ホップエキスとは…成分効果と毒性を解説

抗脱毛 抗老化 抗白髪
ホップエキス
[化粧品成分表示名称]
・ホップエキス

[医薬部外品表示名称]
・ホップエキス

クワ科植物ホップ(学名:Humulus Lupulus 和名:セイヨウカラハナソウ)の雌花穂からエタノールBG、またはこれらの混液で抽出して得られる抽出物植物エキスです。

ホップ(hop)は、西アジアを原産とし、11-15世紀にスッキリとした口当たりと爽やかさからビールの香味付けとしてヨーロッパで広まり、アメリカ大陸には初期のヨーロッパの入植者たちが植栽用に持ち込んだのをきっかけに北東部やカナダ周辺で野生化し、現在ではドイツ、アメリカ、中国を中心にアルコール飲料に風味をもたらす原料として栽培されています(文献1:2014;文献2:2011;文献3:2018;文献4:2000)

日本には明治初期に渡来し、北海道で栽培されるようになり、現在では岩手県、秋田県、山形県、青森県、北海道で栽培されています(文献2:2011;文献5:2012)

ホップエキスは天然成分であることから、地域、時期、抽出方法によって成分組成に差異があると推察されますが、その成分組成は主に、

分類 成分名称
ポリケタイド フムロン
タンニン 詳細不明
フラボノイド フラボノール ケルセチン、ケンペロール
カルコン キサントフモール
テルペノイド セスキテルペン フムレン

これらの成分で構成されていることが報告されています(文献3:2018;文献6:2014)

ホップの雌花穂の化粧品以外の主な用途としては、飲料分野においてほろ苦さ、芳香、透明感のある黄金色を付与するとともに泡持ちを良くし、さらに雑菌の繁殖を抑制することからビールの原料として用いられています(文献4:2000)

化粧品に配合される場合は、

これらの目的で、スキンケア化粧品、シャンプー製品、コンディショナー製品、ヘアカラー製品、頭皮ケア製品、洗顔料、洗顔石鹸、シート&マスク製品、クレンジング製品などに使用されています。

5α-リダクターゼ阻害による抗脱毛作用

5α-リダクターゼ阻害による抗脱毛作用に関しては、まず前提知識として毛髪の成長メカニズムと脱毛症における男性ホルモンの働きおよび5α-リダクターゼについて解説します。

毛髪の成長メカニズムに関しては、以下の毛髪の構造図をみてもらうとわかりやすいと思いますが、

毛髪の構造

毛髪は、毛細血管が蜜に分布し毛の栄養や発育を司る毛乳頭細胞から毛母細胞に栄養が供給され、栄養を受けた毛母細胞が細胞分裂を行い、分裂した片方が毛母にとどまり次の分裂に備え、残りの片方が毛の細胞(毛幹)となって角化していき、次々に分裂してできる新しい細胞によって表面に押し上げられるというメカニズムによって形成されています(文献7:2002;文献8:2002)

また、毛髪には周期があり、以下の毛周期図を見てもらうとわかりやすいと思いますが、

毛周期(ヘアサイクル)

成長期に入ると約2-6年の期間、毛幹(∗1)が伸び続け、その後に短い退行期が訪れることにより毛根が退縮し、やがて休止期となり毛髪が脱落、数ヶ月の休止期間の後に再度成長期に入って毛幹が伸びていくというサイクルを一生繰り返します(文献9:2009)

∗1 毛幹とは、毛の皮膚から外に露出している部分のことであり、一般に毛と認識されている部位です。

休止期には毛乳頭も縮小しますが消失することはなく、その後の休止期から成長期への移行により再び増大し、休止期毛包の一部が再び毛乳頭細胞と接触して分裂・増殖をはじめ、毛乳頭細胞を取り囲んで新しい毛球部を形成することによって次の毛周期がはじまるため、通常は毛髪量は一定に保たれています(文献10:2016;文献11:1999)

