フェネチルアルコールの基本情報・配合目的・安全性

フェネチルアルコール

化粧品表示名称 フェネチルアルコール
医薬部外品表示名称 フェニルエチルアルコール
化粧品国際的表示名称(INCI名) Phenethyl Alcohol
配合目的 香料防腐 など

ここで記載される「フェネチルアルコール」は「β-フェニルエチルアルコール」を指します。

1. 基本情報

1.1. 定義

以下の化学式で表される、ベンゼン環に2個のメチレン基(CH₂)を通じてヒドロキシ基(−OH)が結合した芳香族アルコール(∗1)です[1][2]

∗1 芳香族アルコールとは、分子中に芳香環をもち、芳香環にメチレン基(CH₂)を通じてヒドロキシ基(−OH)をもつアルコールのことです。

フェネチルアルコール

1.2. 分布

フェネチルアルコールは、自然界においてローズ油、ゼラニウム油、ネロリ油など各精油中に香気成分として広く存在しています[3a]

1.3. 化粧品以外の主な用途

フェネチルアルコールの化粧品以外の主な用途としては、

分野 用途
医薬品 防腐、保存目的の医薬品添加剤として眼科用剤、耳鼻科用剤に用いられています[4]

これらの用途が報告されています。

2. 化粧品としての配合目的

化粧品に配合される場合は、

  • ローズ様花香の賦香
  • 防腐

主にこれらの目的で、スキンケア化粧品、ボディ&ハンドケア製品、メイクアップ化粧品、化粧下地製品、マスク製品、日焼け止め製品、洗顔料、クレンジング製品、ヘアカラー製品など様々な製品に使用されています。

以下は、化粧品として配合される目的に対する根拠です。

2.1. ローズ様花香の賦香

ローズ様花香の賦香(∗2)に関しては、フェネチルアルコールは穏やかなローズ様の花香調(∗3)香気を有していることから、フローラル系調合香料として香水、石鹸、洗浄系製品、化粧品に使用されています[3b][5]

∗2 賦香(ふこう)とは、香りを付けるという意味です。

∗3 香調とは、香料分野においてはノート(note)とも呼ばれ、香りのタイプを意味します。フェネチルアルコールは花の香りを有していることからフローラルノート(Floral note:花香調)に分類されます。

また、調合香料はそれらの揮発性から、

揮発性 分類 解説 保留時間 香調

トップノート 最初に感じ、そのものを印象づける香気 約30分 シトラス
グリーン
フルーティ-
ミドルノート 香りの中心となる中盤に感じる香気 数時間 フローラル
ラストノート 最後まで残る重量感のある香気 数日-数週間 ウッディ
アンバー
ムスク

これら3つのステージに分類して表現されることが多く[6][7]、フェネチルアルコールは中程度の揮発性のミドルノートであることから、香気の保留性(持続性)もあり、トップノートが揮発した後にとって代わる中心的な香気を担うのが特徴です。

2.2. 防腐

防腐に関しては、フェネチルアルコールは酸性領域において細菌(グラム陰性菌、グラム陽性菌)にある程度の抗菌活性をもつ防腐剤であることから、他の防腐剤と併用して使用されています[8][9a]

1990年にドイツのHoechst AGによって報告されたフェネチルアルコールの抗菌活性検証によると、

– in vitro : 抗菌活性試験 –

寒天培地を用いて化粧品の腐敗でよく見受けられる様々なカビ、酵母および細菌に対するフェネチルアルコールのMIC(minimum inhibitory concentration:最小発育阻止濃度)を24および72時間時点で検討したところ、以下の表のように、

微生物 MIC(μg/mL) [pH6.2]
緑膿菌(グラム陰性桿菌)
Pseudomonas aeruginosa
2,500 – 5,000
大腸菌(グラム陰性桿菌)
Escherichia coli
2,500
黄色ブドウ球菌(グラム陽性球菌)
Staphylococcus aureus
1,250
カンジダ(酵母)
Candida albicans
2,500
コウジカビ(カビ)
Aspergillus brasiliensis
5,000

フェネチルアルコールは、細菌(グラム陽性菌、グラム陰性菌)に対してはある程度の抗菌性を示す一方で、真菌(カビ、酵母)に対しては低い活性を示した。

このような検証結果が明らかにされており[9b]、フェネチルアルコールに細菌(グラム陰性菌、グラム陽性菌)に対するある程度の防腐作用が認められています。

天然由来フェネチルアルコールは、天然・オーガニック系コンセプト製品の防腐剤としても使用されています。

3. 配合製品数および配合量範囲

実際の配合製品の種類や配合濃度範囲は、海外の2006年の調査結果になりますが、以下のように報告されています。

フェネチルアルコールの配合製品数と配合量の調査(2006年)

4. 安全性評価

フェネチルアルコールの現時点での安全性は、

  • 薬添規2018規格の基準を満たした成分が収載される医薬品添加物規格2018に収載
  • 外原規2021規格の基準を満たした成分が収載される医薬部外品原料規格2021に収載
  • 40年以上の使用実績
  • 皮膚刺激性:ほとんどなし
  • 眼刺激性:濃度1%以下においてほとんどなし-わずか
  • 皮膚感作性(アレルギー性):ほとんどなし

