アスパラガス茎エキスとは…成分効果と毒性を解説

保湿 バリア改善 抗炎症成分 美白 毛髪保護
アスパラガス茎エキス
[化粧品成分表示名称]
・アスパラガス茎エキス

キジカクシ科またはユリ科植物(∗1)アスパラガス(学名:Asparagus officinalis)の茎から抽出して得られるエキスです。

∗1 クロンキスト体系ではユリ科に含めているが、1998年に公表された分子系統学による被子植物の新しい分類体系であるAPG植物分類体系ではキジカクシ科に属しています。

アスパラガス茎エキスには、普通に育てたグリーンアスパラガスと土を被せて日光を当てずに育てたホワイトアスパラガスがあり、それぞれ作用が異なりますが、化粧品成分表示としては共通して「アスパラガス茎エキス」と表示されます。

アスパラガス茎エキスの成分組成は、抽出方法や天然成分のため国や地域および時期によって変化がありますが、主に、

などで構成されています(文献1:2015;文献2:2011)

アスパラガスは南ヨーロッパを原産とし、現在は世界中で栽培されており、日本には江戸時代にオランダ人によって伝えられたが食用として栽培されるようになったのは大正時代からとされています。

アスパラガスは一般に茎を食用とし、化粧品においても茎が使用されますが、薬用としては根の部分をが用いられています。

アスパラガスの茎(食用部分)の成分はアスパラギン酸、β-カロテン、ビタミンB₁、ビタミンB₂、葉酸、亜鉛が含まれています(文献2:2011)

サポニンやルチンも含まれていますが、サポニンは根、ルチンは穂先に含まれているため、アスパラガス茎エキスにはほとんど含まれていないと考えられます(文献2:2011)

化粧品に配合される場合は、

これらの目的で、スキンケア化粧品、ハンド&ボディケア製品、日焼け止め製品、シート&マスク製品などに使用されます(文献1:2015;文献3:1990;文献4:1993;文献5:2008;文献7:1990;文献9:2007)

角層水分量増加による保湿作用

角層水分量増加による保湿作用に関しては、アスパラガスの茎に含まれるアスパラギン酸などのアミノ酸によるものと考えられます。

表皮ヒアルロン酸産生促進によるバリア機能改善作用

表皮ヒアルロン酸産生促進によるバリア機能改善作用に関しては、まず前提知識として皮膚の構造とヒアルロン酸の役割について解説します。

以下の皮膚の構造図をみてもらうとわかるように、

皮膚の構造と皮膚の主要成分

皮膚は大きく表皮と真皮に分かれており、表皮は主に紫外線や細菌・アレルゲン・ウィルスなどの外的刺激から皮膚を守る働きと水分を保持する働きを担っており、真皮はプロテオグリカン(ヒアルロン酸およびコンドロイチン硫酸含む)・コラーゲン・エラスチンで構成された細胞外マトリックスを形成し、水分保持と同時に皮膚のハリ・弾力性に深く関与しています。

ヒアルロン酸は、真皮の中で広く分布するゲル状の高分子多糖体として知られており、規則的に配列したコラーゲンとエラスチンの繊維間を充たし、水分を大量に保持することで、皮膚に弾力性と柔軟性を与えています(文献8:2002)

また表皮層や角層においても密接に隣接した細胞間に網目状に存在し、酸素、イオン、栄養成分、生理活性成分、代謝老廃物などの移動や拡散に関わっていると考えられています(文献9:2009)

2007年にピアスによって公開された技術情報によると、

正常ヒト新生児表皮角化細胞を用いたヒアルロン酸産生促進試験においてアスパラガス抽出物のヒアルロン酸産生量を測定したところ、以下の表のように、

アスパラガス抽出物濃度(%) ヒアルロン酸産生量
0 100
0.1 102
0.25 110
0.5 131

アスパラガス抽出物は、濃度依存的に表皮細胞におけるヒアルロン酸の産生促進効果があることがわかった。

また25人の女性被検者(25~45歳)に1%アスパラガス抽出物を含むクリームおよび未配合のクリームを1日2回3ヶ月にわたって連用してもらい、連用前の経皮水分蒸散量を100とし、連用後の経皮水分蒸散量変化率の平均を計測したところ、以下の表のように、

