ヒアルロン酸の基本情報・配合目的・安全性

ヒアルロン酸

化粧品表示名称 ヒアルロン酸
化粧品国際的表示名称(INCI名) Hyaluronic Acid
配合目的 保湿 など

1. 基本情報

1.1. 定義

以下の化学式で表されるグルクロン酸(glucuronic acid:下図右)N-アセチル-D-グルコサミン(N-Acetyl-D-glucosamine:下図左)が直鎖状に結合した構造の繰り返し単位で構成されたグリコサミノグリカン(ムコ多糖)です[1][2][3a]

ヒアルロン酸

1.2. 物性

ヒアルロン酸は、平均分子量100万-1,000万(∗1)の酸性ムコ多糖であり、水によく溶け、高い水分保持能と粘性をもち、また吸湿性においては相対湿度変化の影響を受けにくいことを特徴としています[3b][4][5a]

∗1 化粧品においては主に平均分子量50万-200万のものが使用されます。

1.3. 分布

ヒアルロン酸は、自然界においてすべての脊椎動物と一部の微生物体内に存在しており、生体内では皮膚、関節液、眼球の硝子体に多く存在しています[3c][5b]

1.4. 皮膚におけるヒアルロン酸の役割

皮膚におけるヒアルロン酸の役割に関しては、以下の皮膚構造図をみてもらうとわかりやすいと思いますが、皮膚上層部は、

皮膚の構造と皮膚の主要成分

直接外界に接する皮膚最外層である角質層を含む表皮と、表皮を支える真皮から構成されていることが知られています。

表皮を下から支える真皮を構成する成分としては、細胞成分と線維性組織を形成する間質成分(細胞外マトリックス成分)に二分され、以下の表のように、

分類 構成成分
間質成分 膠原線維 コラーゲン
弾性繊維 エラスチン
基質 糖タンパク質、プロテオグリカン、グリコサミノグリカン
細胞成分 線維芽細胞

主成分である間質成分は、大部分がコラーゲンからなる膠原線維とエラスチンからなる弾性繊維、およびこれらの間を埋める基質で占められており、細胞成分としてはこれらを産生する線維芽細胞がその間に散在しています[6a][7a]

細胞間を満たす無定形成分である基質は、親水性が強く水分量の調整、水溶性物質の組織への浸透・拡散に重要な役割を果たすとともにコラーゲンやエラスチンと結合して繊維を安定化させることにより皮膚の柔軟性を保持しています[6b][7b]

この基質は、主に糖タンパク質(glycoprotein)プロテオグリカン(proteoglycan)およびグリコサミノグリカン(glycosaminoglycan)で構成されており、グリコサミノグリカンとしてはヒアルロン酸とデルマタン硫酸(コンドロイチン硫酸B)が多いのが特徴です[8a]

ヒアルロン酸は粘稠性が強く、大量の水分保持能があり、細胞の足場として機能するのに対してデルマタン硫酸は繊維の維持や他の基質を保持しています[8b]

また、ヒアルロン酸は表皮においても細胞間に分布しており、上層に上がるほど角化によって低分子化するとともにヒアルロン酸量が増加し、ゲル状を示し細胞を支えるとともに酸素、イオン、栄養成分、生理活性成分、代謝老廃物などの移動や拡散に寄与していると考えられています[9a][10]

さらに、角層にも表皮層(角層より下層)とほぼ同程度のヒアルロン酸量が移行することが知られており、角層の水分環境に関わることで保湿性が高まる可能性や細胞間脂質との相互作用の可能性などが考えられますが、現時点では明確な役割は明らかにされていません(みつかりしだい追補します)[9b]

1.5. 化粧品以外の主な用途

ヒアルロン酸の化粧品以外の主な用途としては、

分野 用途
食品 タンパク質と複合体をつくり保水性を向上することから食品の保水性や物性の改良に用いられています[11]

