クズ根エキスとは…成分効果と毒性を解説

保湿成分 美白成分 抗老化成分 育毛剤
クズ根エキス
[化粧品成分表示名称]
・クズ根エキス

[医薬部外品表示名称]
・カッコンエキス

マメ科植物クズ(学名:Pueraria lobata = Pueraria thunbergiana 英名:kudzu)の根から無水エタノールで抽出して得られるエキスです。

クズ根エキスの成分組成は、抽出方法や天然成分のため国や地域および時期によって変化がありますが、主に、

  • イソフラボン類:プエラリン、ダイゼイン、ダイジン
  • サポニン類:サポゲニン
  • デンプン

などで構成されています(文献1:2006;文献3:2017;文献4:2011)

クズは日本各地、東アジアに広く分布しており、根に多く含まれるクズデンプンは食用としても葛湯や葛餅、葛切り、葛粉などの原料として用いられています。

クズの根にはデンプンのほかにダイジン、ダイゼイン、プエラリンなどのイソフラボン配糖体が含まれ、解熱、鎮痙、降圧、消化管運動亢進作用などが知られています(文献4:2011)

漢方では解肌・透疹・潤筋・止渇・止瀉の効能があり、頭痛や肩こりなどの感冒症状、麻しん、筋肉の緊張、口渇、下痢などに用いられます(文献4:2011)

民間でも葛デンプンに砂糖を加えて溶かした葛湯を風邪の初期や腹痛に用いています(文献4:2011)

化粧品に配合される場合は、

これらの目的で、スキンケア化粧品、ボディ&フットケア製品、日焼け止め製品、アイケア化粧品、洗顔料&洗顔石鹸、シート&マスク製品など様々な製品に使用されます(文献1:2017;文献5:2011;文献6:2002;文献7:2000;文献9:1999;文献11:2018;文献12:2006)

アルギナーゼ活性促進による保湿作用

アルギナーゼ活性促進による保湿作用に関しては、まず前提知識としてアルギナーゼについて解説します。

以下のアルギニンの分解プロセス図をみてもらうとわかりやすいと思うのですが、

アルギニンの分解プロセス

アルギナーゼは、アミノ酸のひとつであるアルギニンをオルニチンと尿素に加水分解する酵素です。

尿素は、角層における天然保湿因子の構成成分で、高い保湿能を有するだけでなく、角質溶解剥離作用や角質柔軟化作用を有する皮膚にとって重要な成分ですが、外用剤としての尿素は、角質層を形成しているケラチンタンパク質の結合をゆるめ、角質を柔らかくし水分を含みやすい状態にすることで高い柔軟性と保湿性を得るため、継続使用には不向きとされ化粧品への配合は減少傾向にあります。

一方、アルギナーゼの活性を高めることは、皮膚内生成によって尿素を増やすことができ、尿素自体の有効性を発揮することが可能であるため、優れた保湿作用であると考えられます(文献6:2002)

2011年にノエビアと神戸学院大学薬学部生命薬学部門細胞生物学科の共同研究によって報告された大豆イソフラボンの皮膚細胞に対する有用性評価によると、

イソフラボン類としてダイゼイン、ゲニステイン、ダイジン、アセチルダイジン、マロニルダイジン、マロニルグリシチンの計6種類のイソフラボンのアルギナーゼ活性促進効果を調べたところ、イソフラボン類全てにおいてアルギナーゼ活性促進効果が見られた。

このような研究結果が明らかになっており(文献5:2011)、クズ根エキスに含まれるイソフラボン類(ダイゼイン、ダイジン)にアルギナーゼ活性促進作用が認められているため、優れた保湿作用を発揮する可能性が示唆されています。

セラミド合成促進による保湿作用

セラミド合成促進による保湿作用に関しては、まず前提知識としてセラミドについて解説します。

以下の角質層の構造および細胞間脂質におけるラメラ構造図をみてもらうとわかりやすいと思うのですが、

角質層の構造

細胞間脂質におけるラメラ構造の仕組み

角質層のバリア機能は、生体内の水分蒸散を防ぎ、外的刺激から皮膚を防御する重要な機能であり、バリア機能には角質と角質の隙間を充たして角質層を安定させる細胞間脂質が重要な役割を果たしています。

細胞間脂質は、主にセラミド、コレステロール、遊離脂肪酸などで構成され、これらの脂質が角質細胞間に層状のラメラ構造を形成することによりバリア機能を有すると考えられています。

