ハチミツの基本情報・配合目的・安全性

ハチミツ

化粧品表示名 ハチミツ
医薬部外品表示名 ハチミツ
INCI名 Honey
配合目的 保湿保水 など

1. 基本情報

1.1. 定義

ミツバチ科ミツバチ属動物ミツバチ(学名:Apis mellifera 英名:Honey bee)または同属動物によって集められた蜜です[1a][2]

1.2. 成分組成

ハチミツは天然成分であることから、地域、時期、抽出方法によって成分組成に差異があると推察されますが、その成分組成は一例として、

分類 成分名称 含有比(%)
糖質 単糖 フルクトース 38.0
グルコース 31.0
二糖 マルトース 6.0
スクロース 1.9
多糖 不明 1.8
水分 18.0
その他(微量成分) 色素、香気物質、糖アルコール、ビタミン(主にビタミンB群)、花粉粒、灰分、窒素、酸(主にグルコン酸) 3.0

これらの成分で構成されていることが報告されており、糖と水分を主要成分とし、糖はフルクトースとグルコースを主としています[3a][4a]

ただし、食品用とは異なり、化粧品においては一般にアレルギーや濁りの原因となる不純物を取り除き、脱臭・脱色・脱タンパクされたものが用いられます[5]

1.3. 分布と歴史

ハチミツは、人類最古の甘味料であり、その利用は1万年以上も前にさかのぼるといわれ、古代エジプトでは外傷の手当あるいは死体の防腐物質などに、ギリシャでは皮膚の塗り薬として、中国では栄養食品や漢方薬として珍重されてきた歴史があります[6]

日本においては、7世紀(西暦601-700年)に朝鮮から伝えられ、720年に完成した「日本書紀」や927年に完成した「延喜式」などにハチミツが貴重品として取り扱われていた記載があり、1873年には洋式の養蜂が行われ、現在は岐阜県、長野県、広島県、九州などが中心となっています[3b][7a]

1.4. 化粧品以外の主な用途

ハチミツの化粧品以外の主な用途としては、

分野 用途
食品 家庭での食用のほか、菓子や飲料に用いられています[7b]
医薬品 甘味、基剤、矯味、結合、コーティング、賦形、崩壊、防腐目的の医薬品添加剤として経口剤、歯科外用剤および口中用剤に用いられています[8]

これらの用途が報告されています。

2. 化粧品としての配合目的

化粧品に配合される場合は、

  • 保湿作用
  • 保水

主にこれらの目的で、メイクアップ製品、化粧下地製品、スキンケア製品、ボディケア製品、ハンドケア製品、マスク製品、洗顔料、クレンジング製品、シャンプー製品、コンディショナー製品、トリートメント製品、アウトバストリートメント製品など様々な製品に汎用されています。

以下は、化粧品として配合される目的に対する根拠です。

2.1. 保湿作用

保湿作用に関しては、まず前提知識として皮膚最外層である角質層の構造と役割について解説します。

直接外界に接する皮膚最外層である角質層は、以下の図のように、

角質層の構造

水分を保持する働きもつ天然保湿因子を含む角質と角質の間を細胞間脂質で満たした、レンガとモルタルの関係と同様の構造になっており、この構造が保持されることによって外界からの物理的あるいは化学的影響から身体を守り、かつ体内の水分が体外へ過剰に蒸散していくのを防ぐとともに一定の水分を保持する役割を担っています[9][10]

また、角質層内の主な水分は、天然保湿因子(NMF)の分子に結合している結合水と水(液体)の形態をした自由水の2種類の状態で存在しており、以下の表のように、

角質層内の水の種類 定義
結合水 一次結合水 角質層の構成分子と強固に結合し、硬く乾燥しきった角質層の中にも存在する水です。
二次結合水 角質層の構成分子と非常に速やかに結合するものの、乾燥した状態でゆっくりと解離するような比較的弱い結合をしている水の分子のことをいい、温度や湿度など外部環境によって比較的容易に結合と解離を繰り返す可逆的な水です。
自由水 二次結合水の容量を超えて角質層が水を含んだ場合に液体の形で角質層内に存在する水であり、この量が一定量を超えると過水和となり、浸軟した(ふやけた)状態が観察されます。

それぞれこのような特徴を有しています[11a][12]

角質層の柔軟性は、水分量10-20%の間で自然な柔軟性を示す一方で、水分量が10%以下になると角層のひび割れ、肌荒れが生じると考えられており、種々の原因により角質層の保湿機能が低下することによって水分量が低下すると、皮膚表面が乾燥して亀裂、落屑、鱗屑などを生じるようになることから、角層に含まれる水分量が皮膚表面の性状を決定する大きな要因として知られています[11b]