これらの用途が報告されています。

2. 化粧品としての配合目的

化粧品に配合される場合は、

  • 皮表水分保持による保湿作用
  • 配合目的についての補足

主にこれらの目的で、スキンケア化粧品、メイクアップ化粧品、マスク製品、クレンジング製品、洗顔料、ボディ&ハンドケア製品、ネイル製品などに使用されています。

以下は、化粧品として配合される目的に対する根拠です。

2.1. 皮表水分保持による保湿作用

皮表水分保持による保湿作用に関しては、まず前提知識として皮膚最外層である角質層の構造と役割について解説します。

直接外界に接する皮膚最外層である角質層は、以下の図のように、

角質層の構造

水分を保持する働きもつ天然保湿因子を含む角質と角質の間を細胞間脂質で満たした、レンガとモルタルの関係と同様の構造になっており、この構造が保持されることによって外界からの物理的あるいは化学的影響から身体を守り、かつ体内の水分が体外へ過剰に蒸散していくのを防ぐとともに一定の水分を保持する役割を担っています[12][13]

また、角質層内の主な水分は、天然保湿因子(NMF)の分子に結合している結合水と水(液体)の形態をした自由水の2種類の状態で存在しており、以下の表のように、

角質層内の水の種類 定義
結合水 一次結合水 角質層の構成分子と強固に結合し、硬く乾燥しきった角質層の中にも存在する水です。
二次結合水 角質層の構成分子と非常に速やかに結合するものの、乾燥した状態でゆっくりと解離するような比較的弱い結合をしている水の分子のことをいい、温度や湿度など外部環境によって比較的容易に結合と解離を繰り返す可逆的な水です。
自由水 二次結合水の容量を超えて角質層が水を含んだ場合に液体の形で角質層内に存在する水であり、この量が一定量を超えると過水和となり、浸軟した(ふやけた)状態が観察されます。

それぞれこのような特徴を有しています[14a][15]

角質層の柔軟性は、水分量10-20%の間で自然な柔軟性を示す一方で、水分量が10%以下になると角層のひび割れ、肌荒れが生じると考えられており、種々の原因により角質層の保湿機能が低下することによって水分量が低下すると、皮膚表面が乾燥して亀裂、落屑、鱗屑などを生じるようになることから、角層に含まれる水分量が皮膚表面の性状を決定する大きな要因として知られています[14b]

このような背景から、肌荒れやバリア機能の低下やなどによって角層の水分量が低下している場合に、皮膚表面に水分を含んだ膜を形成し、皮膚の水分蒸散を防止することは、皮膚の乾燥、ひび割れ、肌荒れの予防や改善において重要なアプローチのひとつであると考えられています。

ヒアルロン酸は、水溶性のムコ多糖であり、優れた水分保持能をもち、相対湿度変化の影響を受けにくいことから、皮膚表面に水分を含んだ膜を形成し皮膚の水分蒸散を防ぐ目的でスキンケア化粧品、メイクアップ化粧品、マスク製品などに使用されています[5c]

ただし、一般にヒアルロン酸はヒアルロン酸Naとして同様の目的で汎用されています。

2.2. 配合目的についての補足

化粧品表示名称「ヒアルロン酸」は、低分子にしたものもあり、低分子の場合は角層への浸透による角層水分量の増加目的で配合されることがありますが、皮膚浸透や角層水分量のヒト試験データがみあたらないため、現時点では保留とし、みつかりしだい再編集します。

3. 混合原料としての配合目的

ヒアルロン酸は、混合原料が開発されており、ヒアルロン酸と以下の成分が併用されている場合は、混合原料として配合されている可能性が考えられます。

原料名 HyaInno 1% Solution
構成成分 ヒアルロン酸Na、加水分解ヒアルロン酸Na、ヒアルロン酸加水分解ヒアルロン酸、ヒアルロン酸クロスポリマーNa
特徴 高分子から低分子まで5種類のヒアルロン酸を独自の割合で配合した複合保湿剤
原料名 EPIDERMOSIL
構成成分 シラントリオール、ヒアルロン酸BG
特徴 低分子ヒアルロン酸とピーリング効果をもつシラノールの組み合わせにより表皮部分の細胞外マトリックスの再構築を目的に設計された複合原料
原料名 プロヒアルロニックコンプレックス
構成成分 、ヒアルロン酸ジメチルシラノール、シラントリオール、ヒアルロン酸キサンタンガム、パルミトイルトリペプチド-1、グリコール酸乳酸ポリビニルアルコール
特徴 肌の内側からヒアルロン酸の生成を促進する複合抗老化原料

