ベタインの基本情報・配合目的・安全性

ベタイン

化粧品表示名称 ベタイン
医薬部外品表示名称 トリメチルグリシン、ベタイン
化粧品国際的表示名称(INCI名) Betaine
配合目的 保湿感触改良ヘアコンディショニング など

1. 基本情報

1.1. 定義

以下の化学式で表されるグリシンのアミノ基(-NH2に3個のメチル基(-CH3が結合し分子内に塩を形成している両性化合物(∗1)かつアミノ酸誘導体です[1][2a][3a]

∗1 正電荷と負電荷を同一分子内の隣り合わない位置に持ち、正電荷を持つ原子には解離しうる水素が結合しておらず、分子全体としては電荷を持たない化合物です。

ベタイン

1.2. 物性

ベタインは、に非常によく溶け、またエタノールにも可溶であり、水溶液中では両性イオンとして存在します[3b]

1.3. 分布

ベタインは、自然界において広く動植物に存在し、植物においてはヒユ科テンサイ(学名:Beta vulgaris)の糖蜜中をはじめ麦芽(英名:malt)、キノコ類(英名:Mushroom)、アカザ亜科の果実などに、動物においてはイカやタコなどの軟体動物、エビやカニなどの甲殻類や貝類などに多く含まれており、またヒトにおいても肝臓などに含まれています[2b][3c][4]

1.4. 化粧品以外の主な用途

ベタインの化粧品以外の主な用途としては、

分野 用途
食品 風味改良目的で塩辛やカニ風味カマボコなどの水産加工食品に、また各種アミノ酸類と併用して栄養ドリンクなどに用いられています[5]
医薬品 高メチオニン血症治療薬として用いられています[6]

これらの用途が報告されています。

2. 化粧品としての配合目的

化粧品に配合される場合は、

  • 角層水分量増加による保湿作用
  • 潤滑性および展延性による感触改良
  • なめらかさおよびツヤ向上によるヘアコンディショニング作用

主にこれらの目的で、スキンケア化粧品、ボディ&ハンドケア製品、メイクアップ化粧品、化粧下地製品、シート&マスク製品、洗顔料、洗顔石鹸、クレンジング製品、シャンプー製品、コンディショナー製品、トリートメント製品、アウトバストリートメント製品、頭皮ケア製品、ボディソープ製品、まつ毛美容液など様々な製品に汎用されています。

以下は、化粧品として配合される目的に対する根拠です。

2.1. 角層水分量増加による保湿作用

角層水分量増加による保湿作用に関しては、まず前提知識として皮膚最外層である角質層の構造と役割および天然保湿因子と水の関係について解説します。

直接外界に接する皮膚最外層である角質層は、以下の図のように、

角質層の構造

水分を保持する働きもつ天然保湿因子を含む角質と角質の間を細胞間脂質で満たした、レンガとモルタルの関係と同様の構造になっており、この構造が保持されることによって外界からの物理的あるいは化学的影響から身体を守り、かつ体内の水分が体外へ過剰に蒸散していくのを防ぐとともに一定の水分を保持する役割を担っています[7][8]

角質層において水分を保持する働きをもつ天然保湿因子(NMF:natural Moisturizing Factor)は親水性の吸湿物質であり、以下の表のように、

成分 含量(%)
アミノ酸類 40.0
ピロリドンカルボン酸(PCA) 12.0
乳酸 12.0
尿素 7.0
アンモニア、尿酸、グルコサミン、クレアチン 1.5
ナトリウム(Na⁺) 5.0
カリウム(K⁺) 4.0
カルシウム(Ca²⁺) 1.5
マグネシウム(Mg²⁺) 1.5
リン酸(PO₄³⁻) 0.5
塩化物(Cl⁻) 6.0
クエン酸 0.5
糖、有機酸、ペプチド、未確認物質 8.5

アミノ酸、有機酸、塩などの集合体として存在しています[9]

また、角質層内の主な水分は、天然保湿因子(NMF)の分子に結合している結合水と水(液体)の形態をした自由水の2種類の状態で存在しており、以下の表のように、

角質層内の水の種類 定義
結合水 一次結合水 角質層の構成分子と強固に結合し、硬く乾燥しきった角質層の中にも存在する水です。
二次結合水 角質層の構成分子と非常に速やかに結合するものの、乾燥した状態でゆっくりと解離するような比較的弱い結合をしている水の分子のことをいい、温度や湿度など外部環境によって比較的容易に結合と解離を繰り返す可逆的な水です。
自由水 二次結合水の容量を超えて角質層が水を含んだ場合に液体の形で角質層内に存在する水であり、この量が一定量を超えると過水和となり、浸軟した(ふやけた)状態が観察されます。

