尿素の基本情報・配合目的・安全性

尿素

化粧品成分表示名称 尿素
医薬部外品表示名称 尿素
配合目的 保湿保水 など

1. 基本情報

1.1. 定義

以下の化学式で表される有機化合物です[1a][2]

尿素

1.2. 化粧品以外の主な用途

尿素の化粧品以外の主な用途としては、

分野 用途
医薬品 濃度10%で角層の水分保持増加作用や角質の溶解剥離作用目的の治療薬として老人性乾皮症、アトピー性皮膚炎、乾燥型主婦湿疹、踵のひびわれなどに用いられています[3]。また安定・安定化、湿潤・湿潤調整、粘稠目的の医薬品添加剤として各種注射、外用剤に用いられています[4]

これらの用途が報告されています。

2. 化粧品としての配合目的

化粧品に配合される場合は、

  • 水分量増加および柔軟持続性向上による保湿作用
  • 製品自体の保水

主にこれらの目的で、スキンケア化粧品、ボディ&ハンド&フットケア製品、洗顔料&洗顔石鹸、ネイルケア製品などに使用されています。

以下は、化粧品として配合される目的に対する根拠です。

2.1. 水分量増加および柔軟持続性向上による保湿作用

水分量増加および柔軟持続性向上による保湿作用に関しては、まず前提知識として皮膚最外層である角質層の構造と役割および角質細胞におけるPCA-Naの役割について解説します。

直接外界に接する皮膚最外層である角質層は、以下の図のように、

角質層の構造

水分を保持する働きもつ天然保湿因子を含む角質と角質の間を細胞間脂質で満たした、レンガとモルタルの関係と同様の構造になっており、この構造が保持されることによって外界からの物理的あるいは化学的影響から身体を守り、かつ体内の水分が体外へ過剰に蒸散していくのを防ぐとともに一定の水分を保持する役割を担っています[5][6]

また、角質層において水分を保持する働きをもつ物質は、天然保湿因子(NMF:natural Moisturizing Factor)と呼ばれる親水性の吸湿物質であり、天然保湿因子は以下の表のように、

成分 含量(%)
アミノ酸類 40.0
ピロリドンカルボン酸(PCA) 12.0
乳酸 12.0
尿素 7.0
アンモニア、尿酸、グルコサミン、クレアチン 1.5
ナトリウム(Na⁺) 5.0
カリウム(K⁺) 4.0
カルシウム(Ca²⁺) 1.5
マグネシウム(Mg²⁺) 1.5
リン酸(PO₄³⁻) 0.5
塩化物(Cl⁻) 6.0
クエン酸 0.5
糖、有機酸、ペプチド、未確認物質 8.5

アミノ酸、有機酸、塩などの集合体として存在しています[7]

この天然保湿因子において約40%を占めるアミノ酸組成は、以下の表のように、

アミノ酸の種類 含量(%)
プロリン 5.6
アスパラギン + アスパラギン酸 0.8
トレオニン 0.4
セリン 19.7
グルタミン + グルタミン酸 2.3
グリシン 14.7
アラニン 10.4
バリン 3.4
メチオニン 0.2
イソロイシン 0.5
ロイシン 1.5
チロシン 0.8
フェニルアラニン 0.7
リシン 1.1
ヒスチジン 1.4
アルギニン 10.3

16種類のアミノ酸で構成されており[8]、これらアミノ酸の大部分は、以下の図のように、

天然保湿因子の産生メカニズム

表皮顆粒層に存在しているケラトヒアリン(∗1)が角質細胞に変化していく過程でフィラグリンと呼ばれるタンパク質となり、このフィラグリンがブレオマイシン水解酵素(bleomycin hydrorase)によって完全分解されることで産生されることが報告されています[9][10]

∗1 ケラトヒアリンの主要な構成成分は、分子量300-1,000kDaの巨大な不溶性タンパク質であるプロフィラグリンであり、プロフィラグリンは終末角化の際にフィラグリンに分解されます。

尿素は、フィラグリンより産生されたアミノ酸の一種であるアルギニンがアルギナーゼという酵素によって変換されてできるアミノ酸代謝物であり、水分と結合するとともに角層タンパクとの間の柔軟性を向上させる役割を果たしています[11]

このような背景から、角質層の水分保持および柔軟性に尿素が重要な役割を果たしていると考えられています。

1983年に資生堂によって報告された保湿剤の吸湿性・保水性比較検証によると、

– 吸湿性・保水性試験 –

尿素は相対湿度75%、PEG6000は84%から潮解(∗2)しはじめるため、吸湿性のみでは保湿剤の保水性を評価しにくいことから、乾燥試料の10wt%水溶液を25℃相対湿度75%条件下に5時間放置したときの残存水分量を、その保湿剤の保湿性として評価したところ、以下のグラフのように、

