スイカズラ花エキスとは…成分効果と毒性を解説

保湿 バリア改善 角栓形成抑制
スイカズラ花エキス
[化粧品成分表示名称]
・スイカズラ花エキス

[医薬部外品表示名称]
・スイカズラエキス

スイカズラ科植物スイカズラ(学名:Lonicera japonica 英名:Japanese Honeysuckle)の花蕾からエタノールBGで抽出して得られる抽出物植物エキスです。

スイカズラ(吸い葛)は中国、朝鮮半島、日本各地に分布し、季節とともに花の色が白から黄色に変化していく様から「金銀花(キンギンカ)」とも呼ばれ、日本においては庭づくりの素材としても広く利用されています(文献1:2011;文献2:2007)

スイカズラ花エキスは天然成分であることから、地域、時期、抽出方法によって成分組成に差異があると推察されますが、その成分組成は主に、

分類 成分名称
フラボノイド フラボン ルテオリン、ロニセリン
糖質 単糖 イノシトール

これらの成分で構成されていることが報告されています(文献1:2011;文献3:2013)

スイカズラの花(生薬名:金銀花)の化粧品以外の主な用途としては、漢方分野において清熱し炎症を鎮めることから化膿性皮膚疾患や感冒、扁桃炎、乳腺炎、腸炎などに常用されています(文献1:2011;文献4:2016)

また、民間においてはスイカズラの花を浸してつくる「忍冬酒」が不老長寿の銘酒として広く知られており、現在では愛知県犬山市と静岡県浜松市でつくられています。

化粧品に配合される場合は、

これらの目的で、スキンケア化粧品、ボディ&ハンドケア製品、クレンジング製品、洗顔料、ボディソープ製品、シャンプー製品、コンディショナー製品、アウトバストリートメント製品、シート&マスク製品、メイクアップ化粧品、化粧下地製品など様々な製品に使用されています。

フィラグリン産生促進による保湿作用

フィラグリン産生促進による保湿作用に関しては、まず前提知識として皮膚最外層である角質層の構造と役割およびフィラグリンについて解説します。

直接外界に接する皮膚最外層である角質層は、以下の図のように、

角質層の構造

角質と角質の間を細胞間脂質で満たした、レンガとモルタルの関係と同様の構造となっており、この構造が保持されることによって、外界からの物理的あるいは化学的影響から身体を守り、かつ体内の水分が体外へ過剰に蒸散していくのを防ぐとともに一定の水分を保持する役割を担っています(文献5:1990;文献6:2002)

また、角層に存在し水分を保持する働きをもつ水溶性物質は、天然保湿因子(NMF:natural Moisturizing Factor)と呼ばれ、以下の表のように、

成分 含量(%)
アミノ酸類 40.0
ピロリドンカルボン酸(PCA) 12.0
乳酸 12.0
尿素 7.0
アンモニア、尿酸、グルコサミン、クレアチン 1.5
ナトリウム(Na⁺) 5.0
カリウム(K⁺) 4.0
カルシウム(Ca²⁺) 1.5
マグネシウム(Mg²⁺) 1.5
リン酸(PO₄³⁻) 0.5
塩化物(Cl⁻) 6.0
クエン酸 0.5
糖、有機酸、ペプチド、未確認物質 8.5

アミノ酸、有機酸、塩などの集合体として存在しており(文献7:1985)、これらのアミノ酸およびその代謝物は、以下の図のように、

天然保湿因子の産生メカニズム

表皮顆粒層に存在しているケラトヒアリン(∗1)が角質細胞に変化していく過程でフィラグリンと呼ばれるタンパク質となり、このフィラグリンがブレオマイシン水解酵素によって完全分解されることで産生されることが報告されています(文献8:1983;文献9:2002)

∗1 ケラトヒアリンの主要な構成成分は、分子量300-1,000kDaの巨大な不溶性タンパク質であるプロフィラグリンであり、プロフィラグリンは終末角化の際にフィラグリンに分解されます。

一方で、老人性乾皮症やアトピー性皮膚炎においては、角質細胞中のアミノ酸類が顕著に低下していることが報告されており(文献10:1989;文献11:1991)、また乾皮症発症部位ではフィラグリンの発現が低下していることが報告されていることから(文献12:1994)、キメの乱れがみられる部位では天然保湿因子の減少により角質層の乾燥が引き起こされている可能性が考えられており、フィラグリン産生を促進することは、角質層の天然保湿因子生成の促進し、結果的にキメの乱れの改善につながると考えられています。

