タウリンの基本情報・配合目的・安全性

タウリン

化粧品表示名 タウリン
医薬部外品表示名 タウリン、アミノエチルスルホン酸
INCI名 Taurine
配合目的 保湿 など

1. 基本情報

1.1. 定義

以下の化学式で表されるアミノ基(-NH2とスルホ基(-SO3H)をもつ双性イオン化合物(∗1)かつ含硫アミノ酸様化合物(アミノスルホン酸化合物)(∗2)です[1][2a][3a]

∗1 双性イオン化合物とは、両性イオン化合物とも呼び、一つの分子内にプラス電荷とマイナス電荷の両方を持ち、全体としては中性イオンを示す化合物を指します。タウリンは弱塩基性を示すアミノ基(-NH2)が正電荷を、強酸性を示すスルホ基(-SO3H)が負電荷をもつ双性イオン化合物です。

∗2 アミノ酸は、化学構造的にアミノ基とカルボキシ基の両方の官能基を持つ有機化合物の総称であり、タウリンはアミノ基はもちますがカルボキシ基を持たないことから厳密にはアミノ酸に分類されませんが、生体内では含硫アミノ酸であるシステインやメチオニンの代謝によって生合成される最終代謝産物であることから、含硫アミノ酸関連物質として分類されます。栄養学などにおいてはタウリンをアミノ酸や含硫アミノ酸に分類しているものもみられます。

タウリン

1.2. 物性・性状

タウリンの物性は、

状態 結晶
溶解性 水に易溶、エタノールなど有機溶媒に不溶

このように報告されています[2b][4a]

1.3. 分布

タウリンは、生物界においてとくにイカやタコといった軟体動物の肉エキス中に遊離の状態で広く分布しており、ヒトでは体内のすべての組織に存在し、とくに心臓、骨格筋、肝臓、脳、網膜などの組織に高濃度に存在しています[2c][3b]

1.4. 皮膚における働き

タウリンは、体内のすべての組織とくに心臓、骨格筋、肝臓、脳、網膜などに高濃度に存在し、胆汁酸の抱合、浸透圧調節作用、抗酸化作用、神経伝達物質様作用など様々な役割を担っています[3c]

皮膚については、以下の皮膚構造図をみてもらうとわかりやすいと思いますが、

皮膚の構造と皮膚の主要成分

皮膚上層部は、直接外界に接する皮膚最外層である角質層を含む表皮と、表皮を支える真皮から構成されていることが知られており、タウリンは表皮の有棘層上部から顆粒層に高濃度で存在し(∗3)、顆粒層を中心に浸透圧調節物質として表皮の水分調節に重要な働きを担っています[5a]

∗3 角質層にタウリンが存在しないことは、細胞が角質層に達する前にタウリンが細胞から放出されていることを示しており、これによりタウリンは皮膚から外部に失われることなく、顆粒層の細胞に取り込まれて表皮に留まっていると考えられています。

顆粒層におけるタウリンの浸透圧調節物質としての働きについては、まず前提知識として表皮における水の濃度の違いについて解説します。

表皮は、それぞれの層で水分含有量が明確に異なっており、皮膚の表面の水分含有量は約15%、角質層と顆粒層の接触面では約30%、顆粒層では劇的に増加し、有棘層では約70%に達することが明らかにされています[6]

このように、角層の水分含有量が異なることによって、顆粒層では常に高浸透圧ストレスが発生している状態となっており、細胞はこの状態の中で正常に機能しますが、紫外線の曝露や乾燥などによって皮膚の水分含有量が変化すると浸透圧の乱れが生じ、こういった浸透圧の変化があった場合、以下の図をみてもらうとわかりやすいと思いますが、

表皮ケラチノサイトにおけるタウリンの浸透圧調整のメカニズム

細胞内外の浸透圧の乱れにより細胞内の水分喪失が進行し細胞が縮小すると、細胞外に存在しているタウリンが細胞膜のタウリントランスポーター(taurine transporter:TAUT)を介して細胞内に取り込まれ、浸透圧を調整することにより細胞内外の水分量を調節していると考えられています[5b][7a]

