オクラ果実エキスとは…成分効果と毒性を解説

保湿 抗老化
オクラ果実エキス
[化粧品成分表示名称]
・オクラ果実エキス

[医薬部外品表示名称]
・オクラエキス

アオイ科植物オクラ(学名:Abelmoschus esculentus = Hibiscus esculentus 英名:okra)の未完熟果実からエタノールまたはこれらの混液で抽出して得られる抽出物植物エキスです。

オクラは東北アフリカ(エチオピア・エリトリア地区)を原産とし、エチオピアから北アフリカ、アラビア、インドへ広がっていき、1658年にアフリカからブラジルに、1748年には米国東部フィラデルフィアに導入され、1860年代には一般的な野菜としての地位を確立し、現在は主にナイジェリアやインドで栽培されています(文献1:1981;文献2:2020)

日本においては幕末頃に米国から導入したとされる記録があるものの、一般に普及せず、1970年以降に新しい高級野菜として注目されるようになり、現在は鹿児島県、高知県、沖縄県、熊本県などを中心に栽培されています(文献1:1981;文献2:2020)

オクラ果実エキスは天然成分であることから、地域、時期、抽出方法によって成分組成に差異があると推察されますが、その成分組成は主に、

分類 成分名称
糖質 多糖 アラビノガラクタン、フルクタン、ガラクタン、グルカン など
アミノ酸 アスパラギン、グルタミンアスパラギン酸グルタミン酸アラニン など

これらの成分で構成されていることが報告されています(文献3:1984;文献4:2017)

オクラ果実の化粧品以外の主な用途としては、日本の食品分野においては10-15cmほどに成長した段階の若い果実が生食用として広く用いられています(文献4:2017)

化粧品に配合される場合は、

これらの目的で、スキンケア化粧品、ボディケア製品、メイクアップ化粧品、化粧下地製品、洗顔料、洗顔石鹸、クレンジング製品、シャンプー製品、コンディショナー製品など様々な製品に使用されています。

角質層水分量増加による保湿作用

角質層水分量増加による保湿作用に関しては、まず前提知識として皮膚最外層である角質層の構造と役割について解説します。

直接外界に接する皮膚最外層である角質層は、以下の図のように、

角質層の構造

天然保湿因子を含む角質と角質の間を細胞間脂質で満たした、レンガとモルタルの関係と同様の構造となっており、この構造が保持されることによって、外界からの物理的あるいは化学的影響から身体を守り、かつ体内の水分が体外へ過剰に蒸散していくのを防ぐとともに一定の水分を保持する役割を担っています(文献5:2002;文献6:1990)

一方で、老人性乾皮症やアトピー性皮膚炎においては、角質細胞中のアミノ酸などの天然保湿因子が顕著に低下していることが報告されていることから(文献7:1989;文献8:1991)、角質層の水分量を増加することは、肌の乾燥の改善、ひいては皮膚の健常性の維持につながると考えられています。

このような背景から、角質層の水分量が低下している場合において角質層の水分量を増やすことは、肌の乾燥の改善ひいては皮膚の健常性の維持につながると考えられています。

1984年に一丸ファルコスによって報告されたオクラ果実エキスのヒト角質層水分量への影響検証によると、

被検者の前腕屈側に0.5%オクラ果実エキス水溶液を、また対照として精製水をそれぞれ塗布し、塗布開始から30分後までの角層コンダクタンス(∗1)の変化率を測定したところ、以下のグラフのように、

∗1 コンダクタンスとは、皮膚に電気を流した場合の抵抗(電気伝導度:電気の流れやすさ)を表し、角層水分量が多いと電気が流れやすくなり、コンダクタンス値が高値になることから、角層水分量を調べる方法として角層コンダクタンスを経時的に測定する方法が定着しています。ここでは塗布後の経過時間によって角層コンダクタンス値の変化率が小さいと角層水分の増加が高く、保湿性が高いと評価しています。

オクラ果実エキスの角質層水分量増加作用

オクラ果実エキスは、角質層水分量増加作用を有していることが確認された。

また、実際に被検者に5%オクラ果実エキス配合化粧水と対照としてオクラ果実エキス未配合化粧水を塗布し、同様に塗布開始から30分後までの角層コンダクタンスの変化率を測定したところ、以下のグラフのように、

オクラ果実エキス配合化粧水の角質層水分量増加作用

オクラ果実エキス配合化粧水塗布部位は、未配合化粧水と比較して角質層の水分量増加率が高いことが確認された。

このような試験結果が明らかにされており(文献3:1984)、オクラ果実エキスに角質層水分量増加による保湿作用が認められています。

ヒアルロン酸合成促進による抗老化作用

ヒアルロン酸合成促進による抗老化作用に関しては、まず前提知識として真皮の構造、役割および紫外線照射に対するヒアルロン酸への影響について解説します。

真皮については、以下の真皮構造図をみてもらうとわかりやすいと思いますが、

真皮の構造

表皮を下から支える真皮を構成する成分としては、細胞成分と線維性組織を形成する間質成分(細胞外マトリックス)に二分されますが、主成分である間質成分は大部分がコラーゲンからなる膠原線維とエラスチンからなる弾性繊維、およびこれらの間を埋める基質で占められており、細胞はその間に散在しています(文献9:2002;文献10:2018)

