キウイエキスとは…成分効果と毒性を解説

保湿 色素沈着抑制
キウイエキス
[化粧品成分表示名]
・キウイエキス

[医薬部外品表示名]
・キウイエキス

マタタビ科植物キウイフルーツ(学名:Actinidia Chinensis 英名:kiwifruit)の果実からエタノールBG、またはこれらの混液で抽出して得られる抽出物植物エキスです。

キウイフルーツは中国を原産とし、1906年にヨーロッパ経由でニュージーランドに種子が持ち込まれ、1934年に果樹として商業的に栽培されるようになったことをきっかけに急速に世界的に広まり、現在では主に中国、イタリア、ニュージーランドなどで栽培されています(文献1:1983;文献2:2019)

日本においては初めは柑橘類の生産過剰地帯における転作として導入され、現在では主に愛媛県、福岡県、和歌山県などのミカン栽培地で栽培されていますが(文献3:2020)、国内で供給されているキウイフルーツの多くはニュージーランドからの輸入に依存しています。

キウイエキスは天然成分であることから、地域、時期、抽出方法によって成分組成に差異があると推察されますが、その成分組成は主に、

分類 成分名称
糖質 単糖 グルコースフルクトース
少糖 スクロース
有機酸 キナ酸、クエン酸
ビタミン アスコルビン酸、ピリドキシン

これらの成分で構成されていることが報告されています(文献4:2017;文献5:1987;文献6:1990)

キウイフルーツ果実の化粧品以外の主な用途としては、食品分野において多くは生食用として用いられ、加熱調理・加工品としては缶詰、果汁飲料などに用いられます(文献4:2017)

化粧品に配合される場合は、

これらの目的で、スキンケア製品、ボディ&ハンドケア製品、化粧下地製品、スティック系メイクアップ製品、シート&マスク製品、制汗剤、日焼け止め製品、シャンプー製品、コンディショナー製品、アウトバストリートメント製品、頭皮ケア製品、洗顔料、クレンジング製品、ボディソープ製品など様々な製品に使用されています。

皮表柔軟化による保湿作用

皮表柔軟化による保湿作用に関しては、まず前提知識として皮膚最外層である角質層の構造と役割について解説します。

直接外界に接する皮膚最外層である角質層は、以下の図のように

角質層の構造

天然保湿因子を含む角質と角質の間を細胞間脂質で満たした、レンガとモルタルの関係と同様の構造となっており、この構造が保持されることによって、外界からの物理的あるいは化学的影響から身体を守り、かつ体内の水分が体外へ過剰に蒸散していくのを防ぐとともに一定の水分を保持する役割を担っています(文献7:2002;文献8:1990)

一方で、老人性乾皮症やアトピー性皮膚炎においては、角質細胞中のアミノ酸などの天然保湿因子が顕著に低下していることが報告されています(文献9:1989;文献10:1991)

このような背景から、皮表を柔軟化することは肌の乾燥の改善ひいては皮膚の健常性の維持につながると考えられています。

キウイエキスは、グルコースフルクトーススクロースなど糖類の含有量が多く、また有機酸を含むことから、さっぱりした清涼感と皮膚を柔軟化する保湿効果を目的としてスキンケア製品、ボディケア製品、アウトバストリートメント製品、洗顔料、クレンジング製品、シャンプー製品、ボディソープ製品、制汗剤などに使用されています(文献5:1987;文献6:1990)

基底細胞のメラニン排出促進による色素沈着抑制

基底細胞のメラニン排出促進による色素沈着抑制に関しては、まず前提知識としてメラニン色素生合成のメカニズムおよび基底細胞のメラニン滞留について解説します。

以下のメラニン生合成のメカニズム図をみてもらうとわかりやすいと思うのですが、

メラニン生合成のメカニズム図

皮膚が紫外線に曝露されると、細胞や組織内では様々な活性酸素が発生するとともに、様々なメラノサイト活性化因子(情報伝達物質)がケラチノサイトから分泌され、これらが直接またはメラノサイト側で発現するメラノサイト活性化因子受容体を介して、メラノサイトの増殖やメラノサイトでのメラニン生合成を促進させることが知られています(文献11:2002;文献12:2016;文献13:2019)

