コレステロールとは…成分効果と毒性を解説

保湿成分 バリア改善成分 エモリエント成分 安定化成分
コレステロール
[化粧品成分表示名称]
・コレステロール

[医薬部外品表示名称]
・コレステロール

ヒトを含む哺乳動物の組織内に遊離または脂肪酸エステルとして広く存在しており、融点が146~150℃の環状アルコールです。

コレステロールは、脳や神経組織、副腎腺などに多いですが、とくに細胞膜で重要な役割を果たしており、皮膚においても角層の細胞間脂質の構成成分として存在しています(文献2:2016)

以下の表皮における角質層の構造をみてもらうとわかりやすいと思いますが、

角質層の構造

皮膚の最外層である角質層には、様々な刺激や物質の侵入を防いだり、体内の水分が体外へ過剰に蒸散していくのを防ぐバリア機能が備わっています。

角質層の機能は、レンガとセメントで例えられることが多いですが、レンガとしての角質内部には天然保湿因子として複数のアミノ酸が存在しており、またセメントとしての細胞間脂質は、以下の画像をみてもらうとわかりやすいと思いますが、

細胞間脂質におけるラメラ構造の仕組み

疎水層と親水層を繰り返すラメラ構造を形成していることが大きな特徴であり、脂質(細胞間脂質)が結合水を挟み込むような構造で、コレステロールもこの脂質の構成成分として存在しています。

この脂質(細胞間脂質)の組成は、

  • セラミド:50%
  • 脂肪酸:20%
  • コレステロールエステル:15%
  • コレステロール:10%
  • 糖脂質:5%

このような比率となっており(文献9:1995)、コレステロールはラメラ構造において膜の柔軟性を高める機能を示します(文献6:2011)

化粧品に配合される場合は、

これらの目的で、スキンケア化粧品、ボディ&ハンドケア製品、ヘアケア製品、洗顔料&洗顔石鹸、洗浄製品、など様々な製品に使用されます(文献2:2016;文献3:2015)

保湿・バリア改善作用

保湿・バリア改善作用に関しては、1996年にサンフランシスコVAメディカルセンターによって報告された皮膚バリア機能研究によると、

マウスの皮膚バリアをアセトン処理で破壊後にコレステロールの生合成を酵素阻害剤により阻害するとバリアの回復は遅れるが、阻害剤とともにコレステロールを同時に塗布すると、バリアの回復が正常に戻る。

このような検証結果が明らかにされており(文献7:1996)、コレステロールに保湿・バリア改善作用が示唆されています。

また1990年にサンフランシスコVAメディカルセンターによって報告された皮膚バリア機能研究によると、

バリア破壊時の生合成の亢進はコレステロールだけでなく、脂肪酸やセラミドにもみられるが、老化した皮膚では平常時においても特にコレステロールの生合成が不活発であり、またバリア破壊時の生合成の亢進度合いも低下しているため回復が遅れる傾向にある。

しかし、バリア破壊に先立ってあらかじめコレステロールを塗布しておくことで回復が促進されたことが示された。

このような検証結果が明らかにされており(文献8:1990)、コレステロールに保湿・バリア改善作用が示唆されています。

エモリエント作用

エモリエント作用に関しては、コレステロールは融点が約150℃で水には溶けませんが、水を抱え込む働きがあるため、クリーム系の化粧品にエモリエント剤として配合されます(文献3:2015)

リポソームの安定化作用

リポソームの安定化作用に関しては、まず前提知識としてリポソームについて解説します。

リポソームとは、以下の画像のように、

リポソームの構造

細胞膜と同じ脂質二重膜からなる閉鎖小胞であり、1965年にリポソーム形成が発見されて以来(文献4:1965)、水溶性でそのままでは皮膚に浸透しない成分などを脂質二重膜に包み込んで、体内の成分分布を量的・空間的・時間的にコントロールするドラッグ輸送技術のひとつとして使用されてきています。

