アルカリゲネス産生多糖体とは…成分効果と毒性を解説

保湿 増粘 安定化成分 乳化
アルカリゲネス産生多糖体
[化粧品成分表示名称]
・アルカリゲネス産生多糖体

[医薬部外品表示名称]
・アルカリゲネス産生多糖体

[慣用名]
・アルカシーラン

アルカリゲネス属菌アルカリゲネス・レータス(学名:Alcaligenes latus)を培養して得られる、化学構造的に主としてグルコース、グルクロン酸、ラムノースからなる繰り返し構造の中で1つのグルコースの側鎖として1つのフコースが結合した、平均分子量5×10⁹の水溶性多糖類(微生物系高分子)です(文献1:1999;文献2:2015)

化粧品に配合される場合は、

これらの目的で、スキンケア化粧品、シート&マスク製品、日焼け止め製品、クレンジング製品、ファンデーション製品などに配合されています。

皮表柔軟化による保湿作用

皮表柔軟化による保湿作用に関しては、1999年にカネボウによって報告されたアルカリゲネス産生多糖体の吸湿性および保水性検証によると、

化粧品に用いられる保湿剤は、外部環境に影響されずに一定の水分を保持することが望ましいことから、アルカリゲネス産生多糖体そのものの吸湿性・保水性を検討した。

まず、吸湿性を検討するために、相対湿度をそれぞれ84%および33%に調整したデシケーター(∗1)に各保湿剤(アルカリゲネス産生多糖体、グリセリンヒドロキシエチルセルロースキサンタンガムヒアルロン酸Na)1gを放置し、2,4,8,24,32および48時間後に重量を計測したところ、以下のグラフのように、

∗1 デシケーターとは、主に液体・固体を乾燥した状態で保存するためのガラス製容器です。

各保湿剤の吸湿性比較(25℃, 相対湿度33%)

各保湿剤の吸湿性比較(25℃, 相対湿度84%)

アルカリゲネス産生多糖体は、グリセリンと比較して高湿度環境下では吸湿性が低く、低湿度環境下では比較的吸湿性が高いことが確認できた。

次に、相対湿度をそれぞれ38%および18%に調整したデシケーターに各保湿剤1gに0.1gの純水を添加したものを放置し、時間ごとに重量を測定したところ、以下のグラフのように、

各保湿剤の保湿性比較(25℃, 相対湿度38%)

各保湿剤の保湿性比較(25℃, 相対湿度18%)

アルカリゲネス産生多糖体は、比較的水分放出が少ないことが確認できた。

このような検証結果が明らかにされており(文献1:1999)、アルカリゲネス産生多糖体に皮表柔軟化による保湿作用が認められています。

多糖類であるアルカリゲネス産生多糖体は、分子内にイオン性の糖を有しており、このことが保湿力に大きく影響していると考えられています。

増粘

増粘に関しては、アルカリゲネス産生多糖体は、温度およびpHにほとんど影響を受けず、濃度依存的に粘度が高くなり、粘度特性としては水を物理的に吸収・拘束することにより含水ゲル化することが知られています(文献1:1999;文献2:2015)

また、低濃度においても高いチキソトロピー性(∗2)を示すことから、粘度調整とともになめらかな感触を付与する目的で使用されます(文献1:1999)

∗2 チキソトロピー性とは、混ぜたり振ったり、力を加えることで粘度が下がり、また時間の経過とともに元の粘度に戻る現象をいいます。よく例に出されるのはペンキで、ペンキは塗る前によくかき混ぜることで粘度が下がり、はけなどで塗りやすくなります。そしてペンキは塗られた直後に粘度が上がり(元に戻り)、垂れずに乾燥します。

乳化安定化

乳化安定化に関しては、水性成分-油性成分-非イオン界面活性剤による3成分乳化系にアルカリゲネス産生多糖体を添加し4成分乳化系にすることで乳化系がさらに安定化することが知られており(文献1:1999)、乳化安定化目的で乳化系製品に使用されます。

アルカリゲネス産生多糖体の乳化安定化メカニズムに関しては、アルカリゲネス産生多糖体は化学構造的に分岐鎖に疎水性の糖を有しており、分岐鎖に疎水性の糖を有する場合、疎水部で複合体を形成し、保護コロイド作用が強まり、乳化製剤がさらに安定化すると考えられています(文献1:1999)

三層乳化による乳化

三層乳化による乳化に関しては、まず前提知識として乳化と三層乳化の違いについて解説します。

乳化とは、1つの液体にそれと融け合わない別の液体を微細な粒子の状態に均一に分散させることであり、一般的には水性と油性の物質を混ぜ合わせた状態のことをいいます(文献3:1990)