また、メラノサイト内でのメラニン生合成は、メラニンを貯蔵する細胞小器官であるメラノソームで行われ、生合成経路としてはアミノ酸の一種かつ出発物質であるチロシンに酸化酵素であるチロシナーゼが働きかけることでドーパに変換され、さらにドーパにも働きかけることでドーパキノンへと変換されます(文献11:2002;文献13:2019)

ドーパキノンは、システイン存在下の経路では黄色-赤色のフェオメラニン(pheomelanin)へ、それ以外はチロシナーゼ関連タンパク質2(tyrosinaserelated protein-2:TRP-2)やチロシナーゼ関連タンパク質1(tyrosinaserelated protein-1:TRP-1)の働きかけにより茶褐色-黒色のユウメラニン(eumelanin)へと変換(酸化・重合)されることが明らかにされています(文献11:2002;文献13:2019)

そして、毎日生成されるメラニン色素は、メラノソーム内で増えていき、一定量に達すると樹枝状に伸びているデンドライト(メラノサイトの突起)を通して、周辺の表皮細胞に送り込まれ、ターンオーバーとともに皮膚表面に押し上げられ、最終的には角片とともに垢となって落屑(排泄)されるというサイクルを繰り返します(文献11:2002)

ただし、過剰な紫外線や炎症により過度にメラニンが産生されると、産生されたメラニンの一部がターンオーバーとともに皮膚表面に押し上げられず、以下の基底細胞図のように、

過剰な紫外線や炎症によりメラニンが基底細胞に滞留

本来であればメラニンを取り込まない表皮基底層の基底細胞にもメラニンが受け渡されることがあると報告されています(文献14:2014)

また、メラニンを取り込んだ基底細胞は分裂能力が低下し、取り込まれたメラニンはターンオーバーによって排出されることなく長期にわたって基底細胞に滞留することで、シミの原因として関与することが報告されています(文献14:2014)

このような背景から、メラニンを蓄積している表皮基底細胞の分裂を促進し、正常なターンオーバーの流れにメラニンを載せてメラニンの排出を促進することは、色素沈着抑制アプローチのひとつであると考えられています。

2014年に一丸ファルコスによって報告されたキウイエキスのヒト皮膚色素沈着に対する影響検証によると、

in vitro試験においてヒト正常表皮角化細胞を播種した培地にメラニン顆粒を添加し、細胞にメラニンを貪食させ、培地中に残ったメラニン顆粒を除去後したあとに1%および2%キウイエキス溶液を添加し培養し、通常表皮基底細胞およびメラニン含有表皮基底細胞とともに細胞分裂促進率を算出したところ、以下のグラフのように、

キウイエキス添加によるメラニン含有表皮細胞の分裂促進作用

キウイエキスを添加したメラニン含有表皮基底細胞は、メラニン含有表皮基底細胞と比較して優れた細胞分裂の亢進が確認された。

次に、シミ・ソバカス、色素沈着で悩む40名の女性被検者(30-60歳)のうち20名に5%キウイエキス(50%エタノール抽出)配合乳液を1日2回(朝晩)洗顔後の顔面に3ヶ月間使用してもらい、別の20名に対照としてキウイエキス未配合乳液を同様に使用してもらった。

3ヶ月後に「有効:シミ・ソバカスや色素沈着が改善された」「やや有効:シミ・ソバカスや色素沈着がやや改善された」「無効:使用前と変化なし」の基準で評価したところ、以下の表のように、