それぞれこのような特徴を有しています[10a][11]

角質層の柔軟性は、水分量10-20%の間で自然な柔軟性を示す一方で、水分量が10%以下になると角層のひび割れ、肌荒れが生じると考えられており、種々の原因により角質層の保湿機能が低下することによって水分量が低下すると、皮膚表面が乾燥して亀裂、落屑、鱗屑などを生じるようになることから、角層に含まれる水分量が皮膚表面の性状を決定する大きな要因として知られています[10b]

このような背景から、角層の水分量が低下している場合に角層水分量を増加することは、皮膚の乾燥、ひび割れ、肌荒れの予防や改善において重要なアプローチのひとつであると考えられています。

1991年にウエラジャパン(現 P&Gジャパン)によって報告されたベタインの吸湿性および保水性検証によると、

– 吸湿性試験 –

各相対湿度における保湿剤の吸湿性を比較検討したところ、以下のグラフのように、

ベタインの吸湿性

ベタインは、グリセリンと同等以上の吸湿性を示した。

– 保水性試験 –

相対湿度55%において各保湿剤の濃度10%水溶液を2週間保存し、残存水分量を比較したところ、以下のグラフのように、

ベタインの保水性

ベタインは、他の保湿剤よりも高い保水性を示した。

このような検証結果が明らかにされており[12a]、ベタインに高い吸湿性および保水性が認められています。

次に、1996年にサンスターによって報告されたベタインの角層水分量への影響検証によると、

– ヒト使用試験 –

10人の女性被検者の上腕内側部に3%ベタインを含む化粧水または3%ベタインに1%植物エキスを含む化粧水を含まれたコットンを3分間貼付し、コットン除去後に10分間隔で皮膚水分量を測定および保湿持続性を評価した。

保湿性の判定基準は、試料塗布後/塗布前の皮膚水分量比率が1.1以上の被検者が「◎:8人以上」「○:5-7人以上」「☓:5人未満」として、また保湿持続性の判定基準は、皮膚水分量が初期値に戻るまでの時間が60分以上の被検者が「◎:8人以上」「○:5-7人以上」「☓:5人未満」としてそれぞれ評価したところ、以下の表のように、

試料 保湿性 保湿持続性
ベタイン
レイシエキス
ヨモギエキス
シラカバエキス
アロエエキス

3%ベタイン配合化粧水は、角層水分量の増加がみとめられ、またベタインと植物エキスを併用することでベタイン単独より高い保湿性および保湿持続性を示すことがわかった。

このような検証結果が明らかにされており[13]、ベタインに角層水分量増加による保湿作用が認められています。

また、植物エキスだけでなく、天然保湿因子グリセリンBGなどの多価アルコール類との併用でも保湿性が向上することが報告されています[14][15]

2.2. 潤滑性および展延性による感触改良

潤滑性および展延性による感触改良に関しては、ベタインは保水性を有しており、他の保湿剤のべたつきをおさえてしっとり感およびなめらかな感触を付与することから、感触を調整する目的で使用されています[16]

2.3. なめらかさおよびツヤ向上によるヘアコンディショニング作用

なめらかさおよびツヤ向上によるヘアコンディショニング作用に関しては、まず前提知識として毛髪の構造と毛髪ダメージとその原因について解説します。

毛髪の構造については、以下の毛髪構造図をみてもらうとわかりやすいと思いますが、

毛髪の構造

キューティクル(毛小皮)とよばれる5-10層で重なり合った平らかつうろこ状の構造からなる厚い保護外膜が表面を覆い、キューティクル内部は紡錘状細胞から成り繊維体質の大部分を占めるコルテックス(毛皮質)およびメデュラ(毛髄質)とよばれる多孔質部分で構成されています[17a]

また、細胞膜複合体(CMC:Cell Membrane Complex)がこの3つの構造を接着・結合しており、毛髪内部の水分保持や成分の浸透・拡散の主要通路としての役割を担っています[17b]

これら毛髪構造の中でキューティクルは、摩擦、引っ張り、曲げ、紫外線への曝露などの影響による物理的かつ化学的劣化に耐性をもち、その配列が見た目の美しさや感触特性となります[18a]

