シロキクラゲ多糖体とは…成分効果と毒性を解説

保湿成分 バリア改善成分 抗酸化成分 泡立ち改良剤
シロキクラゲ多糖体
[化粧品成分表示名称]
・シロキクラゲ多糖体

[医薬部外品表示名称]
・シロキクラゲ多糖体

シロキクラゲ科植物シロキクラゲ(学名:Tremella fuciformis 英名:Snow fungus)の子実体からBG(1,3-ブチレングリコール)またはこれらの混合液で抽出して得られるエキスです。

シロキクラゲ多糖体の成分組成は、抽出方法や天然成分のため国や地域および時期によって変化がありますが、主に、

などで構成されています(文献1:2012)

シロキクラゲは、主に日本と中国で食用とされており、中国では古くから不老長寿の秘薬とされ、世界三大美女の一人である楊貴妃が美容維持に食したとも伝承されている希少なキノコです。

シロキクラゲ多糖体は、分子量100万以上のマンノース、キシロース、グルクロン酸を主要構成糖とする酸性ヘテロ体であり(文献2:1974)ヒアルロン酸などの酸性ムコ多糖と同様にグルクロン酸を豊富に含有しています。

水溶液としての感触は、ヒアルロン酸と比べて塗布時のベタつきや乾燥時のつっぱり感が少なく、乾燥後はしっとり・すべすべとした感触を有する特徴があります(文献3:2005)

化粧品に配合される場合は、

これらの目的で、スキンケア化粧品、ボディケア製品、洗顔料、洗浄製品、アイケア製品、シート&マスク製品など様々な製品に使用されます(文献3:2005;文献4:2012;文献5:2006;文献9:2006)

水分保持能による保湿作用

水分保持能(∗1)による保湿作用に関しては、2005年に日本精化によって報告された技術資料によると、

∗1 水分保持能とは、物質自体がもともと保持している水分、あるいは添加された水分がどれだけ保持されるかを示す機能のことです。

シロキクラゲ多糖体の保水性試験を比較対照としてヒアルロン酸Naを用いて実施したところ、以下のグラフのように、

シロキクラゲ多糖体の保水試験

シロキクラゲ多糖体は、ヒアルロン酸Naを超える自重の約500重量倍の保水力を示した。

また水溶液の水分蒸散速度もヒアルロン酸Naよりも低く、保持した水分を離しにくい性質を有することがわかった。

さらに5人の乾燥肌を有する被検者に0.2%シロキクラゲ多糖体およびヒアルロン酸Na水溶液を1日2回4週間塗布し、角層の水分含有量および水分保持能を2週間目と4週間目に測定したところ、以下のグラフのように、

シロキクラゲ多糖体の保水性の変化

シロキクラゲ多糖体の角層水分保持能の変化

シロキクラゲ多糖体は、保湿性および角層水分保持能を向上させることが認められた。

このような検証結果が明らかにされており(文献5:2006)、シロキクラゲ多糖体に水分保持能による保湿作用が認められています。

セラミド合成促進による保湿・バリア改善作用

セラミド合成促進による保湿・バリア改善作用に関しては、まず前提知識としてセラミドについて解説します。

以下の角質層の構造および細胞間脂質におけるラメラ構造図をみてもらうとわかりやすいと思うのですが、

角質層の構造

細胞間脂質におけるラメラ構造の仕組み

角質層のバリア機能は、生体内の水分蒸散を防ぎ、外的刺激から皮膚を防御する重要な機能であり、バリア機能には角質と角質の隙間を充たして角質層を安定させる細胞間脂質が重要な役割を果たしています。

細胞間脂質は、主にセラミド、コレステロール、遊離脂肪酸などで構成され、これらの脂質が角質細胞間に層状のラメラ構造を形成することによりバリア機能を有すると考えられています。

セラミドは、細胞間脂質の50%以上を占める主要成分であり、皮膚の水分保持能およびバリア機能に重要な役割を果たしており、バリア機能が低下している皮膚では角質層中のセラミド量が低下していること(文献6:1989)、またアトピー性皮膚炎患者では角質層中のコレステロール量の減少は認められないがセラミド量は有意に低下していることが報告されています(文献7:1991;文献8:1998)

またヒト皮膚には7系統のセラミドが存在することが確認されており、全種類のセラミドが角質層に存在する比率で補われることが理想的ですが、セラミドを適正な比率で補充することは技術的に困難なため、生体内におけるセラミド合成を促進することが重要であると考えられています。

