グルタミン酸Naとは…成分効果と毒性を解説

保湿
グルタミン酸Na
[化粧品成分表示名称]
・グルタミン酸Na

化学構造的にアミノ基(-NH2)とカルボキシル基(-COOH)をもつ分子量169.11のグルタミン酸のナトリウム塩です(文献2:1994)

グルタミン酸Na(L-グルタミン酸ナトリウム)は、1908年に日本の化学者である池田菊苗によって昆布抽出液のうま味成分の本体がグルタミン酸イオンであることが発見され、グルタミン酸イオンをナトリウム塩の形にすることでうま味の素として実用化・製品化して以来、現在においてもうま味調味料「味の素」として汎用されています(文献3:2004)

一般的な用途としては、食品分野において旨味調味料として汎用されています(文献3:2004)

化粧品に配合される場合は、

これらの目的でアウトバストリートメント製品、ヘアトリートメント製品、ヘアスタイリング製品、入浴剤、メイクアップ化粧品、スキンケア化粧品、シート&マスク製品、洗顔料などに使用されています。

角質層水分量増加による保湿作用

角質層水分量増加による保湿作用に関しては、まず前提知識として皮膚最外層である角質層の構造と役割および角質細胞におけるアミノ酸の役割について解説します。

直接外界に接する皮膚最外層である角質層は、以下の図のように、

角質層の構造

角質と角質の間を細胞間脂質で満たした、レンガとモルタルの関係と同様の構造となっており、この構造が保持されることによって、外界からの物理的あるいは化学的影響から身体を守り、かつ体内の水分が体外へ過剰に蒸散していくのを防ぐとともに一定の水分を保持する役割を担っています(文献4:1990;文献5:2002)

また、角層に存在し水分を保持する働きをもつ水溶性物質は、天然保湿因子(NMF:natural Moisturizing Factor)と呼ばれており、以下の表のように、

成分 含量(%)
アミノ酸類 40.0
ピロリドンカルボン酸(PCA) 12.0
乳酸 12.0
尿素 7.0
アンモニア、尿酸、グルコサミン、クレアチン 1.5
ナトリウム(Na⁺) 5.0
カリウム(K⁺) 4.0
カルシウム(Ca²⁺) 1.5
マグネシウム(Mg²⁺) 1.5
リン酸(PO₄³⁻) 0.5
塩化物(Cl⁻) 6.0
クエン酸 0.5
糖、有機酸、ペプチド、未確認物質 8.5

アミノ酸、有機酸、塩などの集合体として存在していますが、天然保湿因子の約40%はアミノ酸類で構成されており(文献6:1985)、ピロリドンカルボン酸(PCA)や尿素などアミノ酸の代謝物を含めると約60%を占めることから、角層の水分保持にアミノ酸およびその関連物質が重要な役割を担っていると考えられています。

さらに、この天然保湿因子において約40%を占めるアミノ酸の組成は、以下の表のように、

アミノ酸の種類 含量(%)
プロリン 5.6
アスパラギン + アスパラギン酸 0.8
トレオニン 0.4
セリン 19.7
グルタミン + グルタミン酸 2.3
グリシン 14.7
アラニン 10.4
バリン 3.4
メチオニン 0.2
イソロイシン 0.5
ロイシン 1.5
チロシン 0.8
フェニルアラニン 0.7
リシン 1.1
ヒスチジン 1.4
アルギニン 10.3

16種類で構成されており(文献7:1983)、中でもセリン、グリシン、アラニンおよびアルギニンが大部分を占めています。

このような背景から、角質層の水分保持にアミノ酸が重要であると考えられています。

アミノ酸は天然保湿因子(NMF)の主要成分であることから皮膚の潤いを保つ目的でスキンケア化粧品に使用されていますが、一方で水溶性低分子の両性イオン化合物であり、一般的に電荷を有した物質は皮膚や生体膜を透過しにくく、その透過率は電荷を持たない物質と比較して1/1000といわれています(文献8:1984)

1996年に味の素とカリフォルニア大学医学部皮膚科によって報告されたアミノ酸のヒト皮膚での経皮吸収挙動の検証によると、

ヒト皮膚(角質層、表皮および真皮の一部を含む)上に1%濃度生理食塩水(pH7.4)となるように調製した5種類の水溶性アミノ酸(L-リシン、グリシン、グルタミン酸Na、プロリンおよびトレオニン)溶液をのせ、2-4時間ごとに皮膚透過挙動を評価したところ、以下のグラフのように、

ヒト皮膚角質層に対するアミノ酸の透過性比較

いずれのアミノ酸も経皮吸収にタイムラグがみられ、またアミノ酸によって透過量が異なることがわかった。

次に、ヒト皮膚の角質層を擦って剥いだ肌荒れモデル上に同様のアミノ酸溶液をのせ、2-4時間ごとに皮膚透過挙動を評価したところ、以下のグラフのように、

ヒト擦過皮膚(荒れ肌モデル)に対するアミノ酸の透過性比較

いずれのアミノ酸も経皮吸収のラグタイムが短縮され、また蓄積量も増大した。

この試験結果から、角質層はアミノ酸の経皮吸収に対して最大のバリアとなっていることが明らかとなった。

このような検証結果が明らかにされており(文献9:1996)、グルタミン酸Naは健常皮膚においては経時的に穏やかな経皮吸収性が、バリア機能が低下した皮膚においては健常な皮膚と比較して優れた経皮吸収性が認められています。