1996年にクラシエ(旧鐘紡)によって報告された角質細胞間脂質を用いたリポソームの温度感受性に与える脂質組成の影響検証によると、

皮膚のモデルとしてリポソームを利用するならば、リン脂質を用いるよりも角質細胞間脂質を用いたほうが、より実際に近い物性を評価できると考え、角質細胞間脂質を用いて調整したリポソームからの内包物質の漏出挙動を、脂質組成を変化させて調べた。

リポソームを構成する各脂質の組成比を単独で変化させ、漏出を測定していくと、コレステロール減少群にのみ顕著な漏出が観察され、脂肪酸減少群、セラミド減少群ではほとんど漏出は観察されなかった。

この結果は、これら脂質混合物が形成するラメラ膜の相転移をコレステロールが抑制し、安定化していることを示すものである。

またこれらのリポソームに界面活性剤を添加した場合の漏出挙動も同様に、コレステロール減少群にのみ界面活性剤濃度から顕著な漏出が観察された。

これらのことから、コレステロールが実際の角質層で形成されるラメラ膜の安定性に重要な影響を与えていることが推察される。

このような検証結果が明らかにされており(文献5:1996)、コレステロールにリポソームの脂質安定化作用が認められています。

実際にどのような製品に配合されているかというと、海外の調査結果になりますが、以下のように報告されています。

コレステロールの配合製品数と配合量の調査

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コレステロールの安全性(刺激性・アレルギー)について

コレステロールの現時点での安全性は、生体内に存在しており、また10年以上の使用実績があり、最小~軽度の皮膚刺激性および最小の眼刺激性がありますが、皮膚感作性(アレルギー性)、光感作性および光毒性はなく、安全性に問題のない成分であると考えられます。

