コメヌカエキスとは…成分効果と毒性を解説

保湿 抗酸化成分
コメヌカエキス
[化粧品成分表示名称]
・コメヌカエキス

[医薬部外品表示名称]
・コメヌカエキス

イネ科植物アジアイネ(学名:Oryza sativa 英名:Rice)の糠(果皮・種皮・胚芽)からエタノールBG、またはこれらの混液で抽出して得られる水溶性抽出物植物エキスです(∗1)

∗1 抽出の前後に酵素または麹を作用させて分解する工程が加えられることもあります。

アジアイネ(アジア稲)は、ジャポニカ亜種(日本型)とインディカ亜種(インド型)に大別され、ジャポニカは日本、中国北部、韓国、朝鮮、台湾などで栽培され、インディカはインド、ミャンマー、カンボジア、ベトナム、タイ、フィリピン、インドネシア、中国南部などの広い地域で栽培されています(文献1:2017)

米糠とは、コメの種子である玄米を精白する際に生じる果皮、種皮、胚芽などの部分のことであり、コメの栄養素の95%は米糠中に存在することが知られています(文献1:2017;文献2:2005)

コメヌカエキスは天然成分であることから、地域、時期、抽出方法によって成分組成に差異があると推察されますが、その成分組成は主に、

分類 成分名称
糖質 多糖 デンプン、オリザブランA-D など
ビタミン チアミン、ナイアシン、イノシトール
その他 フィチン酸
無機質 カリウム、リン、マグネシウム、カルシウム、ナトリウム、鉄、亜鉛 など

これらの水溶性成分で構成されていることが報告されています(文献3:1998;文献4:2012;文献5:1989)

コメヌカ(米糠)の化粧品以外の主な用途としては、コメヌカ油の原料、ぬか漬けのぬか床、キノコの培地、飼料などに用いられています(文献1:2017)

化粧品に配合される場合は、

これらの目的でスキンケア化粧品、ボディ&ハンドケア製品、メイクアップ化粧品、シート&マスク製品、洗顔料、洗顔石鹸、クレンジング製品、シャンプー製品、トリートメント製品、ボディソープ製品、アウトバストリートメント製品、ヘアスタイリング製品、ヘアカラー製品、入浴剤など様々な製品に汎用されています。

皮表柔軟化および角層水分量増加による保湿作用

皮表柔軟化および角層水分量増加による保湿作用に関しては、まず前提知識として皮膚最外層である角質層の構造と役割について解説します。

直接外界に接する皮膚最外層である角質層は、以下の図のように、

角質層の構造

天然保湿因子を含む角質と角質の間を細胞間脂質で満たした、レンガとモルタルの関係と同様の構造となっており、この構造が保持されることによって、外界からの物理的あるいは化学的影響から身体を守り、かつ体内の水分が体外へ過剰に蒸散していくのを防ぐとともに一定の水分を保持する役割を担っています(文献6:2002;文献7:2001)

一方で、老人性乾皮症やアトピー性皮膚炎においては、角質細胞中のアミノ酸などの天然保湿因子が顕著に低下していることが報告されていることから(文献8:1989;文献9:1991)、角質層の水分量を増加することは、肌の乾燥の改善、ひいては皮膚の健常性の維持につながると考えられています。

1990年に宝酒造によって報告されたコメヌカエキスのヒト皮膚に対する影響検証によると、

50人の被検者を10人1グループとし、それぞれのグループに各濃度のコメヌカエキス配合製剤と、対照としてコメヌカエキス未配合製剤を1ヶ月間使用してもらい、しっとり感および滑らかさを「スコア3:大変しっとりして滑らか」「スコア2:しっとりして滑らか」「スコア1:普通」の基準で採点評価したところ、以下の表にように、

試料 抽出工程 濃度(%) 被検者数 保湿性スコア
(しっとり感&滑らかさ)
コメヌカエキス配合化粧水 水抽出 0.01 10 21/30
酵素添加後に水抽出 0.01 10 28/30
化粧水のみ(対照) 10 12/30
コメヌカエキス配合クリーム 酵素添加後に水抽出 1 10 30/30
クリームのみ(対照) 10 18/30

