キシリトールとは…成分効果と毒性を解説

保湿成分 ベース成分 抗菌成分
キシリトール
[化粧品成分表示名称]
・キシリトール

[医薬部外品表示名称]
・キシリット

多糖類のキシランを加水分解したキシロースを還元して得られる糖アルコール(糖類)であり、糖アルコール類が多価アルコール(∗1)に属していることから多価アルコール(五価アルコール)でもあります。

∗1 多価アルコールとは、非常に高い吸湿性と保水性をもっているため化粧品に最も汎用されている保湿剤です。名称に「アルコール」がついているので勘違いしやすいですが、一般的なアルコール(エタノール)は一価アルコールで、多価アルコールと一価アルコール(エタノール:エチルアルコール)は別の物質です。

キシリトールは、ヒトの小腸では分解・吸収されない糖アルコールであり、また以下の表をみてもらうとわかるように、

糖アルコール 砂糖を100としたときの甘味度 エネルギー換算係数(kal/g)
エリスリトール 80 0
キシリトール 100 3
ソルビトール 60 3
マンニトール 40 2
マルチトール 75 2
ラクチトール 30 2
パラチニット 50 2

低カロリーでありながら砂糖と同等の甘味料であり(文献4:1998)、また非う蝕性(∗2)であることから、歯の健康維持に役立つ特定保健用食品として認可され、ガムや歯磨き剤などに汎用されています(文献3:2011)

∗2 う蝕(うしょく)とは虫歯のことで、非う蝕性とは虫歯にならない性質のことです。

また医薬品としては、軟膏基剤、坐薬などの湿潤剤または糖尿病患者向けの糖質輸液(∗3)などに用いられています。

∗3 筋肉や神経のエネルギーとして糖質が必要であり、必要に応じて糖質輸液を点滴などで注入します。

吸湿性・保水性を有していながらベタつきが少なく、また糖アルコールの中ではエリスリトールに次ぐ冷涼感を呈することから化粧品にも配合されています(文献4:1998)

化粧品に配合される場合は、

これらの目的で、スキンケア化粧品、ボディ&ハンドケア製品、メイクアップ化粧品、頭皮&ヘアケア製品、シート&マスク製品など様々な製品に使用されます(文献1:2016;文献5:2000;文献6:2005)

黄色ブドウ球菌のバイオフィルム形成抑制による抗菌作用

黄色ブドウ球菌のバイオフィルム形成抑制による抗菌作用に関しては、まず前提知識として皮膚常在菌の構造および黄色ブドウ球菌のバイオフィルム形成について解説します。

一般に、健常なヒト皮膚上には皮膚常在菌と呼ばれる多種の微生物が常在して微生物叢を形成し、健康な状態においてはそれが病原性微生物の侵入を排除する生体バリアとしても機能しており、皮膚の恒常性を保つ一因となっています。

皮膚常在菌には、主に、

  • アクネ菌(Propionibacterium acnes)
  • 表皮ブドウ球菌(Staphylococcus epidermidis)
  • 黄色ブドウ球菌(Staphylococcus aureus)

などが大半を占め、表皮ブドウ球菌と黄色ブドウ球菌は拮抗関係にあり、黄色ブドウ球菌に対して表皮ブドウ球菌の優位性を高めることが健康な皮膚をつくるための重要な要因のひとつであると考えられています(文献6:2001)

これら常在菌は、皮膚上でバリア機能として働いている一方で、皮膚常在菌叢のバランスが崩れたとき、それら自身の過度の増殖または外来の細菌の増殖により、ニキビや炎症など皮膚疾患の原因となり、とくにアトピー性皮膚炎、皮膚掻痒症、接触皮膚炎などの皮膚疾患において黄色ブドウ球菌の異常増殖が関係していることが報告されています(文献7:2015)

また黄色ブドウ球菌は、細菌自ら産生する菌体外ムコ多糖類(グリコカリックス)を成分とした膜(バイオフィルム)を形成し、抗菌剤などを菌体に直接接触させないことにより抵抗性を示すため、バイオフィルム形成菌に対しては浮遊菌の1000-1500倍濃度の抗生物質を必要とすることが報告されています(文献9:1999)

これらの背景から、黄色ブドウ球菌の増殖を抑制またはバイオフィルム形成抑制することは、アトピー性皮膚炎の予防または改善、ひいては健常な皮膚という点で非常に重要であると考えられます。

2000年に資生堂によって公開された技術情報によると、

in vitro試験において黄色ブドウ球菌のバイオフィルム形成抑制効果を検討した。

アトピー性皮膚炎患者から単離したメチシリン耐性黄色ブドウ球菌およびメチシリン感受性黄色ブドウ球菌を用いて、バイオフィルム形成抑制効果が期待できる炭素数3-6の多価アルコールの中から安定性および使用性の点で好ましいグリセリンBGおよびキシリトールを選択した。

また多価アルコール類は1種でも問題ないが、効果をより明確にするために3種類を併用し、比較対照として炭素数3-6以外の多価アルコールを配合した基剤を使用した。

多価アルコールを配合したクリーム1gを培地に添加、次に培養した黄色ブドウ球菌を接種し、24-72時間培養した後にバイオフィルム形成度を以下の3段階で評価したところ、以下の表のように、

