グルコースとは…成分効果と毒性を解説

保湿成分 バリア改善成分 結合
グルコース
[化粧品成分表示名称]
・グルコース

デンプンを加水分解することで得られる水溶性の単糖(ブドウ糖)です。

生体内では血糖として血液中を循環し、主要なエネルギー源として利用されており、一般的には甘味剤、栄養補給剤として用いられています。

化粧品に配合される場合は、

これらの目的で、スキンケア化粧品、ボディ&ハンド&フットケア製品、メイクアップ化粧品、洗顔料&洗顔石鹸、洗浄製品、シート&マスク製品など様々な製品に使用されます(文献2:2016;文献3:2005)

ラメラ構造形成促進による保湿・バリア機能改善作用

ラメラ構造形成促進による保湿・バリア機能改善作用に関しては、まず前提知識として皮膚バリア機能の構造およびラメラ構造について解説します。

以下の表皮における角質層の構造をみてもらうとわかりやすいと思いますが、

角質層の構造

皮膚の最外層である角質層には、様々な刺激や物質の侵入を防いだり、体内の水分が体外へ過剰に蒸散していくのを防ぐバリア機能が備わっています。

角質層の機能は、レンガとセメントで例えられることが多いですが、レンガとしての角質内部には天然保湿因子として複数のアミノ酸が存在しており、またセメントとしての細胞間脂質はセラミド、コレステロール、遊離脂肪酸などで構成されています。

この細胞間脂質は、以下の画像をみてもらうとわかりやすいと思いますが、

細胞間脂質におけるラメラ構造の仕組み

疎水層と親水層を繰り返すラメラ構造を形成していることが大きな特徴であり、セラミドをはじめとする脂質が結合水を挟み込むような構造となっています。

結合水とは、たんぱく質分子や親液コロイド粒子などの成分物質と強く結合している水分であり、純粋な水であれば0℃で凍るところ、角層中の水のうち33%は-40℃まで冷却しても凍らない(文献4:1991)のは、角層内に存在する水のうち約⅓が結合水であることに由来しています。

角質層全体からみれば水分の大部分を保持しているのは角質に存在する天然保湿因子であり、細胞間脂質の隙間に存在する水分はごくわずかな結合水のみですが(文献5:1991)、細胞間脂質はアミノ酸などの天然保湿因子の流出を保護する役割を果たしていると考えられています。

そしてこれら角質層の構成物がバランスよく存在することで健常なバリア機能が維持されます。

2005年にファンケルによって報告された技術資料によると、

in vitro試験において人工角層細胞間脂質を用いて各1%糖質水溶液を添加したときのラメラ液晶構造形成の状態を評価したところ、以下の表のように、

  ラメラ構造形成促進率(%)
ブランク なし(水)
単糖 リボース -15.7
グルコース 40.7
二糖 スクロース 4.4
メリビオース 28.9
三糖 ラフィノース 58.8
マルトトリオース 8.8

グルコースは、有意にラメラ液晶構造形成促進作用が示された。

ラメラ液晶構造における水分は、細胞間脂質の親水基に挟まれている部分に存在し、その水分の存在はラメラ液晶構造の安定化にも寄与していますが、糖質の親水的な性質が、ラメラ液晶構造形成過程において親水部分に寄与し、構造の安定化を補助している可能性が考えられた。

このように検証結果が報告されており(文献3:2005)、グルコースにラメラ構造形成促進による保湿・バリア機能改善作用が認められています。

実際の使用製品の種類や数および配合量は、海外の2013-2014年の調査結果になりますが、以下のように報告されています。

以下表におけるリーブオン製品は、付けっ放し製品(スキンケア製品やメイクアップ製品など)を表しており、またリンスオフ製品というのは、洗い流し製品(シャンプー、洗顔料、クレンジングなど)を指します。

グルコースの配合製品数と配合量の調査結果(2013-2014年)

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グルコースの安全性(刺激性・アレルギー)について

グルコースの現時点での安全性は、

  • 糖類(化学構造的に皮膚反応を起こす可能性が低いと考えられる)
  • 10年以上の使用実績
  • 皮膚刺激性:ほとんどなし
  • 眼刺激性:ほとんどなし(データなし)
  • 皮膚感作性(アレルギー性):ほとんどなし
  • アクネ菌増殖性:やや増殖しやすい