セラミドは、細胞間脂質の50%以上を占める主要成分であり、皮膚の水分保持能およびバリア機能に重要な役割を果たしており、バリア機能が低下している皮膚では角質層中のセラミド量が低下していること(文献13:1989)、またアトピー性皮膚炎患者では角質層中のコレステロール量の減少は認められないがセラミド量は有意に低下していることが報告されています(文献14:1991;文献15:1998)

またヒト皮膚には7系統のセラミドが存在することが確認されており、全種類のセラミドが角質層に存在する比率で補われることが理想的ですが、セラミドを適正な比率で補充することは技術的に困難なため、生体内におけるセラミド合成を促進することが重要であると考えられています。

2006年に日本メナード化粧品によって公開された技術情報によると、

生体内におけるセラミド合成を促進する成分・物質を検討したところ、コメ、クズ、アンズスイカズラユキノシタ、テンチャ、ラフマ、サンザシイザヨイバラ、エゾウコギ、ナツメシソオウレンサイシン、コガネバナ、キハダクワボタンシャクヤクチンピムクロジチョウジユリダイズシロキクラゲの抽出物によりセラミド合成が促進されることを見出した。

in vitro試験において、マウスケラチノサイト由来細胞を培養した培地を用いて、試料未添加のセラミド合成促進率を100とした場合の試料添加時のセラミド合成促進量を計測したところ、以下の表のように、

試料 抽出方法 10μg/mLあたりのセラミド合成促進率(%)
コメ 熱水 110
エタノール 115
クズ 熱水 133
エタノール 145
アンズ 50%BG水溶液 123
エタノール 137
スイカズラ 熱水 116
エタノール 122
ユキノシタ 熱水 121
テンチャ エタノール 115
ラフマ エタノール 114
サンザシ 50%BG水溶液 130
イザヨイバラ 熱水 112
エタノール 115
エゾウコギ 熱水 129
ナツメ 熱水 162
エタノール 152
シソ エタノール 187
オウレン 熱水 150
サイシン 熱水 145
エタノール 165
コガネバナ 50%BG水溶液 118
熱水 121
キハダ 熱水 178
エタノール 195
クワ 熱水 129
エタノール 145
ボタン 熱水 116
50%BG水溶液 126
シャクヤク 熱水 112
チンピ 熱水 111
エタノール 117
ムクロジ エタノール 115
チョウジ 熱水 114
ユリ 50%BG水溶液 115
ダイズ エタノール 120
熱水 129
シロキクラゲ 熱水 125

クズ抽出物は、無添加と比較してセラミド合成促進効果を示した。

このような検証結果が明らかにされており(文献12:2006)、クズ根エキスにセラミド合成促進による保湿作用が認められています。

Ⅰ型コラーゲン合成促進による抗老化作用

Ⅰ型コラーゲン合成促進による抗老化作用に関しては、まず前提知識としてⅠ型コラーゲンについて解説します。

以下の真皮におけるコラーゲンの構造図をみてもらうとわかりやすいと思うのですが、

真皮におけるコラーゲンの種類

真皮におけるコーランは主にⅠ型コラーゲンとⅢ型コラーゲンで構成されており、その大部分はマトリックス状(網目状)に広がるⅠ型コラーゲンです。

コラーゲンは、白い紐状のタンパク質からなる丈夫な太い繊維で、膠質状の性質を持ち、内部にたっぷりと水分を抱えながら皮膚のハリを支えています(文献8:2002)

2000年にノエビアによって報告された真皮に対する抗老化素材の開発によると、

コラーゲン合成促進作用をもつ素材の検索を目的として細胞外に分泌されたⅠ型コラーゲンを定量するためのELISAを確立し、線維芽細胞を50μMのアスコルビン酸リン酸マグネシウム塩を含有する培地で24時間培養したところ、以下のグラフのように、

クズ根の50%エタノール抽出物のⅠ型コラーゲン合成に与える作用

クズ根の50%エタノール抽出物に高いⅠ型コラーゲン合成促進作用を見出した。

さらに、クズ根抽出物の活性成分の同定を目的として溶媒分画を行ったところ、女性ホルモン様作用や美白作用などが報告されているイソフラボン類のダイゼインに低濃度で高いコラーゲン合成促進作用が示された。

このような研究結果が明らかにされており(文献7:2000)、クズ根エキス(50%エタノール抽出物)に含まれるダイゼインにⅠ型コラーゲン合成促進による抗老化作用が認められています。