一方で、なんらかの理由で生理的な範囲以上に脱毛が起こり毛髪量が減少する脱毛症が知られており(文献12:2009)、一般に広く知られている脱毛症として男性型脱毛症と女性型脱毛症があります。

男性型脱毛症とは、前頭部から頭頂部を主体に頭髪が次第に粗となる状態のことであり、これは毛周期における成長期が短縮し、成長期毛包が次第に小さくなり軟毛化する結果生じることが知られているのに対して、中年以降の女性において頭頂部を中心に薄毛化が起こる状態を女性型脱毛症と呼び、男性型脱毛症とは別の原因による脱毛症であると考えられていました(文献12:2009;文献13:2003)

ただし、最近では女性型脱毛症も体内の性ホルモンバランスの崩れなどにより男性ホルモンの働きが強くなった結果として生じると考えられてきており、男性型脱毛症と女性型脱毛症をまとめて壮年性脱毛症と呼ぶことが提唱されています(文献13:2003)

脱毛症における男性ホルモンの働きについては、以下の毛乳頭におけるテストステロン(男性ホルモン)の作用メカニズム図をみてもらうとわかりやすいと思いますが、

毛乳頭におけるテストステロンの作用メカニズム

毛乳頭に分布する毛細血管から男性ホルモンであるテストステロン(testosterone)が毛乳頭に取り込まれ、取り込まれたテストステロンが5αリダクターゼという酵素の働きによってDHT(Dihydrotestosterone:ジヒドロテストステロン)に変化し、さらにDHTが組織内の男性ホルモン受容体と結合して男性ホルモン作用を発現しTGF-βやDKK-1などの脱毛因子を誘導することが毛成長抑制(脱毛)への最初のステップとして知られています(文献12:2009;文献13:2003;文献14:2013)

このような背景から、5α-リダクターゼを阻害することは脱毛抑制アプローチにおいて重要であると考えられます。

1992年にノエビアによって報告されたホップエキスの5α-リダクターゼに対する影響検証によると、

in vitro試験において男性ホルモンの一種であるテストステロン緩衝液5mLに、ホップエキス(エタノール抽出)0.5mL、5α-リダクターゼ溶液1mLおよびNADPHを加えて37℃で30分間培養し、処理後に5α-リダクターゼ阻害率を算出したところ、以下のグラフのように、

ホップエキスの5α-リダクターゼ阻害作用

ホップエキスは99.5%あるいは50%エタノールのいずれの抽出においても高い5α-リダクターゼの活性を阻害する作用が確認された。

このような試験結果が明らかにされており(文献15:1992)、ホップエキスに5α-リダクターゼ阻害作用が認められています。

次に、1997年にノエビアによって報告されたホップエキスの脱毛への影響検証によると、

男性型脱毛症状がみられる5人の被検者(25-35歳)をT群、加齢による薄毛・脱毛のみられる5人の被検者(65-75歳)をS群とし、各群に0.3%ホップエキスおよび0.3%パセリエキス配合ヘアトニックを、また対照として0.3%ホップエキスのみを配合したヘアトニックあるいは0.3%パセリエキスのみを配合したヘアトニックをそれぞれ1日1回6ヶ月にわたって使用してもらった。

6ヶ月後に抜け毛の量を「2点:顕著に減った」「1点:少し減った」「0点:変化なし」の判定基準を用いて合計点数を集計したところ、以下の表のように、

試料 脱毛量に対する評価(人数)
T群 S群 合計
ホップエキスおよびパセリエキス配合ヘアトニック 9 9 18
ホップエキス配合ヘアトニック 5 1 6
パセリエキス配合ヘアトニック 0 3 3

0.3%ホップエキス配合ヘアトニックの塗布は、男性型脱毛症状に対して脱毛量の減少効果が確認された一方で、加齢による薄毛や脱毛症状に対してはほとんど変化がみられなかった。

