コンドロイチン硫酸Naの基本情報・配合目的・安全性

コンドロイチン硫酸Na

化粧品表示名称 コンドロイチン硫酸Na
医薬部外品表示名称 コンドロイチン硫酸ナトリウム
医薬部外品表示名称(簡略名) コンドロイチン硫酸Na
化粧品国際的表示名称(INCI名) Sodium Chondroitin Sulfate
配合目的 保湿 など

1. 基本情報

1.1. 定義

以下の化学式で表される4位または6位に硫酸基(-SO4が結合したN-アセチル-D-ガラクトサミン(n-acetyl-d-galactosamine:下図右)(∗1)とウロン酸(uronic acid:下図左)が直鎖状に結合した構造の繰り返し単位で構成されたグリコサミノグリカン(ムコ多糖)のナトリウム塩です[1][2a]

∗1 以下の化学式において「R:SO3NaおよびR’:H」である場合はN-アセチル-D-ガラクトサミン4硫酸(n-acetyl-d-galactosamine 4-sulfate)であり、「R:HおよびR’:SO3Na」である場合はN-アセチル-D-ガラクトサミン6硫酸(n-acetyl-d-galactosamine 6-sulfate)となります。

コンドロイチン硫酸Na

1.2. 物性

コンドロイチン硫酸Naは、平均分子量2万-5万の酸性ムコ多糖であり、吸湿性で水によく溶け、その液性が粘稠であることを特徴としています[2b][3a]

1.3. 分布

コンドロイチン硫酸Naは、動物体内において軟骨、骨、腱、血管壁、皮膚そのほかの結合組織の基質成分としてタンパク質と結合して存在しています[3b]

1.4. 皮膚におけるコンドロイチン硫酸Naの役割

生体におけるコンドロイチン硫酸は、以下の表のように、

種類 アミノ糖 ウロン酸 主な部位
コンドロイチン硫酸A ガラクトサミン4硫酸 グルクロン酸 軟骨
コンドロイチン硫酸B ガラクトサミン4硫酸 イズロン酸2硫酸 皮膚
結合組織
コンドロイチン硫酸C ガラクトサミン6硫酸 グルクロン酸 結合組織

構造の違いによって3種類が存在し、皮膚においてはデルマタン硫酸(コンドロイチン硫酸B)の割合が多いため[2c]、ここではデルマタン硫酸の役割として解説します。

以下の皮膚構造図をみてもらうとわかりやすいと思いますが、皮膚上層部は、

皮膚の構造と皮膚の主要成分

直接外界に接する皮膚最外層である角質層を含む表皮と、表皮を支える真皮から構成されていることが知られています。

表皮を下から支える真皮を構成する成分としては、細胞成分と線維性組織を形成する間質成分(細胞外マトリックス成分)に二分され、以下の表のように、

分類 構成成分
間質成分 膠原線維 コラーゲン
弾性繊維 エラスチン
基質 糖タンパク質、プロテオグリカン、グリコサミノグリカン
細胞成分 線維芽細胞

主成分である間質成分は、大部分がコラーゲンからなる膠原線維とエラスチンからなる弾性繊維、およびこれらの間を埋める基質で占められており、細胞成分としてはこれらを産生する線維芽細胞がその間に散在しています[4a][5a]

細胞間を満たす無定形成分である基質は、親水性が強く水分量の調整、水溶性物質の組織への浸透・拡散に重要な役割を果たすとともにコラーゲンやエラスチンと結合して繊維を安定化させることにより皮膚の柔軟性を保持しています[4b][5b]

この基質は、主に糖タンパク質(glycoprotein)プロテオグリカン(proteoglycan)およびグリコサミノグリカン(glycosaminoglycan)で構成されており、グリコサミノグリカンとしてはヒアルロン酸とデルマタン硫酸(コンドロイチン硫酸B)が多いのが特徴です[6a]

ヒアルロン酸は粘稠性が強く、大量の水分保持能があり、細胞の足場として機能するのに対してデルマタン硫酸は繊維の維持や他の基質を保持しています[6b]