試料 被検者数 シミ・ソバカスおよび色素沈着改善効果(人数)
有効 やや有効 無効
キウイエキス配合乳液 20 2 13 5
乳液のみ(対照) 20 0 4 16

5%キウイエキス(50%エタノール抽出)配合乳液の塗布は、未配合乳液と比較して有意にシミ・ソバカス、色素沈着を改善することを確認した。

このような試験結果が明らかにされており(文献14:2014;文献15:2014)、キウイエキスに基底細胞のメラニン排出促進による色素沈着抑制が認められています。

キウイエキスの安全性(刺激性・アレルギー)について

キウイエキスの現時点での安全性は、

  • 外原規2021規格の基準を満たした成分が収載される医薬部外品原料規格2021に収載
  • 30年以上の使用実績
  • 皮膚刺激性:ほとんどなし(データなし)
  • 眼刺激性:詳細不明
  • 皮膚感作性(アレルギー性):ほとんどなし(データなし)

このような結果となっており、化粧品配合量および通常使用下において、一般に安全性に問題のない成分であると考えられます。

以下は、この結論にいたった根拠です。

皮膚刺激性および皮膚感作性(アレルギー性)について

医薬部外品原料規格2021に収載されており、30年以上の使用実績がある中で重大な皮膚刺激および皮膚感作の報告がみあたらないため、化粧品配合量および通常使用下において、一般的に皮膚刺激および皮膚感作性(アレルギー性)はほとんどないと考えられますが、詳細な安全性試験データがみあたらず、データ不足のため詳細は不明です。

眼刺激性について

試験結果や安全性データがみあたらないため、現時点ではデータ不足により詳細は不明です。

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キウイエキスは保湿成分、美白成分にカテゴライズされています。

成分一覧は以下からお読みください。

参考:保湿成分 美白成分

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参考文献:

  1. 大垣 智昭(1983)「キウイの栽培と利用[1]」農業および園芸(58),389-394.
  2. 中央果実協会(2019)「キウイフルーツ」, <http://www.japanfruit.jp/Portals/0/resources/JFF/kaigai/jyoho/jyoho-pdf/KKNJ_138.pdf> 2021年2月6日アクセス.
  3. 農林水産省(2020)「作況調査(果樹)」, <https://www.maff.go.jp/j/tokei/kouhyou/sakumotu/sakkyou_kazyu/index.html> 2021年2月6日アクセス.
  4. 杉田 浩一, 他(2017)「キウイフルーツ」新版 日本食品大事典,196-197.
  5. 一丸ファルコス株式会社(1987)「キウイ果実水溶性抽出物及びそれを含有する化粧料又は浴用料」特開昭62-146581.
  6. 一丸ファルコス株式会社(1990)「キウイ果実エキス溶液又はその濃縮エキス」特開平02-202808.
  7. 朝田 康夫(2002)「保湿能力と水分喪失の関係は」美容皮膚科学事典,103-104.
  8. 田村 健夫, 他(1990)「表皮」香粧品科学 理論と実際 第4版,30-33.
  9. I Horii, et al(1989)「Stratum corneum hydration and amino acid content in xerotic skin」British Journal of Dermatology(121)(5),587-592.
  10. M. Watanabe, et al(1991)「Functional analyses of the superficial stratum corneum in atopic xerosis」Archives of Dermatology(127)(11),1689-1692.
  11. 朝田 康夫(2002)「メラニンができるメカニズム」美容皮膚科学事典,170-175.
  12. 日光ケミカルズ株式会社(2016)「美白剤」パーソナルケアハンドブックⅠ,534-550.
  13. 田中 浩(2019)「美白製品とその作用」日本香粧品学会誌(43)(1),39-43.
  14. 一丸ファルコス株式会社(2014)「ファルコレックス キウイ B」Fragrance Journal(42)(5),64-65.
  15. 一丸ファルコス株式会社(2014)「メラニン含有ケラチノサイト分裂促進剤」特開2014-019683.

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