試料 経皮水分蒸散量
1%アスパラガス抽出物 65.2
対照 92.1

アスパラガス抽出物は、対照と比較して被検者の経皮水分蒸散量を大きく低下させ、皮膚バリア機能改善効果が高いことがわかった。

配合量は0.0001%未満であると効果が十分に得られず、また20%を超えても重量に見合った効果の向上は認められないため、0.0005%~5%の範囲であることが好ましい。

このような検証結果が明らかにされており(文献7:2007)、アスパラガス茎エキスに表皮ヒアルロン酸産生促進によるバリア機能改善作用が認められています。

ニキビ改善による抗炎症作用

ニキビ改善による抗炎症作用に関しては、1990年に資生堂によって公開された技術情報によると、

13~15歳のニキビに悩む男女20人に化粧石けんを用いて顔面をよく洗浄したあと、0,005%,0.1%,1.0%および30%アスパラガス茎エキス配合軟膏を1日3回塗布して4週間後に患部の観察を行い、ニキビ改善度を、改善された、不変、悪化したの3段階で評価、また3段階評価からきわめて有効(A)、有効(B)、無効(C)と判定した。

その結果、以下の表のように、

アスパラガス茎エキス濃度(%) 改善された 不変 悪化した 有効性
0.005 18人 2人 0人 A
0.1 19人 1人 0人 A
1.0 19人 1人 0人 A
30.0 20人 0人 0人 A

アスパラガス茎エキスはいずれの濃度においてもニキビ改善効果に優れていることが認められた。

また0.005%未満ではニキビ改善効果は発揮されず、30%を越えてもそれ以上の効果の増大は認められない。

このような検証結果が明らかにされており(文献3:1990)、アスパラガス茎エキスにニキビ改善による抗炎症作用が認められています。

チロシナーゼ活性阻害による色素沈着抑制作用

チロシナーゼ活性阻害による色素沈着抑制作用に関しては、まず前提知識としてメラニン生合成のメカニズムとチロシナーゼについて解説します。

以下のメラニン生合成のメカニズム図をみてもらうとわかりやすいと思うのですが、

紫外線におけるメラニン生合成までのプロセス

紫外線を浴びるとまず最初に活性酸素が発生し、様々な情報伝達物質(メラノサイト活性化因子)をメラノサイトで発現するレセプター(受容体)に届けることで、メラノサイト内でメラニンの生合成がはじまり、ユーメラニン(黒化メラニン)へと合成されます。

メラノサイト内でのメラニン生合成は、まずアミノ酸であるチロシンに活性酵素であるチロシナーゼが結合することでドーパ、ドーパキノンへと変化し、最終的に黒化メラニンが合成されます。

1993年にコーセーによって公開された技術情報によると、

美白作用を有する植物抽出物について研究した結果、アスパラガス抽出物に高いチロシナーゼ活性阻害作用を見出し、これらを配合した化粧料は美白効果に優れているとともに、安全性・安定性にも優れていることを確認した。

使用効果試験において30~40歳の女性15人に毎日朝と夜の2回、洗顔後に試験化粧料を適量顔面に2週間にわたって塗布し、評価は2週間後に、シミ・ソバカスがほとんど目立たなくなった(有効)、シミ・ソバカスがあまり目立たなくなった(やや有効)、変わらない(無効)の3段階で行ったところ、以下の表のように、

アスパラガス茎エキス濃度(%) 有効 やや有効 無効
0.0024(クリーム) 10人 3人 2人
0.05(乳液) 9人 5人 1人
0(対照) 0人 4人 11人

アスパラガス茎エキス配合クリームおよび乳液の使用により、シミ・ソバカスが目立たなくなったという効果が高い有効率をもって確認された。

また基剤を化粧水およびパックに変えて同様の試験を実施したところ同様の結果が得られた。

乾燥固形分に換算して、0.0001%未満では効果が十分に発揮されず、10%を越えると効果はほぼ一定になる。

このような検証結果が明らかにされており(文献4:1993)、アスパラガス茎エキスにチロシナーゼ活性阻害による色素沈着抑制作用が認められています。

ACTH阻害による色素沈着抑制作用

ACTH阻害による色素沈着抑制作用に関しては、まず前提知識としてメラニン生合成のメカニズムおよびACTHについて解説します。

メラニン生合成のメカニズムについてはすでにチロシナーゼ活性阻害による色素沈着抑制作用のパートで解説していますが、わかりやすさを重視してこちらでも解説しておきます。

