および配合量は、海外の2019-2020年の調査結果になりますが、以下のように報告されています。

以下表におけるリーブオン製品は、付けっ放し製品(スキンケア製品やメイクアップ製品など)を表しており、またリンスオフ製品は、洗い流し製品(シャンプー、ヘアコンディショナー、ボディソープ、洗顔料、クレンジングなど)を指します。

スギナエキスの配合製品数と配合量の調査結果(2019-2020年)

スギナエキスの安全性(刺激性・アレルギー)について

スギナエキスの現時点での安全性は、

  • 外原規2021規格の基準を満たした成分が収載される医薬部外品原料規格2021に収載
  • 20年以上の使用実績
  • 皮膚刺激性:ほとんどなし
  • 眼刺激性:詳細不明
  • 皮膚感作性(アレルギー性):ほとんどなし

このような結果となっており、化粧品配合量および通常使用下において、一般的に安全性に問題のない成分であると考えられます。

以下は、この結論にいたった根拠です。

皮膚刺激性および皮膚感作性(アレルギー性)について

Cosmetic Ingredient Reviewの安全性データ(文献16:2020)によると、

  • [動物試験] 3匹のウサギの皮膚に100%スギナエキスを対象に皮膚刺激性試験を実施したところ、いずれのウサギにおいても皮膚刺激は観察されなかった(Anonymous,2020)
  • [動物試験] 3匹のウサギの皮膚に100%スギナエキスBG溶液を対象に皮膚刺激性試験を実施したところ、この試験物質はわずかな皮膚刺激を示した(Anonymous,2020)
  • [動物試験] 5匹のモルモットに100%スギナエキスを対象にmaximization皮膚感作性試験を実施したところ、いずれのモルモットも皮膚感作を示さなかった(Anonymous,2020)
  • [動物試験] 5匹のモルモットに100%スギナエキスBG溶液を対象にmaximization皮膚感作性試験を実施したところ、いずれのモルモットも皮膚感作を示さなかった(Anonymous,2020)

と記載されています。

試験データをみるかぎり、100%濃度において皮膚刺激ほとんどなしおよび皮膚感作なしと報告されているため、一般に化粧品配合量において皮膚刺激性および皮膚感作性はほとんどないと考えられます。

眼刺激性について

試験結果や安全性データがみあたらないため、現時点ではデータ不足により詳細は不明です。

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スギナエキスは保湿成分、美白成分にカテゴライズされています。

成分一覧は以下からお読みください。

参考:保湿成分 美白成分

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参考文献:

  1. 鈴木 洋(2011)「問荊(もんけい)」カラー版 漢方のくすりの事典 第2版,461.
  2. 伊藤 操子(2011)「スギナ(Equisetum arvense L.)」草と緑(3),45-52.
  3. K. Suzuki, et al(1997)「スギナに含まれるフラボノイド類の単離・精製とその化学構造」Journal of Advanced Science(9)(1-2),104-105.
  4. 林 真一郎(2016)「スギナ」メディカルハーブの事典 改定新版,78-79.
  5. P. Bradley(1992)「Equisetum arvense」British Herbal Compendium-Volume 1,92-94.
  6. 朝田 康夫(2002)「メラニンができるメカニズム」美容皮膚科学事典,170-175.
  7. 日光ケミカルズ株式会社(2016)「美白剤」パーソナルケアハンドブックⅠ,534-550.
  8. 田中 浩(2019)「美白製品とその作用」日本香粧品学会誌(43)(1),39-43.
  9. 株式会社資生堂(1996)「美白用皮膚外用剤」特開平08-310939.
  10. 出田 立郎(2005)「白髪研究の展開と今後の展望」アンチ・エイジングシリーズ No.1 白髪・脱毛・育毛の実際,49-61.
  11. 朝田 康夫(2002)「毛髪をつくる細胞は」美容皮膚科学事典,347-349.
  12. D.J. Tobin, et al(2001)「Graying: gerontobiology of the hair follicle pigmentary unit」Experimental Gerontology(36)(1),29-54.
  13. 青戸 隆博, 他(2010)「白髪が生じるメカニズム」ファルマシア(46)(12),1115-1119.
  14. 青木 仁美(2018)「毛のメラニン科学と白髪化」日本香粧品学会誌(42)(1),9-14.
  15. 株式会社資生堂(1999)「白髪防止剤」特開平11-124318.
  16. Cosmetic Ingredient Review(2020)「Safety Assessment of Equisetum arvense-Derived Ingredients as Used in Cosmetics」Draft Report for Panel Review.

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