オランダガラシ葉/茎エキスとは…成分効果と毒性を解説

育毛 抗脱毛
オランダガラシ葉/茎エキス
[化粧品成分表示名称]
・オランダガラシ葉/茎エキス

[医薬部外品表示名称]
・オランダカラシエキス

アブラナ科植物オランダガラシ(学名:Nasturtium officinale 英名:Watercress)の葉茎からエタノールBGで抽出して得られる抽出物植物エキスです。

オランダガラシは、ヨーロッパを原産とし日本には明治初期に外国人の料理用として導入されましたが普及しなかった経緯があり、現在は少量が水田で栽培されています(文献1:2017;文献2:2018)

一般的には「クレソン」の名称で知られており、他にも「水芥子(みずがらし)」「台湾ぜり」「ウォータークレス」などの別称があります(文献1:2017)

欧米ではアブラナ科特有の辛味をもつ緑黄色野菜として料理の付け合わせに用いられています(文献2:2018)

化粧品に配合される場合は、

これらの目的で、シャンプー製品、トリートメント製品、頭皮ケア製品、まつ毛美容液などに使用されています。

R-spondin1産生促進による抗脱毛・育毛作用

R-spondin1産生促進による抗脱毛・育毛作用に関しては、まず前提知識として毛髪の成長メカニズムと毛髪の成長に関わる因子であるR-spondin1およびDKK-1について解説します。

毛髪の成長メカニズムに関しては、以下の毛髪の構造図をみてもらうとわかりやすいと思いますが、

毛髪の構造

毛髪は、毛細血管が蜜に分布し毛の栄養や発育を司る毛乳頭細胞から毛母細胞に栄養が供給され、栄養を受けた毛母細胞が細胞分裂を行い、分裂した片方が毛母にとどまり次の分裂に備え、残りの片方が毛の細胞(毛幹)となって角化していき、次々に分裂してできる新しい細胞によって表面に押し上げられるというメカニズムによって形成されています(文献3:2002;文献4:2002)

また、毛髪には周期があり、以下の毛周期図を見てもらうとわかりやすいと思いますが、

毛周期(ヘアサイクル)

成長期に入ると約2-6年の期間、毛幹(∗1)が伸び続け、その後に短い退行期が訪れることにより毛根が退縮し、やがて休止期となり毛髪が脱落、数ヶ月の休止期間の後に再度成長期に入って毛幹が伸びていくというサイクルを一生繰り返します(文献5:2009)

∗1 毛幹とは、毛の皮膚から外に露出している部分のことであり、一般に毛と認識されている部位です。

休止期には毛乳頭も縮小しますが消失することはなく、その後の休止期から成長期への移行により再び増大し、休止期毛包の一部が再び毛乳頭細胞と接触して分裂・増殖をはじめ、毛乳頭細胞を取り囲んで新しい毛球部を形成することによって次の毛周期がはじまるため、通常は毛髪量は一定に保たれています(文献6:2016;文献7:1999)

一方で、なんらかの理由で生理的な範囲以上に脱毛が起こり毛髪量が減少する脱毛症が知られており(文献8:2009)、一般に広く知られている脱毛症として男性型脱毛症と女性型脱毛症があります。

男性型脱毛症とは、前頭部から頭頂部を主体に頭髪が次第に粗となる状態のことであり、これは毛周期における成長期が短縮し、成長期毛包が次第に小さくなり軟毛化する結果生じることが知られているのに対して、中年以降の女性において頭頂部を中心に薄毛化が起こる状態を女性型脱毛症と呼び、男性型脱毛症とは別の原因による脱毛症であると考えられていました(文献8:2009;文献9:2003)

ただし、最近では女性型脱毛症も体内の性ホルモンバランスの崩れなどにより男性ホルモンの働きが強くなった結果として生じると考えられてきており、男性型脱毛症と女性型脱毛症をまとめて壮年性脱毛症と呼ぶことが提唱されています(文献9:2003)

