サクシノイルアテロコラーゲンとは…成分効果と毒性を解説


・サクシノイルアテロコラーゲン(改正名称)
・サクシニルアテロコラーゲン(旧称)
[医薬部外品表示名称]
・サクシニルアテロコラーゲン液
アテロコラーゲン(水溶性コラーゲン)のアミノ基に無水コハク酸を修飾しサクシニル化したサクシニル化アテロコラーゲン(親水性コラーゲン誘導体)です(文献1:1989)。
サクシノイルアテロコラーゲンの解説の前に、前提知識として水溶性コラーゲンの構造を解説しておきます。
以下のアテロコラーゲンの構造図をみるとわかりやすいと思いますが、
生体内コラーゲン(不溶化コラーゲン)の分子両端の非らせん部であり、かつコラーゲン分子の主要な抗原部位(∗1)でもあるテロペプチドを、タンパク質分解酵素であるペプシンで分解処理することで、抗原性を低くした可溶化コラーゲン(アテロコラーゲン)として用いられています(文献2:2001)。
∗1 抗原部位とはアレルギーを起こす部位のことをいいます。
またコラーゲンは、分子量10万のポリペプチドが3本寄り集まった三重らせん構造で構成されており、各ポリペプチドはアミノ酸組成として、
Gly(グリシン) – X(アミノ酸) – Y(アミノ酸)
このように3種のアミノ酸の繰り返し構造を持っています。
このアミノ酸の繰り返し構造は、3個ごとにグリシンが含まれているため、配列としては、
Gly – X – Y – Gly – X – Y – Gly – X – Y – Gly – X – Y – Gly – X – Y –
となり、また人体においてはアミノ酸Xにプロリンが、アミノ酸Yにはヒドロキシプロリンが選択的に現れるため(文献3:2010)、強固で弾力性に富むコラーゲン繊維を形成しています。
このアテロコラーゲン(水溶性コラーゲン)とサクシノイルアテロコラーゲンの性質の違いは溶解性であり、以下の表のように、
酸性溶液 | 中性溶液 | 塩基性溶液 | |
---|---|---|---|
アテロコラーゲン | ○ | ☓ | ☓ |
サクシノイルアテロコラーゲン | ☓ | ○ | ○ |
アテロコラーゲンが酸性溶液にしか溶解しないのに対して、サクシニル化アテロコラーゲンは、中性から塩基性(水溶液ではアルカリ性)に溶解する性質(酸性には溶解しない)を有しています(文献1:1989)。
これは、アテロコラーゲンを化粧品に配合する場合、アテロコラーゲンが溶解するようにpH調整や塩類の添加が必要だったのに対して、サクシノイルアテロコラーゲンを配合する場合、pH調整や塩類の添加を省略できるということを意味しています。
化粧品に配合される場合は、
これらの目的で、スキンケア化粧品、メイクアップ化粧品、ボディ&ハンドケア製品、洗顔料&洗顔石鹸、洗浄製品、シート&マスク製品など様々な製品に使用されます(文献4:1997;文献5:2017)。
水分蒸散抑制および水分保持による保湿作用
水分蒸散抑制および水分保持による保湿作用に関しては、1997年に井原水産によって報告された技術情報によると、
ヒト前腕屈側内側部に0.5%ヒアルロン酸Na、5%サクシノイルアテロコラーゲンまたは0.5%ヒアルロン酸Naと5%サクシノイルアテロコラーゲンを配合した水溶液を塗布し、塗布前と塗布後10分までの角層コンダクタンスを(∗2)測定したところ、以下のグラフのように、
∗2 コンダクタンスとは、皮膚に電気を流した場合の抵抗(電気伝導度:電気の流れやすさ)を表し、角層水分量が多いと電気が流れやすくなり、コンダクタンス値が高値になることから、角層水分量を調べる方法として角層コンダクタンスを経時的に観測する方法が定着しています。
サクシノイルアテロコラーゲンは、ヒアルロン酸Naほどではないが、保湿性が示された。
またサクシノイルアテロコラーゲンとヒアルロン酸Naを併用することで相乗的な保湿効果が認められた。
このような検証結果が明らかにされており(文献4:1997)、サクシノイルアテロコラーゲンに水分蒸散抑制および水分保持による保湿作用が認められています。
またサクシノイルアテロコラーゲンとヒアルロン酸Naを併用することで保湿性の相乗効果が認められています(文献4:1997)。
ただし、サクシノイルアテロコラーゲンおよびヒアルロン酸Naは高分子であり、ほとんど皮膚に浸透することがないため、サクシノイルアテロコラーゲンの塗布による角層水分量の変化は、皮表に留まることによる水分蒸散抑制および吸湿性によるものであると考えられます。
サクシノイルアテロコラーゲンの安全性(刺激性・アレルギー)について
- 外原規2006規格の基準を満たした成分が収載される医薬部外品原料規格2006に収載
- 10年以上の使用実績
- 皮膚刺激性:ほとんどなし
- 眼刺激性:詳細不明
- 皮膚感作性(アレルギー性):ほとんどなし
これらの結果から、化粧品配合量および通常使用下において、一般的に安全性に問題のない成分であると考えられます。
以下は、この結論にいたった根拠です。
皮膚刺激性および皮膚感作性(アレルギー性)について
高研の安全性試験データ(文献5:2017)によると、
- [ヒト試験] ヒト試験においてフカヒレ由来サクシノイルアテロコラーゲンのHRIPT(皮膚累積刺激性&感作性試験)を実施したところ、陰性であった
と記載されています。
試験データをみるかぎり、皮膚刺激および皮膚感作性なしと報告されているため、一般的に皮膚刺激性および皮膚感作性はほとんどないと考えられます。
眼刺激性について
試験結果や安全性データがみあたらないため、現時点ではデータ不足により詳細は不明です。
∗∗∗
サクシノイルアテロコラーゲンは保湿成分にカテゴライズされています。
成分一覧は以下からお読みください。
参考:保湿成分
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文献一覧:
- 宮田 暉夫(1989)「生体高分子コラーゲンの新しい利用」日本家政学会誌(40)(8),725-731.
- 伊藤 博, 他(2001)「コラーゲンの安全性確保について」Fragarance Journal(29)(11),47-51.
- 奥山 健二, 他(2010)「コラーゲンの分子構造・高次構造」高分子論文集(67)(4),229-247.
- 井原水産株式会社(1997)「コラーゲン入り化粧品」特開平9-278639.
- 株式会社高研(2017)技術資料.
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