0.01%濃度以上のコメヌカエキス配合製剤塗布グループは、未配合製剤塗布グループと比較して優れた保湿効果を示した。

このような試験結果が明らかにされており(文献10:1990)、コメヌカエキスに皮表柔軟化による保湿作用が認められています。

次に、日油によって報告されたコメヌカエキスのヒト皮膚角層水分量に対する影響検証によると、

被検者(人数不明)に1%コメヌカエキスを含む水とBG(1:1)の混液を単回塗布し、塗布後90分までの角層水分量を測定したところ、以下のグラフのように、

コメヌカエキスの角層水分量増加作用

1%コメヌカエキス塗布部位は、精製水と比較して有意な角層水分量増加傾向を示した。

このような試験結果が明らかにされており(文献11:-)、コメヌカエキスに角層水分量増加による保湿作用が認められています。

コメヌカエキスの水分保持作用は、オリザブランなど水溶性多糖類に起因していることが報告されています(文献5:1989)

グルタチオンレダクターゼ発現増強による抗酸化作用

グルタチオンレダクターゼ発現増強による抗酸化作用に関しては、まず前提知識として活性酸素種生成メカニズム、細胞内におけるグルタチオンの役割およびグルタチオンレダクターゼについて解説します。

活性酸素種(ROS:Reactive Oxygen Species)とは、酸素(O₂)が他の物質と反応しやすい状態に変化した反応性の高い酸素種の総称であり(文献12:2002;文献13:2019)、酸素から産生される活性酸素種の発生メカニズムは、以下のように、

酸素から産生される活性酸素発生メカニズム

酸化力を有する酸素(O₂)が、比較的容易に電子を受けてスーパーオキシド(superoxide:O₂⁻)を生成し、さらに酸化が進むと過酸化水素(H₂O₂)、ヒドロキシルラジカル(HO)を経て、最終的に水(H₂O)になるというものです(文献14:2019)

この一連の反応を酸化還元反応と呼んでおり、正常な酸化還元反応において発生したスーパーオキシド(superoxide:O₂⁻)は少量であり、通常は抗酸化酵素の一種であるスーパーオキシドジスムターゼ(superoxide dismutase:SOD)により速やかに分解・消去されます(文献14:2019)

一方で、紫外線の曝露など(∗2)によりスーパーオキシド(superoxide:O₂⁻)を含む活性酸素種の過剰な産生が知られており(文献15:1998)、過剰に産生されたスーパーオキシドはスーパーオキシドジスムターゼ(superoxide dismutase:SOD)による分解・消去が追いつかず、以下の抗酸化メカニズムをみてもらうとわかるように、

∗2 皮膚において活性酸素種が発生する最大の要因は紫外線ですが、他にも排気ガスなどの環境汚染物質、タバコの副流煙などの有害化学物質なども外的要因となります。

酸素から発生する活性酸素種の抗酸化メカニズム

過酸化水素に変化した場合は、過酸化水素分解酵素であるカタラーゼ(catalase)、グルタチオンの存在下でグルタチオンペルオキシダーゼ(glutathione peroxidase)およびチオレドキシンの存在下でペルオキシレドキシン(peroxiredoxin)により水(H₂O)に分解されますが、紫外線の曝露時間やスーパーオキシドの発生量によっては過酸化水素を経てヒドロキシルラジカル(HO)まで変化することが知られています(文献16:1996;文献17:2019)

発生したヒドロキシルラジカル(HO)は、酸化ストレス障害として過酸化脂質の発生、コラーゲン分解酵素であるMMP(Matrix metalloproteinase:マトリックスメタロプロテアーゼ)の発現増加によるコラーゲン減少、DNA障害や細胞死などを引き起こし、中長期的にこれらの酸化ストレス障害を繰り返すことで光老化を促進します(文献14:2019;文献18:1996)

