アマチャエキスとは…成分効果と毒性を解説

保湿 抗菌成分 抗老化成分
アマチャエキス
[化粧品成分表示名称]
・アマチャエキス

[医薬部外品表示名称]
・アマチャエキス

ユキノシタ科植物アマチャ(学名:Hydrangea Serrata or Hydrangea macrophylla)の葉・枝先からエタノールまたはこれらの混液で抽出して得られるエキスです。

アマチャエキスの成分組成は、抽出方法や天然成分のため国や地域および時期によって変化がありますが、主に、

  • ジヒドロイソクマリン類:フィロズルチン、ヒドランゲノール

などで構成されています(文献1:2006;文献3:1973)

アマチャは、本州の山間に自生し、日本各地の庭木などとして栽培されており、一般的には4月8日の釈迦の誕生を祝う灌仏会(かんぶつえ)でお釈迦様にアマチャをかけて供養するために用いられることで知られています。

アマチャの生の葉は苦くて甘味はなく、発酵させると甘くなりますが、これは葉の中の甘味成分が配糖体として含まれているためであり、この配糖体が酵素の作用で加水分解されると甘味の強いフィロズルチンに変化します(文献2:2011)

フィロズルチンは砂糖の約1,000倍(∗1)の甘さがあり、かつて砂糖が普及するまでは甘味料として使用されており(文献2:2011)、また糖尿病患者に砂糖代わりに生薬を煎じて用いられていました。

∗1 400倍と記述しているものもあります(文献4:1994)

中国では用いられないので生薬名はなく、日本では第16改正日本薬局方に収載されている薬物ですが、薬用としての歴史は浅く、主に甘味料や口腔清涼剤の原料として用いられています(文献4:1994)

化粧品に配合される場合は、

これらの目的で、スキンケア化粧品、ボディ&ハンドケア製品、リップケア製品、洗顔料などに使用されます(文献1:2006;文献5:2013;文献6:1994)

弱酸性皮膚における皮膚常在菌のバランス保持による抗菌作用

弱酸性皮膚における皮膚常在菌のバランス保持による抗菌作用に関しては、まず前提知識として皮膚常在菌について解説します。

一般に、健常なヒト皮膚上には皮膚常在菌と呼ばれる多種の微生物が常在して微生物叢を形成し、皮膚の恒常性を保つ一因となっており、皮膚常在菌には、主に、

  • アクネ菌(Propionibacterium acnes)
  • 表皮ブドウ球菌(Staphylococcus epidermidis)
  • 黄色ブドウ球菌(Staphylococcus aureus)

などが大半を占めています。

表皮ブドウ球菌と黄色ブドウ球菌は拮抗関係にあり、黄色ブドウ球菌に対して表皮ブドウ球菌の優位性を高めることが健康な皮膚をつくるための重要な要因のひとつであると考えられています(文献7:2001)

これら常在菌は、皮膚上でバリア機能として働いている一方で、皮脂分泌の亢進により皮脂貯留が起こることで増殖し、それにともなって増殖したアクネ菌や表皮ブドウ球菌に存在するリパーゼも増加することにより、皮脂成分であるトリグリセリドが分解され、遊離脂肪酸が増加し、炎症を引き起こすといわれています。

また健全な皮膚では常在菌の大部分を占める表皮ブドウ球菌の数に変動が少なく、一定の菌数を保っていることが報告されています(文献6:1994)

これらの背景から常在菌を一定に保つことにより、皮膚の炎症の予防および改善が期待できると考えられます。

1994年にクラブコスメチックによって公開された技術情報によると、

健常な皮膚は弱酸性を保っており、弱酸性で抗菌性を有する生薬抽出物の連用が、皮膚常在菌数を効果的にコントロールすると考え、弱酸性領域で殺菌・抗菌性を有する植物抽出物を検討した。

弱酸性条件下(pH5.5)で、各種抽出物(アマチャ、ワレモコウクジン、エンジュ、カリンエイジツシャクヤクボタンオウバクオウレン)0.05mLの種々の細菌に対する抗菌性をディスク法による薬剤感受性試験(∗2)によって阻止円の直径を計測したところ、以下の表のように、

∗2 ディスク法による薬剤感受性試験とは、抗菌薬または抗菌作用を有する植物抽出物の塗布したディスクを菌の中に1日置き、細菌に耐性があるかどうかを調べる方法で、耐性がなければディスクの周りに菌は繁殖せず、ディスクを中心とした円の直径を阻止円として計測します。

生薬名 黄色ブドウ球菌 表皮ブドウ球菌
アマチャ 15.2mm 12.0mm
ワレモコウ 12.0mm 12.3mm
クジン 17.0mm 19.5mm
エンジュ 14.0mm 13.7mm
カリン 14.0mm 10.0mm
エイジツ 10.5mm 13.0mm
シャクヤク 9.0mm 10.0mm
ボタン 10.0mm 10.2mm
オウバク 21.5mm 15.5mm
オウレン 24.5mm 18.3mm

