DPGの基本情報・配合目的・安全性

DPG

化粧品表示名称 DPG
医薬部外品表示名称 ジプロピレングリコール
医薬部外品表示名称(簡略名) DPG
化粧品国際的表示名称(INCI名) Dipropylene Glycol
配合目的 保湿防腐 など

1. 基本情報

1.1. 定義

以下の化学式で表される、PGの脱水縮合二量体(∗1)かつ二価アルコール(多価アルコール)(∗2)です[1][2a]

∗1 複数の分子結合がまとまって機能する複合体を多量体(重合体)といい、n個の分子結合がまとまって機能する多量体をn量体ともいいます。DPG(ジプロピレングリコール)の場合、2個のPG(プロピレングリコール)が脱水縮合して(まとまって)機能しているため二量体として働きます。プロピレングリコールが2個結合(縮合)していることから、ギリシャ語で「2」を意味する「ジ(di)」をつけて「ジプロピレングリコール」と命名されています。

∗2 2個以上のヒドロキシ基(-OH)が結合したアルコールを多価アルコールといい(n個結合したものはn価アルコールともよばれる)、DPGは2個のヒドロキシ基(-OH)が結合した二価アルコールです。

DPG

1.2. 物性

DPGの物性は、

融点(℃) 沸点(℃) 比重(d 20/20) 屈折率(n 20/D)
-40 231.8 1.0252 1.4440

このように報告されています[2b]

1.3. 化粧品以外の主な用途

DPGの化粧品以外の主な用途としては、

分野 用途
医薬品 溶剤目的の医薬品添加剤として外用剤、経皮に用いられています[3]

これらの用途が報告されています。

2. 化粧品としての配合目的

化粧品に配合される場合は、

  • 角層水分量増加による保湿作用
  • 防腐

主にこれらの目的で、スキンケア化粧品、ボディ&ハンドケア製品、メイクアップ化粧品、化粧下地製品、シート&マスク製品、日焼け止め製品、洗顔料、洗顔石鹸、クレンジング製品、シャンプー製品、コンディショナー製品、アウトバストリートメント製品、頭皮ケア製品、ボディソープ製品、ヘアカラー製品、整髪料、ネイル製品、香水など様々な製品に汎用されています。

以下は、化粧品として配合される目的に対する根拠です。

2.1. 角層水分量増加による保湿作用

角層水分量増加による保湿作用に関しては、まず前提知識として皮膚最外層である角質層の構造と役割および天然保湿因子と水の関係について解説します。

直接外界に接する皮膚最外層である角質層は、以下の図のように、

角質層の構造

水分を保持する働きもつ天然保湿因子を含む角質と角質の間を細胞間脂質で満たした、レンガとモルタルの関係と同様の構造になっており、この構造が保持されることによって外界からの物理的あるいは化学的影響から身体を守り、かつ体内の水分が体外へ過剰に蒸散していくのを防ぐとともに一定の水分を保持する役割を担っています[4][5]

角質層において水分を保持する働きをもつ天然保湿因子(NMF:natural Moisturizing Factor)は親水性の吸湿物質であり、以下の表のように、

成分 含量(%)
アミノ酸類 40.0
ピロリドンカルボン酸(PCA) 12.0
乳酸 12.0
尿素 7.0
アンモニア、尿酸、グルコサミン、クレアチン 1.5
ナトリウム(Na⁺) 5.0
カリウム(K⁺) 4.0
カルシウム(Ca²⁺) 1.5
マグネシウム(Mg²⁺) 1.5
リン酸(PO₄³⁻) 0.5
塩化物(Cl⁻) 6.0
クエン酸 0.5
糖、有機酸、ペプチド、未確認物質 8.5

アミノ酸、有機酸、塩などの集合体として存在しています[6]

また、角質層内の主な水分は、天然保湿因子(NMF)の分子に結合している結合水と水(液体)の形態をした自由水の2種類の状態で存在しており、以下の表のように、

角質層内の水の種類 定義
結合水 一次結合水 角質層の構成分子と強固に結合し、硬く乾燥しきった角質層の中にも存在する水です。
二次結合水 角質層の構成分子と非常に速やかに結合するものの、乾燥した状態でゆっくりと解離するような比較的弱い結合をしている水の分子のことをいい、温度や湿度など外部環境によって比較的容易に結合と解離を繰り返す可逆的な水です。
自由水 二次結合水の容量を超えて角質層が水を含んだ場合に液体の形で角質層内に存在する水であり、この量が一定量を超えると過水和となり、浸軟した(ふやけた)状態が観察されます。