さらに、ホップエキスとパセリエキスを併用することで男性型脱毛症状および加齢による薄毛や脱毛の両方で優れた脱毛量の減少効果が確認された。

このような試験結果が明らかにされており(文献16:1997)、ホップエキスに抗脱毛作用が認められています。

また、ホップエキスにパセリエキスを併用することで脱毛料の減少に対する相乗効果が明らかにされていることから、ホップエキスとパセリエキスが併用されているヘアケア製品においては、脱毛量の減少目的で配合されている可能性が考えられます。

好中球エラスターゼ活性阻害による抗老化作用

好中球エラスターゼ活性阻害による抗老化作用に関しては、まず前提知識として真皮の構造、光老化のメカニズムについて解説します。

真皮については、以下の真皮構造図をみてもらうとわかりやすいと思いますが、

真皮の構造

表皮を下から支える真皮を構成する成分としては、細胞成分と線維性組織を形成する間質成分(細胞外マトリックス成分)に二分され、以下の表のように、

分類 構成成分
間質成分
(細胞外マトリックス)
膠原線維 コラーゲン
弾性繊維 エラスチン
基質 糖タンパク質、プロテオグリカン、グリコサミノグリカン
細胞成分 線維芽細胞

主成分である間質成分は、大部分がコラーゲンからなる膠原線維とエラスチンからなる弾性繊維、およびこれらの間を埋める基質で占められており、細胞成分としてはこれらを産生する線維芽細胞がその間に散在しています(文献17:2002;文献18:2018)

間質成分の大部分を占めるコラーゲンは、膠質状の太い繊維であり、その繊維内に水分を保持しながら皮膚のハリを支えています(文献17:2002)

このコラーゲンは、Ⅰ型コラーゲン(80-85%)とⅢ型コラーゲン(10-15%)が一定の割合で会合(∗2)することによって構成されており(文献19:1987)、Ⅰ型コラーゲンは皮膚や骨に最も豊富に存在し、強靭性や弾力をもたせたり、組織の構造を支える働きが、Ⅲ型コラーゲンは細い繊維からなり、しなやかさや柔軟性をもたらす働きがあります(文献20:2013)

∗2 会合とは、同種の分子またはイオンが比較的弱い力で数個結合し、一つの分子またはイオンのようにふるまうことをいいます。

エラスチン(elastin)を主な構成成分とする弾性繊維は、皮膚の弾力性をつくりだす繊維であり、コラーゲンとコラーゲンの間に絡み合うように存在し、コラーゲン同士をバネのように支えて皮膚の弾力性を保持しています(文献17:2002)

基質は、主に糖タンパク質(glycoprotein)プロテオグリカン(proteoglycan)およびグリコサミノグリカン(glycosaminoglycan)で構成されたゲル状物質であり、これらの分子が水分を保持し、コラーゲンやエラスチンと結合して繊維を安定化させることにより、皮膚は柔軟性を獲得しています(文献17:2002;文献18:2018)

細胞成分としては線維芽細胞(fibroblast)が真皮に分散しており、コラーゲン繊維やエラスチン繊維が古くなるとこれらを分解する酵素を産生して不必要な分を分解し、新しいコラーゲン繊維やエラスチン繊維を産生して細胞外マトリックス成分の産生・分解系バランスを保持しています(文献17:2002)

これら真皮の働きを要約すると、

  • コラーゲン繊維が水分を保持しながら皮膚の張りを支持
  • エラスチンを主とした弾性繊維がコラーゲン同士をバネのように支えて皮膚の弾力性を保持
  • 基質(ゲル状物質)が水分を保持し、コラーゲン繊維と弾性繊維を安定化
  • 紫外線曝露時など必要に応じてコラーゲン繊維、弾性繊維、ムコ多糖を産生し、細胞外マトリックス成分の産生・分解系バランスを保持

それぞれがこのように働くことで、皮膚はハリや柔軟性・弾性を保持しています。

一方で、一般に紫外線を浴びる時間や頻度に比例して、間質成分(細胞外マトリックス成分)であるコラーゲン、エラスチン、ムコ多糖類への影響が大きくなり、シワの形成促進、たるみの増加など老化現象が徐々に進行することが知られています(文献21:2002)