1.5. 化粧品以外の主な用途

タウリンの化粧品以外の主な用途としては、

分野 用途
食品 イカ・タコ・貝類のエキスの風味を構成していることから風味の改良目的で水産加工食品に用いられているほか、各種アミノ酸と併用して栄養ドリンクなどにも用いられています[8]
医薬品 心筋に対してCa調節の役割があり、胆汁酸排泄促進作用や心筋代謝改善作用などがあることから、うっ血性心不全などの治療薬として[9]、目の新陳代謝を促進することから疲れ目の一般点眼薬として[10]、利胆、解毒、肝保護作用などから疲労回復や栄養補給目的で滋養強壮剤やドリンク剤などに用いられています[11]。また、安定・安定化、緩衝、矯味、結合、等張化、賦形、防腐目的の医薬品添加剤として経口剤、各種注射、眼科用剤に用いられています[4b]

これらの用途が報告されています。

2. 化粧品としての配合目的

化粧品に配合される場合は、

  • 角層水分量増加および表皮浸透圧調節による保湿作用

主にこれらの目的で、スキンケア製品、マスク製品、ハンドケア製品、化粧下地製品、洗顔料、シャンプー製品、コンディショナー製品、トリートメント製品、アウトバストリートメント製品、ヘアカラー製品など様々な製品に汎用されています。

以下は、化粧品として配合される目的に対する根拠です。

2.1. 角層水分量増加および表皮浸透圧調節による保湿作用

角層水分量増加および表皮浸透圧調節による保湿作用に関しては、まず前提知識として皮膚最外層である角質層の構造と役割および天然保湿因子と水の関係について解説します(∗4)

∗4 表皮の浸透圧調節については皮膚におけるタウリンの働きで解説していることからここでは省略します。

直接外界に接する皮膚最外層である角質層は、以下の図のように、

角質層の構造

水分を保持する働きもつ天然保湿因子を含む角質と角質の間を細胞間脂質で満たした、レンガとモルタルの関係と同様の構造になっており、この構造が保持されることによって外界からの物理的あるいは化学的影響から身体を守り、かつ体内の水分が体外へ過剰に蒸散していくのを防ぐとともに一定の水分を保持する役割を担っています[12][13]

角質層において水分を保持する働きをもつ天然保湿因子(NMF:natural Moisturizing Factor)は低分子の水溶性物質であり、以下の表のように、

成分 含量(%)
アミノ酸 40.0
ピロリドンカルボン酸(PCA) 12.0
乳酸 12.0
尿素 7.0
アンモニア、尿酸、グルコサミン、クレアチン 1.5
ナトリウム(Na⁺) 5.0
カリウム(K⁺) 4.0
カルシウム(Ca²⁺) 1.5
マグネシウム(Mg²⁺) 1.5
リン酸(PO₄³⁻) 0.5
塩化物(Cl⁻) 6.0
クエン酸、ギ酸 0.5
糖、有機酸、ペプチド、未確認物質 8.5

アミノ酸、有機酸、塩などの集合体として存在しています[14a]

また、角質層内の主な水分は、天然保湿因子(NMF)の分子に結合している結合水と水(液体)の形態をした自由水の2種類の状態で存在しており、以下の表のように、

角質層内の水の種類 定義
結合水 一次結合水 角質層の構成分子と強固に結合し、硬く乾燥しきった角質層の中にも存在する水です。
二次結合水 角質層の構成分子と非常に速やかに結合するものの、乾燥した状態でゆっくりと解離するような比較的弱い結合をしている水の分子のことをいい、温度や湿度など外部環境によって比較的容易に結合と解離を繰り返す可逆的な水です。
自由水 二次結合水の容量を超えて角質層が水を含んだ場合に液体の形で角質層内に存在する水であり、この量が一定量を超えると過水和となり、浸軟した(ふやけた)状態が観察されます。