このような背景から、フィラグリンの産生を促進することは角質層の水分保持、ひいては皮膚の健常性の維持において重要であると考えられます。

2006年に日本メナード化粧品によって報告されたスイカズラ花エキスのフィラグリンおよびヒト皮膚への影響検証によると、

in vitro試験においてマウス表皮角化細胞由来Pam212細胞を培養しコンフルエントな状態になった培地に0.01mg/mL濃度のスイカズラ花エキス(30%エタノール抽出)を添加し、培養後に総プロフィラグリン発現量を測定しスイカズラ花エキス未添加の場合の総プロフィラグリン発現量に対する割合をNMF産生率(%)として算出したところ、以下のグラフのように、

スイカズラ花エキスのNMF産生促進作用

スイカズラ花エキスは、優れたNMF産生促進作用(フィラグリン産生促進作用)を有することが確認された。

次に、肌の乾燥やかゆみに悩む60人の女性被検者(30-45歳)のうち30人に0.5%スイカズラ花エキス配合クリームを2ヶ月間連用し、対照として別の30人にスイカズラ花エキス未配合クリームを同様に用いた。

評価方法として「優:肌の乾燥が改善された」「良:肌の乾燥がやや改善された」「可:肌の乾燥がわずかに改善された」「不可:使用前と変化なし」の基準で2ヶ月後に評価したところ、以下の表のように、

試料 被検者数 不可
スイカズラ花エキス配合クリーム 30 16 7 7 0
クリームのみ(対照) 30 0 2 7 21

0.5%スイカズラ花エキス配合クリーム塗布グループは、未配合クリーム塗布グループと比較して優れた肌の乾燥改善効果を示した。

このような試験結果が明らかにされており(文献13:2006)、スイカズラ花エキスにフィラグリン産生促進による保湿作用が認められています。

セラミド合成促進によるバリア改善作用

セラミド合成促進によるバリア改善作用に関しては、まず前提知識として角質層における細胞間脂質の構造、セラミドの役割およびセラミド産生のメカニズムについて解説します。

以下の表皮最外層である角質層の構造をみてもらうとわかりやすいと思いますが、

角質層の構造

角質層は天然保湿因子を含む角質細胞と角質の間を細胞間脂質で満たした、レンガとモルタルの関係と同様の構造となっており、細胞間脂質は主に、

細胞間脂質構成成分 割合(%)
セラミド 50
遊離脂肪酸 20
コレステロール 15
コレステロールエステル 10
糖脂質 5

このような脂質組成で構成されており(文献14:1995)、その約50%をセラミドが占めています。

これら細胞間脂質は以下の図のように、

細胞間脂質におけるラメラ構造

疎水層と親水層を繰り返すラメラ構造を形成していることが大きな特徴であり、脂質が結合水(∗2)を挟み込むことで水分を保持し、角質細胞間に層状のラメラ液晶構造を形成することでバリア機能を発揮すると考えられており、このバリア機能は、皮膚内の過剰な水分蒸散の抑制および一定の水分保持、外的刺激から皮膚を防御するといった重要な役割を担っています。

∗2 結合水とは、たんぱく質分子や親液コロイド粒子などの成分物質と強く結合している水分であり、純粋な水であれば0℃で凍るところ、角層中の水のうち33%は-40℃まで冷却しても凍らないのは、角層内に存在する水のうち約⅓が結合水であることに由来しています(文献15:1991)。

次に、表皮におけるセラミド生成(合成)プロセスに関しては、以下の表皮におけるセラミド産生プロセス図をみてもらうとわかりやすいと思いますが、

表皮におけるセラミド産生プロセス

表皮細胞は、角化細胞(ケラチノサイト)とも呼ばれ、表皮最下層である基底層で生成された一個の角化細胞は、その次につくられた、より新しい角化細胞によって皮膚表面に向かい押し上げられていき、各層を移動していく中で有棘細胞、顆粒細胞と分化し、最後はケラチンから成る角質細胞となり、角質層にとどまったのち、角片(∗3)として剥がれ落ちます(文献16:2002)

∗3 角片とは、体表部分でいえば垢、頭皮でいえばフケを指します。

この表皮の新陳代謝は一般的にターンオーバー(turnover)と呼ばれ、正常なターンオーバーによって皮膚は新鮮さおよび健常性を保持しています(文献17:2002)

セラミドの前駆体かつスフィンゴ糖脂質の一種であるグルコシルセラミドも表皮で産生され、角質層において分解酵素であるβ-グルコセレブロシダーゼを介してセラミドに分化されることが知られており(文献18:2008)、またスフィンゴミエリンからもセラミドが合成されることが明らかにされています(文献19:1998)

一方で、皮膚が乾燥寒冷下に長時間曝露されるような外的要因やアトピー性皮膚炎のような内的要因により乾皮症(ドライスキン)が生じた場合は、角質層の機能低下により、角質層の水分保持能の低下およびバリア機能低下による経表皮水分蒸散量(transepidermal water loss:TEWL)の上昇が起こり(文献20:2004)、その結果として角質細胞や細胞間脂質が規則的に並ばなくなり、そこに生じた隙間からさらに水分が蒸散し、バリア機能・保湿機能が低下していくことが知られています(文献21:2002)