それぞれこのような特徴を有しています[7a][8]

角質層の柔軟性は、水分量10-20%の間で自然な柔軟性を示す一方で、水分量が10%以下になると角層のひび割れ、肌荒れが生じると考えられており、種々の原因により角質層の保湿機能が低下することによって水分量が低下すると、皮膚表面が乾燥して亀裂、落屑、鱗屑などを生じるようになることから、角層に含まれる水分量が皮膚表面の性状を決定する大きな要因として知られています[7b]

このような背景から、角層の水分量が低下している場合に角層水分量を増加することは、皮膚の乾燥、ひび割れ、肌荒れの予防や改善において重要なアプローチのひとつであると考えられています。

DPGは、化学構造に2個のヒドロキシ基をもつ二価アルコール(多価アルコール)であり、吸湿性を示し、皮膚においてベタつきの少ない使用感を付与するとともに角層に浸透しケラチンと水分子との間で仲介役を果たすことで保湿性を発揮することから、保湿剤として広く汎用されています[9][10]

1969年に資生堂研究所によって報告された多価アルコールおよびDPGの吸湿性検証によると、

– 吸湿性試験 –

各湿度における多価アルコールの吸湿性を比較検討したところ、以下のグラフのように、

保湿剤の各相対湿度における吸湿性への影響

50%相対湿度21-27℃における多価アルコールの吸湿性

多価アルコールは、低湿度下において吸湿性は低く、高湿度下において高い吸湿性を発揮する傾向が示された。

DPGは、相対湿度50%においてPGやグリセリンほど高い吸湿性は示さなかったものの、吸湿性を有することが示された。

このような検証結果が明らかにされており[11]、DPGに50%以上の湿度下においてある程度の吸湿性が認められています。

次に、2016年に資生堂グローバルイノベーションセンターによって報告されたDPGの角層水分量への影響検証によると、

– in vivo試験 : 保湿作用 –

採取した角層に多価アルコールであるDPG、グリセリンそれぞれ10%水溶液1μL/c㎡塗布したときの角層水分量を角層コンダクタンス(∗3)によって6時間後まで測定したところ、以下のグラフのように、

∗3 コンダクタンスとは、皮膚に電気を流した場合の抵抗(電気伝導度:電気の流れやすさ)を表し、角層水分量が多いと電気が流れやすくなり、コンダクタンス値が高値になることから、角層水分量を調べる方法として角層コンダクタンスを経時的に測定する方法が定着しています。ここでは塗布後の経過時間によって角層コンダクタンス値の変化率が小さいと角層水分の増加が高く、保湿性が高いと評価しています。

多価アルコールの塗布による角層水分量の変化

10%DPG水溶液は、塗布直後ではグリセリン以上の角層水分量増加を示したが、塗布6時間後には塗布前以下に減少した。

このような検証結果が明らかにされており[12a]、DPGに角層水分量増加による保湿作用が認められています。

DPGは、すぐに角層内に浸透することから塗布直後はグリセリンよりも角層水分量が高くなりますが、すぐに拡散するため角層内に留まりにくく、角層水分量の保持効果という点ではほとんどないと考えられています[12b]

そのため、一般に角層水分量の増加の相乗効果や角層水分の蒸散抑制目的で他の保湿成分やエモリエント成分などと組み合わせて使用されています。

2.2. 防腐

防腐に関しては、DPGは濃度8-12%でグラム陰性菌に対して特異的に抗菌活性を示すことが知られており[13a]、単独で防腐目的で用いられることはありませんが、他の主要な防腐剤の配合量を減らすなど防腐補助を兼ねた保湿剤として様々な製品に用いられています。