それぞれこのような特徴を有しています[15a][14b]

角質層の柔軟性は、水分量10-20%の間で自然な柔軟性を示す一方で、水分量が10%以下になると角層のひび割れ、肌荒れが生じると考えられており、種々の原因により角質層の保湿機能が低下することによって水分量が低下すると、皮膚表面が乾燥して亀裂、落屑、鱗屑などを生じるようになることから、角層に含まれる水分量が皮膚表面の性状を決定する大きな要因として知られています[15b]

さらに、加齢や紫外線曝露により表皮内のタウリン量の減少により細胞の大きさが縮小することが報告されています[5c][16a]

このような背景から、角層の水分量が低下している場合に角層水分量を増加することや、表皮タウリン量が減少し細胞が縮小している場合にタウリンを補給することは、皮膚の乾燥、ひび割れ、肌荒れの予防や改善において重要なアプローチのひとつであると考えられています。

2020年にイギリスのマンチェスター大学皮膚科学研究センターによって報告されたタウリンの高齢表皮細胞への影響検証によると、

– in vitro : 高齢表皮細胞の容積調節作用 –

5-11歳の若い培養ヒト表皮細胞および50歳以上の高齢培養ヒト表皮細胞に5mMタウリンを添加し、最初の5分間は等浸透圧、次の15分間は高浸透圧、最後の12分間は等浸透圧のサイクルにさらしてタウリン未添加の表皮細胞と比較したところ、以下のグラフのように、

若い表皮細胞におけるタウリンの細胞容積への影響

高齢表皮細胞におけるタウリンの細胞容積への影響

タウリンは、若い表皮細胞において容積調節の影響を示さなかったのに対して、高齢細胞においては未添加より高い細胞容積の回復率を示した。

また、タウリンの高齢細胞における細胞容積増加率は未添加と比較して有意(p=0.0485)であった。

このような試験結果が明らかにされており[16b]、タウリンに高齢表皮細胞の容積調節作用が認められています。

次に、2010年にニベア花王研究所によって報告されたヒト皮膚に対するタウリンの有用性検証によると、

– ヒト使用試験 –

被検者の前腕内側部に同一濃度のタウリンおよびグリセリン水溶液を塗布し、塗布30分および1時間後に角層水分量を測定した後で塗布部を石鹸水で洗浄した上で再度角層水分量を測定したところ、以下のグラフのように、

タウリンの角層水分量への影響

タウリン水溶液塗布1時間後の角層水分量はグリセリンより高く、また塗布部洗浄後の角層水分量は未塗布部、グリセリン塗布部よりも有意(p<0.05)に高かった。

この結果から、タウリンの保湿効果は短時間で角層内部に浸透するとともに、洗浄処置に対しても角層の水分を保持するものと考えられた。

次に、被検者の皮膚に乾燥処置を行い表皮水分蒸散量(TEWL)が有意に上昇することを確認した後、タウリン配合乳液およびタウリン未配合乳液(プラセボ)を3週間連用した後に表皮水分蒸散量を測定し、さらに連用後に再度乾燥処置を行った後TEWLを測定したところ、以下のグラフのように、

タウリンの経表皮水分蒸散量への影響

タウリン配合乳液塗布部位は、表皮水分蒸散量が有意(p<0.05)に低下しており、さらに再度の乾燥処置においても同様の結果が得られた。

このような試験結果が明らかにされており[7b]、タウリンに保湿作用が認められています。

洗浄後にも経表皮の水分蒸散量の抑制効果が発揮されていることから、タウリンの保湿作用は角層内部の水分保持だけでなく、表皮の浸透圧調節によって乾燥から肌を保護していることが示唆されています。