2006年に日本メナード化粧品によって公開された技術情報によると、

生体内におけるセラミド合成を促進する成分・物質を検討したところ、コメクズアンズスイカズラユキノシタ、テンチャ、ラフマ、サンザシイザヨイバラ、エゾウコギ、ナツメシソオウレンサイシン、コガネバナ、キハダクワボタンシャクヤクチンピムクロジチョウジユリダイズ、シロキクラゲの抽出物によりセラミド合成が促進されることを見出した。

in vitro試験において、マウスケラチノサイト由来細胞を培養した培地を用いて、試料未添加のセラミド合成促進率を100とした場合の試料添加時のセラミド合成促進量を計測したところ、以下の表のように、

試料 抽出方法 10μg/mLあたりのセラミド合成促進率(%)
コメ 熱水 110
エタノール 115
クズ 熱水 133
エタノール 145
アンズ 50%BG水溶液 123
エタノール 137
スイカズラ 熱水 116
エタノール 122
ユキノシタ 熱水 121
テンチャ エタノール 115
ラフマ エタノール 114
サンザシ 50%BG水溶液 130
イザヨイバラ 熱水 112
エタノール 115
エゾウコギ 熱水 129
ナツメ 熱水 162
エタノール 152
シソ エタノール 187
オウレン 熱水 150
サイシン 熱水 145
エタノール 165
コガネバナ 50%BG水溶液 118
熱水 121
キハダ 熱水 178
エタノール 195
クワ 熱水 129
エタノール 145
ボタン 熱水 116
50%BG水溶液 126
シャクヤク 熱水 112
チンピ 熱水 111
エタノール 117
ムクロジ エタノール 115
チョウジ 熱水 114
ユリ 50%BG水溶液 115
ダイズ エタノール 120
熱水 129
シロキクラゲ 熱水 125

ユリ抽出物は、無添加と比較してセラミド合成促進効果を示した。

このような検証結果が明らかにされており(文献5:2006)、シロキクラゲ多糖体にセラミド合成促進による保湿・バリア改善作用が認められています。

SOD活性増強および過酸化脂質抑制による抗酸化作用

SOD活性増強および過酸化脂質抑制による抗酸化作用に関しては、まず前提知識として生体内における活性酸素のひとつであるスーパーオキシド(O₂⁻)とSOD(スーパーオキシドディスムターゼ)の役割・関係および過酸化脂質について解説します。

生体内における活性酸素は以下のように、

酸素(O₂) → スーパーオキシド(O₂⁻) → 過酸化水素(H₂O₂) → ヒドロキシラジカル(・OH)

最初に酸素と反応(電子を取り込む)して、まず活性酸素のスーパーオキシドを発生させ、発生したスーパーオキシドは活性酸素分解酵素であるSOD(スーパーオキシドディスムターゼ)によって水に分解されますが、その過程で活性酸素である過酸化水素が発生します。

SOD(スーパーオキシドディスムターゼ)をはじめとする活性酸素分解酵素は30代あたりから減少傾向になり、これらの活性が減少すると、活性酸素の酸化を抑えきれずに過酸化水素やヒドロキシラジカルが増えていき、細胞の酸化につながりやすくなるため、SOD(スーパーオキシドディスムターゼ)の活性を増強することは重要であると考えられます。

過酸化脂質は、以下の細胞膜の構造図をみてもらうとわかりやすいと思うのですが、

細胞膜の構造図

皮脂や細胞間脂質、細胞膜を構成しているリン脂質などの酸化が進んだ脂質のことで、皮膚に過酸化脂質が増えると様々な物質の変性・損傷が起こり、肌はくすみ、ハリはなくなり、色素沈着は濃くなり、老化が促進されます(文献11:2002)

皮膚において過酸化脂質が生成される主な原因のひとつが紫外線であり、紫外線により発生した活性酸素のひとつである一重項酸素が脂質と結合することで過酸化脂質の生成が促進されます(文献11:2002)

