アルテア根エキスとは…成分効果と毒性を解説

保湿 ヘアコンディショニング 消臭
アルテア根エキス
[化粧品成分表示名称]
・アルテア根エキス

[医薬部外品表示名称]
・アルテアエキス

アオイ科植物ウスベニタチアオイ(学名:Althaea officinalis 英名:Marsh mallow)の根からエタノールBG、またはこれらの混液で抽出して得られる抽出物植物エキスです。

ウスベニタチアオイ(薄紅立葵)は、地中海沿岸から西アジアを原産とし、ヨーロッパではギリシャ時代から喉や胃の痛みを緩和する薬草として利用され、19世紀には根の粉末を咳止めトローチの原料として用いられてきた歴史があり、薬用植物として広く知られています(文献1:2011)

アルテア根エキスは天然成分であることから、地域、時期、抽出方法によって成分組成に差異があると推察されますが、その成分組成は主に、

分類 成分名称
糖質 多糖 粘液質構成成分として、デンプン、アラビノガラクタン、ペントザン、グラクタン など
フラボノイド フラボノール イソケルシトリン、ケンペロール など
アミノ酸 アスパラギン など

これらの成分で構成されていることが報告されています(文献2:2016;文献3;2013;文献4:2020)

ウスベニタチアオイの根の化粧品以外の主な用途としては、メディカルハーブ分野において粘液質が粘膜に潤いを与え刺激から保護することから空咳、喉の痛み、気管支炎、口内炎、消化管や泌尿器の炎症などにハーブティー、マウスウォッシュ、うがい薬として用いられ、また粘液質が患部を保護することから湿疹や皮膚炎に湿布薬などに用いられます(文献2:2016)

化粧品に配合される場合は、

これらの目的で、スキンケア化粧品、ボディ&ハンドケア製品、メイクアップ化粧品、シート&マスク製品、洗顔料、洗顔石鹸、クレンジング製品、シャンプー製品、コンディショナー製品、ボディソープ製品、ボディ石鹸、アウトバストリートメント製品、ヘアスタイリング製品、デオドラント製品など様々な製品に汎用されています。

皮表柔軟化による保湿作用

皮表柔軟化による保湿作用に関しては、まず前提知識として皮膚最外層である角質層の構造と役割について解説します。

直接外界に接する皮膚最外層である角質層は、以下の図のように

角質層の構造

天然保湿因子を含む角質と角質の間を細胞間脂質で満たした、レンガとモルタルの関係と同様の構造となっており、この構造が保持されることによって、外界からの物理的あるいは化学的影響から身体を守り、かつ体内の水分が体外へ過剰に蒸散していくのを防ぐとともに一定の水分を保持する役割を担っています(文献5:2002;文献6:2001)

一方で、老人性乾皮症やアトピー性皮膚炎においては、角質細胞中のアミノ酸などの天然保湿因子が顕著に低下していることが報告されています(文献7:1989;文献8:1991)

このような背景から、皮表を柔軟化することは肌の乾燥の改善ひいては皮膚の健常性の維持につながると考えられています。

アルテア根エキスは、粘液質多糖の含有量が多いことから(文献2:2016;文献3;2013;文献4:2020)、皮膚を保護・柔軟化する保湿効果が高く(文献4:2020;文献9:2012)、皮表柔軟化による保湿効果目的でスキンケア化粧品、ボディケア製品、ハンドケア製品、メイクアップ化粧品、洗顔料、クレンジング製品、シャンプー製品、コンディショナー製品、アウトバストリートメント製品、ボディソープ製品などに使用されています。

ただし、保湿効果についての適切なヒト試験データがみつからなかったため、みつかりしだい追補します。

ヘアコンディショニング作用

ヘアコンディショニング作用に関しては、1995年に資生堂によって報告されたアルテア根エキスの毛髪摩擦およびヒト毛髪に対する影響検証によると、

あらかじめ市販のアルキル硫酸エステル塩系シャンプーで洗浄し十分に水ですすいだ毛髪を、1%アルテア根エキス(30%エタノール抽出)水溶液中または対照として1%30%エタノール水溶液中にそれぞれ40℃で10分間浸漬し、40℃の水で十分にすすいだ後に風乾するという工程を5回実施し、これらの毛髪の静摩擦係数および動摩擦係数(∗1)を測定し平均値を算出したところ、以下の表のように、