毛乳頭活性化による育毛作用

毛乳頭活性化による育毛作用に関しては、まず前提知識として毛乳頭の働きについて解説します。

以下の毛髪の構造図および毛周期の図をみてもらうとわかりやすいと思いますが、

毛髪の構造

毛周期(ヘアサイクル)

毛髪は、2~6年の「成長期」、数週間の「退行期」、数ヶ月の「休止期」というサイクルで自然な脱毛から新しい毛髪に生え替わるサイクルを繰り返しており、洗髪やブラッシングなどで抜ける髪は休止期のもので、1日の自然脱毛数は50~80本程度です(文献10:2002)

毛乳頭は、毛根根幹部の毛球部といわれるやや膨らんだ形状部位の内部に位置し、毛乳頭細胞は、毛包上皮系細胞に働きかけて増殖を促し、毛髪の分化に関して中心的な役割を担っていることが明らかになっています(文献9:1999)

そのため、毛乳頭を活性化させることは、毛周期における成長期を延長させたり、休止期から成長期への移行を早める可能性が考えられ、また発毛誘導効果、毛髪伸長促進効果を発揮することも考えられます。

1999年に資生堂によって公開された毛乳頭活性化剤の検証によると、

in vitro試験においてヒト毛乳頭細胞を用いてカッコン抽出物(濃度:0.00001%または0.0001%)を培養し、細胞増殖率を評価したところ、有意に培養毛乳頭細胞の増殖促進作用が認められた。

また、カッコン抽出物の配合量に関しては、抽出物の乾燥物として0.00005%~10%の範囲で毛乳頭活性化作用が期待でき、より最適な濃度は0.01%~1%である。

一方で0.00005%未満では毛乳頭細胞を十分に活性化することが困難となり、また10%を超えて配合しても配合量に見合った効果の増大は見込めなかった。

なおカッコンの抽出溶媒に関しては、通常植物抽出に用いられる溶媒であれば任意に用いることができるが、最適な溶媒はエタノールであった。

このような研究結果が明らかにされており(文献9:1999)、クズ根エキスに毛乳頭活性化による毛髪伸長促進作用(育毛作用)が認められています。

硫酸転移酵素遺伝子発現量増強によるミノキシジルの発毛促進作用

硫酸転移酵素遺伝子発現量増強によるミノキシジルの発毛促進作用に関しては、ミノキシジルの作用メカニズムについて解説します。

ミノキシジルは男性型脱毛症(AGA)および女性型脱毛症(FPHL)の治療に外用薬として用いられる成分で、毛乳頭細胞内のATP感受性カリウムチャネルを介して発毛効果を発揮し、生体内で硫酸転移酵素により活性し薬効を発揮します。

ただし、頭皮中の硫酸転移酵素活性が低い場合は、ミノキシジルの発毛効果が低いという報告があり、頭皮の硫酸転移酵素活性を促進することでミノキシジルの発毛効果を高めることができると考えられます(文献11:2018)

2018年にアンファーによって報告された植物由来成分の硫酸転移酵素遺伝子発現への作用検証によると、

植物由来成分9種類をそれぞれヒトケラチノサイトに添加し、細胞内の硫酸転移酵素遺伝子発現を検討した結果、以下のグラフのように、

クズ根抽出物のヒト表皮ケラチノサイトにおける硫酸転移酵素遺伝子発現への影響

クズ根抽出物に濃度依存的な硫酸転移酵素遺伝子の発現増強が確認された。

このような研究結果が明らかにされており(文献11:2018)、クズ根エキスに硫酸転移酵素遺伝子発現促進作用が認められているため、ミノキシジルと併用し頭皮での硫酸転移酵素活性を増強することができれば、ミノキシジルの発毛効果を高める可能性があると考えられます。

ただし、この試験の結果は、硫酸転移酵素遺伝子の発現促進の確認までであり、ミノキシジルの発毛効果の向上までは行われていないため、現時点ではミノキシジルの発毛効果の向上性は不明です。

複合植物エキスとしてのクズ根エキス

バイオアンテージという複合植物エキスは、以下の成分で構成されており、

効果および配合目的は、

  1. 角質水分量増加
  2. 経表皮水分損失抑制
  3. 細胞賦活(線維芽細胞増殖促進)
  4. 皮膚弾力改善
  5. メラニン生成抑制

とされており、3種の植物エキスによるプラセンタ様作用によって肌の水分量を向上および保持し、細胞を活性化させるとともに皮膚弾力性および明るさの向上と保湿・美白・抗老化と総合的な美肌づくりにアプローチするもので、化粧品成分一覧にこれらの成分が併用されている場合はバイオアンテージであると推測することができます。

