シラカンバ樹液とは…成分効果と毒性を解説

保湿成分 バリア改善成分 ベース成分
シラカンバ樹液
[化粧品成分表示名称]
・シラカンバ樹液

[慣用名]
・シラカバ樹液、白樺樹液

カバノキ科植物シラカンバ(学名:Betula platyphylla 英名:Japanese White Birch)の早春の開花および開葉までの1カ月間に限り幹に穴をあけて得られる溢出樹液です。

別名シラカバと呼ばれ、シラカンバ樹液の成分組成は、

成分 含量(%)
糖類 グルコース 48.0
フラクトース 41.0
有機酸 リンゴ酸 3.1
コハク酸 0.2
アミノ酸 シトルリン 0.15
グルタミン 0.1
ミネラル カリウム 微量
リン 微量
カルシウム 微量

となっており(文献1:2008)、古来よりシラカンバ樹液は民間療法として、フィンランド、ロシア、中国、韓国などの北方諸国で飲まれており、また日本では北海道で先住民族であるアイヌの人々の間で飲用、調理用として用いられてきました。

化粧品に配合される場合は、

これらの目的で、スキンケア化粧品、メイクアップ化粧品、ボディ&ハンドケア製品、洗顔料、ネイル製品などに使用されます(文献1:2008;文献2:2007;文献6:2007)

フィラグリン産生促進による保湿作用

フィラグリン産生促進による保湿作用に関しては、まず前提知識としてフィラグリンについて解説します。

以下の肌図をみてもらえるとわかりやすいと思うのですが、

NMF(天然保湿因子)の産生の仕組み

皮膚の角層における保湿成分として有名なNMF(天然保湿因子)は、表皮顆粒層に存在しているケラトヒアリンが角質細胞に変化していく過程でフィラグリンと呼ばれるタンパク質になり、このフィラグリンがブレオマイシン水解酵素によって完全分解されることで、天然保湿因子(低分子アミノ酸およびその誘導体)になります(文献3:2002;文献4:2011)

ケラトヒアリンの主要な構成成分は、分子量300~1,000kDaの巨大な不溶性タンパク質であるプロフィラグリンで、プロフィラグリンは終末角化の際にフィラグリンに分解されます。

フィラグリンと皮膚状態の関連性については、乾皮症発症部位ではフィラグリンの発現が低下していることが報告されており(文献5:1994)、したがってキメの乱れがみられる部位では天然保湿因子の減少により角質層の乾燥が引き起こされている可能性が考えられ、表皮の天然保湿因子生成を促進して正常に回復させることがキメの乱れの改善につながると考えられています。

2007年にコーセーによって公開された技術情報によると、

正常ヒト表皮角化細胞を培養し、それぞれ10分の1に濃縮したシラカンバ樹液をそれぞれ0.1%,1%,2%および3%濃度で添加し9日間培養し、保湿因子であるフィラグリンの産生量を調査したところ、以下のグラフのように、

1/10濃縮シラカンバ樹液のフィラグリン産生量への影響

シラカンバ樹液は、濃度依存的なフィラグリン産生量の増加が認められた。

この結果から、シラカンバ樹液はNMFの産生を促進させることにより、老化や乾燥に伴い減少する皮膚の潤い機能に働きかけ、皮膚の恒常性の維持において有用である可能性が示唆された。

なお配合量は、好ましくは0.0001%-50%であり、より好ましくは0.001%-30%である。

このような検証結果が明らかにされており(文献1:2008;文献2:2007)、シラカンバ樹液にフィラグリン産生促進による保湿作用が認められています。

インボルクリン産生促進によるバリア改善作用

インボルクリン産生促進によるバリア改善作用に関しては、まず前提知識としてインボルクリンとバリア機能の関係について解説します。

以下の表皮角質層の拡大図をみてもらうとわかりやすいと思うのですが、

皮膚における角質の構造図

角質層は、角質と細胞間脂質で構成されており、角質の隙間を細胞間脂質が敷き詰めることで角質層は安定し、また外界物質の侵入を防ぐと同時に角質層の水分蒸発を防ぎ、バリア機能として働きます。

角質層を形成する角質細胞は、表皮ケラチノサイト(角化細胞)の最終産物であり、顆粒層で細胞にアポトーシス(∗1)を起こさせるタンパク質分解酵素であるカスパーゼによってアポトーシスを迎えた死細胞です。

∗1 あらかじめ遺伝子で決められたメカニズムによる細胞の自然死現象のことです。

角質細胞の一番外側には細胞膜が存在し、細胞膜の内側には周辺帯(cornified Sell envelope:CE)と呼ばれる極めて強靭な裏打ち構造の不溶性タンパクの膜が形成されており、角質細胞を包んでいます(文献7:2011)

インボルクリンとは、周辺帯の外側に存在する構成成分のひとつで、疎水性を獲得し、細胞間脂質が整然と配列されるための土台を提供していると考えられており、表皮細胞の成熟にともなってつくられることからターンオーバーの指標としてよく用いられています。

こういった背景からインボルクリンの産生量が増えることは皮膚バリア機能の向上・健常化において重要であると考えられています。

2007年にコーセーによって公開された技術情報によると、

正常ヒト表皮角化細胞を培養し、それぞれ10分の1に濃縮したシラカンバ樹液をそれぞれ0.1%,1%,2%および3%濃度で添加し9日間培養し、バリア形成因子であるインボルクリンの産生量を調査したところ、以下のグラフのように、