一方で、キューティクルはシャンプーや毎日の手入れなどの物理的要因、あるいはヘアアイロン、染毛・脱色、パーマなど化学的要因によるダメージに対して優れた耐性を有しているものの、以下の図をみてもらうとわかるように、

毛髪状態の違い

これらのダメージが重なり合い繰り返されるうちに劣化していき、最終的にキューティクルのめくれ上がりや毛髪繊維の弱化につながることが知られています[18b][19]

このような背景から、損傷したキューティクルを平らに寝かせてなめらかにすることやツヤを向上させることは、毛髪の外観や感触の改善において重要なアプローチのひとつであると考えられています。

ベタインは、毛髪との親和性が高く、なめらかさ、ツヤ、櫛通り性を付与することから[20]、シャンプー製品やヘアケア製品に使用されています。

3. 混合原料としての配合目的

ベタインは、混合原料が開発されており、ベタインと以下の成分が併用されている場合は、混合原料として配合されている可能性が考えられます。

原料名 PRODEW 400
構成成分 ベタインPCA-Naソルビトールセリングリシングルタミン酸アラニンリシンアルギニントレオニンプロリンメチルパラベンプロピルパラベン
特徴 皮膚のNMFをモデル化した保湿剤
原料名 PG6 active HYDRA FACTOR
構成成分 グリセリンプロパンジオール、ポリグリセリン-6、PCA、トレハロースソルビトールベタインヒアルロン酸Na
特徴 水和力の高い保湿剤の相乗効果によって優れた保湿力を示す持続性の高い100%天然複合保湿剤
原料名 Neosome EM Ultrafill
構成成分 トレハロースベタイン、リン脂質、キサンタンガム
特徴 トレハロースとベタインをリポソームに内包し、皮膚の浸透性と持続力を高めた複合保湿剤

4. 配合製品数および配合量範囲

トリメチルグリシンは、医薬部外品(薬用化粧品)への配合において配合上限があり、配合範囲は以下になります。

種類 配合量
薬用石けん・シャンプー・リンス等、除毛剤 上限なし
育毛剤 上限なし
その他の薬用化粧品、腋臭防止剤、忌避剤 上限なし
薬用口唇類 配合不可
薬用歯みがき類 配合不可
浴用剤 10
染毛剤 上限なし
パーマネント・ウェーブ用剤 上限なし

化粧品に対する実際の配合製品数および配合量に関しては、海外の2013年の調査結果になりますが、以下のように報告されています(∗2)

∗2 以下表におけるリーブオン製品は、付けっ放し製品(スキンケア製品やメイクアップ製品など)を表しており、またリンスオフ製品は、洗い流し製品(シャンプー、ヘアコンディショナー、ボディソープ、洗顔料、クレンジングなど)を指します。

ベタインの配合製品数と配合量の調査結果(2013年)

5. 安全性評価

ベタインの現時点での安全性は、

  • 食品添加物の既存添加物リストに収載
  • 外原規2021規格の基準を満たした成分が収載される医薬部外品原料規格2021に収載
  • 20年以上の使用実績
  • 皮膚刺激性:ほとんどなし
  • 眼刺激性:ほとんどなし
  • 皮膚感作性(アレルギー性):ほとんどなし

このような結果となっており、化粧品配合量および通常使用下において、一般的に安全性に問題のない成分であると考えられます。

以下は、この結論にいたった根拠です。

5.1. 皮膚刺激性および皮膚感作性(アレルギー性)