以下のメラニン生合成のメカニズム図をみてもらうとわかりやすいと思うのですが、

紫外線におけるメラニン生合成までのプロセス

紫外線を浴びるとまず最初に活性酸素が発生し、様々な情報伝達物質(メラノサイト活性化因子)を、メラノサイトで発現するレセプター(受容体)に届けることで、メラノサイト内でメラニンの生合成がはじまり、ユーメラニン(黒化メラニン)へと合成されます。

これが主なメラニン生合成のメカニズムですが、近年は紫外線だけでなくストレスによっても皮膚の色素沈着が引き起こされることが報告されています(文献6:1997)

ストレスによる色素沈着は紫外線によるものとは異なり、身体がストレスを感じた際に、脳下垂体前葉で産生される副腎皮質刺激ホルモンであるACTH(Adrenocorticotropic Hormone)が副腎皮質に作用しステロイドホルモンの産生を促進し、身体はストレスに対して防御態勢をとりますが、その結果のひとつが皮膚におけるメラノサイトの活性化であると考えられています。

ACTHは、情報伝達物質(メラノサイト活性化因子)のひとつであるα-MSH(メラノサイト刺激刺激ホルモン)の前駆体であるだけでなく、それ自体もメラニン産生を促進する性質を有しており、メラノサイトに存在するMC1R(メラノコルチンレセプター-1)に結合することでメラノサイトを活性化させると考えられています(文献5:2008)

このようなストレスによるメラノサイト活性化は、紫外線によるメラノサイトの活性化とは異なり、ACTHによるメラノサイトの活性化が主体であるため、紫外線による色素沈着抑制作用を有した皮膚外用剤では十分な効果が期待できないので注意が必要です。

2008年に丸善製薬によって技術公開されているアスパラガス抽出物のACTH阻害作用検証によると、

B16メラノーマ細胞にACTHを添加して促進されるメラノサイトの活性化を、B16メラノーマ細胞のチロシナーゼ活性を指標として測定したところ、以下の表のように、

アスパラガス茎エキス濃度(%) チロシナーゼ活性阻害率
0.1 74.4%
0.05 42.7%

アスパラガス抽出物を添加した場合に特異的なACTH阻害によるチロシナーゼ活性化阻害を示すことが認められた。

このことから、アスパラガス抽出物はACTH阻害によるチロシナーゼ活性化阻害作用、すなわちACTH阻害作用にもとづくメラノサイト活性化抑制作用を有することが確認できた。

また配合濃度は0.0001%~10%が好ましく、最適濃度は0.001%~5%の範囲である。

このような検証結果が明らかにされており(文献5:2008)、アスパラガス茎エキスにACTH抑制によるメラノサイト活性化抑制作用(色素沈着抑制作用)が認められています。

フケ抑制による毛髪保護作用

フケ抑制による毛髪保護作用に関しては、まず前提知識としてフケのメカニズムについて解説します。

フケとは、表皮細胞の角化現象により頭皮の角質からはがれ落ちた角片に、皮脂や汗、ホコリが混ざったもので、皮膚の角質層からはがれ落ちる角質(垢)と同じものです(文献8:2002)

新陳代謝による生理現象なので誰にでも生じるもので、年齢的には皮脂の分泌が盛んになる20歳前後から多くなります(文献8:2002)

フケに含まれる皮脂の割合によってパサパサした乾燥性フケとベタッとした脂性フケに分かれ、乾燥性フケは過度の洗髪などによる頭皮の乾燥などが原因とされており、また脂性フケは頭皮の皮脂の分泌が盛んなことが原因とされています(文献8:2002)

フケが異常に目立ってくる状態をフケ症といい、フケ症は皮脂が微生物に分解されたり、皮脂の分解物が酸化を起こして過酸化脂質となり、皮膚を刺激して表皮細胞の分裂を促進することによってはがれ落ちる角片が増えることが原因です(文献8:2002)