これらの結果から、化粧品配合量および通常使用下において、一般的に安全性に問題のない成分であると考えられます。

ただし、他の保湿剤に比べてアクネ菌がやや増殖しやすいため、脂性肌やニキビができやすい場合は注意が必要です。

以下は、この結論にいたった根拠です。

皮膚刺激性および皮膚感作(アレルギー性)について

Cosmetic Ingredient Reviewの安全性試験データ(文献1:2014)によると、

  • [ヒト試験] 100人の被検者に0.08%グルコースを含むヘアスタイリングクリームを誘導期間において週3回3週間にわたって合計9回、24時間パッチ適用し、次いで2週間の休息期間の後に未処置部位にチャレンジパッチを適用し、パッチ除去48および96時間後に試験部位を評価したところ、皮膚刺激剤および皮膚感作剤ではなかった(BioScreen Testing Services Inc,2013)
  • [ヒト試験] 208人の被検者に8%グルコースを含むつけっぱなしのヘア製品0.2mLを誘導期間およびチャレンジ期間において24時間半閉塞パッチ適用し、各パッチ除去後に皮膚反応を評価したところ、誘導期間において被検者の1%に+反応が観察されたが、臨床的に有意な反応とは考えられず、皮膚感作剤ではないと結論づけられた(TKL Research Inc,2012)

と記載されています。

試験データをみるかぎり、共通して皮膚刺激はおよび皮膚感作性なしと報告されているため、皮膚刺激性および皮膚感作性はほとんどないと考えられます。

眼刺激性について

詳細な試験データがみあたらず、糖類なので眼刺激性はほとんどないと推測されますが、データ不足のため詳細は不明です。

ニキビの原因となるアクネ菌の増殖性について

2009年にサティス製薬によって公開された研究調査によると、

ニキビ用化粧品の開発に役立つアクネ菌(Propionibacterium acnes)の資化性試験を用いて研究調査を行った。

資化性(しかせい)とは、微生物がある物質を栄養源として利用し増殖できる性質であり、化粧品に汎用されている各保湿剤がアクネ菌の栄養源になりうるかを検討するために、14種類の保湿剤(BGグリセリンDPGジグリセリントレハロース、グルコース、ソルビトールプロパンジオールキシリトールPCA-NaベタインラフィノースGCS(グリコシルトレハロース/加水分解水添デンプン混合物))をアクネ菌に与えてその増殖率を測定したところ、以下のグラフのように、

アクネ菌の保湿剤に対する資化性

縦軸の資化性スコア(吸光度)が高いほど菌が増殖していることを示しており、無添加と同等の増加率の場合はアクネ菌に対する資化性は非常に低いと考えられるが、グルコースは、通常の約2倍のアクネ菌増加率を示した。

このような検証結果が報告されており(文献6:2009)アクネ菌がやや増殖しやすいと考えられます。

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グルコースは保湿成分、バリア改善成分にカテゴライズされています。

成分一覧は以下からお読みください。

参考:保湿成分 バリア改善成分

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文献一覧:

  1. Cosmetic Ingredient Review(2014)「Safety Assessment of Monosaccharides, Disaccharides, and Related Ingredients as Used in Cosmetics」Final Report.
  2. 日光ケミカルズ(2016)「糖類」パーソナルケアハンドブック,104.
  3. 櫻井哲人, 他(2005)「ラフィノースのバリア機能改善効果」Fragrance Journal(33)(10),57-63.
  4. Imokawa G, et al(1991)「Stratum corneum lipids serve as a bound-water modulator.」Journal of Investigate Dermatology(96)(6),845-851.
  5. Bouwstra JA, et al(1991)「Structural investigations of human stratum corneum by small-angle X-ray scattering.」Journal of Investigate Dermatology(97)(6),1005-1012.
  6. “株式会社サティス製薬”(2009)「化粧品でアクネ菌が増える?」, <http://www.saticine-md.co.jp/exam/trustee_service/release/20090519.html> 2018年12月30日アクセス.

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