Cosmetic Ingredient Reviewの安全性データ[21]によると、

  • [ヒト試験] 102人の患者に8.7%ベタインを含む無香料の化粧水を対象にHRIPT(皮膚刺激性&皮膚感作性試験)を半閉塞パッチにて実施したところ、この試験物質は皮膚刺激剤および皮膚感作剤ではなかった(TKL Research Inc,2002)
  • [ヒト試験] 51人の患者に5%ベタインを含むスキンケア製品を対象にHRIPT(皮膚刺激性&皮膚感作性試験)を閉塞パッチにて実施したところ、この試験物質は皮膚刺激剤および皮膚感作剤ではなかった(Essex Testing Clinic Inc,2013)
  • [ヒト試験] 石鹸の刺激を低減する機能性素材の研究において28人および21人の被検者に最大濃度10%までのベタインを含む石鹸を対象に刺激性試験を実施したところ、ベタインを含む石鹸はベタインを含まない石鹸よりも皮膚に対する刺激性が低下することがわかったが、濃度との相関性はなかった(I. Nicander et al,2003)
  • [ヒト試験] 26人の被検者に最大濃度5%までのベタイン溶液を24時間閉塞パッチで2回連続適用し、適用後に皮膚刺激性を評価したところ、この試験物質は皮膚刺激剤ではなかった。被検者の中には刺激緩和剤として機能していることが観察された(European Chemicals Agency,2013)
  • [ヒト試験] 40人の被検者に2%ラウリル硫酸ナトリウム水溶液を含む約3%ベタイン溶液を肘の内側に適用し、試験部位は洗浄し6時間後に皮膚刺激(紅斑、剥離、粗さ、掻痒および丘疹)の兆候を観察するという手順を4週間にわたって実施したところ、ベタインはラウリル硫酸ナトリウムによる皮膚刺激を緩和・軽減することが明らかとなり、刺激緩和作用を有していると考えられた(European Chemicals Agency,2013)

このように記載されており、試験データをみるかぎり共通して皮膚刺激および皮膚感作なしと報告されているため、一般に皮膚刺激性および皮膚感作性はほとんどないと考えられます。

5.2. 眼刺激性

ウエラジャパン(現 P&Gジャパン)の安全性データ[12b]によると、

  • [動物試験] ウサギの眼にベタイン(濃度不明)を適用し、適用後に眼刺激性を評価したところ、この試験物質は非刺激剤であった

このように記載されており、試験データをみるかぎり眼刺激なしと報告されているため、一般に眼刺激性はほとんどないと考えられます。

6. 参考文献

  1. 日本化粧品工業連合会(2013)「ベタイン」日本化粧品成分表示名称事典 第3版,866.
  2. ab大木 道則, 他(1989)「ベタイン」化学大辞典,2133.
  3. abc有機合成化学協会(1985)「ベタイン」有機化合物辞典,912.
  4. 日光ケミカルズ株式会社(2016)「肌荒れ防止剤」パーソナルケアハンドブックⅠ,505-521.
  5. 樋口 彰, 他(2019)「ベタイン」食品添加物事典 新訂第二版,323.
  6. 浦部 晶夫, 他(2021)「ベタイン」今日の治療薬2021:解説と便覧,471-472.
  7. 朝田 康夫(2002)「保湿能力と水分喪失の関係は」美容皮膚科学事典,103-104.
  8. 田村 健夫・廣田 博(2001)「表皮」香粧品科学 理論と実際 第4版,30-33.
  9. I Horii, et al(1989)「Stratum corneum hydration and amino acid content in xerotic skin」British Journal of Dermatology(121)(5),587-592. DOI:10.1111/j.1365-2133.1989.tb08190.x.
  10. ab日光ケミカルズ株式会社(2006)「水」新化粧品原料ハンドブックⅠ,487-502.
  11. 武村 俊之(1992)「保湿製剤の効用:角層の保湿機構」ファルマシア(28)(1),61-65. DOI:10.14894/faruawpsj.28.1_61.
  12. ab三田 康蔵(1991)「べタインの化粧品への応用とその安全性」Fragrance Journal(19)(2),70-77.
  13. サンスター株式会社(1996)「皮膚化粧料組成物」特開平8-133947.
  14. 旭化成株式会社(1996)「保湿力の高い皮膚外用剤」特開平8-20520.
  15. 味の素株式会社(1997)「化粧料」特開平9-87126.
  16. 旭化成株式会社(1994)「化粧水」特開平6-293625.
  17. abクラーレンス・R・ロビンス(2006)「毛形態学的構造および高次構造」毛髪の科学,1-68.
  18. abデール・H・ジョンソン(2011)「毛髪のコンディショニング」ヘアケアサイエンス入門,77-122.
  19. クラーレンス・R・ロビンス(2006)「シャンプー、髪の手入れ、ウェザリング(風化)による毛髪ダメージおよび繊維破断」毛髪の科学,293-328.
  20. 旭化成株式会社(1994)「洗髪用化粧品」特開平6-293619.
  21. C.L. Burnett, et al(2018)「Safety Assessment of Alkyl Betaines as Used in Cosmetics」International Journal of Toxicology(37)(1_suppl),28S-46S. DOI:10.1177/1091581818773354.

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