健常な皮膚においては、角質層がバリアの役割を果たしているため、グルタミン酸Naは経皮吸収されにくく、また経皮吸収に時間がかかることから即時的な保湿効果はほとんどないと考えられますが、一方で経時的に少しずつ経皮吸収されることが明らかにされていることから、持続性のある穏やかな保湿剤として機能すると考えられます。

また、肌荒れや皮膚炎などを有するバリア機能が低下した皮膚においては、角質層を有した健常な皮膚と比較して格段に高い経皮吸収性を示したことから、優れた水分保持剤になり得ると考えられます。

アミノ酸が角質層に経皮吸収されにくいメカニズムは、アミノ酸がイオン性物質であることによる角質層の水和(∗1)が重要な要因であり(文献10:1993)、経皮吸収のラグタイムが長い理由は、アミノ酸と表皮との間の水素結合や静電気的相互作用によるものであると考えられています(文献11:1990)

∗1 水和(hydration)とは、ある化学種へ水分子が付加する現象であり、イオン性化合物や水素結合性化合物が水に溶解し、静電相互作用や水素結合することによって起こります。

グルタミン酸Naもアミノ酸と同様の経皮吸収挙動を示すことから、アミノ酸と同様の経皮吸収メカニズムの影響を受けていると考えられます。

上記試験データではグルタミン酸Naが用いられていますが、酸性アミノ酸であるグルタミン酸は比較的水に溶けにくい性質のため(文献12:2015)、水系基剤をベースとした製品においてはナトリウム塩にして水溶性を高めたグルタミン酸ナトリウム塩として使用されることが多く、油系および乳化系基剤をベースとした製品においてはグルタミン酸が使用される傾向にあります。

実際の配合製品の種類や配合濃度範囲は、海外の2012年の調査結果になりますが、以下のように報告されています。

以下表におけるリーブオン製品は、付けっ放し製品(スキンケア製品やメイクアップ製品など)を表しており、またリンスオフ製品というのは、洗い流し製品(シャンプー、ヘアコンディショナー、ボディソープ、洗顔料、クレンジングなど)を指します。

グルタミン酸Naの配合製品数と配合量の調査(2012年)

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グルタミン酸Naの安全性(刺激性・アレルギー)について

グルタミン酸Naの現時点での安全性は、

  • 1980年代からの使用実績
  • 皮膚刺激性:ほとんどなし
  • 眼刺激性:詳細不明
  • 皮膚感作性(アレルギー性):ほとんどなし

このような結果となっており、化粧品配合量および通常使用下において、一般的に安全性に問題のない成分であると考えられます。

以下は、この結論にいたった根拠です。

皮膚刺激性および皮膚感作性(アレルギー性)について

Cosmetic Ingredient Reviewの安全性試験データ(文献1:2013)によると、

  • [in vitro試験] 細胞ベースin vitro遺伝子発現試験においてグルタミン酸が陰性コントロールとして使用され、皮膚感作性は陰性であった(J Hooyberghs et al,2008)
  • [ヒト試験] 104人の被検者に0.01%グルタミン酸を含むフェイスおよびネック製品を対象にHRIPT(皮膚刺激&感作試験)を半閉塞パッチにて実施したところ、この製品は皮膚刺激および皮膚感作を誘発しなかった(Personal Care Products Council,2012)

と記載されています。

試験データはグルタミン酸のものですが、試験データをみるかぎり、共通して皮膚刺激および皮膚感作なしと報告されており、またグルタミン酸Naは食品添加物として古くからの使用実績があることから、一般にグルタミン酸Naにおいても皮膚刺激性および皮膚感作性はほとんどないと考えられます。

眼刺激性について

試験結果や安全性データがみあたらないため、現時点ではデータ不足により詳細は不明です。

∗∗∗

グルタミン酸Naは保湿成分にカテゴライズされています。

成分一覧は以下からお読みください。

参考:保湿成分

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文献一覧:

  1. Cosmetic Ingredient Review(2013)「Safety Assessment of α-Amino Acids as Used in Cosmetics」International Journal of Toxicology(32)(6_suppl),41S-64S.
  2. 大木 道則, 他(1994)「グルタミン酸一ナトリウム」化学辞典,394.
  3. 芝 哲夫(2004)「日本の化学を切り拓いた先駆者たち(11) : 池田菊苗と味の素」化学と教育(52)(8),567-569.
  4. 田村 健夫, 他(1990)「表皮」香粧品科学 理論と実際 第4版,30-33.
  5. 朝田 康夫(2002)「角質層のメカニズム」美容皮膚科学事典,22-28.
  6. 尾沢 達也, 他(1985)「皮膚保湿における保湿剤の役割」皮膚(27)(2),276-288.
  7. I Horii, et al(1983)「Histidine-rich protein as a possible origin of free amino acids of stratum corneum」Normal and Abnormal Epidermal Differentiation: Current Problems in Dermatology(11),301-315.
  8. J Swarbrick, et al(1984)「Drug Permeation Through Human Skin Ⅱ: Permeability of Ionizable Compounds」Journal of Pharmaceutical Sciences(73)(10),1352–1355.
  9. 川崎 由明, 他(1996)「In vitroによるアミノ酸のヒト皮膚での経皮吸収挙動の解析」日本化粧品技術者会誌(30)(1),55-61.
  10. M Sznitowska, et al(1993)「In vitro permeation of human skin by multipolar ions」International Journal of Pharmaceutics(99)(1),43-49.
  11. L Wearley, et al(1990)「A Numerical Approach to Study the Effect of Binding on the Iontophoretic Transport of a Series of Amino Acids」Journal of Pharmaceutical Sciences(79)(11),992–998.
  12. 宇山 光男, 他(2015)「グルタミン酸Na」化粧品成分ガイド 第6版,51.

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