脱毛症における男性ホルモンの働きについては、以下の毛乳頭におけるテストステロン(男性ホルモン)の作用メカニズム図をみてもらうとわかりやすいと思いますが、

毛乳頭におけるテストステロンの作用メカニズム

毛乳頭に分布する毛細血管から男性ホルモンであるテストステロン(testosterone)が毛乳頭に取り込まれ、取り込まれたテストステロンが5αリダクターゼという酵素の働きによってDHT(Dihydrotestosterone:ジヒドロテストステロン)に変化し、さらにDHTが組織内の男性ホルモン受容体と結合して男性ホルモン作用を発現しTGF-βやDKK-1などの脱毛因子を誘導することが毛成長抑制(脱毛)への最初のステップとして知られています(文献8:2009;文献9:2003;文献10:2013)

次に、毛包形成に関わる組織再生関連タンパクであり毛乳頭細胞で発現するR-spondin1については、以下のR-spondin1の作用メカニズムをみてもらうとわかりやすいと思いますが、

R-spondin1の作用メカニズム

毛周期における休止期末期から成長期にかけて著しく増加し、外毛根鞘細胞に存在するR-spondin1受容体であるLGR5(luecine-rich orphan G-protein-coupled receptor)に結合することで、同じく外毛根鞘細胞のバルジ領域に存在する毛包幹細胞が活性化し、次の毛母細胞を形成し毛成長がはじまることが報告されています(文献11:2016)

また、R-spondin1は成長期毛包を退行期に移行させる脱毛因子であるDKK-1の発現を抑制することにより、脱毛を抑制する作用も明らかにされています(文献12:2007)

このような背景から、R-spondin1の産生を促進することは脱毛の抑制および育毛(発毛)の促進において重要であると考えられます。

2019年に一丸ファルコスによって報告されたオランダガラシ葉/茎エキスのヒト毛成長への影響検証によると、

in vitroにおいて培養ヒト毛乳頭細胞に0.5%および1%オランダガラシ葉/茎エキスを添加し培養・処理後にR-spondin1タンパク量を測定したところ、以下の表のように、

オランダガラシ葉/茎エキスのR-spondin1産生促進作用

オランダガラシ葉/茎エキスの添加は、毛乳頭細胞におけるR-spondin1産生量の増加を示した。

次に、培養ヒト毛乳頭細胞にDHTと0.25%および0.5%オランダガラシ葉/茎エキスを添加し、3日間培養・処理後に脱毛因子であるDKK-1タンパク量を測定したところ、以下の表のように、

オランダガラシ葉/茎エキスの脱毛因子DKK-1産生抑制作用

オランダガラシ葉/茎エキスの添加は、毛乳頭細胞におけるDKK-1産生量の抑制を示した。

次に、男性側頭部皮膚より毛包を分離したのちに器官培養し、1%オランダガラシ葉/茎エキス含有培地にてさらに5日間培養し、毛組織の長さを24時間の成長度が同程度の毛包と比較したところ、オランダガラシ葉/茎エキスにヒト毛包組織を伸長する効果が確認された。

さらに、ヒト有用性試験としてインド在住男性40人(20-55歳)の頭部に2%オランダガラシ葉/茎エキス配合ローションまたは未配合ローションを1日2回4ヶ月間塗布し、試験前および試験開始1ヶ月ごとに毛髪径(太さ)・毛髪密度・成長期毛数を計測し変化量を算出したところ、

オランダガラシ葉/茎エキスの毛髪径への影響

オランダガラシ葉/茎エキスの毛髪密度への影響

オランダガラシ葉/茎エキスの成長期毛数への影響

2%オランダガラシ葉/茎エキスの塗布部位で毛髪径・毛髪密度・成長期本数などが有意に増加した。

このような試験結果が明らかにされており(文献13:2019)、オランダガラシ葉/茎エキスにR-spondin1産生促進による抗脱毛・毛髪成長作用(育毛作用)が認められています。

複合植物エキスとしてのオランダガラシ葉/茎エキス

オランダガラシ葉/茎エキスは、他の植物エキスとあらかじめ混合された複合原料があり、オランダガラシ葉/茎エキスと以下の成分が併用されている場合は、複合植物エキス原料として配合されている可能性が考えられます。