紫外線の曝露によりシワやたるみが形成されるメカニズムは複合的であることから、わかりやすさを優先するために直接的に関係がないメカニズムは省略しますが、以下の光老化メカニズム図をみてもらうとわかるように、

光老化のメカニズム

紫外線曝露刺激などによって真皮で引き起こされる炎症反応により、白血球の一種である好中球が血管を透過(浸潤)しタンパク質分解酵素である好中球エラスターゼを放出することが知られており、この好中球エラスターゼはコラーゲン、エラスチン、プロテオグリカンなどを直接分解することが報告されています(文献22:2019)

20代あたりまでは細胞外マトリックス成分の合成が活発であるため、紫外線照射によってこれらが破壊されてもダメージが蓄積されずシワやたるみの形成に至らないと考えられますが、過剰および長期にわたって紫外線環境に曝されている場合は加齢とともに細胞外マトリックス成分の産生能が低下していくに従って細胞外マトリックス成分の産生・分解系バランスが崩れていき、主な皮膚老化現象としてシワが形成されていくと考えられています(文献23:1998)

このような背景から、紫外線の曝露による好中球エラスターゼの活性を抑制することは光老化の防御において重要であると考えられています。

1999年に資生堂によって報告されたホップエキスの好中球エラスターゼおよびヒト皮膚光老化に対する影響検証によると、

in vitro試験において96ウェルプレートの各ウェルに8mMエラスターゼ基質25μLを分注し、さらに各濃度に調整したホップエキス溶液(30%エタノール抽出)50μLを添加し次に5μg/mL濃度のヒト白血球由来エラスターゼ緩衝液25μLを加えて37℃で20分間培養した後、吸光度を測定した。

また、比較対照としてエラスターゼ阻害活性を示す生体物質である牛胎児血清についても同様の試験を実施し、それぞれのエラスターゼ活性阻害率を算出したところ、以下のグラフのように、

ホップエキスのエラスターゼ活性阻害作用

ホップエキスは、優れたエラスターゼ阻害活性を有していることが確認された。

次に、100人の女性被検者(25-57歳)のうち50人に1.5%ホップエキス配合クリームファンデーションを、残りの50人に未配合クリームファンデーションを1ヶ月にわたって使用してもらった。

1ヶ月後にシワおよび小ジワの評価を「有効:目立たなくなった」「やや有効:少し目立たなくなった」「無効:使用前と変化なし」「やや悪化:やや増えた」「悪化:増えた」の5段階で評価したところ、以下の表のように、

試料 シワおよび小ジワの評価
有効 やや有効 無効 やや悪化 悪化
ホップエキス配合クリームファンデーション 8 58 30 4 0
クリームファンデーションのみ(対照) 0 27 65 2 6

1.5%ホップエキス配合クリームファンデーション塗布群は、未配合クリームファンデーション塗布群と比較してシワおよび小ジワに対する改善効果が確認された。

また、同試験において肌のハリおよびたるみの評価を「有効:改善された」「やや有効:やや改善された」「無効:使用前と変化なし」「やや悪化:やや目立つようになった」「悪化:目立つようになった」の5段階で評価したところ、以下の表のように、

試料 ハリおよびたるみの評価
有効 やや有効 無効 やや悪化 悪化
ホップエキス配合クリームファンデーション 12 21 55 12 0
クリームファンデーションのみ(対照) 0 15 51 31 3

1.5%ホップエキス配合クリームファンデーション塗布群は、未配合クリームファンデーション塗布群と比較してハリおよびたるみに対する改善効果傾向が確認された。

このような試験結果が明らかにされており(文献24:1999)、ホップエキスに好中球エラスターゼ活性阻害による抗老化作用が認められています。

ただし、ヒト試験においては1999年には有効なシワやたるみの評価方法が確立されていなかったこともあり、目視による観察評価のみで効果を認めているため、その点は留意する必要があります。