1.5. 化粧品以外の主な用途

コンドロイチン硫酸Naの化粧品以外の主な用途としては、

分野 用途
食品 吸水性および保水性に優れるため製造過程の乳化安定剤としてマヨネーズ、ドレッシングなどに用いられるほか、魚臭を消すため魚肉ソーセージに用いられています[7]
医薬品 感音性難聴、症候性神経痛、腰痛症、関節痛、肩関節周囲炎の鎮痛薬として、また角膜を保護する点眼薬として用いられています[8][9]。そのほか安定・安定化、懸濁、粘稠・粘稠化目的の医薬品添加剤として経口剤、静脈注射、眼科用剤、耳鼻科用剤などに用いられています[10]

これらの用途が報告されています。

2. 化粧品としての配合目的

化粧品に配合される場合は、

  • 皮表水分保持による保湿作用

主にこれらの目的で、スキンケア化粧品、メイクアップ化粧品、化粧下地製品、ボディケア製品、マスク製品、洗顔料、クレンジング製品などに使用されています。

以下は、化粧品として配合される目的に対する根拠です。

2.1. 皮表水分保持による保湿作用

皮表水分保持による保湿作用に関しては、まず前提知識として皮膚最外層である角質層の構造と役割について解説します。

直接外界に接する皮膚最外層である角質層は、以下の図のように、

角質層の構造

水分を保持する働きもつ天然保湿因子を含む角質と角質の間を細胞間脂質で満たした、レンガとモルタルの関係と同様の構造になっており、この構造が保持されることによって外界からの物理的あるいは化学的影響から身体を守り、かつ体内の水分が体外へ過剰に蒸散していくのを防ぐとともに一定の水分を保持する役割を担っています[11][12]

また、角質層内の主な水分は、天然保湿因子(NMF)の分子に結合している結合水と水(液体)の形態をした自由水の2種類の状態で存在しており、以下の表のように、

角質層内の水の種類 定義
結合水 一次結合水 角質層の構成分子と強固に結合し、硬く乾燥しきった角質層の中にも存在する水です。
二次結合水 角質層の構成分子と非常に速やかに結合するものの、乾燥した状態でゆっくりと解離するような比較的弱い結合をしている水の分子のことをいい、温度や湿度など外部環境によって比較的容易に結合と解離を繰り返す可逆的な水です。
自由水 二次結合水の容量を超えて角質層が水を含んだ場合に液体の形で角質層内に存在する水であり、この量が一定量を超えると過水和となり、浸軟した(ふやけた)状態が観察されます。

それぞれこのような特徴を有しています[13a][14]

角質層の柔軟性は、水分量10-20%の間で自然な柔軟性を示す一方で、水分量が10%以下になると角層のひび割れ、肌荒れが生じると考えられており、種々の原因により角質層の保湿機能が低下することによって水分量が低下すると、皮膚表面が乾燥して亀裂、落屑、鱗屑などを生じるようになることから、角層に含まれる水分量が皮膚表面の性状を決定する大きな要因として知られています[13b]

このような背景から、肌荒れやバリア機能の低下やなどによって角層の水分量が低下している場合に、皮膚表面に水分を含んだ膜を形成し、皮膚の水分蒸散を防止することは、皮膚の乾燥、ひび割れ、肌荒れの予防や改善において重要なアプローチのひとつであると考えられています。

2006年に日本バリアフリーによって報告されたコンドロイチン硫酸Naの保水能および水分蒸散量への影響検証によると、

– 保水性試験 –

相対湿度50%、23℃の環境下で5人の被検者の顔半分に1%コンドロイチン硫酸Na配合化粧水を塗布し、比較対照としてコンドロイチン硫酸Na未配合の同じ化粧水を残りの顔半分に塗布した。

使用直後から60分後まで目尻と頬中央において各5回ずつ電気伝導度を測定して肌の水分保持能力の指標としたところ、以下のグラフのように、

コンドロイチン硫酸Naの保水性

コンドロイチン硫酸Na配合化粧水塗布部位は、未配合化粧水塗布部位と比較して有意に水分保持能が示された。

– 経表皮水分蒸散量(TEWL)測定試験 –

相対湿度50%、23℃の環境下で5人の被検者の顔半分に1%コンドロイチン硫酸Na配合クリームを塗布し、比較対照としてコンドロイチン硫酸Na未配合クリームを残りの顔半分に塗布した。

使用直後から60分後まで口元と頬中央において各4回ずつ肌からの水分蒸散量の経時変化を測定したところ、以下のグラフのように、

コンドロイチン硫酸Naの経表皮水分蒸散抑制効果

コンドロイチン硫酸Na配合クリーム塗布部位は、未配合クリーム塗布部位と比較して肌の水分蒸散量の経時的な低下が示されており、肌からの水分の蒸散が抑制されることがわかった。

