メチルグルセス-20の基本情報・配合目的・安全性

メチルグルセス-20

化粧品表示名称 メチルグルセス-20
医薬部外品表示名称 ポリオキシエチレンメチルグルコシド
医薬部外品表示名称(簡略名) POEメチルグルコシド
化粧品国際的表示名称(INCI名) Methyl Gluceth-20
配合目的 保湿感触改良 など

1. 基本情報

1.1. 定義

以下の化学式で表されるメチルグルコースのヒドロキシ基(-OH)に20個のPEGが付加重合したメチルグルコースのポリエチレングリコールエーテルです[1a][2a]

メチルグルセス-20

1.2. 物性

メチルグルセス類は、メチルグルコースのヒドロキシ基(-OH)に水溶性保水剤であるPEGを10個または20個結合した構造をもち、他の保湿剤と比較して吸湿性は高くないものの、水溶性の皮膜感をもつことが特徴です[2b][3a][4]

また、メチルグルセス類は、以下の表のように、

名称 PEG鎖の数 質感 皮膜感
メチルグルセス-10 10 しっとり

さっぱり
薄い

厚い
メチルグルセス-20 20

PEGの重合度が大きいほどさっぱりした質感をもち、皮膜が重厚になります[5a]

2. 化粧品としての配合目的

化粧品に配合される場合は、

  • 角層水分量増加による保湿作用
  • 潤滑性および皮膜感による感触改良

主にこれらの目的で、スキンケア化粧品、ボディケア製品、マスク製品、日焼け止め製品、メイクアップ化粧品、化粧下地製品、クレンジング製品、シャンプー製品などに使用されています。

以下は、化粧品として配合される目的に対する根拠です。

2.1. 角層水分量増加による保湿作用

角層水分量増加による保湿作用に関しては、まず前提知識として皮膚最外層である角質層の構造と役割および天然保湿因子と水の関係について解説します。

直接外界に接する皮膚最外層である角質層は、以下の図のように、

角質層の構造

水分を保持する働きもつ天然保湿因子を含む角質と角質の間を細胞間脂質で満たした、レンガとモルタルの関係と同様の構造になっており、この構造が保持されることによって外界からの物理的あるいは化学的影響から身体を守り、かつ体内の水分が体外へ過剰に蒸散していくのを防ぐとともに一定の水分を保持する役割を担っています[6][7]

角質層において水分を保持する働きをもつ天然保湿因子(NMF:natural Moisturizing Factor)は親水性の吸湿物質であり、以下の表のように、

成分 含量(%)
アミノ酸類 40.0
ピロリドンカルボン酸(PCA) 12.0
乳酸 12.0
尿素 7.0
アンモニア、尿酸、グルコサミン、クレアチン 1.5
ナトリウム(Na⁺) 5.0
カリウム(K⁺) 4.0
カルシウム(Ca²⁺) 1.5
マグネシウム(Mg²⁺) 1.5
リン酸(PO₄³⁻) 0.5
塩化物(Cl⁻) 6.0
クエン酸 0.5
糖、有機酸、ペプチド、未確認物質 8.5

アミノ酸、有機酸、塩などの集合体として存在しています[8]

また、角質層内の主な水分は、天然保湿因子(NMF)の分子に結合している結合水と水(液体)の形態をした自由水の2種類の状態で存在しており、以下の表のように、

角質層内の水の種類 定義
結合水 一次結合水 角質層の構成分子と強固に結合し、硬く乾燥しきった角質層の中にも存在する水です。
二次結合水 角質層の構成分子と非常に速やかに結合するものの、乾燥した状態でゆっくりと解離するような比較的弱い結合をしている水の分子のことをいい、温度や湿度など外部環境によって比較的容易に結合と解離を繰り返す可逆的な水です。
自由水 二次結合水の容量を超えて角質層が水を含んだ場合に液体の形で角質層内に存在する水であり、この量が一定量を超えると過水和となり、浸軟した(ふやけた)状態が観察されます。

それぞれこのような特徴を有しています[9a][10]

角質層の柔軟性は、水分量10-20%の間で自然な柔軟性を示す一方で、水分量が10%以下になると角層のひび割れ、肌荒れが生じると考えられており、種々の原因により角質層の保湿機能が低下することによって水分量が低下すると、皮膚表面が乾燥して亀裂、落屑、鱗屑などを生じるようになることから、角層に含まれる水分量が皮膚表面の性状を決定する大きな要因として知られています[9b]