1990年に資生堂によって公開された技術情報によると、

皮膚の安全面からも満足でき、効果も兼ね備えたフケ防止物質を得るべく研究を重ねた結果、アスパラガス茎エキスに頭皮組織内の代謝反応が適度に調整され、フケの発生を有意に防止する効果が認められた。

ヒト試験として、22~50歳で比較的フケの多い男性24人に無添加シャンプーで洗髪し、比較コントロール期として洗髪後2日間累積したフケを週2回1ヶ月間採取し、採取したフケのタンパク質量を測定した。

次いで3人ずつ9郡に分け、0,005%,0.1%,1.0%および30%アスパラガス抽出物配合ヘアトニックと薬剤無配合シャンプーを1日1回1ヶ月間使用してもらい、試験期としてコントロール期と同様に週2回、洗髪後2日間に累積したフケを採取し、タンパク質量を測定した。

コントロール期の平均フケタンパク質量と試験期の平均フケタンパク質量を比較し、フケの減少率が50%以上であった場合をA、50%の場合をB、20~40%の場合をC、それ以下をDとして評価したところ、以下の表のように、

アスパラガス茎エキス濃度(%) フケ減少率
50%以上
フケ減少率
50%
フケ減少率
20~40%
フケ減少率
20%以下
0.005 17人 3人 0人 0人
0.1 18人 2人 0人 0人
1.0 19人 1人 0人 0人
30.0 20人 0人 0人 0人

アスパラガス茎エキスはいずれの濃度においてもフケ抑制効果に優れていることが認められた。

また0.005%未満ではニキビ改善効果は発揮されず、30%を越えてもそれ以上の効果の増大は認められない。

このような検証結果が明らかにされており(文献7:1990)、アスパラガス茎エキスにフケ防止による毛髪保護作用が認められています。

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アスパラガス茎エキスの安全性(刺激性・アレルギー)について

アスパラガス茎エキスの現時点での安全性は、食用植物であり、かつ10年以上の使用実績があり、化粧品配合量および通常使用下において、一般的に皮膚刺激および皮膚感作性(アレルギー性)はほとんどないと考えられます。

ただし、詳細な試験データがみあたらず、データ不足のため詳細は不明です。

以下は、この結論にいたった根拠です。

皮膚刺激性および皮膚感作性(アレルギー性)について

化粧品配合量および通常使用下において、一般的に皮膚刺激および皮膚感作性(アレルギー性)はほとんどないと考えられますが、詳細な安全性試験データがみあたらず、データ不足のため詳細は不明です。

眼刺激性について

試験結果や安全性データがみあたらないため、現時点ではデータ不足により詳細は不明です。

∗∗∗

アスパラガス茎エキスは保湿成分、抗炎症成分、美白成分にカテゴライズされています。

成分一覧は以下からお読みください。

参考:保湿成分 抗炎症成分 美白成分

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文献一覧:

  1. 宇山 光男, 他(2015)「アスパラガス」化粧品成分ガイド 第6版,185.
  2. 鈴木 洋(2011)「アスパラガス」カラー版健康食品・サプリメントの事典,8.
  3. 株式会社資生堂(1990)「皮膚外用剤」特開平2-145504.
  4. 株式会社コーセー(1993)「化粧料」特開平5-271045.
  5. 丸善製薬株式会社(2008)「メラノサイト活性化抑制剤、及び皮膚外用剤」特開2008-074777.
  6. 神永 博子, 他(1997)「ストレスと皮膚 -過密ストレスモデルによる皮膚生理学的変化-」日本皮膚科学会雑誌(107)(5),615.
  7. 株式会社資生堂(1990)「ふけ防止用化粧料」特開平2-145509.
  8. 朝田 康夫(2002)「フケの種類と手入れとは」美容皮膚科学事典,394-398.
  9. ピアス株式会社(2007)「ヒアルロン酸産生促進剤、並びにそのヒアルロン酸産生促進剤を含む皮膚外用剤、化粧料、医薬部外品、肌荒れ改善剤、及びしわ改善剤」特開2007-262012.
  10. 朝田 康夫(2002)「真皮の変性と加齢の関係は」美容皮膚科学事典,132-133.
  11. 井上 紳太郎(2009)「皮膚ヒアルロン酸の不思議」グルコサミン研究(5),4-10.

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