ただし、水性と油性の物質を混ぜ合わせるだけでは時間がたつと再び分離してしまうため、乳化を安定させるためには以下のような界面活性剤を添加し、

非イオン界面活性剤の構造図

界面活性剤の親水基に水性物質を、新油基に油性物質をなじませることで界面活性剤が接着剤のような役割を果たし乳化が安定します。

そして、乳化の結果として生成された分散系溶液をエマルションといい、基本的な化粧品用エマルションとして、以下の図のように、

エマルションの基本構造

水を外部相とし、その中に油が微細粒子状に分散している水中油滴型(O/W型:Oil in Water type)と、それとは逆に油を外部相とし、その中に水が微細粒子状に分散している油中水滴型(W/O型:Water in Oil type)があります(文献3:1990)

身近にあるO/W型エマルションとしては、牛乳、生クリーム、マヨネーズなどがあり、一方でW/O型エマルションとしてはバター、マーガリンなどがあります。

一方で三層乳化法とは、界面活性剤を使用せず、水にも油剤にも溶解しない親水性ナノ粒子を分子間力(ファンデルワールス引力)で油滴表面に付着固定させることによって油滴表面の疎水性を親水性に変換させるという乳化方法であり(文献4:2016)、生成されるのはO/W型エマルションとなります。

従来の乳化と三層乳化の主な違いは、

  従来型乳化 三層乳化
性能 界面活性剤による乳化 三層乳化法による乳化
模式図 界面活性剤による乳化 三層乳化法による乳化
乳化剤の性質 水または油に溶解する物質 水にも油にも溶解しない物質
乳化作用 界面活性剤分子の吸着 親水性ナノ粒子の付着
乳化安定化機構 界面張力の低下 ファンデルワールス引力

このように報告されています(文献5:-)

アルカリゲネス産生多糖体は、三層乳化に親水性ナノ粒子として用いることで、ベタつきのないみずみずしい使用感のO/W型エマルションが生成されることから、界面活性剤フリーをコンセプトとした製品、日焼け止め製品、ファンデーション、クレンジング製品などに使用されています(文献6:2016)

アルカリゲネス産生多糖体は、医薬部外品(薬用化粧品)への配合において配合上限があり、配合範囲は以下になります。

種類 配合量
その他の薬用化粧品、腋臭防止剤、忌避剤 0.02

スポンサーリンク

アルカリゲネス産生多糖体の安全性(刺激性・アレルギー)について

アルカリゲネス産生多糖体の現時点での安全性は、

  • 外原規2006規格の基準を満たした成分が収載される医薬部外品原料規格2006に収載
  • 2000年からの使用実績
  • 皮膚刺激性:ほとんどなし(データなし)
  • 眼刺激性:詳細不明
  • 皮膚感作性(アレルギー性):ほとんどなし(データなし)

このような結果となっており、化粧品配合量および通常使用下において、一般的に安全性に問題のない成分であると考えられます。

以下は、この結論にいたった根拠です。

皮膚刺激性および皮膚感作性(アレルギー性)について

医薬部外品原料規格2006に収載されており、20年以上の使用実績がある中で重大な皮膚刺激および皮膚感作の報告がみあたらないため、化粧品配合量および通常使用下において、一般的に皮膚刺激および皮膚感作性(アレルギー性)はほとんどないと考えられますが、詳細な安全性試験データがみあたらず、データ不足のため詳細は不明です。

眼刺激性について

試験結果や安全データがみあたらないため、データ不足により詳細は不明です。

∗∗∗

アルカリゲネス産生多糖体は保湿成分、安定化成分にカテゴライズされています。

成分一覧は以下からお読みください。

参考:保湿成分 安定化成分

∗∗∗

文献一覧:

  1. 石畠 さおり(1999)「微生物産生吸水性バイオポリマーの化粧品原料としての有用性」Fragrance Journal(27)(7),83-90.
  2. 倉根 隆一郎(2015)「微生物産生吸水性バイオポリマーの化粧品原料としての有用性」THE CHEMICAL TIMES(238),10-15.
  3. 田村 健夫, 他(1990)「乳化作用」香粧品科学 理論と実際 第4版,270-273.
  4. 田嶋 和夫, 他(2016)「三相乳化法:通常の界面活性剤によらない乳化技術」日本化粧品技術者会誌(50)(4),283-293.
  5. 未来環境テクノロジー株式会社(-)「三相乳化技術とは」, <https://ku-mkt.co.jp/technology/> 2020年5月10日アクセス.
  6. 野畑靖浩(2016)「アルカリゲネス産生多糖体 アルカシーラン」グリーンバイオケミストリーの最前線,83-90.

スポンサーリンク

TOPへ