アマチャ抽出物は、黄色ブドウ球菌および表皮ブドウ球菌に抗菌性を有していることが示された。

また、0.2%アマチャ抽出物の表皮ブドウ球菌に対する生育阻害率をpH5.5(弱酸性)およびpH7.2(中性)に調整して測定したところ、以下の表のように、

生薬名 pH5.5(弱酸性) pH7.2(中性)
アマチャ 99.1% 64.3%

アマチャ抽出物は、弱酸性下で有意な表皮ブドウ球菌阻害作用を有することを確認した。

このような検証結果が明らかにされており(文献6:1994)、アマチャエキスに弱酸性皮膚における皮膚常在菌(黄色ブドウ球菌、表皮ブドウ球菌)のバランス保持による抗菌作用が認められています。

オートファジーサイクル停滞改善による抗老化作用

オートファジーサイクル停滞改善による抗老化作用に関しては、まぜ前提知識としてオートファジーサイクルについて解説します。

オートファジーサイクルとは細胞が持つ代謝システムのひとつで、以下の図をみてもらうとわかりやすいと思うのですが、

オートファジーサイクルの流れ

細胞の中で古くなったタンパク質やミトコンドリア(細胞内小器官)などの不要な細胞を膜で隔離した後、膜内部に包み込まれたものを分解し、再生のための原料として供給するシステムのことです。

2013年にポーラ化成によって報告されたオートファジーサイクルの肌への影響とアマチャエキスのオートファジーサイクル改善効果検証によると、

オートファジーサイクルは近年注目度の高い研究領域となっていますが、肌のハリ・弾力を生み出す真皮での役割はまだほとんど知られていなかったため、研究したところ、オートファジーサイクルの停滞により、

  • 不要なものを包み込んだ膜構造物の代謝の働きが鈍化し、細胞の中に蓄積すること
  • コラーゲンなど真皮を形成する成分の産生を低下すること
  • エネルギー産生に必要であるニコチンアミドアデニンジヌクレオチド(NADH)の産生を低下させること

これらが明らかとなった。

これらの結果からオートファジーサイクルの停滞改善作用をもつ素材を探索するために、年齢を重ねてオートファジーサイクルが停滞した真皮線維芽細胞にアマチャエキスを添加し、オートファジーサイクルのスムーズさを表すオートファジー完遂度を調べたところ、以下のグラフのように、

アマチャエキスによるオートファジーサイクル改善作用

アマチャエキスに高いオートファジーサイクル完遂作用を見出した。

このような検証結果が明らかになっており(文献2:2013)、アマチャエキスにオートファジーサイクル改善による抗老化作用が認められています。

ポーラ化成の研究結果ですが、オリジナルアマチャエキスの使用ではないため、アマチャエキスに含まれるどの成分が影響をおよぼしているかは現段階では不明なもののアマチャエキスそのものの作用であると考えられます。

ただし、in vitro試験で濃度や期間が不明であり、化粧品での配合量も様々なため、試験よりも穏やかな作用であると考えられます。

スポンサーリンク

アマチャエキスの安全性(刺激性・アレルギー)について

アマチャエキスの現時点での安全性は、医療上汎用性があり有効性および安全性の基準を満たした成分が収載される日本薬局方ならびに外原規2006規格の基準を満たした成分が収載される医薬部外品原料規格2006に収載されており、また10年以上の使用実績があり、化粧品配合量および通常使用下において、一般的に皮膚刺激および皮膚感作性(アレルギー性)はほとんどないと考えられます。

ただし、詳細な試験データがみあたらず、データ不足のため詳細は不明です。

以下は、この結論にいたった根拠です。

皮膚刺激性および皮膚感作性(アレルギー性)について

化粧品配合量および通常使用下において、一般的に皮膚刺激および皮膚感作性(アレルギー性)はほとんどないと考えられますが、詳細な安全性試験データがみあたらず、データ不足のため詳細は不明です。

眼刺激性について

試験結果や安全性データがみあたらないため、現時点ではデータ不足により詳細は不明です。

∗∗∗

アマチャエキスは保湿成分、抗菌成分、抗老化成分にカテゴライズされています。

成分一覧は以下からお読みください。

参考:保湿成分 抗菌成分 抗老化成分

∗∗∗

文献一覧:

  1. 日光ケミカルズ(2006)「植物・海藻エキス」新化粧品原料ハンドブックⅠ,361.
  2. 鈴木 洋(2011)「甘茶(あまちゃ)」カラー版 漢方のくすりの事典 第2版,7.
  3. 金子 肇, 他(1973)「甘茶エキスの成分分析」日本農芸化学会誌(47)(10),605-609.
  4. 山原 條二, 他(1994)「甘茶の機能開発(第2報)甘茶エキスの抗潰瘍活性, 抗アレルギー活性及び利胆活性」YAKUGAKU ZASSHI(114)(6),401-413.
  5. “ポーラ化成株式会社”(2013)「オートファジーサイクル」の改善効果を持つ『アマチャエキス』を開発」, <http://www.pola-rm.co.jp/pdf/release_20130624_1.pdf> 2018年9月8日アクセス.
  6. 株式会社クラブコスメチックス(1994)「皮膚外用剤」特開平6-279256.
  7. 石坂 要, 他(2001)「健常人より分離した皮膚常在菌について」日本化粧品技術者会誌(35)(1),34-41.

スポンサーリンク

TOPへ