4. 配合製品数および配合量範囲

実際の配合製品数および配合量に関しては、海外の2005年の調査結果になりますが、以下のように報告されています。

ヒアルロン酸の配合製品数と配合量の調査結果(2005年)

5. 安全性評価

ヒアルロン酸の現時点での安全性は、

  • 食品添加物の既存添加物リストに収載
  • 20年以上の使用実績
  • 皮膚刺激性:ほとんどなし
  • 眼刺激性:詳細不明
  • 皮膚感作性(アレルギー性):ほとんどなし

このような結果となっており、化粧品配合量および通常使用下において、一般的に安全性に問題のない成分であると考えられます。

以下は、この結論にいたった根拠です。

5.1. 皮膚刺激性および皮膚感作性(アレルギー性)

ヒアルロン酸はヒト皮膚中に存在しており、ヒト皮膚中のヒアルロン酸量を考慮すると、化粧品中のヒアルロン酸量は無視できるものであり、安全性の懸念はないと報告されています[16]

また、食品添加物の既存添加物リストに収載されており、20年以上の使用実績がある中で重大な皮膚刺激および皮膚感作の報告がないこともヒアルロン酸の安全性を裏付けていると考えられます。

5.2. 眼刺激性

試験結果や安全性データがみあたらないため、現時点ではデータ不足により詳細不明です。

6. 参考文献

  1. 日本化粧品工業連合会(2013)「ヒアルロン酸」日本化粧品成分表示名称事典 第3版,785.
  2. 大木 道則, 他(1989)「ヒアルロン酸」化学大辞典,1833.
  3. abc有機合成化学協会(1985)「ヒアルロン酸」有機化合物辞典,710.
  4. 高山 健一郎(1988)「ヒアルロン酸 – その生産と応用」化学と生物(26)(5),308-315. DOI:10.1271/kagakutoseibutsu1962.26.308.
  5. abc山﨑 太朗(2013)「ヒアルロン酸の機能と利用」食品と容器(54)(3),138-142.
  6. ab朝田 康夫(2002)「真皮のしくみと働き」美容皮膚科学事典,28-33.
  7. ab清水 宏(2018)「真皮」あたらしい皮膚科学 第3版,13-20.
  8. ab大塚 藤男(2011)「真皮」皮膚科学 第9版,32-44.
  9. ab酒井 進吾・佐用 哲也(2000)「表皮ヒアルロン酸代謝制御研究と角層ヒアルロン酸の発見」Fragrance Journal臨時増刊(17),48-55.
  10. 井上 紳太郎(2009)「表皮ヒアルロン酸合成制御機構の解明」グルコサミン研究(5),4-10.
  11. 樋口 彰, 他(2019)「ヒアルロン酸」食品添加物事典 新訂第二版,277.
  12. 朝田 康夫(2002)「保湿能力と水分喪失の関係は」美容皮膚科学事典,103-104.
  13. 田村 健夫・廣田 博(2001)「表皮」香粧品科学 理論と実際 第4版,30-33.
  14. ab日光ケミカルズ株式会社(2006)「水」新化粧品原料ハンドブックⅠ,487-502.
  15. 武村 俊之(1992)「保湿製剤の効用:角層の保湿機構」ファルマシア(28)(1),61-65. DOI:10.14894/faruawpsj.28.1_61.
  16. L.C. Becker, et al(2009)「Final Report of the Safety Assessment of Hyaluronic Acid, Potassium Hyaluronate, and Sodium Hyaluronat」International Journal of Toxicology(28)(4_Suppl),5-67. DOI:10.1177/1091581809337738.

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