このような背景から、低下したセラミド量を回復させることによってバリア機能を改善することは、ドライスキンの改善や皮膚の健常性を維持するために重要であると考えられます。

2006年に日本メナード化粧品によって報告されたスイカズラ花エキスのセラミド合成およびヒト皮膚に対する影響検証によると、

in vitro試験においてマウスケラチノサイト由来細胞を培養した培地に25種の植物抽出物を最終濃度が固形物として10μg/mLになるように添加し、未添加のセラミド合成促進率を100とした場合の試料添加時のセラミド合成促進量を計測したところ、以下の表のように、

スイカズラ花エキスのセラミド合成促進作用

スイカズラ花エキスは、セラミド合成を促進することが確認された。

次に、肌荒れ、乾燥肌に悩む60人の女性被検者(18-50歳)のうち30人に0.1%スイカズラ花エキス配合化粧水を、別の30人に対照としてスイカズラ花エキス未配合化粧水をそれぞれ1ヶ月間使用してもらい、1ヶ月後に肌荒れ、乾燥肌の改善効果を評価してもらったところ、以下の表のように、

試料 肌荒れ、乾燥肌への影響(人数)
改善 やや改善 不変
0.1%スイカズラ花エキス配合化粧水 16 11 3
化粧水のみ(対照) 3 5 22

0.1%スイカズラ花エキス配合化粧水の塗布は、未配合化粧水と比較して肌荒れや乾燥肌の予防・改善効果に優れていることが確認された。

このような試験結果が明らかにされており(文献22:2006)、スイカズラ花エキスにセラミド合成促進によるバリア改善作用が認められています。

GATA3発現抑制およびカテプシンⅤ活性促進による角栓形成抑制作用

GATA3発現抑制およびカテプシンⅤ活性促進による角栓形成抑制作用に関しては、まず前提知識として角栓とGATA3およびカテプシンⅤについて解説します。

角栓とは、以下のニキビの種類・重症度図をみるとわかりやすいと思いますが、

ニキビの種類・重症度

毛穴から分泌された皮脂と毛穴周りから剥離した角質が混ざりあったものがスムーズに排泄されず、毛穴に残って凝固したものを指し(文献23:2017)、角栓が形成され毛穴を塞いでいる状態は一般にニキビの初期状態として知られています。

また、一般的に角栓は皮脂と角質が混ざりあったものという認識が共有されていますが、近年の研究報告によると、

  • 角栓内部に毛包の内毛根鞘に酷似した構造を確認
  • 毛包の内毛根鞘が産生するタンパク質であるトリコヒアリンが角栓に存在していることを確認(角質だけでなく内毛根鞘由来タンパク質を含む可能性)

これらの研究結果が報告されており(文献24:2014;文献25:2017)、構造が明らかになるにつれて角栓に対する認識が修正される可能性が考えられます。

次に、GATA3は内毛根鞘の形成に必要な転写因子であり(文献24:2014)、カテプシンⅤは皮膚表皮細胞や内毛根鞘などに局在し角質の落屑(∗4)に関与するタンパク質分解酵素として知られています(文献26:2003)

∗4 落屑(らくせつ)とは角層の最外層が皮膚から剥がれていく現象を指します。健康な皮膚ではターンオーバーに従って角質細胞が角層から個々に剥離するため、その現象を肉眼で気づくことはありませんが、肌荒れなどの皮膚疾患では角質細胞が塊となって剥離し、一部は皮膚表面に剥がれかかった状態で残っているため、肉眼でも形態的に認められるようになります。

このような背景から、GATA3の発現を抑制し内毛根鞘の生成を抑制することやカテプシンⅤの活性を促進し角栓にの分解を促進することは、角栓の形成抑制において重要であると考えられます。

2020年に日本メナード化粧品によって報告されたスイカズラ花エキスのGATA3、カテプシンⅤおよびヒト皮膚角栓に対する影響検証によると、

in vitro試験においてセミコンフルエントセミコンフルエントのヒト正常角化細胞培養液に10μg/mL濃度のスイカズラ花エキスを添加して1日後にRNAを単離し、このRNAに対してGATA3の発現量を測定し、無添加群に対する発現比率を算出したところ、以下のグラフのように、

スイカズラ花エキスのGATA3発現抑制作用

スイカズラ花エキスの添加は、未添加と比較してGATA3の発現量が減少したことから、スイカズラ花エキスにはGATA3の産生を抑制させる作用があることが示された。

次に、in vitro試験において最終濃度9μMのペプチド基質(Z-Leu-Arg-MCA)に、25ngヒト組み換えカテプシンⅤタンパク質および1μg/mL濃度のスイカズラ花エキスを含む反応緩衝液110μLを添加し、酵素反応中における反応生成物量を測定したところ、以下のグラフのように、

