アセチルヒドロキシプロリンとは…成分効果と毒性を解説

保湿成分 バリア改善成分 抗アレルギー 抗老化成分
アセチルヒドロキシプロリン
[化粧品成分表示名称]
・アセチルヒドロキシプロリン

[医薬部外品表示名称]
・N-アセチル-L-ヒドロキシプロリン

哺乳類の生体内に存在する細胞外マトリックス構成成分であるコラーゲンに約10%含まれるヒドロキシプロリンをアセチル化処理したアミノ酸誘導体です。

ヒドロキシプロリンは、以下の図のように、

コラーゲンの構造

コラーゲンにおけるペプチド三重らせん構造を構成する3種類のアミノ酸のひとつで(文献2:2010)、三重らせんをファスナーのようにしっかり結びつけ、強固なコラーゲン繊維を形成する役割を担っています。

ヒドロキシプロリンには、表皮水分保持機能向上による保湿作用やセラミド合成促進によるバリア改善作用をはじめとする様々な効果が報告されていますが、以下のグラフのように、

アセチルヒドロキシプロリンの皮膚浸透性

ヒドロキシプロリンをアセチル化処理することによって皮膚への浸透性が向上し、この浸透性によってヒドロキシプロリンの有する効果のうち顕著に向上するものもあります(文献3:2003)

化粧品に配合される場合は、

これらの目的で、スキンケア化粧品、ボディケア製品、メイクアップ化粧品、ヘアケア製品、洗浄製品、など様々な製品に使用されます(文献4:2002;文献6:2003)

表皮水分保持機能向上による保湿作用

表皮水分保持機能向上による保湿作用に関しては、2002年に協和発酵キリンによって公開された技術情報によると、

4人の健常な皮膚を有する女性被検者(23-28歳)の前腕屈曲部にヒドロキシプロリンまたはアセチルヒドロキシプロリンを含む化粧料2μL/c㎡を1日2回(朝夕)3週間にわたって塗布し、経時的に朝の塗布前の水分量を伝導度変化(伝導度が高いほど水分含量が高いことを示す)を指標として測定したところ、以下の表のように、

試料 濃度 相対伝導度(%)
0日後 14日後 28日後 42日後 56日後
精製水 100.0 96.9 94.5 88.7 93.8
ヒドロキシプロリン 0.5 100.0 125.2 119.8 111.1 109.6
ヒドロキシプロリン 3 100.0 127.5 118.2 108.6 110.3
アセチルヒドロキシプロリン 3 100.0 238.2 226.9 233.5 186.3

アセチルヒドロキシプロリンは、連用することにより顕著に肌の水分含有量が増加し、水分維持機能の改善が認められた。

アセチルヒドロキシプロリンの水分維持効果について単回処理による濃度依存性を評価した。

12人の女性被検者(23-32歳)の前腕屈曲部の水分含有量を測定した後に各濃度のアセチルヒドロキシプロリンを2μL/c㎡ずつ塗布し、3時間後に水分含量を塗布前の水分含量を100%とした相対値で測定したところ、以下の表のように、

  精製水 アセチルヒドロキシプロリン
1% 3% 5% 10%
相対伝導度(%) 91 100 129 186 189

アセチルヒドロキシプロリンは、単回処理でも濃度依存的な水分維持効果を示した。

なお配合量範囲0.01%以上で、好ましくは0.1%-5%、とくに好ましくは0.5%-3%である。

このような検証結果が明らかにされており(文献4:2002)、アセチルヒドロキシプロリンに表皮水分保持機能向上による保湿作用が認められています。

セラミド合成促進によるバリア改善作用

セラミド合成促進によるバリア改善作用に関しては、まず前提知識としてセラミドについて解説します。

以下の角質層の構造および細胞間脂質におけるラメラ構造図をみてもらうとわかりやすいと思うのですが、

角質層の構造

細胞間脂質におけるラメラ構造の仕組み

角質層のバリア機能は、生体内の水分蒸散を防ぎ、外的刺激から皮膚を防御する重要な機能であり、バリア機能には角質と角質の隙間を充たして角質層を安定させる細胞間脂質が重要な役割を果たしています。

細胞間脂質は、主にセラミド、コレステロール、遊離脂肪酸などで構成され、これらの脂質が角質細胞間に層状のラメラ構造を形成することによりバリア機能を有すると考えられています。

セラミドは、細胞間脂質の50%以上を占める主要成分であり、皮膚の水分保持能およびバリア機能に重要な役割を果たしており、バリア機能が低下している皮膚では角質層中のセラミド量が低下していること(文献7:1989)、またアトピー性皮膚炎患者では角質層中のコレステロール量の減少は認められないがセラミド量は有意に低下していることが報告されています(文献8:1991;文献9:1998)