2012年に御木本製薬によって報告されたDPGの抗菌活性検証によると、

– in vitro : 保存性効力試験 –

抗菌性原料の強さを表すMIC(minimum inhibitory concentration:最小発育阻止濃度)を基準とし、化粧品に汎用される8種類の抗菌性原料の抗菌性を法定5菌種である下記5菌種を用いて検討した。

  • 黄色ブドウ球菌(Staphylococcus aureus:Sa)
  • 緑膿菌(Pseudomonas aeruginosa:Pa)
  • 大腸菌(Escherichia coli:Ec)
  • カンジダ(candida albicans:Ca)
  • コウジカビ(aspergillus brasiliensis:Ab)

滅菌容器に20gの試料を入れ、1mLあたり10⁷-10⁸個に調整した微生物懸濁液0.2mLを接種・混合し、1週間おきに一部を取り出し、生菌数をMICを基準として測定したところ、以下の表(∗4)のように、

∗4 表のSa,Pa,Ec,CaおよびAbは菌の英語表記の略語です。またMICは最小発育阻止濃度であるため、数字が小さい(濃度が低い)ほど抗菌力が高いことを意味します。

抗菌剤 MIC:最小発育阻止濃度(%)
Sa Pa Ec Ca Ab
メチルパラベン 0.2 0.225 0.125 0.1 0.1
フェノキシエタノール 0.75 0.75 0.5 0.5 0.4
BG 16 8 10 14 18
ペンチレングリコール 4 2 2 3 3
エタノール 9 5 5 7 5
DPG 22.5 8 12 16 22.5
1,2-ヘキサンジオール 2.5 1 1 1.5 1.5
カプリリルグリコール 0.35 >0.5 0.125 0.175 0.175

DPGは高い抗菌性を有してはいないが、濃度8-12%でグラム陰性菌である緑膿菌および大腸菌に対する抗菌性を示した。

このような検証結果が明らかにされており[13b]、濃度8%以上のDPGにグラム陰性菌に対する防腐作用が認められています。

また、保湿剤に用いられる多価アルコールの多くは、防腐作用の有無とは別に、水分活性(∗5)を下げる作用を有しており、多量配合すればするほど微生物の増殖抑制効果を示すことから、DPGを含む多価アルコールの配合量を増やす防腐処方設計により他の防腐剤の配合量を減らす技術が広く用いられています[14a]

∗5 水分活性とは、水分子を結合する物質が多量に溶けることで水蒸気圧が下がり、微生物が水を利用できなくなることを利用した、菌を抑制する作用のことであり、食品の保存技術としても広く用いられています[14b]

3. 配合製品数および配合量範囲

配合製品数および配合量に関しては、海外の1985年および2002-2003年の調査結果になりますが、以下のように報告されています。

DPGの配合製品数と配合量の比較調査結果(1985年および2002-2003年)

4. 安全性評価

DPGの現時点での安全性は、

  • 薬添規2018規格の基準を満たした成分が収載される医薬品添加物規格2018に収載
  • 外原規2021規格の基準を満たした成分が収載される医薬部外品原料規格2021に収載
  • 40年以上の使用実績
  • 皮膚刺激性:ほとんどなし-軽度
  • 眼刺激性:詳細不明
  • 皮膚感作性(アレルギー性):ほとんどなし
  • 光毒性(光刺激性):ほとんどなし
  • 光感作性:ほとんどなし

このような結果となっており、化粧品配合量および通常使用下において、一般的に安全性に問題のない成分であると考えられます。

以下は、この結論にいたった根拠です。

4.1. 皮膚刺激性および皮膚感作性(アレルギー性)

Cosmetic Ingredient Reviewの安全性データ[15a]によると、

  • [ヒト試験] 101人の被検者に7.2%DPGを含むシェービング製剤を48時間開放および閉塞パッチ適用し、2週間後に再び同様にパッチ適用したところ、6人の被検者が最初のパッチで、8人の被検者が二回目のパッチで軽度の皮膚刺激を示した(Cosmetic Toiletry and Fragrance Association,1978)
  • [ヒト試験] 50人の被検者に7.2%DPGを含むシェービング製剤を対象にHRIPT(皮膚刺激&感作試験)を実施したところ、誘導期間において軽度の皮膚刺激が観察されたが、この試験製剤は皮膚感作剤ではなかった(Cosmetic Toiletry and Fragrance Association,1978)
  • [ヒト試験] 59人の被検者に7.2%DPGを含むシェービング製剤を4週間使用してもらったところ、このシェービング製剤はいずれの使用者においても皮膚反応を示さなかった(Cosmetic Toiletry and Fragrance Association,1978)