以下は、この結論にいたった根拠です。

皮膚刺激性および皮膚感作性(アレルギー性)について

Cosmetic Ingredient Reviewの安全性試験データ(文献1:1986)によると、

  • [ヒト試験] 23人の被検者に1.4%コレステロールを含む保湿基剤0.3gを閉塞パッチ下で72時間適用し、パッチ除去後(72時間)およびその24時間後(96時間)に0~4のスケールで刺激性を評価したところ、平均刺激スコアは72時間で0.31、96時間で0.22であり、保湿基剤は最小限~軽度の刺激性であった
  • [ヒト試験] 25人の被検者に1.4%コレストロールを含む保湿基剤0.3gを閉塞パッチ下で72時間適用し、パッチ除去後(72時間)およびその24時間後(96時間)に0~4のスケールで刺激性を評価したところ、平均刺激スコアは72時間で0.24、96時間で0.28であり、保湿基剤は軽度の刺激性であった
  • [ヒト試験] 26人の被検者に1.4%コレストロールを含む3つの保湿基剤を閉塞パッチ下で72時間適用し、パッチ除去後(72時間)およびその24時間後(96時間)に0~4のスケールで刺激性を評価したところ、1つ目の平均刺激スコアは72時間で0.24、96時間で0.28であり、保湿基剤は軽度の刺激性であった。2つ目の保湿剤は、26人の被検者に用いて72および96時間後の平均刺激スコアは0.17および0.23であった。3つ目の保湿剤は25人の被検者を用いて試験したところ、72時間で0.42であり、96時間で0.48で、弱い刺激剤であった
  • [ヒト試験] 10人の被検者の前腕の手のひら側に1.4%コレステロールを含む製剤0.3gを1日1回、10回連続で閉塞パッチ適用し、0~4の5段階スケールで毎日刺激性を評価したところ、すべての被検者において反復適用後に刺激スコア1に相当する軽度な紅斑が生じた。最も早かったのは4回目の適用で、最も遅かったのは9回目の適用であった。刺激指数は最大40のうち3.5で、軽度の刺激物であった
  • [ヒト試験] 8人の被検者5つの2.7%コレステロールを含むワセリン0.3gを21日間累積刺激試験として週5回3週間にわたって閉塞パッチ下で適用し、0~4の5段階スケールで評価したところ、いずれの評価においてもスコアは1で、軽度の紅斑が観察された。5つのコレステロール含有製剤の累積刺激指数は最大60のうち10.1、10.0、0.8、3.4、9.5で、最小限~軽度の刺激性と結論付けられた
  • [ヒト試験] 8人の被検者に1.4%コレステロールを含む保湿剤を反復パッチ適用したところ、皮膚刺激指数は最大8.0のうち1.4であり、最小限の皮膚刺激性であった
  • [ヒト試験] 87人の被検者に誘導期間として1.7%コレステロールを含む保湿クリーム0.1mLを24時間閉塞パッチ下で週3回3週間連続で適用し、7週間目にチャレンジパッチを未処置部位に24時間適用した。パッチ除去24オヨビ48時間後に評価したところ、3人の被検者は誘導期間の1回目でほとんど知覚できないほどの紅斑を生じ、1人の被検者は3回目でほとんど知覚できないくらいの紅斑反応を示した。チャレンジパッチにはいずれの被検者も反応を示さなかった。1.7%コレステロールを含む保湿剤はこれらの試験条件下では最小限の刺激剤であり、皮膚感作剤ではなかった
  • [ヒト試験] 15人の被検者の背中に1.4%コレステロールを含む保湿ベース0.3mLを月~金まで週5回24時間閉塞パッチ下で合計14回適用し、パッチ除去直後に毎回評価したところ、15人の被検者の14日間の合計スコアは23で、累積刺激指数は最大40のうち1.5であった。チャレンジパッチに対する反応は陰性であった。この保湿ベースは最小の累積刺激剤であり、皮膚感作性はなかった
  • [ヒト試験] 10人の被検者に誘導期間として1.366%コレステロールを含む7つの保湿基剤0.3mLまたは0.3gを月~金まで同じ場所に合計21箇所の閉塞パッチを合計21回適用し、14日の無処置期間を経てチャレンジパッチを未処置部位に24時間閉塞適用した。パッチ除去1,24,および48時間後に刺激スコアをつけたところ、7つすべての保湿基剤が最小の皮膚刺激性であり、平均刺激スコアは最大60のうち、それぞれ4.70、5.60、6.00、3.65、3.30、4.30および4.70であった。チャレンジパッチには反応はみられず、いずれの製品も感作物質ではないことが示された

と記載されています。

試験結果では、共通して最小限~軽度の皮膚刺激性を示しており、また皮膚感作性はいずれの試験でも観察されていないため、最小~軽度の皮膚刺激がありますが、皮膚感作性(アレルギー性)はほとんどないと考えられます。

眼刺激性について

Cosmetic Ingredient Reviewの安全性試験データ(文献1:1986)によると、

  • [動物試験] 6匹のウサギの2グループの片眼に5%コレステロールを含むトウモロコシ油0.1mLを点眼し、目をすすがず、Draize法に基づいて評価したところ、1つのグループに点眼した1日後では眼刺激スコアは0であり、もうひとつのグループは2匹のウサギに軽度の結膜刺激がみられた。すべての刺激スコアは2日目には0であった。眼刺激スコアは第1グループで最大110のうち0、第2グループで1であり、5%コレステロールを含むトウモロコシ油は最小の眼刺激性であった
  • [動物試験] 9匹のウサギの片眼に6%コレステロールを含むフェイスクリーム0.1mLを点眼し、点眼30秒後に3匹のウサギは処理した眼をすすいだ。点眼の1,2,3,4および7日目に眼刺激性を評価したところ、目をすすいでいない6匹のウサギのうち2匹にわずかな角膜紅斑がみられ、5匹に結膜の赤みが観察された。3~7日目には刺激は観察されなかった。目がすすがれた3匹のウサギのうち2匹は1日目に結膜の赤みが観察された。このフェイスクリームはわずかな眼刺激剤であると結論付けられた
  • [動物試験] 6匹のウサギに1.7%コレステロールを含む保湿製剤を点眼し、眼をすすがず、評価したところ、24時間で4匹のウサギが軽度の結膜刺激性を示したが、48時間後には炎症は認められなかった。この保湿製剤の眼刺激スコアは最大110のうち2であり、最小の眼刺激性であった