チロシナーゼ活性促進による抗白髪作用

チロシナーゼ活性促進による抗白髪作用に関しては、まず前提知識として白髪の定義、毛髪色素のメカニズムおよびチロシナーゼについて解説します。

白髪とは、色のなくなった毛髪と定義されており、色素が失われて無色になった毛髪が光を全反射する結果として白くみえることから白髪と呼ばれています(文献25:2005)

毛髪に色素が与えられるメカニズムについては、まず以下の毛髪の構造図をみてもらうとわかりやすいと思うのですが、

毛髪の構造

毛髪は、皮膚の外に出ている毛幹と皮膚内の毛包に大別され、毛包内の少し膨らんだ最下部は毛球と呼ばれますが、毛球には毛乳頭と呼ばれる間葉系細胞(∗3)の塊があり、その周囲に存在する毛母細胞が増殖分化し次々に分裂してできる新しい細胞によって表面に押し上げられるというメカニズムによって形成されています(文献25:2005;文献26:2002)

∗3 間葉系細胞とは、上皮性細胞以外の中胚葉細胞を指し、未分化細胞の形態を示す多分化能をもった細胞です。

毛髪色素の主体は、毛乳頭周辺に存在する色素細胞(メラノサイト)内で生合成されるメラニン色素であり、以下の毛周期(ヘアサイクル)図をみてもらうとわかりやすいと思いますが、

毛周期(ヘアサイクル)

メラニン色素は、成長期 → 退行期 → 休止期を経て再び成長期に戻る毛周期の中で、成長中期に盛んに合成されることで成長する毛幹に供給され、退行期には先立ってその合成活性が停止されたのち、休止期にはアポトーシス(∗4)や抜け毛とともに離脱することによって色素細胞の数そのものが減少し、次の成長初期には新たな色素幹細胞の供給により分裂増殖し、成長中期には再びメラニン合成の活性化により毛幹に供給され、毛髪の色を維持していると考えられています(文献25:2005)

∗4 アポトーシスとは、あらかじめ遺伝子で決められたメカニズムによる細胞の自然死現象のことです。

また、メラニン色素は、メラノサイト(色素細胞)が産生するメラニン顆粒が毛母細胞の分化・角化によって産生された角化細胞(ケラチノサイト)に輸送され定着することで有色となることが知られており(文献27:2018)、メラノサイト内におけるメラニン顆粒の産生メカニズムは、以下の図のように、

メラノサイト内でメラニンが合成されるメカニズム

皮膚と同じく、酸化酵素であるチロシナーゼがアミノ酸の一種かつ出発物質であるチロシンに働きかけドーパに変換されることでメラニン合成がはじまり、さらにチロシナーゼがドーパにも働きかけることでドーパキノンへと変換され、経路によって黄色-赤色のフェオメラニン(pheomelanin)と茶褐色-黒色のユーメラニン(eumelanin)へと変換されるというものであり(文献28:2002;文献29:2019)、ユーメラニンの割合が多いと黒髪に、フェオメラニンの割合が多くなるにつれて欧米人にみられるような茶褐色、赤色、ブロンドとなります(文献28:2002)

一方で、個人差や老化の進行度により異なるものの、30代後半-50代後半にかけて白髪化が生じ、50歳までに約50%以上の毛髪に白髪が認められることが知られており(文献30:2001)、白髪化の主な原因としてはすべてが解明されているわけではありませんが、加齢にともなって毛母の色素細胞のメラニン合成系が何らかの原因により低下することや色素細胞数がしだいに減少すると同時にメラニン色素量が減少することが明らかにされています(文献27:2018;文献31:2010)

このような背景から、メラニン合成系の異常の要因のひとつと考えられるチロシナーゼの活性を促進しメラニン合成を促進することは、白髪の抑制や改善において効果を発揮する場合があると考えられます。