次に、グルタチオン(還元型グルタチオン)は紫外線などの酸化ストレスによって誘導され、グルタチオンペルオキシダーゼと共に過酸化水素(H₂O₂)を分解する抗酸化物質であり、自らの活性部位を還元することで酸化型グルタチオンに変化しますが、グルタチオンレダクターゼ(GSHレダクターゼ)とNADPH(nicotinamide adenine dinucleotide phosphate:還元型ニコチンアミドアデニンジヌクレオチドリン酸)により還元型グルタチオンに再還元され、細胞の抗酸化機構を調整する役割を担っています(文献17:2019)

このような背景から、紫外線の曝露時および曝露後に活性酸素種の産生を抑制することは、皮膚の酸化ストレス障害を抑制し、ひいては光老化、炎症および色素沈着などの抑制において非常に重要であると考えられます。

2006年に日本メナード化粧品によって報告されたコメヌカエキスのグルタチオンレダクターゼおよびヒト皮膚への影響検証によると、

in vitro試験においてヒト表皮角化細胞を播種した培地に1μg/mL濃度の各植物エキスを添加し培養・処理した上澄液に酸化型グルタチオンおよびNADPHを加え、340nmの吸光度の時間変化を測定し試料未添加の細胞のグルタチオンレダクターゼ活性を100としたときの試料溶液のグルタチオンレダクターゼ活性を算出したところ、以下のグラフのように、

コメヌカエキスの細胞内グルタチオンレダクターゼ活性化効果

コメヌカエキスは、細胞内グルタチオンレダクターゼの活性化効果を示した。

次に、各植物エキスの細胞内還元型グルタチオンの増加作用を検討するために、in vitro試験においてヒト表皮角化細胞を播種した培地に1μg/mL濃度の各植物エキスを添加し培養・処理した上澄液にグルタチオンレダクターゼとNADPHを加え反応させた後、総グルタチオン量と酸化型グルタチオン量から還元型グルタチオン量を算出した。

試料未添加の還元型グルタチオン(GSH)/酸化型グルタチオン(GSSG)比を100としたときの試料添加のGSH/GSSG比の値を細胞内還元型グルタチオン比として算出したところ、以下のグラフのように、

コメヌカエキスの細胞内還元型グルタチオン比の増加作用

コメヌカエキスは、細胞内還元型グルタチオンの増加を示し、細胞の還元型グルタチオン割合を増加させる作用が認められた。

次に、シワやシミに悩む60人の女性被検者(20-45歳)のうち30人に0.5%コメヌカエキス(30%エタノール抽出)配合クリームを、別の30人に対照として未配合クリームをそれぞれ6ヶ月間にわたって使用してもらい、使用終了後に「有効:シワまたはシミが改善した」「やや有効:シワまたはシミがやや改善した」「無効:使用前と変化なし」の3段階で評価してもらったところ、以下の表のように、

試料 被検者数 シワ改善効果
有効 やや有効 無効
コメヌカエキス配合クリーム 30 16 14 0
クリームのみ(対照) 30 0 9 21
試料 被検者数 シミ改善効果
有効 やや有効 無効
コメヌカエキス配合クリーム 20 16 14 0
クリームのみ(対照) 30 0 11 19

0.5%コメヌカエキス配合クリームは、シワおよびシミにおいて改善傾向を示した。

このような試験結果が明らかにされており(文献19:2006)、コメヌカエキスにグルタチオンレダクターゼ発現増強による抗酸化作用が認められています。

ヒト試験はシワまたはシミを改善の指標としていますが、シワとシミは紫外線の曝露が主な原因であり、紫外線の曝露によってシワやシミが形成されるメカニズムはいずれも活性酸素種の発現増加を起点とするため、シワおよびシミの改善効果は抗酸化作用によるものといえます。

ただし、ヒト試験においては被検者の主観的評価のみで効果を認めているため、その点は留意する必要があります。

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コメヌカエキスの安全性(刺激性・アレルギー)について

コメヌカエキスの現時点での安全性は、

  • 外原規2006規格の基準を満たした成分が収載される医薬部外品原料規格2006に収載
  • 30年以上の使用実績
  • 皮膚刺激性:ほとんどなし
  • 眼刺激性:詳細不明
  • 皮膚感作性(アレルギー性):ほとんどなし(データなし)