原料名 ファルコレックスBX32
構成成分 BGニンニク根エキスローマカミツレ花エキスゴボウ根エキスアルニカ花エキスセイヨウキズタ葉/茎エキス、オドリコソウ花/葉/茎エキス、オランダガラシ葉/茎エキスセイヨウアカマツ球果エキスローズマリー葉エキス
特徴 フケ原因菌抑制および過酸化脂質抑制作用目的で設計された9種類の混合植物抽出液
原料名 ファルコレックスBX47
構成成分 BGゴボウ根エキスレモン果実エキスセイヨウキズタ葉/茎エキスオランダガラシ葉/茎エキスセージ葉エキスサボンソウ葉エキス
特徴 リパーゼ活性阻害によるオムツかぶれ改善目的で設計された6種類の混合植物抽出液

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オランダガラシ葉/茎エキスの安全性(刺激性・アレルギー)について

オランダガラシ葉/茎エキスの現時点での安全性は、

  • 外原規2006規格の基準を満たした成分が収載される医薬部外品原料規格2006に収載
  • 10年以上の使用実績
  • 皮膚刺激性:ほとんどなし(データなし)
  • 眼刺激性:詳細不明
  • 皮膚感作性(アレルギー性):ほとんどなし(データなし)

このような結果となっており、化粧品配合量および通常使用下において、一般的に安全性に問題のない成分であると考えられます。

以下は、この結論にいたった根拠です。

皮膚刺激性および皮膚感作性(アレルギー性)について

医薬部外品原料規格2006に収載されており、10年以上の使用実績がある中で重大な皮膚刺激および皮膚感作の報告がみあたらないため、化粧品配合量および通常使用下において、一般的に皮膚刺激および皮膚感作性(アレルギー性)はほとんどないと考えられますが、詳細な安全性試験データがみあたらず、データ不足のため詳細は不明です。

眼刺激性について

試験結果や安全性データがみあたらないため、現時点ではデータ不足により詳細は不明です。

∗∗∗

オランダガラシ葉/茎エキスは育毛・抗脱毛成分にカテゴライズされています。

成分一覧は以下からお読みください。

参考:育毛・抗脱毛成分

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文献一覧:

  1. 杉田 浩一, 他(2017)「クレソン」新版 日本食品大事典,248-249.
  2. ジャパンハーブソサエティー(2018)「クレソン」ハーブのすべてがわかる事典,73.
  3. 朝田 康夫(2002)「毛髪の構造と働きは」美容皮膚科学事典,346-347.
  4. 朝田 康夫(2002)「毛髪をつくる細胞は」美容皮膚科学事典,347-349.
  5. 中村 元信(2009)「毛周期と毛包幹細胞, 毛乳頭細胞」美容皮膚科学 改定2版,78-81.
  6. 日光ケミカルズ(2016)「育毛剤」パーソナルケアハンドブックⅠ,551-572.
  7. 板見 智(1999)「毛の発育制御機構解明における最近の進歩と育毛剤」日本化粧品技術者会誌(33)(3),220-228.
  8. 斎藤 典充, 他(2009)「脱毛症」美容皮膚科学 改定2版,642-647.
  9. 松崎 貴(2003)「脱毛症の生物学」最新の毛髪科学,47-53.
  10. S. Inui, et al(2013)「Androgen actions on the human hair follicle: perspectives」Experimental Dermatology(22)(3),168-171.
  11. Na Li, et al(2016)「Exogenous R-Spondin1 Induces Precocious Telogen-to-Anagen Transition in Mouse Hair Follicles」International Journal of Molecular Sciences(17)(4),582.
  12. M.E. Binnerts, et al(2007)「R-Spondin1 regulates Wnt signaling by inhibiting internalization of LRP6」Proceeding of the National Academy of Sciences of the United States of America(104)(37),14700-14705.
  13. 一丸ファルコス株式会社(2019)「バージョンアップ」Fragrance Journal(47)(6),64-65.

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