2002年に資生堂によって報告されたホップエキスのチロシナーゼおよびヒト白髪への影響検証によると、

マウス由来B16メラノーマ培養細胞に終濃度10⁻⁵から10⁻³重量%に調製したホップエキス(30%エタノール抽出)の70%エタノール溶液を添加し、培養後にメラニン生成量の視覚判定を「+:黒い」「±:やや黒い」「-:基準」として視覚判定し、さらにチロシナーゼ活性促進率を算出したところ、以下の表のように、

試料 濃度(重量%) メラニン生成視覚判定 チロシナーゼ活性促進率(%)
無添加 10⁻⁵(0.00001)
10⁻⁴(0.0001)
10⁻³(0.001)
ホップエキス 10⁻⁵(0.00001) 5
10⁻⁴(0.0001) ± 28
10⁻³(0.001) + 92

ホップエキスは、その濃度が10⁻⁴(0.0001%)以上である場合にチロシナーゼの活性促進し、その濃度が10⁻³(0.001%)である場合にメラニンの生成を視覚的に促進することが明らかとなった。

次に、白髪を有する男女40人(40-60歳)に1%ホップエキス配合ローションおよびホップエキス未配合ローション(対照)を1日2回(朝夕)連続4ヶ月間にわたってハーフヘッド法で左右頭皮に別々に使用してもらい、塗布部位の白髪抑制の割合を以下の判定基準で評価したところ、以下の表のように、

++(著効):塗布開始前と比較して塗布後の白髪本数が80%未満の被検者が50%以上
+(有効):塗布開始前と比較して塗布後の白髪本数が90%未満の被検者が50%以上
±(やや有効):塗布開始前と比較して塗布後の白髪本数が100%未満の被検者が50%以上
-(無効):塗布開始前と比較して塗布後の白髪本数が100%未満の被検者が50%未満

試験物質 白髪抑制効果
ホップエキス配合ローション ++
無添加ローション(対照)

1%ホップエキス配合ローションの塗布は、無添加ローションの塗布と比較して優れた白髪抑制効果を示した。

このような検証結果が明らかにされており(文献32:2002)、ホップエキスにチロシナーゼ活性促進による抗白髪作用が認められています。

複合植物エキスとしてのホップエキス

ホップエキスは、他の植物エキスとあらかじめ混合された複合原料があり、ホップエキスと以下の成分が併用されている場合は、複合植物エキス原料として配合されている可能性が考えられます。

原料名 ファルコレックスBX46
構成成分 BGレモン果実エキススギナエキスホップエキスセイヨウアカマツ球果エキスローズマリー葉エキス
特徴 角質層水分量増加および経表皮水分蒸散抑制による保湿作用、エラスチン保護による抗老化作用、SOD様作用および過酸化脂質抑制による抗酸化作用など、紫外線による皮膚障害から多角的に皮膚を保護する5種類の混合植物抽出液
原料名 ファルコレックスBX52
構成成分 BGゴボウ根エキストウキンセンカ花エキスレモン果実エキスホップエキスセイヨウオトギリソウ花/葉/茎エキスセージ葉エキスサボンソウ葉エキス
特徴 抗菌およびリパーゼ活性阻害によるオムツかぶれ改善目的で設計された6種類の混合植物抽出液

実際の使用製品の種類や数および配合量は、海外の2016-2017年の調査結果になりますが、以下のように報告されています。

以下表におけるリーブオン製品は、付けっ放し製品(スキンケア製品やメイクアップ製品など)を表しており、またリンスオフ製品は、洗い流し製品(シャンプー、ヘアコンディショナー、ボディソープ、洗顔料、クレンジングなど)を指します。

ホップエキスの配合製品数と配合量の比較調査結果(2016-2017年)

ホップエキスの安全性(刺激性・アレルギー)について

ホップエキスの現時点での安全性は、

  • 外原規2021規格の基準を満たした成分が収載される医薬部外品原料規格2021に収載
  • 20年以上の使用実績
  • 皮膚刺激性:ほとんどなし
  • 眼刺激性:ほとんどなし
  • 皮膚感作性(アレルギー性):ほとんどなし