∗2 物質が空気中の水(水蒸気)をとりこんで自発的に水溶液となる現象のことをいいます。

各保湿剤の吸湿性・保水性比較

各保湿剤の吸湿性は、

マルビトール = PEG6000 = グルタミン酸Na = 尿素 < グリセリン

各保湿剤の保水性は、

マルビトール << PEG6000 < グルタミン酸Na < 尿素 < グリセリン

の順序であった。

このような検証結果が明らかにされており[12a]、尿素に保水効果が認められています。

尿素は、グリセリンとの比較で明らかなように、吸湿性に優れているというわけではありませんが、分子量が小さく皮膚浸透性を有することから角層の保水に寄与しつつ穏やかに角質を柔軟化していくという点が重視されていると考えられます。

2.2. 製品自体の保水

製品自体の保水に関しては、尿素は保水性を有していることから[12b]、製品自体の水分揮散を防ぎ、製品の安定性保持に寄与する目的で様々な製品に配合されています[1b]

3. 混合原料としての配合目的

尿素は、混合原料が開発されており、尿素と以下の成分が併用されている場合は、混合原料として配合されている可能性が考えられます。

原料名 LACTIL
構成成分 乳酸NaPCA-Naグリシン、フルクトース、尿素ナイアシンアミド、イノシトール、安息香酸Na乳酸
特徴 皮膚のNMFをモデル化した保湿剤
原料名 dermofeel quadegra
構成成分 、塩化ヒドロキシプロピルトリモニウムデンプン、尿素乳酸Na乳酸塩化Naグリセリン、レブリン酸
特徴 天然で生分解性の毛髪および皮膚コンディショニング剤
原料名 AMC Advancesd Moisture Complex NP
構成成分 グリセリンPCA-Na尿素トレハロース、ヘキシレングリコール、ポリクオタニウム-51、トリアセチン、カプリリルグリコールヒアルロン酸Na
特徴 水分結合特性を有する集中保湿の複合体

4. 配合製品数および配合量範囲

尿素は、医薬部外品(薬用化粧品)への配合において配合上限があり、配合範囲は以下になります。

種類 配合量
薬用石けん・シャンプー・リンス等、除毛剤 10
育毛剤 3.0
その他の薬用化粧品、腋臭防止剤、忌避剤 3.0
薬用口唇類 3.0
薬用歯みがき類 3.0
浴用剤 3.0
染毛剤 尿素の合計として10.0
パーマネント・ウェーブ用剤 尿素の合計として5.0

また、実際の化粧品としての配合製品数および配合量に関しては、海外の2000-2001年の調査結果になりますが、以下のように報告されています。

尿素の配合製品数と配合量の調査結果(2000-2001年)

5. 安全性評価

尿素の現時点での安全性は、

  • 医療上汎用性があり有効性および安全性の基準を満たした成分が収載される日本薬局方に収載
  • 外原規2021規格の基準を満たした成分が収載される医薬部外品原料規格2021に収載
  • 1950年代からの使用実績
  • 皮膚刺激性:3%濃度以下においてほとんどなし
  • 眼刺激性:ほとんどなし
  • 皮膚感作性(アレルギー性):ほとんどなし

このような結果となっており、化粧品配合量および通常使用下において、一般的に安全性に問題のない成分であると考えられます。

以下は、この結論にいたった根拠です。

5.1. 皮膚刺激性および皮膚感作性(アレルギー性)

