カニナバラ果実エキスとは…成分効果と毒性を解説

保湿成分 収れん成分 美白成分 抗老化成分
カニナバラ果実エキス
[化粧品成分表示名称]
・カニナバラ果実エキス

[医薬部外品表示名称]
・ノバラエキス

[慣用名]
・ローズヒップエキス

バラ科植物カニナバラ(学名:Rosa canina 英名:Rose hip)の果実からエタノールBG(1,3-ブチレングリコール)、またはこれらの混合液で抽出して得られるエキスです。

カニナバラ果実エキスの成分組成は、抽出方法や天然成分のため国や地域および時期によって変化がありますが、主に、

  • ビタミン類:ビタミンC
  • ペクチン
  • フラボノイド
  • タンニン
  • カロチノイド:リコピン、β-カロチン

などで構成されています(文献1:2006;文献2:2016)

ヨーロッパでは野バラといえばカニナバラのことであり、カニナバラの果実は一般的にローズヒップと呼ばれ、真っ赤な実の中に毛で覆われた種子が入っています。

別名としてドッグローズと呼ばれますが、この名の由来はこの実が犬の眼病や狂犬病に効くと信じられたこと、剣を意味するダックから、どこにでもある植物につけられる「イヌ」のことなど諸説があります(文献3:2018)

カニナバラ果実は、レモンの20~40倍nビタミンCを含んでおり、第二次世界大戦中の物資のないころのイギリスでは、ボランティアによるローズヒップの実の採取を行い、シロップにして子どものビタミンCの補給源として配られていました(文献3:2018)

こういった背景もあり、カニナバラ果実はビタミンCの補給、また緩和な利尿作用、ペクチンや果実酸による緩下作用を目的に用いられます(文献2:2016)

ビタミンCには抗酸化作用や色素沈着抑制作用も期待できるため、美容にも効果的であり、ハイビスカス(Hibiscus sabdariffa)とブレンドして美容茶としても広く知られています(文献2:2016)

化粧品に配合される場合は、

これらの作用があり、スキンケア化粧品、メイクアップ化粧品、ボディ&ハンド フットケア製品、リップケア製品、洗顔料など様々な製品に広く使用されます(文献1:2006;文献5:2002;文献7:2002)

SCF結合阻害による色素沈着抑制作用

SCF結合阻害による色素沈着抑制作用に関しては、まず前提知識としてメラニン生合成のメカニズムとSCFおよびc-kitレセプターについて解説します。

以下のメラニン生合成のメカニズム図をみてもらうとわかりやすいと思うのですが、

紫外線におけるメラニン生合成までのプロセス

紫外線を浴びるとまず最初に活性酸素が発生し、様々な情報伝達物質(メラノサイト活性化因子)をメラノサイトで発現するレセプター(受容体)に届けることで、メラノサイト内でメラニンの生合成がはじまり、ユーメラニン(黒化メラニン)へと合成されます。

SCFは肝細胞増殖因子であり、メラニン生合成のメカニズムでは情報伝達物質(メラノサイト活性化因子)のひとつとして知られており、メラノサイトに存在するSCFの受容体であるc-kitレセプターに輸送され結合されることにより、肥満細胞が遊走、分化・増殖し、アトピー性皮膚炎が引き起こされたり、メラニン合成が活性化することが明らかになっています(文献6:1996)

2002年に花王によって公開された技術情報によると、

細胞表面上のc-kitレセプターに対するSCFの結合を特異的に阻害する天然物を探索したところ、カンゾウアスパラサスリネアリス、アセンヤク、ナギイカダシコンエンメイソウトウガラシウコン、コンフリー、ノバラ、ユリチャチョウジ、ツバキの抽出物にSCF結合阻害活性があることを見出した。

そこでヒト培養メラノサイトを用いたin vitro試験において各植物抽出物を1%濃度で添加し、SCF/c-kitの特異的結合量を測定したところ、以下の表のように、

植物 SCF結合阻害率(%)
カンゾウ 71.0
アスパラサスリネアリス 40.4
アセンヤク 34.1
ナギイカダ 31.5
シコン 29.1
エンメイソウ 27.4
トウガラシ 25.0
ウコン 20.2
コンフリー 17.3
ノバラ 17.0
ユリ 11.0
チャ 63.0
チョウジ 49.9
ツバキ 45.0

ノバラ抽出物は、c-kitレセプターに対するSCFの結合阻害活性を有することが認められた。

また配合量は通常0.00001%~1%が好ましく、とくに0.0001%~0.1%が好ましい。

このような検証結果が明らかにされており(文献5:2002)、カニナバラ果実エキスにSCF結合阻害による色素沈着抑制作用が認められています。

エラスターゼ活性阻害による抗老化作用

エラスターゼ活性阻害による抗老化作用に関しては、まず前提知識として皮膚の構造とエラスチンおよびエラスターゼについて解説します。

以下の皮膚の構造図をみてもらうとわかるように、

皮膚の構造と皮膚の主要成分図

皮膚は大きく表皮と真皮に分かれており、表皮は主に紫外線や細菌・アレルゲン・ウィルスなどの外的刺激から皮膚を守る働きと水分を保持する働きを担っており、真皮はプロテオグリカン(ヒアルロン酸およびコンドロイチン硫酸含む)・コラーゲン・エラスチンで構成された細胞外マトリックスを形成し、水分保持と同時に皮膚のハリ・弾力性に深く関与しています。

エラスチンは、2倍近く引き伸ばしても緩めるとゴムのように元に戻る弾力繊維で、コラーゲンとコラーゲンの間にからみあうように存在し、コラーゲン同士をバネのように支えて皮膚の弾力性を保っています(文献8:2002)