またヒト皮膚には7系統のセラミドが存在することが確認されており、全種類のセラミドが角質層に存在する比率で補われることが理想的ですが、セラミドを適正な比率で補充することは技術的に困難であるため、生体内におけるセラミド合成を促進することが重要であると考えられています。

2003年に協和発酵バイオによって公開された技術情報によると、

各群4匹のヘアレスマウスの背部全面に0,1%,3%,5%および10%アセチルヒドロキシプロリンを含む30%エタノール水溶液200μLを1日1回1ヶ月間にわたって塗布し、塗布開始前および塗布1ヶ月後に各マウスの被検部位よりセラミド含量を測定した。

アセチルヒドロキシプロリンのセラミド合成能を相対評価したところ、以下の表のように、

アセチルヒドロキシプロリン濃度(%) 相対セラミド合成量(%)
0 111.1
1 218.6
3 170.6

アセチルヒドロキシプロリンは、濃度1%-3%で連用により表皮角質層におけるセラミド含量に顕著な増加が認められた。

なお配合量範囲は効果に応じて増減させることができ、0.001%-50%の範囲内で、好ましくは0.01%-20%、とくに好ましくは0.1%-10%である。

このような検証結果が明らかにされており(文献6:2003)、アセチルヒドロキシプロリンにセラミド合成促進によるバリア改善作用が認められています。

Ⅰ型アレルギーによって生じる浮腫抑制による抗アレルギー作用

Ⅰ型アレルギーによって生じる浮腫抑制による抗アレルギー作用に関しては、まず前提知識としてⅠ型アレルギーおよび耳介浮腫について解説します。

代表的なⅠ型アレルギーとしてじんま疹があり、じんま疹のイメージと以下のⅠ型アレルギーが起こるメカニズム図をみてもらうとわかりやすいと思いますが、

Ⅰ型アレルギーが起こるメカニズム

Ⅰ型アレルギーは、

  1. 真皮に存在する肥満細胞の表面で抗原(アレルゲン)と抗体(IgE)が結びつくことで抗原抗体反応が起こる
  2. 抗原抗体反応によって肥満細胞が破れてヒスタミンなどの炎症因子が細胞外へ放出される
  3. ヒスタミンが血管の透過性を高めると、血漿成分が血管外に漏出することにより、数分後に皮膚に赤みが生じ、じんま疹が発症する

このようなプロレスを通して起こります(文献10:2002)

もう少し詳しく解説しておくと、肥満細胞は皮膚においては真皮の毛細血管周囲くまなく分布しており、肥満細胞の表面には免疫グロブリンE(IgE抗体)という抗体が付着しています。

IgE抗体に反応する抗原(アレルゲン)が体内に侵入すると、肥満細胞の表面で抗原と抗体が結びつき、抗原抗体反応が起こることによって肥満細胞内の化学伝達物質を含む顆粒が細胞外へ放出されます。

代表的な化学伝達物質のひとつがかゆみや腫れを起こすヒスタミンで、ヒスタミンは神経を刺激してかゆみを起こし、また血管の透過性を高めるため、血漿成分が血管壁を通して血管外へ出てその周辺の皮膚にたまってむくみができ、その結果かゆみを伴った膨疹がみられるようになるというメカニズムになります。

次に耳介(じかい)についてですが、耳介とは、以下の耳の構造をみてもらうとわかりやすいと思うのですが、

耳の構造

外耳のうち外に飛び出している部分のことで、いわゆる「耳」と呼ばれている部位のことです。

近年においては動物を用いた試験は行われなくなっていますが、以前は動物を用いた皮膚症状における被験物質の効果判定・評価において動物の耳介が用いられることが多くありました。

2003年に協和発酵バイオによって公開された技術情報によると、

耳介に浮腫を誘発させたアトピー性皮膚炎発症モデルマウス(Ⅰ型アレルギーモデル)の耳介に0%,1%または3%アセチルヒドロキシプロリンを含む30%エタノール水溶液を連用し、28日目に相対耳介浮腫の増加量を測定したところ、以下の表のように、

アセチルヒドロキシプロリン濃度(%) 相対耳介浮腫の増加量(%)
0 133 ± 6.1
1 120.9 ± 3.5
3 110.1 ± 4.4

アセチルヒドロキシプロリンは、長期連用によりⅠ型アレルギーモデルによって生じる耳介の浮腫を抑制した。

このような検証結果が明らかにされており(文献6:2003)、アセチルヒドロキシプロリンにⅠ型アレルギーによって生じる浮腫抑制作用が認められています。

線維芽細胞のコラーゲン合成促進による抗老化作用

線維芽細胞のコラーゲン合成促進による抗老化作用に関しては、まず前提知識として皮膚の構造における線維芽細胞の役割について解説します。

以下の皮膚の構造図をみてもらうとわかるように、

皮膚の構造と皮膚の主要成分図

皮膚は大きく表皮と真皮に分かれており、表皮は主に紫外線や細菌・アレルゲン・ウィルスなどの外的刺激から皮膚を守る働きと水分を保持する働きを担っており、真皮はヒアルロン酸・コラーゲン・エラスチンで構成された細胞外マトリックスを形成し、水分保持と同時に皮膚のハリ・弾力性に深く関与しています。

