シロキクラゲ多糖体とは…成分効果と毒性を解説

保湿 泡質改善
シロキクラゲ多糖体
[化粧品成分表示名称]
・シロキクラゲ多糖体

[医薬部外品表示名称]
・シロキクラゲ多糖体

シロキクラゲ科担子菌シロキクラゲ(学名:Tremella fuciformis 英名:Snow fungus)の子実体(∗1)からエタノールBG、またはこれらの混液で抽出して得られる、化学構造的に単糖の一種であるマンノースを主鎖として側鎖に単糖の一種であるキシロースおよび糖酸の一種であるグルクロン酸が結合した水溶性多糖体(酸性ヘテロ多糖体)です。

∗1 子実体とは、菌類において胞子が形成される部分が集合して塊状となったものであり、大型でよく目だつ子実体はいわゆる「キノコ」と呼ばれます。

シロキクラゲ(白木耳)は中国および日本に分布しており、広葉樹の枯れ木に白色半透明のゼラチン状の子実体を形成します(文献1:2005)

シロキクラゲ多糖体は天然成分であることから、地域、時期、抽出方法によって成分組成に差異があると推察されますが、その成分組成は主に、

分類 成分名称
糖質 単糖 マンノース、キシロース
単糖 糖酸 グルクロン酸

これらの成分で構成されていることが報告されています(文献1:2005;文献2:1974)

シロキクラゲの子実体(生薬名:銀耳)の化粧品以外の主な用途としては、中国では四大食用キノコ「四珍」のうちのひとつとして宮廷料理や薬膳料理に用いられてきた歴史があり、美容薬膳としては「氷糖銀耳湯」が有名です(文献1:2005)

化粧品に配合される場合は、

これらの目的でスキンケア化粧品、洗顔料、ボディソープ製品、シャンプー製品、シート&マスク製品、メイクアップ化粧品、ボディ&ハンドケア製品など様々な製品に汎用されています。

角質層水分量増加およびフィラグリン酸産生促進による保湿作用

角質層水分量増加およびフィラグリン酸産生促進による保湿作用に関しては、まず前提知識として皮膚最外層である角質層の構造と役割およびフィラグリンについて解説します。

直接外界に接する皮膚最外層である角質層は、以下の図のように、

角質層の構造

角質と角質の間を細胞間脂質で満たした、レンガとモルタルの関係と同様の構造となっており、この構造が保持されることによって、外界からの物理的あるいは化学的影響から身体を守り、かつ体内の水分が体外へ過剰に蒸散していくのを防ぐとともに一定の水分を保持する役割を担っています(文献3:1990;文献4:2002)

また、角層に存在し水分を保持する働きをもつ水溶性物質は、天然保湿因子(NMF:natural Moisturizing Factor)と呼ばれ、以下の表のように、

成分 含量(%)
アミノ酸類 40.0
ピロリドンカルボン酸(PCA) 12.0
乳酸 12.0
尿素 7.0
アンモニア、尿酸、グルコサミン、クレアチン 1.5
ナトリウム(Na⁺) 5.0
カリウム(K⁺) 4.0
カルシウム(Ca²⁺) 1.5
マグネシウム(Mg²⁺) 1.5
リン酸(PO₄³⁻) 0.5
塩化物(Cl⁻) 6.0
クエン酸 0.5
糖、有機酸、ペプチド、未確認物質 8.5

アミノ酸、有機酸、塩などの集合体として存在しており(文献5:1985)、これらのアミノ酸およびその代謝物は、以下の図のように、

天然保湿因子の産生メカニズム

表皮顆粒層に存在しているケラトヒアリン(∗2)が角質細胞に変化していく過程でフィラグリンと呼ばれるタンパク質となり、このフィラグリンがブレオマイシン水解酵素によって完全分解されることで産生されることが報告されています(文献6:1983;文献7:2002)

∗2 ケラトヒアリンの主要な構成成分は、分子量300-1,000kDaの巨大な不溶性タンパク質であるプロフィラグリンであり、プロフィラグリンは終末角化の際にフィラグリンに分解されます。