2005年に日本精化によって報告された技術資料によると、

in vitro試験において培養ラットの表皮角化細胞および線維芽細胞系を用いてシロキクラゲ多糖体のSOD活性を測定したところ、以下のグラフのように、

シロキクラゲ多糖体のSOD活性増強効果

シロキクラゲ多糖体の添加によってSOD活性の増強が認められた。

また、同様の細胞系よび試料を用いて過酸化脂質生成量を評価したところ、以下のグラフのように、

シロキクラゲ多糖体の過酸化脂質生成効果

シロキクラゲ多糖体に過酸化脂質抑制効果が認められた。

このような検証結果が明らかにされており(文献3:2005)、シロキクラゲ多糖体にSOD活性増強および過酸化脂質抑制による抗酸化作用が認められています。

グルタチオンレダクターゼ活性増強による抗酸化作用

グルタチオンレダクターゼ活性増強による抗酸化作用に関しては、まず前提知識として生体内における活性酸素の構造とグルタチオンレダクターゼについて解説します。

活性酸素の構造はSOD活性増強および過酸化脂質抑制による抗酸化作用のパートで解説しましたが、生体内における活性酸素は以下のように、

酸素(O₂) → スーパーオキシド(O₂⁻) → 過酸化水素(H₂O₂) → ヒドロキシラジカル(・OH)

最初に酸素と反応(電子を取り込む)して、まず活性酸素のスーパーオキシドを発生させ、発生したスーパーオキシドは活性酸素分解酵素であるSOD(スーパーオキシドディスムターゼ)によって水に分解されますが、その過程で活性酸素である過酸化水素が発生します。

発生した過酸化水素は、過酸化水素分解酵素であるカタラーゼによって、また抗酸化物質であるグルタチオンを用いてグルタチオンペルオキシターゼによって水に分解されますが、それでも処理できない場合は、ヒドロオキシラジカルを発生させます。

グルタチオンは細胞内で酸化型と還元型の2種類の構造で存在し、酸化還元酵素であるグルタチオンレダクターゼにより酸化型のグルタチオンは還元型に変換され、細胞内の還元能力が保持されています。

ただし、紫外線などの酸化ストレスにより皮膚中のグルタチオンレダクターゼ活性が低下することが知られており(文献10:1989)、還元型グルタチオンの生成量が減少し、細胞の還元能力が低下することで、過酸化物による傷害がその防御反応を超えたとき、皮膚は酸化され、細胞機能が劣化して老化していくと考えられます。

そのため、細胞の還元能力を保持するためには、還元型グルタチオンの濃度を上げることが重要であり、還元型グルタチオンの生成を促進するグルタチオンレダクターゼは、細胞の還元能力を保持する重要な酵素であると考えられます。

2006年に日本メナード化粧品によって公開された技術情報によると、

細胞内のグルタチオンレダクターゼの活性を増強させて、還元型グルタチオンの生体濃度を高め、還元型グルタチオンの欠乏により生じる過酸化物の皮膚障害からの防御作用に優れた成分を検討したところ、メハジキ、カンゾウ、エゾウコギ、サイシンコメヌカセンキュウユリおよびシロキクラゲにその効果を見出した。

in vitro試験においてヒト表皮角化細胞を培養した培地に各植物抽出物900μLと9.5mM酸化型グルタチオンなどを添加し、グルタチオンレダクターゼ活性を測定し、同時に試料溶液のタンパク濃度を測定し、試料未添加の細胞におけるグルタチオンレダクターゼ活性を100としたときの試料添加のグルタチオンレダクターゼ活性を細胞内グルタチオンレダクターゼ活性として算出したところ、以下の表のように、

試料(エタノール抽出物) 細胞内グルタチオンレダクターゼ活性(%)
無添加 100
メハジキ 130
カンゾウ 121
エゾウコギ 119
サイシン 121
コメ 115
センキュウ 116
ユリ 112
シロキクラゲ 105

シロキクラゲ抽出物は、無添加と比較して細胞内グルタチオンレダクターゼ活性化作用が認められた。

このような検証結果が明らかにされており(文献9:2006)、シロキクラゲ多糖体にグルタチオンレダクターゼ活性増強による抗酸化作用が認められています。

泡立ち改善作用

泡立ち改善作用に関しては、2012年に日本精化によって報告された技術情報によると、

0.01%シロキクラゲ多糖体を石鹸系洗浄剤(ハンドホイップ容器)に配合し、吐出直後および10分後の泡質および泡持ちを評価した。

その結果、シロキクラゲ多糖体は0.01%で洗浄剤の泡質をきめ細かくし、密度感を向上させ、泡立ちおよび持続性に優れた泡になることがわかった。

またラウレス硫酸Naおよびアミノ酸系界面活性剤に配合したときの泡質・泡持ち感を向上させ、皮膚用洗浄剤へ配合した場合はしっとり感およびなめらかさを付与し、毛髪用洗浄剤へ配合した場合は指通り良く、しっとりしなやかな感触になることがわかった。

