サクシノイルアテロコラーゲンの基本情報・配合目的・安全性

化粧品表示名称 サクシノイルアテロコラーゲン
医薬部外品表示名称 サクシニルアテロコラーゲン液
化粧品国際的表示名称(INCI名) Succinoyl Atelocollagen
配合目的 保湿感触改良 など

1. 基本情報

1.1. 定義

化学構造的に水溶性コラーゲン(アテロコラーゲン)分子の側鎖に存在するアミノ基(-NH2に親水性のスクシニル基(-COCH2CH2COOH)が結合したコラーゲン誘導体です[1][2a]

1.2. 物性

水溶性コラーゲン(アテロコラーゲン)は酸性領域で溶解しやすく、中性から塩基性領域では溶けにくい(繊維が再生し沈殿しやすい)性質をもちますが、サクシノイルアテロコラーゲンはアテロコラーゲンの側鎖に存在するアミノ基(-NH2に親水性のスクシニル基(-COCH2CH2COOH)を結合することで、中性領域での溶解性を高めたものです[2b][3a]

2. 化粧品としての配合目的

化粧品に配合される場合は、

  • 皮表水分保持による保湿作用
  • 潤滑性による感触改良

主にこれらの目的で、スキンケア化粧品、メイクアップ化粧品、化粧下地製品、ボディ&ハンドケア製品、マスク製品、洗顔料、クレンジング製品、日焼け止め製品、シャンプー製品、コンディショナー製品、トリートメント製品など様々な製品に汎用されています。

以下は、化粧品として配合される目的に対する根拠です。

2.1. 皮表水分保持による保湿作用

皮表水分保持による保湿作用に関しては、まず前提知識として皮膚最外層である角質層の構造と役割について解説します。

直接外界に接する皮膚最外層である角質層は、以下の図のように、

角質層の構造

水分を保持する働きもつ天然保湿因子を含む角質と角質の間を細胞間脂質で満たした、レンガとモルタルの関係と同様の構造になっており、この構造が保持されることによって外界からの物理的あるいは化学的影響から身体を守り、かつ体内の水分が体外へ過剰に蒸散していくのを防ぐとともに一定の水分を保持する役割を担っています[4][5]

また、角質層内の主な水分は、天然保湿因子(NMF)の分子に結合している結合水と水(液体)の形態をした自由水の2種類の状態で存在しており、以下の表のように、

角質層内の水の種類 定義
結合水 一次結合水 角質層の構成分子と強固に結合し、硬く乾燥しきった角質層の中にも存在する水です。
二次結合水 角質層の構成分子と非常に速やかに結合するものの、乾燥した状態でゆっくりと解離するような比較的弱い結合をしている水の分子のことをいい、温度や湿度など外部環境によって比較的容易に結合と解離を繰り返す可逆的な水です。
自由水 二次結合水の容量を超えて角質層が水を含んだ場合に液体の形で角質層内に存在する水であり、この量が一定量を超えると過水和となり、浸軟した(ふやけた)状態が観察されます。

それぞれこのような特徴を有しています[6a][7]

角質層の柔軟性は、水分量10-20%の間で自然な柔軟性を示す一方で、水分量が10%以下になると角層のひび割れ、肌荒れが生じると考えられており、種々の原因により角質層の保湿機能が低下することによって水分量が低下すると、皮膚表面が乾燥して亀裂、落屑、鱗屑などを生じるようになることから、角層に含まれる水分量が皮膚表面の性状を決定する大きな要因として知られています[6b]

このような背景から、肌荒れやバリア機能の低下やなどによって角層の水分量が低下している場合に、皮膚表面に水分を含んだ膜を形成し、皮膚の水分蒸散を防止することは、皮膚の乾燥、ひび割れ、肌荒れの予防や改善において重要なアプローチのひとつであると考えられています。

サクシノイルアテロコラーゲンは、水溶性コラーゲンの溶解性を向上させたものであり、水溶性コラーゲンと同様に皮表水分保持による保湿作用を有していますが、その効果は水溶性コラーゲンより高いことが報告されています[3b]

2.2. 潤滑性による感触改良

潤滑性による感触改良に関しては、サクシノイルアテロコラーゲンは高い保水性を有しており、水溶性コラーゲン以上の滑らかな感触を付与することから、感触を調整する目的で使用されています[3c]

3. 安全性評価

サクシノイルアテロコラーゲンの現時点での安全性は、

  • 外原規2021規格の基準を満たした成分が収載される医薬部外品原料規格2021に収載
  • 30年以上の使用実績
  • 皮膚刺激性:ほとんどなし
  • 眼刺激性:詳細不明
  • 皮膚感作性(アレルギー性):ほとんどなし

このような結果となっており、化粧品配合量および通常使用下において、一般的に安全性に問題のない成分であると考えられます。

以下は、この結論にいたった根拠です。

3.1. 皮膚刺激性および皮膚感作性(アレルギー性)

高研の安全性データ[8]によると、

  • [ヒト試験] 被検者(人数不明)にサメ由来サクシノイルアテロコラーゲンを対象にHRIPT(皮膚刺激性&皮膚感作性試験)を実施したところ、この試験物質は陰性であった

このように記載されており、試験データをみるかぎり皮膚刺激および皮膚感作なしと報告されているため、一般に皮膚刺激性および皮膚感作性はほとんどないと考えられます。

また、水溶性コラーゲンに安全性の懸念がないことや30年以上の使用実績がある中で重大な皮膚刺激および皮膚感作の報告がないこともサクシノイルアテロコラーゲンの安全性を裏付けていると考えられます。

3.2. 眼刺激性

試験結果や安全性データがみあたらないため、現時点ではデータ不足により詳細不明です。

4. 参考文献

  1. 日本化粧品工業連合会(2013)「サクシノイルアテロコラーゲン」日本化粧品成分表示名称事典 第3版,436.
  2. ab宮田 暉夫(1989)「生体高分子コラーゲンの新しい利用」日本家政学会誌(40)(8),725-731. DOI:10.11428/jhej1987.40.725.
  3. abc井原水産株式会社(2013)「化粧品用水溶性コラーゲンおよび該コラーゲンを含有する化粧品」特開2013-001664.
  4. 朝田 康夫(2002)「保湿能力と水分喪失の関係は」美容皮膚科学事典,103-104.
  5. 田村 健夫・廣田 博(2001)「表皮」香粧品科学 理論と実際 第4版,30-33.
  6. ab日光ケミカルズ株式会社(2006)「水」新化粧品原料ハンドブックⅠ,487-502.
  7. 武村 俊之(1992)「保湿製剤の効用:角層の保湿機構」ファルマシア(28)(1),61-65. DOI:10.14894/faruawpsj.28.1_61.
  8. 株式会社高研(2017)「フカヒレアテロコラーゲンSS」技術資料.

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