このような背景から、角層の水分量が低下している場合に角層水分量を増加することは、皮膚の乾燥、ひび割れ、肌荒れの予防や改善において重要なアプローチのひとつであると考えられています。

メチルグルセス-20は、メチルグルセス-10と同様に保湿剤として広く知られています[1b][3b][5b]

ただし、メチルグルセス-20単独での角層水分量への影響に関するヒト試験データがみつけられていないため、みつかりしだい追補します。

2.2. 潤滑性および皮膜感による感触改良

潤滑性および皮膜感による感触改良に関しては、メチルグルセス-20はべたつきをおさえ、ツヤおよびなめらかかつ厚みのある皮膜感を付与することから、感触を調整する目的で使用されています[3c][5c]

3. 配合製品数および配合量範囲

実際の配合製品数および配合量に関しては、海外の2013年の調査結果になりますが、以下のように報告されています(∗1)

∗1 以下表におけるリーブオン製品は、付けっ放し製品(スキンケア製品やメイクアップ製品など)を表しており、またリンスオフ製品は、洗い流し製品(シャンプー、ヘアコンディショナー、ボディソープ、洗顔料、クレンジングなど)を指します。

メチルグルセス-20の配合製品数と配合量の調査結果(2013年)

4. 安全性評価

メチルグルセス-20の現時点での安全性は、

  • 外原規2021規格の基準を満たした成分が収載される医薬部外品原料規格2021に収載
  • 20年以上の使用実績
  • 皮膚刺激性:ほとんどなし
  • 眼刺激性:ほとんどなし
  • 皮膚感作性(アレルギー性):ほとんどなし

このような結果となっており、化粧品配合量および通常使用下において、一般的に安全性に問題のない成分であると考えられます。

以下は、この結論にいたった根拠です。

4.1. 皮膚刺激性および皮膚感作性(アレルギー性)

Cosmetic Ingredient Reviewの安全性データ[2c]によると、

  • [ヒト試験] 56人の被検者にそれぞれ20%メチルグルセス-20水溶液(10人)、40%メチルグルセス-20水溶液(12人)、60%メチルグルセス-20水溶液(12人)、80%メチルグルセス-20水溶液(13人)および100%メチルグルセス-20原液(9人)を対象にHRIPT(皮膚刺激性&感作性試験)を閉塞パッチにて実施したところ、いずれの被検者においても皮膚刺激や皮膚感作の兆候はなく、この試験物質は皮膚刺激剤および皮膚感作剤ではないと結論付けられた(Product Investigations Inc,1976)

このように記載されており、試験データをみるかぎり共通して皮膚刺激および皮膚感作なしと報告されているため、一般に皮膚刺激性および皮膚感作性はほとんどないと考えられます。

4.2. 眼刺激性

試験結果や安全性データがみあたらないため、現時点ではデータ不足により詳細不明です。

5. 参考文献

  1. ab日本化粧品工業連合会(2013)「メチルグルセス-20」日本化粧品成分表示名称事典 第3版,984.
  2. abcW. Johnson, et al(2016)「Safety Assessment of Methyl Glucose Polyethers and Esters as Used in Cosmetics」International Journal of Toxicology(35)(2_suppl),12S-40S. DOI:10.1177/1091581816670322.
  3. abc宇山 侊男, 他(2020)「メチルグルセス類」化粧品成分ガイド 第7版,50.
  4. 日光ケミカルズ株式会社(2016)「肌荒れ防止剤」パーソナルケアハンドブックⅠ,505-521.
  5. abc日油株式会社(2012)「マクビオブライト MGシリーズ」技術資料.
  6. 朝田 康夫(2002)「保湿能力と水分喪失の関係は」美容皮膚科学事典,103-104.
  7. 田村 健夫・廣田 博(2001)「表皮」香粧品科学 理論と実際 第4版,30-33.
  8. I Horii, et al(1989)「Stratum corneum hydration and amino acid content in xerotic skin」British Journal of Dermatology(121)(5),587-592. DOI:10.1111/j.1365-2133.1989.tb08190.x.
  9. ab日光ケミカルズ株式会社(2006)「水」新化粧品原料ハンドブックⅠ,487-502.
  10. 武村 俊之(1992)「保湿製剤の効用:角層の保湿機構」ファルマシア(28)(1),61-65. DOI:10.14894/faruawpsj.28.1_61.

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