一方で、老人性乾皮症やアトピー性皮膚炎においては、角質細胞中のアミノ酸類が顕著に低下していることが報告されており(文献8:1989;文献9:1991)、また乾皮症発症部位ではフィラグリンの発現が低下していることが報告されていることから(文献10:1994)、キメの乱れがみられる部位では天然保湿因子の減少により角質層の乾燥が引き起こされている可能性が考えられており、フィラグリン産生を促進することは、角質層の天然保湿因子生成の促進し、結果的にキメの乱れの改善につながると考えられています。

このような背景から、角質層の水分量を増加することやフィラグリンの産生を促進することは、角質層の水分維持、ひいては皮膚の健常性の維持において重要であると考えられます。

2005年に日本精化によって報告されたシロキクラゲ多糖体の保水性およびヒト皮膚への影響検証によると、

シロキクラゲ多糖体の保水性試験を検討するために、0.2%シロキクラゲ多糖体水溶液と比較対照として0.2%ヒアルロン酸Na水溶液をろ紙で10分間自然ろ過し、ろ紙上の残存重量から保水量を算出したところ、以下のグラフのように、

シロキクラゲ多糖体(シロキクラゲエキス)の保水試験

シロキクラゲ多糖体は、保水力が高いことで知られるヒアルロン酸Na以上の保水力を示した。

また水溶液の水分蒸散速度もヒアルロン酸Naと比較して低く、保持した水分を離しにくい性質を有することがわかった。

次に、乾燥肌を有する5人の被検者に0.2%シロキクラゲ多糖体およびヒアルロン酸Na水溶液を1日2回4週間にわたって塗布し、角層の水分含有量および水分保持能を2週間目と4週間目に測定したところ、以下のグラフのように、

シロキクラゲ多糖体(シロキクラゲエキス)の保水性の変化

シロキクラゲ多糖体(シロキクラゲエキス)の角層水分保持能の変化

シロキクラゲ多糖体は、保湿性および角層水分保持能を向上させることが認められた。

このような検証結果が明らかにされており(文献1:2005)、シロキクラゲ多糖体に角質層水分量増加による保湿作用が認められています。

次に、2006年に日本メナード化粧品によって報告されたシロキクラゲ多糖体のフィラグリンおよびヒト皮膚への影響検証によると、

in vitro試験においてマウス表皮角化細胞由来Pam212細胞を培養しコンフルエントな状態になった培地に0.01mg/mL濃度のシロキクラゲ多糖体(30%エタノール抽出)を添加し、培養後に総プロフィラグリン発現量を測定しシロキクラゲ多糖体未添加の場合の総プロフィラグリン発現量に対する割合をNMF産生率(%)として算出したところ、以下のグラフのように、

シロキクラゲ多糖体(シロキクラゲエキス)のNMF産生促進作用

シロキクラゲ多糖体は、優れたNMF産生促進作用(フィラグリン産生促進作用)を有することが確認された。

次に、肌の乾燥やかゆみに悩む60人の女性被検者(30-45歳)のうち30人に0.5%シロキクラゲ多糖体配合クリームを2ヶ月間連用し、対照として別の30人にシロキクラゲ多糖体未配合クリームを同様に用いた。

評価方法として「優:肌の乾燥が改善された」「良:肌の乾燥がやや改善された」「可:肌の乾燥がわずかに改善された」「不可:使用前と変化なし」の基準で2ヶ月後に評価したところ、以下の表のように、

試料 被検者数 不可
シロキクラゲ多糖体配合クリーム 30 14 9 7 0
クリームのみ(対照) 30 0 2 7 21

0.5%シロキクラゲ多糖体配合クリーム塗布グループは、未配合クリーム塗布グループと比較して優れた肌の乾燥改善効果を示した。

このような試験結果が明らかにされており(文献11:2006)、シロキクラゲ多糖体にフィラグリン産生促進による保湿作用が認められています。

泡立ち改善作用

泡立ち改善作用に関しては、2012年に日本精化によって報告された洗浄剤にシロキクラゲ多糖体を配合した場合の泡質および泡持ちへの影響検証によると、

0.01%シロキクラゲ多糖体を配合した石鹸系洗浄剤を500mLのポンプフォーマー(ハンドホイップ容器)に詰め、7プッシュ分をシャーレに吐出させ、吐出直後および10分後の泡質および泡持ちを評価した。