スイカズラ花エキスのカテプシンⅤ活性促進作用

スイカズラ花エキスは、未添加と比較してカテプシンⅤの酵素活性の促進が示された。

次に、17人の女性被検者(20-40歳代)の半顔に0.1%スイカズラ花エキス配合クリームを、他方に未配合クリームを1日2回1ヶ月間二重盲検として使用してもらい、使用前および使用1ヶ月後に頬部における角栓形成の指標であるポルフィリン量を評価したところ、以下の表のように、

試料 ポルフィリン量(%)
使用前 使用1ヶ月後
0.1%スイカズラ花エキス配合クリーム 0.0 -164.6
未配合クリーム(対照) 0.0 -61.3

0.1%スイカズラ花エキスを含むクリームのほうがポルフィリン量の減少が大きかったことから、スイカズラ花エキスによる角栓形成抑制作用が示された。

このような試験結果が明らかにされており(文献27:2020)、スイカズラ花エキスにGATA3発現抑制およびカテプシンⅤ活性促進による角栓除去作用が認められています。

複合植物エキスとしてのスイカズラ花エキス

スイカズラ花エキスは、他の植物エキスとあらかじめ混合された複合原料があり、スイカズラ花エキスと以下の成分が併用されている場合は、複合植物エキス原料として配合されている可能性が考えられます。

原料名 プランテージ<リンクル>
構成成分 BG、カンゾウ葉エキス、トウキ根エキススイカズラ花エキス加水分解コンキオリンハトムギ種子エキス
特徴 コラーゲン産生促進作用、基底膜成分産生促進作用、抗酸化作用、保湿・バリア機能向上作用、エラスチン産生促進作用など多角的な作用により抗シワ効果が確認された5種類の生薬由来成分混合液

スイカズラ花エキスの安全性(刺激性・アレルギー)について

スイカズラ花エキスの現時点での安全性は、

  • 外原規2021規格の基準を満たした成分が収載される医薬部外品原料規格2021に収載
  • 20年以上の使用実績
  • 皮膚刺激性:ほとんどなし
  • 眼刺激性:詳細不明
  • 皮膚感作性(アレルギー性):ほとんどなし(データなし)
  • 光毒性:ほとんどなし
  • 光感作性:ほとんどなし

このような結果となっており、化粧品配合量および通常使用下において、一般的に安全性に問題のない成分であると考えられます。

以下は、この結論にいたった根拠です。

皮膚刺激性について

池田回生病院皮膚科の安全性試験データ(文献28:1996)によると、

  • [ヒト試験] 30人の女性被検者(20-58歳)の腕に注射針で#型に乱切を加え、2%スイカズラ花エキス(50%エタノール抽出)を含む水溶液を20分間閉塞パッチ適用し、パッチ除去10分後に皮膚刺激性を評価したところ、いずれの被検者も皮膚刺激を示さなかった

と記載されています。

試験データをみるかぎり、皮膚刺激なしと報告されているため、一般に皮膚刺激性はほとんどないと考えられます。

眼刺激性について

試験結果や安全性データがみあたらないため、現時点ではデータ不足により詳細は不明です。

皮膚感作性(アレルギー性)について

医薬部外品原料規格2021に収載されており、20年以上の使用実績がある中で重大な皮膚感作の報告がみあたらないため、化粧品配合量および通常使用下において、一般的に皮膚感作性(アレルギー性)はほとんどないと考えられますが、詳細な安全性試験データがみあたらず、データ不足のため詳細は不明です。

光毒性および光感作性について

池田回生病院皮膚科の安全性試験データ(文献28:1996)によると、

  • [ヒト試験] 30人の女性被検者(20-58歳)の腕に注射針で#型に乱切を加え、2%スイカズラ花エキス(50%エタノール抽出)を含む水溶液を48時間閉塞パッチ適用し、パッチ除去後に適用部位の左半側をアルミ箔を入れた黒色テープで覆い、UVAライト(3J/c㎡)を12.5cmの距離で5分間照射した。照射30分および72時間後に光毒性および光感作性を評価したところ、いずれの被検者も光毒性および光感作を示さなかった

と記載されています。

試験データをみるかぎり、光毒性および光感作なしと報告されているため、一般に光毒性および光感作性はほとんどないと考えられます。

∗∗∗

スイカズラ花エキスは保湿成分、バリア改善成分にカテゴライズされています。

成分一覧は以下からお読みください。

参考:保湿成分 バリア改善成分

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参考文献:

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