このような検証結果が明らかにされており[15]、コンドロイチン硫酸Naに皮表水分保持による保湿作用が認められています。

3. 混合原料としての配合目的

コンドロイチン硫酸Naは、混合原料が開発されており、コンドロイチン硫酸Naと以下の成分が併用されている場合は、混合原料として配合されている可能性が考えられます。

原料名 Marine Filling Spheres
構成成分 テトライソステアリン酸ペンタエリスリチル、トリヒドロキシステアリン、コンドロイチン硫酸Na、アテロコラーゲン
特徴 マリンコラーゲンとグリコサミノグリカンを角層に浸透させ、皮膚内で吸水し即時的に膨潤させることでシワを伸ばし、持続的な保湿効果により皮膚表面の弾力性を高めるよう設計されたミクロスフィア

4. 安全性評価

コンドロイチン硫酸Naの現時点での安全性は、

  • 食品添加物の指定添加物リストに収載
  • 薬添規2018規格の基準を満たした成分が収載される医薬品添加物規格2018に収載
  • 外原規2021規格の基準を満たした成分が収載される医薬部外品原料規格2021に収載
  • 40年以上の使用実績
  • 皮膚刺激性:ほとんどなし
  • 眼刺激性:詳細不明
  • 皮膚感作性(アレルギー性):ほとんどなし

このような結果となっており、化粧品配合量および通常使用下において、一般的に安全性に問題のない成分であると考えられます。

以下は、この結論にいたった根拠です。

4.1. 皮膚刺激性および皮膚感作性(アレルギー性)

コンドロイチン硫酸Naはヒト皮膚中に存在しており、また食品添加物の指定添加物リスト、医薬品添加物規格2018および医薬部外品原料規格2021に収載されていることから、化粧品配合量および通常使用下において、一般に皮膚刺激および皮膚感作性(アレルギー性)はほとんどないと考えられます。

また、40年以上の使用実績がある中で重大な皮膚刺激および皮膚感作の報告がないこともコンドロイチン硫酸Naの安全性を裏付けていると考えられます。

4.2. 眼刺激性

試験結果や安全性データがみあたらないため、現時点ではデータ不足により詳細不明です。

5. 参考文献

  1. 日本化粧品工業連合会(2013)「コンドロイチン硫酸Na」日本化粧品成分表示名称事典 第3版,425.
  2. abc有機合成化学協会(1985)「コンドロイチン硫酸」有機化合物辞典,327-328.
  3. ab日光ケミカルズ株式会社(1977)「保湿剤」ハンドブック – 化粧品・製剤原料 – 改訂版,795-797.
  4. ab朝田 康夫(2002)「真皮のしくみと働き」美容皮膚科学事典,28-33.
  5. ab清水 宏(2018)「真皮」あたらしい皮膚科学 第3版,13-20.
  6. ab大塚 藤男(2011)「真皮」皮膚科学 第9版,32-44.
  7. 樋口 彰, 他(2019)「コンドロイチン硫酸ナトリウム」食品添加物事典 新訂第二版,144.
  8. 浦部 晶夫, 他(2021)「コンドロイチン硫酸エステルナトリウム」今日の治療薬2021:解説と便覧,312.
  9. 浦部 晶夫, 他(2021)「コンドロイチン硫酸エステルナトリウム」今日の治療薬2021:解説と便覧,1060.
  10. 日本医薬品添加剤協会(2021)「コンドロイチン硫酸ナトリウム」医薬品添加物事典2021,243-244.
  11. 朝田 康夫(2002)「保湿能力と水分喪失の関係は」美容皮膚科学事典,103-104.
  12. 田村 健夫・廣田 博(2001)「表皮」香粧品科学 理論と実際 第4版,30-33.
  13. ab日光ケミカルズ株式会社(2006)「水」新化粧品原料ハンドブックⅠ,487-502.
  14. 武村 俊之(1992)「保湿製剤の効用:角層の保湿機構」ファルマシア(28)(1),61-65. DOI:10.14894/faruawpsj.28.1_61.
  15. 株式会社日本バリアフリー(2006)「肌荒れ治療用または予防用組成物」特開2006-306750.

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