このような結果となっており、化粧品配合量および通常使用下において、一般的に安全性に問題のない成分であると考えられます。

以下は、この結論にいたった根拠です。

皮膚刺激性について

Cosmetic Ingredient Reviewの安全性試験データ(文献33:2017)によると、

  • [ヒト試験] 26人の被検者に0.125%ホップエキスを含む製剤の累積刺激性試験を2週間にわたって実施したところ、試験製剤は有意な皮膚刺激を示さなかった(Anonymous,2016)
  • [ヒト試験] 12人の被検者に0.06%-0.12%ホップエキスを含む製剤を24時間パッチ適用し、パッチ除去30-60分および24時間後に皮膚反応を評価したところ、2人の被検者において非常にわずかな紅斑が観察されたが、ほかの被検者に皮膚反応は観察されなかった。PII(Primary Irritation Index:皮膚一次刺激性指数)は0.0-5.0のスケールで0.04であり、この製剤は非刺激剤と評価された(Greentech,2016)
  • [ヒト試験] 12人の被検者に0.18%ホップエキスを含む混合物を48時間パッチ適用したところ、有害な皮膚反応は観察されず、試験物質は良好な皮膚適合性を有すると結論づけられた(Anonymous,2016)

と記載されています。

試験データをみるかぎり、共通して皮膚刺激なしと報告されているため、一般に皮膚刺激性はほとんどないと考えられます。

眼刺激性について

Cosmetic Ingredient Reviewの安全性試験データ(文献33:2017)によると、

  • [in vitro試験] 鶏卵の漿尿膜を用いて0.6%-1.2%ホップエキスを含む製剤を処理したところ(HET-CAM法)、刺激の兆候は予測されなかった(Greentech,2016)
  • [in vitro試験] 正常ヒト表皮角化細胞によって再構築された3次元培養角膜モデル(EpiOcular)を用いて、モデル角膜表面に0.5%ホップエキスを含むグリセリン水溶液を処理したところ、細胞生存率は1,4および24時間でそれぞれ114%,90%および79%であり、事実上、この試験物質に眼刺激の可能性は示されなかった(Consumer Product Testing Co,2011)

と記載されています。

試験データをみるかぎり、共通して眼刺激なしと報告されているため、一般に眼刺激性はほとんどないと考えられます。

皮膚感作性(アレルギー性)について

Cosmetic Ingredient Reviewの安全性試験データ(文献33:2017)によると、

  • [ヒト試験] 26人の被検者に0.125%ホップエキスを含む製剤を対象に皮膚感作Maximization試験を実施したところ、この試験製剤は接触感作剤ではなかった(Anonymous,2016)
  • [ヒト試験] 52人の被検者に10%ホップエキスを含むBG溶液を対象にHRIPT(皮膚刺激&感作試験)を実施したところ、この試験物質は陰性であった(Anonymous,2016)
  • [ヒト試験] 102人の被検者に0.18%ホップエキスを含むカプリル酸/カプリン酸トリグリセリド混合物を対象にHRIPT(皮膚刺激&感作試験)を実施したところ、この試験物質は皮膚反応を示さなかった(Anonymous,2016)
  • [ヒト試験] 102人の被検者に0.5%ホップエキスを含むグリセリン水溶液を対象にHRIPT(皮膚刺激&感作試験)を実施したところ、試験期間を通じて皮膚刺激および皮膚感作の兆候はなく、この試験物質に真皮刺激または接触感作を引き起こす可能性は示されなかった(Consumer Product Testing Co,2011)

と記載されています。

試験データをみるかぎり、共通して皮膚感作なしと報告されているため、一般に皮膚感作性はほとんどないと考えられます。

∗∗∗

ホップエキスは抗脱毛成分、抗老化成分にカテゴライズされています。

成分一覧は以下からお読みください。

参考:抗脱毛成分 抗老化成分

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参考文献:

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