このような背景から、肌荒れやバリア機能の低下やなどによって角層の水分量が低下している場合に、皮膚表面に水分を含んだ膜を形成し、皮膚の水分蒸散を防止することや角層水分量を増加は、皮膚の乾燥、ひび割れ、肌荒れの予防や改善において重要なアプローチのひとつであると考えられています。

ハチミツは、皮膚や毛髪をなめらかにする性質があることから[4b][13]、保湿剤として主にスキンケア製品、ボディ&ハンドケア製品、洗浄系製品などに汎用されています。

2.2. 製品自体の保水

製品自体の保水に関しては、ハチミツは単糖であるフルクトースグルコースを主成分とし、吸湿性を有していることから[14][15]、製品自体の水分を保持する目的で様々な製品に配合されています[1b]

3. 配合製品数および配合量範囲

実際の配合製品数および配合量に関しては、海外の1980年および2002-2003年の調査結果になりますが、以下のように報告されています(∗1)

∗1 以下表におけるリーブオン製品は、付けっ放し製品(スキンケア製品やメイクアップ製品など)を指し、またリンスオフ製品は、洗い流し製品(シャンプー、ヘアコンディショナー、ボディソープ、洗顔料、クレンジングなど)を指します。

ハチミツの配合製品数と配合量の調査結果(2018-2020年)

4. 安全性評価

ハチミツの現時点での安全性は、

  • 医療上汎用性があり有効性および安全性の基準を満たした成分が収載される日本薬局方に収載
  • 外原規2021規格の基準を満たした成分が収載される医薬部外品原料規格2021に収載
  • 40年以上の使用実績
  • 皮膚刺激性:ほとんどなし(データなし)
  • 眼刺激性:詳細不明
  • 皮膚感作性(アレルギー性):ほとんどなし(データなし)

このような結果となっており、化粧品配合量および通常使用下において、一般に安全性に問題のない成分であると考えられます。

以下は、この結論にいたった根拠です。

4.1. 皮膚刺激性および皮膚感作性(アレルギー性)

日本薬局方および医薬部外品原料規格2021に収載されており、40年以上の使用実績がある中で重大な皮膚刺激および皮膚感作の報告がみあたらないため、化粧品配合量および通常使用下において、一般に皮膚刺激性および皮膚感作性(アレルギー性)はほとんどないと考えられますが、詳細な安全性試験データがみあたらず、データ不足のため詳細は不明です。

4.2. 眼刺激性

試験結果や安全性データがみあたらないため、現時点ではデータ不足により詳細不明です。

5. 参考文献

  1. ab日本化粧品工業連合会(2013)「ハチミツ」日本化粧品成分表示名称事典 第3版,761.
  2. 厚生省薬務局審査課(1982)「ハチミツ」化粧品原料基準 第二版,266.
  3. ab越後 多嘉志(1975)「ハチミツの化学」化学と生物(13)(3),192-198. DOI:10.1271/kagakutoseibutsu1962.13.192.
  4. ab杉井 伸二(2002)「ハチミツの有用性と応用の実際」Fragrance Journal(30)(3),11-16.
  5. 化粧品成分検定協会(2019)「ハチミツ」化粧品成分検定公式テキスト 改訂新版,34.
  6. 渡辺 孝(2003)「ハチミツはいつ頃から」ハチミツの百科 新装版,19-30.
  7. ab杉田 浩一, 他(2017)「はちみつ」新版 日本食品大事典,621-622.
  8. 日本医薬品添加剤協会(2021)「ハチミツ」医薬品添加物事典2021,462-463.
  9. 朝田 康夫(2002)「保湿能力と水分喪失の関係は」美容皮膚科学事典,103-104.
  10. 田村 健夫・廣田 博(2001)「表皮」香粧品科学 理論と実際 第4版,30-33.
  11. ab日光ケミカルズ株式会社(2006)「水」新化粧品原料ハンドブックⅠ,487-502.
  12. 武村 俊之(1992)「保湿製剤の効用:角層の保湿機構」ファルマシア(28)(1),61-65. DOI:10.14894/faruawpsj.28.1_61.
  13. 日光ケミカルズ株式会社(1977)「有機薬品」ハンドブック – 化粧品・製剤原料 – 改訂版,802-808.
  14. 越後 多嘉志(1993)「ハチミツの科学」調理科学(26)(1),47-53. DOI:10.11402/cookeryscience1968.26.1_47.
  15. 中村 純(2001)「古くて新しいミツバチ生産物「ハチミツ」」ミツバチ科学(22)(4),145-158. hdl:11078/852.

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