このように記載されており、試験データをみるかぎり非刺激-軽度の皮膚刺激および共通して皮膚感作なしと報告されているため、一般に皮膚感作性はほとんどなく、皮膚刺激性は非刺激-軽度の皮膚刺激を引き起こす可能性があると考えられます。

4.2. 眼刺激性

試験結果や安全性データがみあたらないため、現時点ではデータ不足により詳細不明です。

4.3. 光毒性(光刺激性)および光感作性

Cosmetic Ingredient Reviewの安全性データ[15b]によると、

  • [ヒト試験] 101人の被検者に7.2%DPGを含むシェービング製剤を48時間開放および閉塞パッチ適用し、2週間後に再び同様にパッチ適用した後に紫外線を照射し、照射後に光刺激性を評価したところ、いずれの被検者も皮膚反応を示さなかった(Cosmetic Toiletry and Fragrance Association,1978)
  • [ヒト試験] 50人の被検者に7.2%DPGを含むシェービング製剤を対象に光感作性試験をともなうHRIPT(皮膚刺激&感作試験)を実施したところ、この試験製剤は光感作剤ではなかった(Cosmetic Toiletry and Fragrance Association,1978)

このように記載されており、試験データをみるかぎり光刺激および光感作なしと報告されているため、一般に光毒性(光刺激性)および光感作性はほとんどないと考えられます。

5. 参考文献

  1. 日本化粧品工業連合会(2013)「DPG」日本化粧品成分表示名称事典 第3版,15.
  2. ab有機合成化学協会(1985)「ジプロピレングリコール」有機化合物辞典,438.
  3. 日本医薬品添加剤協会(2021)「ジプロピレングリコール」医薬品添加物事典2021,284.
  4. 朝田 康夫(2002)「保湿能力と水分喪失の関係は」美容皮膚科学事典,103-104.
  5. 田村 健夫・廣田 博(2001)「表皮」香粧品科学 理論と実際 第4版,30-33.
  6. I Horii, et al(1989)「Stratum corneum hydration and amino acid content in xerotic skin」British Journal of Dermatology(121)(5),587-592. DOI:10.1111/j.1365-2133.1989.tb08190.x.
  7. ab日光ケミカルズ株式会社(2006)「水」新化粧品原料ハンドブックⅠ,487-502.
  8. 武村 俊之(1992)「保湿製剤の効用:角層の保湿機構」ファルマシア(28)(1),61-65. DOI:10.14894/faruawpsj.28.1_61.
  9. 平尾 哲二(2017)「保湿 温故知新」日本香粧品学会誌(41)(4),277-281. DOI:10.11469/koshohin.41.277.
  10. 日光ケミカルズ株式会社(2016)「多価アルコール」パーソナルケアハンドブックⅠ,95-101.
  11. 尾沢 達也(1969)「保湿剤(Humectant)」ファルマシア(5)(10),685-690. DOI:10.14894/faruawpsj.5.10_685.
  12. ab岡本 亨(2016)「高保湿スキンケア製剤の処方設計の考え方」日本化粧品技術者会誌(50)(3),187-193. DOI:10.5107/sccj.50.187.
  13. ab谷口 康将・野村 重雄(2012)「最小発育阻止濃度(MIC)を基準とした予測式からの化粧品の保存効力の予測」日本化粧品技術者会誌(46)(4),295-300. DOI:10.5107/sccj.46.295.
  14. ab浅賀 良雄(2019)「化粧品の防腐技術Q&A」Q&A181 化粧品の微生物試験ガイドブック – 防腐設計,製造工程管理から出荷検査,クレーム対策まで – ,28-37.
  15. abR.E. Elder(1985)「Final Report on the Safety Assessment of Butylene Glycol Hexylene Glycol Ethoxydiglycol and Dipropylene Glycol」Journal of the American College of Toxicology(4)(5),223-248. DOI:10.3109/10915818509078692.

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