その結果、シロキクラゲ多糖体は0.01%で洗浄剤の泡質をきめ細かくし、密度感を向上させ、泡立ちおよび泡持続性に優れた泡になることがわかった。

またラウレス硫酸Naおよびアミノ酸系界面活性剤に配合したときの泡質・泡持ち感を向上させたことから、いずれの界面活性剤においても泡質および泡持ちを向上させることがわかった。

このような検証結果が明らかにされており(文献12:2012)、シロキクラゲ多糖体に泡立ち改善作用が認められています。

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シロキクラゲ多糖体の安全性(刺激性・アレルギー)について

シロキクラゲ多糖体の現時点での安全性は、

  • 10年以上の使用実績
  • 皮膚一次刺激性:ほとんどなし
  • 皮膚累積刺激性:ほとんどなし
  • 眼刺激性:ほとんどなし
  • 皮膚感作性(アレルギー性):ほとんどなし

このような結果となっており、化粧品配合量および通常使用下において、一般的に安全性に問題のない成分であると考えられます。

以下は、この結論にいたった根拠です。

皮膚刺激性および皮膚感作性(アレルギー性)について

日本精化の安全性データ(文献1:2005)によると、

  • [ヒト試験] 45人の被検者にシロキクラゲ多糖体を24時間単一パッチ適用したところ、いずれの被検者においても陰性であった
  • シロキクラゲ多糖体を対象に14日間連続皮膚累積刺激性試験を実施した結果、この試験物質は皮膚累積刺激を示さなかった
  • シロキクラゲ多糖体の皮膚感作性試験(M&K法)の結果、この試験物質は陰性であった

と記載されています。

試験データをみるかぎり、共通して皮膚刺激および皮膚感作なしと報告されているため、一般に皮膚刺激性および皮膚感作性はほとんどないと考えられます。

眼刺激性について

日本精化の安全性データ(文献1:2005)によると、

  • シロキクラゲ多糖体の眼刺激性試験の結果、この試験物質は眼刺激性を生じなかった

と記載されています。

試験データをみるかぎり、眼刺激なしと報告されているため、一般に眼刺激性はほとんどないと考えられます。

∗∗∗

シロキクラゲ多糖体は保湿成分にカテゴライズされています。

成分一覧は以下からお読みください。

参考:保湿成分

∗∗∗

文献一覧:

  1. 大橋 幸浩, 他(2005)「シロキクラゲ多糖体」Fragrance Journal(33)(3),45-50.
  2. S. Ukai, et al(1974)「Polysaccharides in Fungi. I. Purification and Characterization of Acidic Heteroglycans from Aqueous Extract of Tremella fuciformis BERK」Chemical and Pharmaceutical Bulletin(22)(5),1102-1107.
  3. 田村 健夫, 他(1990)「表皮」香粧品科学 理論と実際 第4版,30-33.
  4. 朝田 康夫(2002)「角質層のメカニズム」美容皮膚科学事典,22-28.
  5. 尾沢 達也, 他(1985)「皮膚保湿における保湿剤の役割」皮膚(27)(2),276-288.
  6. I Horii, et al(1983)「Histidine-rich protein as a possible origin of free amino acids of stratum corneum」Normal and Abnormal Epidermal Differentiation: Current Problems in Dermatology(11),301-315.
  7. 朝田 康夫(2002)「皮膚と水分の関係」美容皮膚科学事典,90-103.
  8. I Horii, et al(1989)「Stratum corneum hydration and amino acid content in xerotic skin」British Journal of Dermatology(121)(5),587-592.
  9. M Watanabe, et al(1991)「Functional analyses of the superficial stratum corneum in atopic xerosis」Archives of Dermatology(127)(11),1689-1692.
  10. Tezuka T, et al(1994)「Terminal differentiation of facial epidermis of the aged: immunohistochemical studies.」Dermatology(188)(1),21-24.
  11. 日本メナード化粧品株式会社(2006)「NMF産生促進剤」特開2006-124350.
  12. 橋本 明宏, 他(2012)「シロキクラゲ多糖体の化粧品への応用」Fragrance Journal(40)(4),74-76.

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