このような結果となっており、化粧品配合量および通常使用下において、一般に安全性に問題のない成分であると考えられます。

以下は、この結論にいたった根拠です。

4.1. 皮膚刺激性および皮膚感作性(アレルギー性)

Cosmetic Ingredient Reviewの安全性データ[10a]によると、

  • [ヒト試験] 20人の被検者に未希釈のフェネチルアルコールを24時間パッチ適用し、パッチ除去後5日間皮膚刺激性を評価したところ、いずれの被検者も皮膚刺激反応は観察されなかった(A.E. Katz,1946)
  • [ヒト試験] 108人の被検者に8%フェネチルアルコールを含むフタル酸ジエチル、20%ブラシル酸エチレンを含むフタル酸ジエチル(陰性対照)およびフタル酸ジエチルのみを対象にHRIPT(皮膚刺激性&感作性試験)を閉塞パッチにて実施したところ、1人の被検者はチャレンジパッチ後48時間ですべての試験物質に軽度の紅斑を、96時間で明瞭な丘疹を示したことから、3つすべての試験物質に感作したと判断された。また別の1人の被検者は誘導期間において3つすべての試験物質で中程度の皮膚反応を示した。他の被検者においては皮膚刺激および皮膚感作の兆候はみられなかった(Research Institute for Fragrance Materials,1988)
  • [ヒト試験] 155人の被検者に0.05%フェネチルアルコールを含むアイメイクアップリムーバーを対象にHRIPT(皮膚刺激性&感作性試験)を閉塞パッチにて実施したところ、いずれの被検者も陽性反応は観察されず、この製品は臨床的に重要な皮膚刺激剤および皮膚感作剤ではなかった(Cosmetic Toiletry and Fragrance Association,1980)
  • [ヒト試験] 53人の被検者に0.05%フェネチルアルコールを含むアイメイクアップリムーバーを1日1回、少なくとも4週間にわたって使用してもらったところ、1人の被検者にまぶたの乾燥およびわずかな腫れが報告されたが、これは製品の界面活性剤含有量に起因すると考えられた。他の報告はなく、また他の皮膚反応は観察されなかった(Cosmetic Toiletry and Fragrance Association,1981)

このように記載されており、試験データをみるかぎり共通して皮膚刺激および皮膚感作なしと報告されているため、一般に皮膚刺激性および皮膚感作性はほとんどないと考えられます。

4.2. 眼刺激性

Cosmetic Ingredient Reviewの安全性データ[10b]によると、

  • [動物試験] ウサギの眼に1%フェネチルアルコール溶液を点眼し、点眼後に眼刺激性を評価したところ、角膜刺激および一過性の曇りが観察された(W.M. Grant,1974)
  • [動物試験] 2匹のウサギの片眼に0.3%フェネチルアルコールを含む生理食塩水を1日3回、週5回、2週間にわたって点眼し、眼刺激の兆候を観察したところ、眼刺激性は観察されなかった(I.W. Grote,1955)
  • [動物試験] 9匹のウサギの片眼に0.05%フェネチルアルコールを含むアイメイクアップリムーバー0.1mLを点眼し、点眼後に眼刺激性を評価したところ、この製品はウサギの眼に対して刺激を示さなかった(Cosmetic Toiletry and Fragrance Association,1980)

このように記載されており、試験データをみるかぎり濃度1%以下において非刺激-わずかな眼刺激が報告されているため、一般に濃度1%以下において眼刺激性は非刺激-わずかな眼刺激を引き起こす可能性があると考えられます。

5. 参考文献

  1. 日本化粧品工業連合会(2013)「フェネチルアルコール」日本化粧品成分表示名称事典 第3版,833.
  2. 大木 道則, 他(1989)「フェネチルアルコール」化学大辞典,1966-1967.
  3. ab合成香料編集委員会(2016)「β-フェニルエチルアルコール」増補新版 合成香料 化学と商品知識,122-123.
  4. 日本医薬品添加剤協会(2021)「フェニルエチルアルコール」医薬品添加物事典2021,510.
  5. 奥田 治, 他(2000)「単離香料および合成香料」香料と化粧品の科学,31-49.
  6. 長谷川香料株式会社(2013)「フレグランスの分類と原料」香料の科学,124-127.
  7. 駒木 亮一(1993)「化粧品と香り」繊維製品消費科学(34)(5),208-213. DOI:10.11419/senshoshi1960.34.208.
  8. 日光ケミカルズ株式会社(2006)「殺菌・防腐剤」新化粧品原料ハンドブックⅠ,458-470.
  9. abK.H. Wallhausser(1990)「香粧品工業で使用されている防腐剤」香粧品 医薬品 防腐・殺菌剤の科学,501-565.
  10. abK. Brandt(1990)「Final Report on the Safety Assessment of Phenethyl Alcohol」Journal of the American College of Toxicology(9)(2),165-183. DOI:10.3109/10915819009078732.

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