エラスターゼは、エラスチンを分解する酵素であり、通常はエラスチンの産生と分解がバランスすることで一定のコラーゲン量を保っていますが、皮膚に炎症や刺激が起こるとエラスターゼが活性化し、エラスチンの分解が促進されることでエラスチンの質的・量的減少が起こり、皮膚老化の一因となると考えられています。

このような背景から、皮膚のハリ・弾力を維持するエラスチンの変性を防止をするためにエラスターゼの活性を抑制することは重要であると考えられます。

2002年に一丸ファルコスによって公開された技術情報によると、

エラスターゼ活性阻害作用がある有用な植物の開発をテーマとし、探索したところ、ウコンセイヨウノコギリソウゼニアオイタイム、ヤーコン、ローズヒップにエラスターゼの活性抑制効果を見出した。

invitro試験において膵臓由来エラスターゼおよび合成基質N-succinyl-ala-ala-ala-p-nitroanildeを用いて各植物抽出物を0.01%濃度で添加し、また比較対照としてグリチルリチン酸ジカリウムを用いて評価したところ、以下のグラフのように、

各植物抽出物のエラスターゼ活性阻害作用

0.01%ローズヒップ抽出物は、エラスターゼ活性を抑制することが確認された。

このような検証結果が明らかにされており(文献7:2002)、カニナバラ果実エキスにエラスターゼ活性阻害による抗老化作用が認められています。

実際の使用製品の種類や数および配合量は、海外の2016-2017年の調査結果になりますが、以下のように報告されています。

以下表におけるリーブオン製品は、付けっ放し製品(スキンケア製品やメイクアップ製品など)を表しており、またリンスオフ製品というのは、洗い流し製品(シャンプー、洗顔料、クレンジングなど)を指します。

カニナバラ果実エキスの配合製品数と配合量の調査結果(2016-2017年)

スポンサーリンク

カニナバラ果実エキスの安全性(刺激性・アレルギー)について

カニナバラ果実エキスの現時点での安全性は、外原規2006規格の基準を満たした成分が収載される医薬部外品原料規格2006に収載されており、また10年以上の使用実績があり、化粧品配合量および通常使用下において、一般的に皮膚刺激および皮膚感作性(アレルギー性)はほとんどないと考えられます。

以下は、この結論にいたった根拠です。

皮膚刺激性および皮膚感作性(アレルギー性)について

Cosmetic Ingredient Reviewの「Safety Assessment of Rosa canina-derived Ingredients as Used in Cosmetics」(文献4:2017)によると、

  • [ヒト試験] 10人の被検者に0.0975%カニナバラ果実エキスを含む化粧品を48時間閉塞パッチ適用、パッチ除去後に試験部位を評価したところ、製品は非刺激性に分類された(Anonymous,2016a)
  • [ヒト試験] 110人の健常な被検者の背中にカニナバラ果実エキスを含む化粧品を誘導期間において3週間にわたって閉塞パッチ適用し、2週間の休息期間を設けた後にチャレンジパッチを適用したところ、誘導期間およびチャレンジ期間のどちらも非刺激性および非感作性に分類された(Anonymous,2016b)

一丸ファルコスの安全性試験データ(文献7:2002)によると、

  • [動物試験] 3匹のウサギの除毛した背部に0.5%ローズヒップ抽出物水溶液を塗布し、塗布24、48および72時間後に一次刺激性を紅斑および浮腫を指標として評価したところ、すべてのウサギにおいて紅斑および浮腫を認めず、陰性と判断された
  • [動物試験] 3匹のモルモットの除毛した側腹部に0.5%ローズヒップ抽出物水溶液0.5mLを1日1回週5回、2週間にわたって適用し、各週の最終日の翌日に紅斑および浮腫を指標として刺激性を評価したところ、すべてのウサギにおいて塗布後2週間にわたって紅斑および浮腫を認めず、累積刺激性に関しては問題がないものと判断された

と記載されています。

試験データをみるかぎり、共通して皮膚刺激および皮膚感作の報告がないため、皮膚刺激性および皮膚感作性(アレルギー性)はほとんどないと考えられます。

眼刺激性について

詳細な試験データはみあたらず、データ不足のため詳細は不明です。

∗∗∗

カニナバラ果実エキスは保湿成分、収れん成分、美白成分、抗老化成分にカテゴライズされています。

成分一覧は以下からお読みください。

参考:保湿成分 収れん成分 美白成分 抗老化成分

∗∗∗

文献一覧:

  1. 日光ケミカルズ(2006)「植物・海藻エキス」新化粧品原料ハンドブックⅠ,379.
  2. 林真一郎(2016)「ローズヒップ」メディカルハーブの事典 改定新版,198-199.
  3. ジャパンハーブソサエティー(2018)「ロサ・カニナ」ハーブのすべてがわかる事典,221.
  4. Cosmetic Ingredient Review(2017)「Safety Assessment of Rosa canina-derived Ingredients as Used in Cosmetics」Final Report.
  5. 花王株式会社(2002)「SCF結合阻害剤」特開2002-302451.
  6. N W Lukacs,et al(1996)「Stem cell factor (c-kit ligand) influences eosinophil recruitment and histamine levels in allergic airway inflammation.」The Journal of Immunology(156)(10),3945-3951.
  7. 一丸ファルコス株式会社(2002)「エラスターゼ活性阻害剤及び化粧料組成物」特開2002-205950.
  8. 朝田 康夫(2002)「真皮の構造は」美容皮膚科学事典,30.

スポンサーリンク

TOPへ