間質成分の大部分を占めるコラーゲンは、膠質状の太い繊維であり、その繊維内に水分を保持しながら皮膚の張りを支えています(文献9:2002)

このコラーゲンは、Ⅰ型コラーゲン(80-85%)とⅢ型コラーゲン(10-15%)が一定の割合で会合(∗2)することによって構成されており(文献11:1987)、Ⅰ型コラーゲンは皮膚や骨に最も豊富に存在し、強靭性や弾力をもたせたり、組織の構造を支える働きが、Ⅲ型コラーゲンは細い繊維からなり、しなやかさや柔軟性をもたらす働きがあります(文献12:2013)

∗2 会合とは、同種の分子またはイオンが比較的弱い力で数個結合し、一つの分子またはイオンのようにふるまうことをいいます。

エラスチン(elastin)を主な構成成分とする弾性繊維は、皮膚の弾力性をつくりだす繊維であり、コラーゲンとコラーゲンの間に絡み合うように存在し、コラーゲン同士をバネのように支えて皮膚の弾力性を保持しています(文献9:2002)

基質は、主に糖タンパク質(glycoprotein)プロテオグリカン(proteoglycan)およびグリコサミノグリカン(glycosaminoglycan)で構成されたゲル状物質であり、これらの分子が水分を保持し、コラーゲンやエラスチンと結合して繊維を安定化させることにより、皮膚は柔軟性を獲得しています(文献0:2002;文献10:2018)

プロテオグリカンは、軸タンパクにグリコサミノグリカンが多数結合した分子量10万-100万以上の巨大な分子であり、グリコサミノグリカンは酸性ムコ多糖類であるヒアルロン酸コンドロイチン硫酸を主成分とし、ヒアルロン酸は皮膚中の水分の大量に保持に、コンドロイチン硫酸は繊維の支持や他の基質の保持にそれぞれ働いています(文献10:2018)

細胞成分として線維芽細胞(fibroblast)は、真皮に分散しており、コラーゲン繊維や弾性繊維、ムコ多糖を産生する細胞であることから、必要に応じて線維芽細胞が活発に働きこれらの物質が順調につくられていることが、皮膚の張りや弾力を維持する上で重要です(文献9:2002)

真皮の働きを要約すると、

  • コラーゲン繊維が水分を保持しながら皮膚の張りを支持
  • エラスチンを主とした弾性繊維がコラーゲン同士をバネのように支えて皮膚の弾力性を保持
  • 基質(ゲル状物質)が水分を保持し、コラーゲン繊維と弾性繊維を安定化

それぞれがこのように働くことで、皮膚は張りや柔軟性・弾性を獲得しています。

一方で、紫外線を浴びる時間や頻度に比例して、間質成分であるコラーゲン、エラスチン、ムコ多糖類への影響が大きくなり、シワの形成促進、色素沈着の増加など老化現象が徐々に進行することが知られています(文献13:2002)

ヒアルロン酸の発現に対する紫外線の作用は、照射部位、照射量、照射時間、照射後の経過時間などで様々な挙動を示すことが報告されていますが(文献14:2007;文献15:2007)、何年もの長期にわたって紫外線を暴露することでシワが形成される事実から、少なくとも長期間にわたる紫外線照射はヒアルロン酸合成遺伝子の発現を抑制し、その結果としてヒアルロン酸の産生量を減少させ、皮膚の弾力の低下を引き起こすと考えられています(文献16:2010)

このような背景から、ヒアルロン酸の産生・合成を促進することは、長期的紫外線曝露による光老化の抑制に重要なアプローチのひとつであると考えられます。

2004年に一丸ファルコスによって報告されたオクラ果実エキスのヒアルロン酸およびヒト角質層水分量への影響検証によると、

in vitro試験において、正常ヒト新生児線維芽細胞1mLを播種した5%牛胎児血清含有培地を培養し、0.5%牛胎児血清含有培地に交換した後に、オクラ果実エキスを最終濃度10ppm(0.001%)となるように添加し、またブランク(∗3)として精製水を、陽性対照として最終濃度0.1mMに調製したN-アセチルグルコサミンを添加し、24時間培養後の上清の細胞あたりのヒアルロン酸量を測定したところ、以下のグラフのように、

∗3 ブランクとは、評価する対象物を抜いた状態を指し、ここではショウブ根茎エキスを除いた蒸留水のみのものを指します。

オクラ果実エキスのヒアルロン酸産生促進作用

オクラ果実エキスは、ヒアルロン酸の産生(合成)を有意に促進する作用を有することが確認された。

次に、20人の女性被検者(25-50歳)を10人1グループとし、1つのグループには5%オクラ果実エキス配合乳液を1日2回(朝晩)3ヶ月にわたって顔面に塗布してもらい、残りの1つのグループには対照としてオクラ果実エキス未配合乳液を同様に塗布してもらった。