Cosmetic Ingredient Reviewの安全性試験データ[13a]によると、

  • [ヒト試験] 10人の被検者に5%尿素を含む化粧水0.3mLを対象に21日間累積刺激性試験を実施したところ、5%尿素を含む化粧水はわずかな皮膚刺激を示した(Hill Top Research,1977)
  • [ヒト試験] 16人の被検者に10%尿素ベース、ベースのみ、10%尿素ベース中の1%ヒドロコルチゾンアセテート、20%尿素を含む白色ワセリン皮膚軟化剤をそれぞれ閉塞パッチ下で21日間適用し、各24時間の最後の30分に刺激性を評価したところ、20%尿素を含む皮膚軟化剤はすべての被検者において刺激を示した。この試験物質を除き、他の試験物質ではいずれの被検者も皮膚刺激を示さなかった(Fair and Krum,1979)
  • [ヒト試験] 17人の健康な被検者を対象に異なる尿素含有物の刺激作用を評価した。20%尿素を含むワセリンまたは水溶液を上腕の内側にFinn Chamberを24時間適用し、パッチ除去1時間後に試験部位の皮膚刺激、皮膚血流、皮膚の厚さおよびTEWL(経表皮水分損失)を評価したところ、20%尿素を含む水溶液よりもワセリンのほうが反応が顕著で、皮膚血流の有意な増加が生じたが、48時間後には正常に戻った。また、ワセリンのほうで24時間後に皮膚浮腫が観察され、皮膚の厚みは両方で試験前より増加がみられた。TEWLについてはワセリンのほうは24時間で有意な増加がみられたが48時間後には正常化し、水溶液のほうでは有意な増加は観察されなかった(Agner,1992)
  • [ヒト試験] 健康なボランティアグループ2群(各6人)に2%尿素を含む水中油型エマルション(化粧水およびクリーム)と4%尿素を含む油中水型エマルション(化粧水およびクリーム)を塗布し、塗布1時間後に皮膚反応を評価したところ、吸着性および脱着性は尿素を含む化粧水で最も高い値を示した。吸水性は、顕著な結果が生じた。尿素を含む油中水型クリームで処理した後減少傾向がみられた。2%尿素を含む水中油型クリームおよび化粧水で処理した水分保持容量は有意に増加した。水蓄積量に関しては両方の化粧水で有意な結果は得られなかった(Treffel and Gabard,1995)
  • [ヒト試験] 50人の被検者に3%尿素を含むボディクリームを対象にHRIPT(皮膚刺激&感作試験)を閉塞パッチにて実施したところ、この製品は皮膚刺激および皮膚感作の兆候を示さなかった(TKL Inc,1997)
  • [ヒト試験] 214人の被検者に3%尿素製剤を対象にHRIPT(皮膚刺激&感作試験)を実施したところ、この製剤は皮膚刺激および皮膚感作の可能性を示さなかった(Consumer Product Testing Co,1999)

医薬部外品においてリーブオン製品(つけっぱなしの製品)への配合濃度は3%を上限としており、試験データをみるかぎり、3%濃度以下において共通して皮膚刺激および皮膚感作なしと報告されているため、一般に3%濃度以下において皮膚刺激性および皮膚感作性はほとんどないと考えられます。

また、リンスオフ製品(洗い流す製品)への配合濃度は10%を上限としており、試験データをみるかぎり、10%濃度では皮膚に塗布した場合はまれにスティンギングなどの刺激報告がありますが、リンスオフ製品として通常使用する場合には安全性に問題がないと考えられます。

5.2. 眼刺激性

Cosmetic Ingredient Reviewの安全性試験データ[13b]によると、

  • [動物試験] 12匹のウサギに0.5%ベンザルコニウムクロリドを1日2回合計5回投与することで角膜炎を誘発し、その後2.24%尿素を含む軟膏を1日2回11日間にわたって投与し、角膜炎および角膜上皮欠損について毎日11日間にわたって検査したところ、処置された眼において有意な改善が生じ、他の変化や異常は認められなかった(Charlton et al,1996)

このように記載されており、試験データをみるかぎり眼刺激なしと報告されているため、一般に眼刺激性はほとんどないと考えられます。

6. 参考文献

  1. ab日本化粧品工業連合会(2013)「尿素」日本化粧品成分表示名称事典 第3版,739.
  2. 大木 道則, 他(1989)「尿素」化学大辞典,1704-1705.
  3. 浦部 晶夫, 他(2021)「尿素」今日の治療薬2021:解説と便覧,1105.
  4. 日本医薬品添加剤協会(2021)「尿素」医薬品添加物事典2021,448-449.
  5. 朝田 康夫(2002)「保湿能力と水分喪失の関係は」美容皮膚科学事典,103-104.
  6. 田村 健夫・廣田 博(2001)「表皮」香粧品科学 理論と実際 第4版,30-33.
  7. I Horii, et al(1989)「Stratum corneum hydration and amino acid content in xerotic skin」British Journal of Dermatology(121)(5),587-592. DOI:10.1111/j.1365-2133.1989.tb08190.x.
  8. I. Horii, et al(1983)「Histidine-rich protein as a possible origin of free amino acids of stratum corneum」Current Problems in Dermatology(11),301-315. DOI:10.1159/000408684.
  9. M. Watanabe, et al(1991)「Functional analyses of the superficial stratum corneum in atopic xerosis」Archives of Dermatology(127)(11),1689-1692. DOI:10.1001/archderm.1991.01680100089010.
  10. T. Tezuka, et al(1994)「Terminal differentiation of facial epidermis of the aged: immunohistochemical studies」Dermatology(188)(1),21-24. DOI:10.1159/000247079.
  11. 田上 八朗(2004)「角層バリア機能と皮膚保湿機能の研究」Fragrance Journal(32)(9),10-16.
  12. ab西山 聖二, 他(1983)「クリームによる皮膚水和の研究 (Ⅱ) W/Oクリームによる水和効果」日本化粧品技術者会誌(17)(2),116-120. DOI:10.5107/sccj.17.116.
  13. abT.A. Yamarik & A.R. Elmore(2005)「Final Report of the Safety Assessment of Urea」International Journal of Toxicology(24)(3_Suppl),1-56. DOI:10.1080%2F10915810500257097.

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