このような検証結果が明らかにされており(文献4:2012)、シロキクラゲ多糖体に泡立ち改善作用が認められています。

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シロキクラゲ多糖体の安全性(刺激性・アレルギー)について

シロキクラゲ多糖体の現時点での安全性は、10年以上の使用実績があり、化粧品配合量および通常使用下において、一般的に皮膚刺激および皮膚感作性(アレルギー性)はほとんどないと考えられます。

以下は、この結論にいたった根拠です。

皮膚刺激性について

日本精化の安全性試験データ(文献3:2005)によると、

  • [ヒト試験] 45人の被検者にシロキクラゲ多糖体を24時間単一パッチを適用したところ、すべての被検者で陰性であった
  • [ヒト試験] シロキクラゲ多糖体の14日間連続皮膚刺激性試験の結果、いずれの被検者にも皮膚刺激は生じなかった

と記載されています。

試験データをみるかぎり、共通して皮膚刺激がないため、皮膚刺激性はほとんどないと考えられます。

眼刺激性について

試験結果や安全性データがみあたらないため、現時点ではデータ不足により詳細は不明です。

皮膚感作性(アレルギー性)について

日本精化の安全性試験データ(文献3:2005)によると、

  • シロキクラゲ多糖体の皮膚感作性試験(M&K法)の結果、いずれの被検者にも皮膚感作は生じなかった

と記載されています。

試験データをみるかぎり、皮膚感作の報告はないため、皮膚感作性(アレルギー性)はほとんど起こらないと考えられます。

化粧品毒性判定事典による毒性判定について

化粧品成分名 判定
シロキクラゲ多糖体 掲載なし

参考までに化粧品毒性判定事典によると、シロキクラゲ多糖体は掲載なし(∗2)となっており、安全性に問題ない成分であると考えられます。

∗2 毒性判定事典の毒性レベルは「毒性なし」「△」「■」「■■」となっており、△は2~3個で■1個に換算し、■が多いほど毒性が強いという目安になり、製品の毒性成分の合計が■4つ以上なら使用不可と判断されます。

∗∗∗

シロキクラゲ多糖体は保湿成分、バリア改善成分、抗酸化成分にカテゴライズされています。

成分一覧は以下からお読みください。

参考:保湿成分 バリア改善成分 抗酸化成分

∗∗∗

文献一覧:

  1. 鈴木 一成(2012)「シロキクラゲ多糖体」化粧品成分用語事典2012,289.
  2. Ukai S, et al(1974)「Polysaccharides in Fungi. I. Purification and Characterization of Acidic Heteroglycans from Aqueous Extract of Tremella fuciformis BERK」Chemical and Pharmaceutical Bulletin(22)(5),1102-1107.
  3. 大橋 幸浩, 他(2005)「シロキクラゲ多糖体」Fragrance Journal(33)(3),45-50.
  4. 橋本 明宏, 他(2012)「シロキクラゲ多糖体の化粧品への応用」Fragrance Journal(40)(4),74-76.
  5. 日本メナード化粧品株式会社(2006)「セラミド合成促進剤」特開2006-111560.
  6. G Grubauer, et al(1989)「Transepidermal water loss:the signal for recovery of barrier structure and function.」The Journal of Lipid Research(30),323-333.
  7. Imokawa G, et al(1991)「Decreased level of ceramides in stratum corneum of atopic dermatitis: an etiologic factor in atopic dry skin?」J Invest Dermatol.(96)(4),523-526.
  8. Di Nardo A, et al(1998)「Ceramide and cholesterol composition of the skin of patients with atopic dermatitis.」Acta Derm Venereol.(78)(1),27-30.
  9. 日本メナード化粧品株式会社(2006)「グルタチオンレダクターゼ活性増強剤」特開2006-111545.
  10. Jürgen Fuchs M.D, et al(1989)「Impairment of Enzymic and Nonenzymic Antioxidants in Skin by UVB Irradiation.」Journal of Investigative Dermatology(93)(6),769-773.
  11. 朝田 康夫(2002)「過酸化脂質の害は」美容皮膚科学事典,163-165.

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