∗1 摩擦とは、触れ合っている物体と物体のうち片方が運動しようとする時または運動している時、その運動を妨げようとする現象のことをいい、摩擦には静止した物体との間にはたらく「静摩擦(静止摩擦)」と互いに対して運動している「動摩擦(運動摩擦)」の2つの領域があります。たとえば斜面上の物体が滑り落ちずにその場に止まることができるのは静止摩擦力のはたらきであり、氷の上を滑るカーリングの石はそれを減速させるような動摩擦力を受けます。毛髪において摩擦係数は、その数値が高いほど摩擦力が高い(平滑性や柔軟性が低い)ことを示し、その数値が低いほど摩擦力が低い(平滑性や柔軟性が高い)ことを示します。

試料 静摩擦係数 動摩擦係数
アルテア根エキス 0.320 0.340
30%エタノール溶液のみ(対照) 0.325 0.370

1%濃度アルテア根エキス水溶液で処理した毛髪は、未処理の毛髪の摩擦係数よりも低い値を示したことから、1%アルテア根エキス水溶液で処理した毛髪の平滑性および柔軟性が優れていることが確認された。

次に、20人の女性被検者(18-42歳)に市販ヘアシャンプーで洗髪後に1%アルテア根エキスを含むヘアリンスまたは比較対照としてアルテア根エキス未配合ヘアリンスそれぞれ12gを塗布してもらい、約40℃の水ですすぎ洗してからタオルドライおよびドライヤー乾燥後の毛髪の感触を「良い」「普通」「良くない」の3段階で判定してもらった。

その結果、1%濃度アルテア根エキスを含むヘアリンスは、未配合ヘアリンスと比較してうるおいとしなやかさに優れていることが確認された。

このような試験結果が明らかにされており(文献10:1995)、アルテア根エキスにヘアコンディショニング作用が認められています。

アルカリホスファターゼ活性阻害による腋臭抑制作用

アルカリホスファターゼ活性阻害による腋臭抑制作用に関しては、まず前提知識として腋臭発生のメカニズムとアルカリホスファターゼについて解説します。

以下の体毛の構造図をみてもらうとわかりやすいと思うのですが、

体毛の構造図

ヒトの汗腺には、生まれた時からほぼ全身に分布するエクリン汗腺と思春期に身体の特定部位に限って発達するアポクリン汗腺の2種類があり、一般に汗といえばエクリン汗腺から出る汗のことをいいます(文献11:2002;文献12:2018)

一方で、アポクリン汗腺が存在する腋の下などから出る汗の成分は、エクリン汗腺のものと大きな差はないものの、タンパク質や脂肪を含んでおり、それらの物質が皮膚常在菌などによって分解されると、腋臭などの臭気を帯びることが知られています(文献11:2002;文献12:2018)

また、アポクリン汗腺の筋上皮細胞と分泌細胞が接する部位においてアルカリフォスファターゼ(alkaline phosphatase:ALP)の存在が認められており(文献13:1995)、代謝が異常に旺盛な部分ではアルカリフォスファターゼの活性も増強することなどから、アルカリフォスファターゼが腋臭の原因と考えられる離出分泌に関与している可能性が高いと考えられています。

このような背景から、腋においてアルカリフォスファターゼを阻害することは、腋臭の抑制に重要なアプローチであると考えられます。

2001年にクラシエ製薬によって報告されたアルテア根エキスのアルカリフォスファターゼおよび腋臭に対する影響検証によると、

in vitro試験において、アルテア50%BG抽出液50または100μLに基質緩衝液0.8mLを加えて37℃で5分間加温し、ウサギ血清アルカリフォスファターゼ100μLを加えて反応させた後、吸光度を測定した。

また、対照としてアルテア50%BG抽出液の代わりに50%BG溶液を用いて同様の工程を実施し、アルカリフォスファターゼ阻害率を算出したところ、以下のグラフのように、

アルテア50%BG抽出液のアルカリフォスファターゼ阻害作用

アルテア50%BG抽出液は、優れたアルカリフォスファターゼ阻害活性を示した。

次に、腋臭を有する3人の被検者の右腋に10%アルテア根エキス(50%BG抽出)配合ローションを、左腋に対照としてアルテア根エキス未配合ローションをそれぞれ塗布し、1週間後に両腋の臭いを比較して「著効」「効果あり」「やや効果あり」「効果なし」の4段階で回答してもらったところ、いずれの被検者も「効果あり」と回答し、アルテア根エキスに腋臭を抑制する効果が確認された。

このような試験結果が明らかにされており(文献14:2001)、アルテア根エキスにアルカリホスファターゼ活性阻害による腋臭抑制作用が認められています。

複合植物エキスとしてのアルテア根エキス

アルテア根エキスは、他の植物エキスとあらかじめ混合された複合原料があり、アルテア根エキスと以下の成分が併用されている場合は、複合植物エキス原料として配合されている可能性が考えられます。