真皮において細胞外マトリックスを構成するコラーゲン、エラスチン、ヒアルロン酸は、同じく真皮に点在する線維芽細胞から産生されるため、線維芽細胞が活発に働くことでこれらが正常につくられていることが皮膚のハリ・弾力維持において重要です(文献5:2002)

2002年に協和発酵キリンによって公開された技術情報によると、

in vitro試験においてヒト新生児由来線維芽細胞を用いた培地に様々な処理を加え、ヒドロキシプロリンまたはアセチルヒドロキシプロリン(各1nmol/L)のコラーゲン合成率を無添加製剤と比較して測定したところ、以下の表のように、

試料 コラーゲン合成促進活性(%)
0mM 0.1mM 1mM
ヒドロキシプロリン 100.0 108.3 117.1
アセチルヒドロキシプロリン 100.0 121.1 119.7

アセチルヒドロキシプロリンにコラーゲン合成促進活性が認められた。

なお配合量範囲0.01%以上で、好ましくは0.1%-5%、とくに好ましくは0.5%-3%である。

このような検証結果が明らかにされており(文献4:2002)、アセチルヒドロキシプロリンに線維芽細胞のコラーゲン合成促進による抗老化作用が認められています。

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アセチルヒドロキシプロリンの安全性(刺激性・アレルギー)について

アセチルヒドロキシプロリンの現時点での安全性は、

  • 10年以上の使用実績
  • 皮膚刺激性:ほとんどなし
  • 眼刺激性:ほとんどなし
  • 皮膚感作性(アレルギー性):ほとんどなし

これらの結果から、化粧品配合量および通常使用下において、一般的に安全性に問題のない成分であると考えられます。

以下は、この結論にいたった根拠です。

皮膚刺激性および皮膚感作(アレルギー性)について

Cosmetic Ingredient Reviewの安全性試験データ(文献1:2017)によると、

  • [ヒト試験] 109人の被検者に2%アセチルヒドロキシプロリンを含むジェル0.2gを誘導期間およびチャレンジ期間の両方で半閉塞パッチ適用し、各パッチ除去後に皮膚反応を評価したところ、皮膚刺激および皮膚感作の誘発はなかった(anonymous,2011a)

と記載されています。

試験データをみるかぎり、皮膚刺激および皮膚感作性なしと報告されているため、皮膚刺激性および皮膚感作性はほとんどないと考えられます。

眼刺激性について

Cosmetic Ingredient Reviewの安全性試験データ(文献1:2017)によると、

  • [ヒト試験] 33人の女性被検者(50%はコンタクトレンズ着用者)に2%アセチルヒドロキシプロリンを含むアイトリートメントジェルを4週間使用してもらったところ、使用の間に有害な影響および眼刺激の兆候はなかった(anonymous,2011b)

と記載されています。

試験データをみるかぎり、眼刺激なしと報告されているため、眼刺激性はほとんどないと考えられます。

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アセチルヒドロキシプロリンは保湿成分、バリア改善成分、抗炎症成分、抗老化成分にカテゴライズされています。

成分一覧は以下からお読みください。

参考:保湿成分 バリア改善成分 抗炎症成分 抗老化成分

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文献一覧:

  1. Cosmetic Ingredient Review(2017)「Safety Assessment of Amino Acid Alkyl Amides as Used in Cosmetics」International Journal of Toxicology(36)(1),17S-56S.
  2. 奥山 健二, 他(2010)「コラーゲンの分子構造・高次構造」高分子論文集(67)(4),229-247.
  3. 小林 麻子(2003)「ヒドロキシプロリンの製造と生理活性」Fragrance Journal(31)(3),37-43.
  4. 協和発酵キリン株式会社(2002)「化粧料」WO0051561.
  5. 朝田 康夫(2002)「真皮の構造は」美容皮膚科学事典,30-31.
  6. 協和発酵バイオ株式会社(2003)「アトピー性皮膚炎の予防または改善剤」WO02/006225.
  7. G Grubauer, et al(1989)「Transepidermal water loss:the signal for recovery of barrier structure and function.」The Journal of Lipid Research(30),323-333.
  8. Imokawa G, et al(1991)「Decreased level of ceramides in stratum corneum of atopic dermatitis: an etiologic factor in atopic dry skin?」J Invest Dermatol.(96)(4),523-526.
  9. Di Nardo A, et al(1998)「Ceramide and cholesterol composition of the skin of patients with atopic dermatitis.」Acta Derm Venereol.(78)(1),27-30.
  10. 朝田 康夫(2002)「じんま疹の症状は」美容皮膚科学事典,276-279.

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