このような結果となっており、化粧品配合量および通常使用下において、一般的に安全性に問題のない成分であると考えられます。

以下は、この結論にいたった根拠です。

皮膚刺激性について

共栄化学工業の安全性試験データ(文献20:1995)によると、

  • [ヒト試験] 20人の被検者(20-70歳)の上腕部に2%コメヌカエキス酵素分解溶液0.2mLを48時間閉塞パッチ適用し、パッチ除去後に皮膚刺激性を評価したところ、いずれの被検者においても皮膚刺激は認められなかった

と記載されています。

試験データをみるかぎり、皮膚刺激なしと報告されているため、一般に皮膚刺激性はほとんどないと考えられます。

眼刺激性について

試験結果や安全性データがみあたらないため、現時点ではデータ不足により詳細は不明です。

皮膚感作性(アレルギー性)について

医薬部外品原料規格2006に収載されており、30年以上の使用実績がある中で重大な皮膚感作の報告がみあたらないため、化粧品配合量および通常使用下において、一般的に皮膚感作性(アレルギー性)はほとんどないと考えられますが、詳細な安全性試験データがみあたらず、データ不足のため詳細は不明です。

∗∗∗

コメヌカエキスは保湿成分、抗酸化成分にカテゴライズされています。

成分一覧は以下からお読みください。

参考:保湿成分 抗酸化成分

∗∗∗

文献一覧:

  1. 杉田 浩一, 他(2017)「こめ」新版 日本食品大事典,297-305.
  2. 門田 めぐみ(2005)「米糠成分の有効利用」ビタミン(79)(10),509-511.
  3. 山田 勝久(1998)「米由来成分の化粧品への応用」Fragrance Journal(26)(3),13-18.
  4. 谷口 久次, 他(2012)「米糠含有成分の機能性とその向上」日本食品科学工学会誌(59)(7),301-318.
  5. 曳野 宏, 他(1989)「化粧料」特開平01-066106.
  6. 朝田 康夫(2002)「保湿能力と水分喪失の関係は」美容皮膚科学事典,103-104.
  7. 田村 健夫, 他(2001)「表皮」香粧品科学 理論と実際 第4版,30-33.
  8. I Horii, et al(1989)「Stratum corneum hydration and amino acid content in xerotic skin」British Journal of Dermatology(121)(5),587-592.
  9. M Watanabe, et al(1991)「Functional analyses of the superficial stratum corneum in atopic xerosis」Archives of Dermatology(127)(11),1689-1692.
  10. 宝酒造株式会社(1990)「化粧料」特開平02-053705.
  11. 日油株式会社(-)「つや姫米ぬかエキス」技術資料.
  12. 朝田 康夫(2002)「活性酸素とは何か」美容皮膚科学事典,153-154.
  13. 河野 雅弘, 他(2019)「活性酸素種とは」抗酸化の科学,XⅢ-XⅣ.
  14. 小澤 俊彦(2019)「活性酸素種および活性窒素種の発生系」抗酸化の科学,123-138.
  15. 荒金 久美(1998)「光と皮膚」ファルマシア(34)(1),30-33.
  16. 岡田 富雄(1996)「天然抗酸化剤」皮膚の老化と活性酸素・フリーラジカル,106-125.
  17. 小澤 俊彦(2019)「酸化ストレス障害を制御する抗酸化酵素の性質と機能」抗酸化の科学,173-183.
  18. 花田 勝美(1996)「活性酸素・フリーラジカルは皮膚でどのようにつくられるか」皮膚の老化と活性酸素・フリーラジカル,15-35.
  19. 日本メナード化粧品株式会社(2006)「グルタチオンレダクターゼ活性増強剤」特開2006-111545.
  20. 共栄化学工業株式会社(1995)「美白化粧料」特開平7-304648.

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