原料名 フィトデセンシタイザー ABBA
構成成分 BGボタンエキスアルテア根エキスフユボダイジュ花エキスアルニカ花エキス
特徴 多角的に抗炎症・抗アレルギーにアプローチする4種類の植物抽出混合液

アルテア根エキスの安全性(刺激性・アレルギー)について

アルテア根エキスの現時点での安全性は、

  • 外原規2006規格の基準を満たした成分が収載される医薬部外品原料規格2006に収載
  • 20年以上の使用実績
  • 皮膚刺激性:ほとんどなし
  • 眼刺激性:詳細不明
  • 皮膚感作性(アレルギー性):ほとんどなし(データなし)

このような結果となっており、化粧品配合量および通常使用下において、一般的に安全性に問題のない成分であると考えられます。

以下は、この結論にいたった根拠です。

皮膚刺激性について

一丸ファルコスの安全性試験データ(文献15:1999)によると、

  • [動物試験] 3匹のウサギの剪毛した背部に乾燥固形分濃度0.5%アルテア根エキス水溶液0.03mLを塗布し、塗布24,48および72時間後にDraize法の判定基準に基づいて一次刺激性を評価したところ、いずれのウサギも紅斑および浮腫を認めず、この試験物質は皮膚一次刺激性に関して問題がないものと判断された
  • [動物試験] 3匹のモルモットの剪毛した側腹部に乾燥固形分濃度0.5%アルテア根エキス水溶液0.5mLを1日1回週5回、2週にわたって塗布し、各塗布日および最終塗布日の翌日にDraize法の判定基準に基づいて皮膚刺激性を評価したところ、いずれのモルモットも2週間にわたって紅斑および浮腫を認めず、この試験物質は皮膚累積刺激性に関して問題がないものと判断された

と記載されています。

試験データをみるかぎり、皮膚刺激なしと報告されているため、一般に皮膚刺激性はほとんどないと考えられます。

眼刺激性について

試験結果や安全性データがみあたらないため、現時点ではデータ不足により詳細は不明です。

皮膚感作性(アレルギー性)について

医薬部外品原料規格2006に収載されており、20年以上の使用実績がある中で重大な皮膚感作の報告がみあたらないため、化粧品配合量および通常使用下において、一般的に皮膚感作性(アレルギー性)はほとんどないと考えられますが、詳細な安全性試験データがみあたらず、データ不足のため詳細は不明です。

∗∗∗

アルテア根エキスは保湿成分にカテゴライズされています。

成分一覧は以下からお読みください。

参考:保湿成分

∗∗∗

参考文献:

  1. 鈴木 洋(2011)「マーシュマロウ」カラー版健康食品・サプリメントの事典,178.
  2. 林 真一郎(2016)「マシュマロウ(アルテア)」メディカルハーブの事典 改定新版,162-163.
  3. A.E. Al-Snafi(2013)「The Pharmaceutical importance of Althaea officinalis and Althaea rosea: A review」International Journal of PharmTech Research(5)(3),1378-1385.
  4. 宇山 侊男, 他(2020)「アルテア根エキス」化粧品成分ガイド 第7版,91.
  5. 朝田 康夫(2002)「保湿能力と水分喪失の関係は」美容皮膚科学事典,103-104.
  6. 田村 健夫, 他(2001)「表皮」香粧品科学 理論と実際 第4版,30-33.
  7. I Horii, et al(1989)「Stratum corneum hydration and amino acid content in xerotic skin」British Journal of Dermatology(121)(5),587-592.
  8. M. Watanabe, et al(1991)「Functional analyses of the superficial stratum corneum in atopic xerosis」Archives of Dermatology(127)(11),1689-1692.
  9. 鈴木 一成(2012)「アルテアエキス」化粧品成分用語事典2012,227.
  10. 株式会社資生堂(1995)「頭髪化粧料」特開平07-215827.
  11. 朝田 康夫(2002)「アポクリン汗腺(体臭となって匂う汗)とは」美容皮膚科学事典,61-63.
  12. 清水宏(2018)「汗腺」あたらしい皮膚科学 第3版,25-26.
  13. K. Saga, et al(1995)「Ultrastructural localization of alkaline phosphatase activity in human eccrine and apocrine sweat glands」Journal of Histochemistry&Cytochemistry(43)(9),927-932.
  14. クラシエ製薬株式会社(2001)「腋臭防止剤」特開2001-288063.
  15. 一丸ファルコス株式会社(1999)「活性酸素消去剤及び美肌化粧料組成物」特開平11-246336.

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