と記載されています。

試験結果は共通して最小の眼刺激性が観察されているため、最小の眼刺激性があると考えられます。

光毒性および光感作性について

Cosmetic Ingredient Reviewの安全性試験データ(文献1:1986)によると、

  • [ヒト試験] 10人の被検者に1.4%コレステロールを含む保湿基剤を6時間閉塞パッチ適用し、パッチ除去後Schott WG345フィルターを有する150Wキセノンソーラーシミュレーターで試験部位を照射し、照射24および48時間後に評価したところ、いずれの部位においても反応はなく、これらの試験条件下では光毒性を有していなかった
  • [ヒト試験] 110人の被検者に6%コレステロールを含むフェイスクリームを背中には閉塞パッチ下で、耳の後ろには開放パッチ下で48時間適用し、1日無処置期間を設けて再度閉塞パッチを48時間適用し、パッチ除去後に評価した。評価後にHanovia Tanette Mark Iランプ(300~370nm)を照射し、48時間後に光増感について評価したところ、パッチ適用のどの段階においても皮膚反応は観察されなかった
  • [ヒト試験] 25人の被検者の背中の真ん中に1.4%コレステロールを含む保湿剤を24時間閉塞パッチ適用し、パッチ除去後キセノンソーラーシミュレーター(UVA放射)を照射した。この手順を48時間間隔で同じ部位に3週間にわたって合計6回繰り返し、最後の誘導パッチの10日後に24時間閉塞チャレンジパッチを適用した後、ソーラーシミュレータ-を照射した。照射48および72時間後にチャレンジ部位を評価したところ、いずれの試験においても皮膚反応はなく、この保湿基剤は光感作剤ではなかった

と記載されています。

試験結果は共通して光毒性および光感作性なしと結論づけられているため、光毒性および光感作性はないと考えられます。

化粧品毒性判定事典による毒性判定について

化粧品成分名 判定
コレステロール 毒性なし

参考までに化粧品毒性判定事典によると、コレステロールは毒性なし(∗2)となっており、毒性に関しては心配する必要はありません。

∗2 毒性判定事典の毒性レベルは「毒性なし」「△」「■」「■■」となっており、△は2~3個で■1個に換算し、■が多いほど毒性が強いという目安になり、製品の毒性成分の合計が■4つ以上なら使用不可と判断されます。

∗∗∗

コレステロールは保湿成分、バリア改善成分、エモリエント成分、安定化成分にカテゴライズされています。

成分一覧は以下からお読みください。

参考:保湿成分 バリア改善成分 エモリエント成分 安定化成分

∗∗∗

文献一覧:

  1. Cosmetic Ingredient Review(1986)「Final Report on the Safety Assessment of Cholesterol」International Journal of Toxicology(5)(5),491-516.
  2. 日光ケミカルズ(2016)「コレステロール」パーソナルケアハンドブック,45-46.
  3. 宇山 光男, 他(2015)「コレステロール」化粧品成分ガイド 第6版,62.
  4. A.D.Bangham, et al(1965)「Diffusion of univalent ions across the lamellae of swollen phospholipids」Journal of Molecular Biology(13)(1),238-252.
  5. 炭田 康史, 他(1996)「角質細胞間脂質を用いたリポソームの温度感受性に与える脂質組成の影響」膜(21)(5),326-333.
  6. 内田 良一(2011)「セラミドと皮膚バリア機能」セラミド-基礎と応用 ここまできたセラミド研究最前線,140-147.
  7. Ghadially R, et al(1996)「Decreased epidermal lipid synthesis accounts for altered barrier function in aged mice.」Journal of Investigete Dermatology(106)(5),1064-1069.
  8. Feingold KR, et al(1990)「Cholesterol synthesis is required for cutaneous barrier function in mice.」Journal of Clinical Investigation(86)(5),1738-1745.
  9. 芋川 玄爾(1995)「皮膚角質細胞間脂質の構造と機能」油化学(44)(10),751-766.

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