3ヶ月後に「有効:肌のハリ・ツヤが増した」「やや有効:肌のハリ・ツヤがやや増した」「無効:使用前と変化なし」の基準で評価したところ、以下の表のように、

試料 肌のハリ・ツヤ改善効果(人数)
有効 やや有効 無効
オクラ果実エキス配合乳液 6 4 0
乳液のみ(対照) 0 4 6

5%オクラ果実エキス配合乳液は、有意に肌にハリ・ツヤを与えることが確認された。

このような試験結果が明らかにされており(文献17:2004)、オクラ果実エキスにヒアルロン酸合成促進による抗老化作用が認められています。

オクラ果実エキスの安全性(刺激性・アレルギー)について

オクラ果実エキスの現時点での安全性は、

  • 外原規2021規格の基準を満たした成分が収載される医薬部外品原料規格2021に収載
  • 30年以上の使用実績
  • 皮膚一次刺激性:ほとんどなし
  • 皮膚累積刺激性:ほとんどなし
  • 眼刺激性:詳細不明
  • 皮膚感作性(アレルギー性):ほとんどなし(データなし)

このような結果となっており、化粧品配合量および通常使用下において、一般的に安全性に問題のない成分であると考えられます。

以下は、この結論にいたった根拠です。

皮膚刺激性について

一丸ファルコスの安全性試験データ(文献17:2004)によると、

  • [動物試験] 3匹のモルモットの剪毛した背部に固形分濃度2%オクラ果実エキス水溶液0.03mLを塗布し、塗布24,48および72時間後に紅斑および浮腫を指標として一次刺激性を評価したところ、いずれのモルモットも紅斑および浮腫を認めず、この試験物質は皮膚一次刺激性に関して問題がないものと判断された
  • [動物試験] 3匹のモルモットの剪毛した側腹部に固形分濃度2%オクラ果実エキス水溶液0.5mLを1日1回週5回、2週にわたって塗布し、各塗布日および最終塗布日の翌日に紅斑および浮腫を指標として皮膚刺激性を評価したところ、いずれのモルモットも2週間にわたって紅斑および浮腫を認めず、この試験物質は皮膚累積刺激性に関して問題がないものと判断された

と記載されています。

試験データをみるかぎり、共通して皮膚刺激なしと報告されているため、一般に皮膚刺激性はほとんどないと考えられます。

眼刺激性について

試験結果や安全性データがみあたらないため、現時点ではデータ不足により詳細は不明です。

皮膚感作性(アレルギー性)について

医薬部外品原料規格2021に収載されており、30年以上の使用実績がある中で重大な皮膚感作の報告がみあたらないため、化粧品配合量および通常使用下において、一般的に皮膚感作性(アレルギー性)はほとんどないと考えられますが、詳細な安全性試験データがみあたらず、データ不足のため詳細は不明です。

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オクラ果実エキスは保湿成分、抗老化成分にカテゴライズされています。

成分一覧は以下からお読みください。

参考:保湿成分 抗老化成分

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参考文献:

  1. 西 貞夫(1981)「野菜あれこれ(5)」調理科学(14)(1),19-26.
  2. 東京植物検疫協会(2020)「東京港に輸入される植物類(31)オクラ」東京植検だより(212).
  3. 一丸ファルコス株式会社(1984)「オクラ未完熟果実抽出物含有化粧料」特開昭59-093010.
  4. 杉田 浩一, 他(2017)「オクラ」新版 日本食品大事典,128-129.
  5. 朝田 康夫(2002)「保湿能力と水分喪失の関係は」美容皮膚科学事典,103-104.
  6. 田村 健夫, 他(2001)「表皮」香粧品科学 理論と実際 第4版,30-33.
  7. I Horii, et al(1989)「Stratum corneum hydration and amino acid content in xerotic skin」British Journal of Dermatology(121)(5),587-592.
  8. M. Watanabe, et al(1991)「Functional analyses of the superficial stratum corneum in atopic xerosis」Archives of Dermatology(127)(11),1689-1692.
  9. 朝田 康夫(2002)「真皮のしくみと働き」美容皮膚科学事典,28-33.
  10. 清水 宏(2018)「真皮」あたらしい皮膚科学 第3版,13-20.
  11. D.R. Keene, et al(1987)「Type Ⅲ collagen can be present on banded collagen fibrils regardless of fibril diameter」Journal of Cell Biology(105)(5),2393–2402.
  12. 村上 祐子, 他(2013)「加齢にともなうⅢ型コラーゲン/Ⅰ型コラーゲンの比率の減少メカニズム」日本化粧品技術者会誌(47)(4),278-284.
  13. 朝田 康夫(2002)「急性と慢性の皮膚障害とは」美容皮膚科学事典,195.
  14. M. Averbeck, et al(2007)「Differential Regulation of Hyaluronan Metabolism in the Epidermal and Dermal Compartments of Human Skin by UVB Irradiation」Journal of Investigative Dermatology(127)(3),687-697.
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  16. A. Kon(2010)「皮膚のヒアルロン酸:各種病態との関連」Trends in Glycoscience and Glycotechnology(22)(124),68-79.
  17. 一丸ファルコス株式会社(2004)「ヒアルロン酸合成促進剤」特開2004-051533.

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