エバーセルホワイトという複合植物エキスは、以下の成分で構成されており、

効果および配合目的は、

  1. メラニン重合阻害作用
  2. メラニン生成抑制作用(B16メラソーマ)
  3. メラニン生成抑制作用(耳介表皮)
  4. メラニン生成抑制作用(チロシナーゼ阻害)

とされており、それぞれポイントの違う植物エキスの相乗効果によってメラニン生合成を多角的に阻害するもので、化粧品成分一覧にこれらの成分が併用されている場合はエバーセルホワイトであると推測することができます。

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クズ根エキスの安全性(刺激性・アレルギー)について

クズ根エキスの現時点での安全性は、医療上汎用性があり有効性および安全性の基準を満たした成分が収載される日本薬局方ならびに外原規2006規格の基準を満たした成分が収載される医薬部外品原料規格2006に収載されており、また10年以上の使用実績があり、化粧品配合量および通常使用下において、一般的に皮膚刺激および皮膚感作性(アレルギー性)はほとんどないと考えられます。

ただし、詳細な試験データがみあたらず、データ不足のため詳細は不明です。

以下は、この結論にいたった根拠です。

皮膚刺激性および皮膚感作性(アレルギー性)について

化粧品配合量および通常使用下において、一般的に皮膚刺激および皮膚感作性(アレルギー性)はほとんどないと考えられますが、詳細な安全性試験データがみあたらず、データ不足のため詳細は不明です。

眼刺激性について

試験結果や安全性データがみあたらないため、現時点ではデータ不足により詳細は不明です。

化粧品毒性判定事典による毒性判定について

化粧品成分名 判定
クズ根エキス

参考までに化粧品毒性判定事典によると、クズ根エキスは△(∗1)となっており、安全性に問題ない成分であると考えられます。

∗1 毒性判定事典の毒性レベルは「毒性なし」「△」「■」「■■」となっており、△は2~3個で■1個に換算し、■が多いほど毒性が強いという目安になり、製品の毒性成分の合計が■4つ以上なら使用不可と判断されます。

∗∗∗

クズ根エキスは保湿成分、美白成分、抗老化成分にカテゴライズされています。

成分一覧は以下からお読みください。

参考:保湿成分 美白成分 抗老化成分

∗∗∗

文献一覧:

  1. 日光ケミカルズ(2006)「植物・海藻エキス」新化粧品原料ハンドブックⅠ,365.
  2. 一丸ファルコス株式会社(2018)「ファルコレックス カッコン B」技術資料.
  3. 原島 広至(2017)「カッコン(葛根)」生薬単 改訂第3版,246-247.
  4. 鈴木 洋(2011)「葛根(かっこん)」カラー版 漢方のくすりの事典 第2版,67-68.
  5. “株式会社ノエビア”(2011)「大豆イソフラボンの皮膚細胞に対する有効性を明らかにしました」, <http://www.tokiwayakuhin.co.jp/news/2011/03/post20110331.htm> 2018年9月24日アクセス.
  6. 石田 実咲, 他(2002)「アルギナーゼ活性促進剤およびそれを含有する皮膚外用剤」特開2002-029991.
  7. 岡野 由利(2000)「真皮に対する抗老化素材の開発」Fragrance Journal(28)(12),22-27.
  8. 朝田 康夫(2002)「真皮の構造は」美容皮膚科学事典,30.
  9. 石野 章博, 他(1999)「毛乳頭活性化剤 」特開1999-240823.
  10. 朝田 康夫(2002)「毛髪の成長と寿命」美容皮膚科学事典,359-362.
  11. “株式会社アンファー”(2018)「葛根エキス、ゲンチアナエキスが 硫酸転移酵素遺伝子の発現を増強」, <https://www.angfa.jp/news/?p=1994> 2018年9月24日アクセス.
  12. 日本メナード化粧品株式会社(2006)「セラミド合成促進剤」特開2006-111560.
  13. G Grubauer, et al(1989)「Transepidermal water loss:the signal for recovery of barrier structure and function.」The Journal of Lipid Research(30),323-333.
  14. Imokawa G, et al(1991)「Decreased level of ceramides in stratum corneum of atopic dermatitis: an etiologic factor in atopic dry skin?」J Invest Dermatol.(96)(4),523-526.
  15. Di Nardo A, et al(1998)「Ceramide and cholesterol composition of the skin of patients with atopic dermatitis.」Acta Derm Venereol.(78)(1),27-30.

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