A:対照よりも顕著にバイオフィルム形成が少ない
B:対照よりもわずかにバイオフィルム形成が少ない
C:対照と同程度のバイオフィルム形成

試料 C3-C6多価アルコール含量(質量%) C3-C6以外の多価アルコール含量(質量%) pH バイオフィルム形成抑制効果
試料1 22 0 3 A
試料2 22 0 7 C
試料3 0 22 3 B

炭素数3-6の多価アルコール(グリセリン、BGおよびキシリトール)を含有し、かつpH4以下である試料1は対照である試料3と比較して顕著にバイオフィルム形成を抑制した。

一方で同じpHであっても炭素数3-6の多価アルコールを含有しない試料2は、バイオフィルム形成抑制効果が低く、さらに炭素数3-6の多価アルコールを含んでいても、pH4より高い試料2では、まったくバイオフィルム形成抑制効果が認められなかった。

この結果から多価アルコールの種類はグリセリン、BGまたはキシリトールの一種またはそれ以上でも構わないが、含有量は多価アルコール全体で1%-50%の範囲内で、好ましくは5%-40%、さらに好ましくは1-%-30%である。

またpHは4以下で効果を発揮するが、皮膚への刺激性を考慮するとpH3-4であることが好ましい。

このような検証結果が明らかにされており(文献5:2000)、キシリトールにpH4以下で黄色ブドウ球菌のバイオフィルム形成抑制による抗菌作用が認められています。

またファルネソールには、約2000ppm濃度で表皮ブドウ球菌の生育に影響を与えず、黄色ブドウ球菌だけの生育を抑制する作用が見出されており、キシリトールとファルネソールを併用することで相乗効果的に皮膚常在菌バランスの改善が認められています(文献5:2000)

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キシリトールの安全性(刺激性・アレルギー)について

キシリトールの現時点での安全性は、

  • 医療上汎用性があり有効性および安全性の基準を満たした成分が収載される日本薬局方に収載
  • 外原規2006規格の基準を満たした成分が収載される医薬部外品原料規格2006に収載
  • 10年以上の使用実績
  • 皮膚刺激性:ほとんどなし(データなし)
  • 眼刺激性:詳細不明
  • 皮膚感作性(アレルギー性):ほとんどなし(データなし)
  • アクネ菌増殖性:ほとんどなし

これらの結果から、化粧品配合量および通常使用下において、一般的に安全性に問題のない成分であると考えられます。

以下は、この結論にいたった根拠です。

皮膚刺激性および皮膚感作性(アレルギー性)について

試験データはみあたりませんが、糖類であり、また保湿剤としての10年以上の使用実績があり、さらに食品、医薬品などにも使用される中で、皮膚刺激および皮膚感作の報告がないため、皮膚刺激性および皮膚感作性(アレルギー性)はほとんどないと考えられます。

眼刺激性について

安全性データがみあたらないため、現時点ではデータ不足により詳細は不明です。

ニキビの原因となるアクネ菌の増殖性について

2009年にサティス製薬によって公開された研究調査によると、

ニキビ用化粧品の開発に役立つアクネ菌(Propionibacterium acnes)の資化性試験を用いて研究調査を行った。

資化性(しかせい)とは、微生物がある物質を栄養源として利用し増殖できる性質であり、化粧品に汎用されている各保湿剤がアクネ菌の栄養源になりうるかを検討するために、14種類の保湿剤(BGグリセリンDPGジグリセリントレハロースグルコースソルビトールプロパンジオール、キシリトール、PCA-NaベタインラフィノースGCS(グリコシルトレハロース/加水分解水添デンプン混合物))をアクネ菌に与えてその増殖率を測定したところ、以下のグラフのように、

アクネ菌の保湿剤に対する資化性

縦軸の資化性スコア(吸光度)が高いほど菌が増殖していることを示しており、無添加と同等の増加率の場合はアクネ菌に対する資化性は非常に低いと考えられ、キシリトールは無添加と同等の増加率であるため、アクネ菌の増殖性は認められなかった。

このような検証結果が報告されており(文献2:2009)アクネ菌増殖性はほとんどないと考えられます。

∗∗∗

キシリトールは保湿成分、ベース成分、抗菌成分にカテゴライズされています。

成分一覧は以下からお読みください。

参考:保湿成分 ベース成分 抗菌成分

∗∗∗

文献一覧:

  1. 日光ケミカルズ(2016)「糖類」パーソナルケアハンドブック,105.
  2. “株式会社サティス製薬”(2009)「化粧品でアクネ菌が増える?」, <http://www.saticine-md.co.jp/exam/trustee_service/release/20090519.html> 2019年1月2日アクセス.
  3. 鈴木 洋(2011)「糖質の栄養学」カラー版健康食品・サプリメントの事典,214-225.
  4. 田中 潔, 他(1998)「糖アルコールの機能と応用」Fragrance Journal(26)(7),33-38.
  5. 株式会社資生堂(2000)「アトピー性皮膚炎用皮膚外用剤」特開2000-302673.
  6. 株式会社資生堂(2005)「皮膚外用組成物」特開2005-225830.
  7. 石坂 要, 他(2001)「健常人より分離した皮膚常在菌について」日本化粧品技術者会誌(35)(1),34-41.
  8. Kobayashi T, et al(2015)「Dysbiosis and Staphylococcus aureus Colonization Drives Inflammation in Atopic Dermatitis.」Immunity(42)(4),756-766.
  9. 秋山 尚範, 他(1999)「黄色ブドウ球菌に関する最近の話題」日本皮膚科学会雑誌(109)(13),2095-2102.

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