1/10濃縮シラカンバ樹液のインボルクリン産生量への影響

シラカンバ樹液は、濃度依存的なインボルクリン産生量の増加が認められた。

この結果から、シラカンバ樹液はCE(comified cell envelope)の形成成分であるインボルクリンの産生を促進させることにより、老化や乾燥に伴い減少するバリア機能に関わる因子に働きかけ、皮膚の恒常性の維持において有用である可能性が示唆された。

なお配合量は、好ましくは0.0001%-50%であり、より好ましくは0.001%-30%である。

このような検証結果が明らかにされており(文献1:2008;文献6:2007)、シラカンバ樹液にインボルクリン産生促進によるバリア改善作用が認められています。

コレステロール産生促進によるバリア改善作用

コレステロール産生促進によるバリア改善作用に関しては、まず前提知識としてコレステロールとバリア機能の関係について解説します。

以下の表皮における角質層の構造をみてもらうとわかりやすいと思いますが、

角質層の構造

皮膚の最外層である角質層には、様々な刺激や物質の侵入を防いだり、体内の水分が体外へ過剰に蒸散していくのを防ぐバリア機能が備わっています。

角質層の機能は、レンガとセメントで例えられることが多いですが、レンガとしての角質内部には天然保湿因子として複数のアミノ酸が存在しており、またセメントとしての細胞間脂質は、以下の画像をみてもらうとわかりやすいと思いますが、

細胞間脂質におけるラメラ構造の仕組み

疎水層と親水層を繰り返すラメラ構造を形成していることが大きな特徴であり、脂質(細胞間脂質)が結合水を挟み込むような構造で、コレステロールもこの脂質の構成成分として存在しています。

この脂質(細胞間脂質)の組成は、

  • セラミド:50%
  • 脂肪酸:20%
  • コレステロールエステル:15%
  • コレステロール:10%
  • 糖脂質:5%

このように、コレステロールエステルも合わせるとコレステロールが約25%を占めており(文献9:1995)、バリア機能に深く関与しています。

2007年にコーセーによって公開された技術情報によると、

正常ヒト表皮角化細胞を培養し、それぞれ10分の1に濃縮したシラカンバ樹液をそれぞれ0.1%,1%,2%および3%濃度で添加し9日間培養し、コレステロールの産生量を調査したところ、以下の表のように、

化粧品毒性判定事典による毒性判定について

試料名 濃度(v/v%) コレステロール産生能(対照を100とする)
シラカンバ樹液 30 125
20 123
10 117
1 108
無添加 100

シラカンバ樹液は、濃度依存的なコレステロール産生量の増加が認められた。

この結果から、シラカンバ樹液はコレステロールの産生を促進させることにより、老化や乾燥に伴い減少するバリア機能に関わる因子に働きかけ、皮膚の恒常性の維持において有用である可能性が示唆された。

なお配合量は、好ましくは0.0001%-50%であり、より好ましくは0.001%-30%である。

このような検証結果が明らかにされており(文献8:2007)、シラカンバ樹液にコレステロール産生促進による経表皮水分蒸散抑制・バリア改善作用が認められています。

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シラカンバ樹液の安全性(刺激性・アレルギー)について

シラカンバ樹液の現時点での安全性は、古くからの飲用実績があり、また10年以上の使用実績があり、成分組成的にも皮膚刺激はほとんどなく、皮膚感作(アレルギー)の報告もないため、安全性に問題のない成分であると考えられます。

ただし、詳細な試験データがみあたらず、データ不足のため詳細は不明です。

以下は、この結論にいたった根拠です。

皮膚刺激性について

試験結果や安全データはみあたりませんが、古くから飲用されており、成分組成的にも皮膚刺激がないと推測されるため、皮膚刺激はほとんどないと考えられます。

眼刺激性について

試験結果や安全データはみあたらないため、データ不足により詳細不明です。

皮膚感作性(アレルギー性)について

試験結果や安全データはみあたりませんが、古くから飲用されており、重大な皮膚感作(アレルギー)の報告はないため、皮膚感作性(アレルギー性)はほとんどないと考えられます。

シラカバによる花粉症の場合でもシラカンバ樹液は花粉と成分が異なるため、一般的に問題ないとされています。

∗∗∗

シラカンバ樹液は保湿成分、バリア改善成分、ベース成分にカテゴライズされています。

成分一覧は以下からお読みください。

参考:保湿成分 バリア改善成分 ベース成分

∗∗∗

文献一覧:

  1. 森山 正大, 他(2008)「シラカンバ (Betula platyphylla Sukatchev var. japonica Hara) 樹液の培養ヒト表皮角化細胞の分化に及ぼす影響」日本化粧品技術者会誌(42)(2),94-101.
  2. 株式会社コーセー(2007)「プロフィラグリン及び/又はフィラグリン産生促進剤」特開2007-217325.
  3. 朝田 康夫(2002)「アミノ酸とは何か」美容皮膚科学事典,102-103.
  4. “株式会社資生堂”(2011)「肌の天然保湿因子NMF産生メカニズムを解明」, <https://www.shiseidogroup.jp/newsimg/archive/00000000001259/1259_n9q22_jp.pdf> 2018年12月27日アクセス.
  5. Tezuka T, et al(1994)「Terminal differentiation of facial epidermis of the aged: immunohistochemical studies.」Dermatology(188)(1),21-24.
  6. 株式会社コーセー(2007)「インボルクリン産生促進剤」特開2007-217326.
  7. 清水 宏(2011)「周辺帯」あたらしい皮膚科学第2版,9.
  8. 株式会社コーセー(2007)「コレステロール産生促進剤及びこれを含有する皮膚外用剤」特開2007-223954.
  9. 清芋川 玄爾(1995)「皮膚角質細胞間脂質の構造と機能」油化学(44)(10),751-766.

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