3. 混合原料としての配合目的

タウリンは、混合原料が開発されており、タウリンと以下の成分が併用されている場合は、混合原料として配合されている可能性が考えられます。

原料名 P.P.A.A.-C
構成成分 タウリンリシンHClアラニンヒスチジンHClアルギニンセリンプロリングルタミン酸トレオニンバリンロイシングリシンアラントインイソロイシンフェニルアラニン
特徴 プラセンタに含まれるアミノ酸組成を模して構成されたアミノ酸混合物

4. 安全性評価

タウリンの現時点での安全性は、

  • 食品添加物の既存添加物リストに収載
  • 医療上汎用性があり有効性および安全性の基準を満たした成分が収載される日本薬局方に収載
  • 外原規2021規格の基準を満たした成分が収載される医薬部外品原料規格2021に収載
  • 20年以上の使用実績
  • 皮膚刺激性:ほとんどなし(データなし)
  • 眼刺激性:詳細不明
  • 皮膚感作性(アレルギー性):ほとんどなし(データなし)

このような結果となっており、化粧品配合量および通常使用下において、一般に安全性に問題のない成分であると考えられます。

以下は、この結論にいたった根拠です。

4.1. 皮膚刺激性および皮膚感作性(アレルギー性)

食品添加物の既存添加物リスト、日本薬局方および医薬部外品原料規格2021に収載されており、20年以上の使用実績がある中で重大な皮膚刺激および皮膚感作の報告がみあたらないため、化粧品配合量および通常使用下において、一般に皮膚刺激および皮膚感作性(アレルギー性)はほとんどないと考えられますが、詳細な安全性試験データがみあたらず、データ不足のため詳細は不明です。

4.2. 眼刺激性

試験結果や安全性データがみあたらないため、現時点ではデータ不足により詳細不明です。

5. 参考文献

  1. 日本化粧品工業連合会(2013)「タウリン」日本化粧品成分表示名称事典 第3版,632-633.
  2. abc大木 道則, 他(1989)「タウリン」化学大辞典,1338.
  3. abc薩 秀夫(2007)「タウリンの多彩な生理作用と動態」化学と生物(45)(4),273-281. DOI:10.1271/kagakutoseibutsu1962.45.273.
  4. ab日本医薬品添加剤協会(2021)「タウリン」医薬品添加物事典2021,371.
  5. abc村上 茂(2020)「皮膚の機能維持におけるタウリンの役割」タウリンリサーチ(6)(1),50-53. DOI:10.32172/taurine.6.1_50.
  6. R.R. Warner, et al(1988)「Electron Probe Analysis of Human Skin: Determination of the Water Concentration Profile」Journal of Investigative Dermatology(90)(2),218-224. PMID:3339263.
  7. ab宮本 英和, 他(2010)「タウリンの保湿メカニズムとボディケア製品への応用」Fragrance Journal(38)(3),15-21.
  8. 樋口 彰, 他(2019)「タウリン」食品添加物事典 新訂第二版,213.
  9. 浦部 晶夫, 他(2021)「タウリン」今日の治療薬2021:解説と便覧,833.
  10. 折井 孝男・田邉 直人(2021)「眼科用薬」今日のOTC薬 改訂第5版:解説と便覧,428-459.
  11. 前澤 佳代子(2021)「滋養強壮剤,ドリンク剤,カルシウム剤,アミノ酸」今日のOTC薬 改訂第5版:解説と便覧,550-575.
  12. 朝田 康夫(2002)「保湿能力と水分喪失の関係は」美容皮膚科学事典,103-104.
  13. 田村 健夫・廣田 博(2001)「表皮」香粧品科学 理論と実際 第4版,30-33.
  14. ab武村 俊之(1992)「保湿製剤の効用:角層の保湿機構」ファルマシア(28)(1),61-65. DOI:10.14894/faruawpsj.28.1_61.
  15. ab日光ケミカルズ株式会社(2006)「水」新化粧品原料ハンドブックⅠ,487-502.
  16. abA.R. Foster, et al(2020)「Osmolyte transporter expression is reduced in photoaged human skin: Implications for skin hydration in aging」Aging Cell(19)(1),e13058. DOI:10.1111/acel.13058.

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