ラベンダー花エキスの基本情報・配合目的・安全性

ラベンダー花エキス

化粧品表示名称 ラベンダー花エキス
医薬部外品表示名称 ラベンダーエキス(1)、ラベンダーエキス(2)
医薬部外品表示名称(簡略名) ラベンダーエキス-1、ラベンダーエキス-2
化粧品国際的表示名称(INCI名) Lavandula Angustifolia (Lavender) Flower Extract
配合目的 香料紫外線吸収 など

1. 基本情報

1.1. 定義

シソ科植物イングリッシュラベンダー(∗1)(学名:Lavandula angustifolia = Lavandula officinalis)の花からエタノールPGBG、またはこれらの混液にて抽出して得られる抽出物植物エキスです[1a][2a]

∗1 イングリッシュラベンダー(学名:Lavandula angustifolia)は、最も代表的なラベンダーであり、一般に「ラベンダー」という場合はイングリッシュラベンダーを指します。

医薬部外品表示名称として「ラベンダーエキス(1)」「ラベンダーエキス(2)」の2種類がありますが、「ラベンダーエキス(1)」は水、PG、BGまたはこれらの混液にて抽出して得られるエキスを指し、「ラベンダーエキス(2)」はエタノール溶液で抽出して得られるエキスを指します[2b]

1.2. 分布と歴史

イングリッシュラベンダー(English lavender)は、地中海沿岸を原産とし、その香りが清潔、純粋さの象徴とされ、古くからヨーロッパを中心に洗濯物の香り付けや防虫、入浴時の芳香剤、化粧水、心身の鎮静・浄化などに用いられてきた歴史があり、現在においてもフランスのプロバンス地方を中心に栽培されています[3][4][5a]

1.3. 成分組成

ラベンダー花エキスは天然成分であることから、地域、時期、抽出方法によって成分組成に差異があると推察されますが、その成分組成は主に、

分類 成分名称
テルペノイド モノテルペン 酢酸リナリル、リナロール など
フラボノイド アントシアニン
タンニン 詳細不明

これらの成分で構成されていることが報告されています[5b][6]

1.4. 化粧品以外の主な用途

ラベンダーの花の化粧品以外の主な用途としては、

分野 用途
メディカルハーブ ドイツでは不安や睡眠障害の緩和にハーブティー(ラベンダーティー)として、神経疲労や神経性胃炎などの自律神経失調症状には入浴剤として用いられています[5c]

これらの用途が報告されています。

2. 化粧品としての配合目的

化粧品に配合される場合は、

  • ラベンダー花香の賦香
  • UVBおよびUVA吸収による紫外線防御作用

主にこれらの目的で、メイクアップ化粧品、ボディ&ハンドケア製品、スキンケア化粧品、日焼け止め製品、シート&マスク製品、シャンプー製品、コンディショナー製品、洗顔料、洗顔石鹸、ボディソープ製品、ボディ石鹸、アウトバストリートメント製品、フレグランスウォーター製品、練り香水、デオドラント製品、ヘアスタイリング製品など様々な製品に汎用されています。

以下は、化粧品として配合される目的に対する根拠です。

2.1. ラベンダー花香の賦香

ラベンダー花香の賦香(∗2)に関しては、ラベンダー花エキスは酢酸リナリルとリナロールを骨格とし、特有成分のラバンデュロールやα-ターピネオールなどのモノテルペンアルコールおよびそのエステルが調和することによってラベンダー香気を発揮することが知られています[7]

∗2 賦香(ふこう)とは、香りを付けるという意味です。

このような背景から、ラベンダー花エキスはラベンダー花香を賦香する目的で[1b]、メイクアップ化粧品、ボディ&ハンドケア製品、スキンケア化粧品、シャンプー製品、コンディショナー製品、洗顔料、洗顔石鹸、ボディソープ製品、ボディ石鹸、アウトバストリートメント製品、フレグランスウォーター製品、練り香水、ヘアスタイリング製品などに使用されています。

2.2. UVBおよびUVA吸収による紫外線防御作用

UVBおよびUVA吸収による紫外線防御作用に関しては、まず前提知識として紫外線(UV:Ultra Violet)および紫外線の皮膚への影響について解説します。

太陽による照射は、以下の図のように、

紫外線の構造

波長により、赤外線、可視光線および紫外線に分類されており、可視光線よりも波長の短いものが紫外線です。

また紫外線は、波長の長いものから

  • UVA(長波長紫外線):320-400nm
  • UVB(中波長紫外線):280-320nm
  • UVC(短波長紫外線):100-280nm

このように大別され、波長が短いほど有害作用が強いという性質がありますが、以下の図のように、

紫外線波長領域とオゾン層の関係

UVCはオゾン層を通過する際に散乱・吸収されるため地上には到達せず、UVBはオゾン層により大部分が吸収された残りが地上に到達、UVAはオゾン層による吸収をあまり受けずに地表に到達することから、ヒトに影響があるのはUVBおよびUVAになります。

UVAおよびUVBのヒト皮膚への影響の違いは、以下の表のように(∗3)

∗3 ( )内の反応は大量の紫外線を浴びた場合に起こる反応です。

  UVA UVB
紫外線角層透過率
日焼けの現象 サンタン
(皮膚色が浅黒く変化)
サンバーン
(炎症を起こし、皮膚色が赤くなりヒリヒリした状態)
急性皮膚刺激反応 即時型黒化(紅斑)
遅延型黒化(紅斑)
UVBの反応を増強
(表皮肥厚、落屑)
遅延型紅斑(炎症、水疱)
遅延型黒化
表皮肥厚、落屑
(DNA損傷)
慢性皮膚刺激反応 真皮マトリックスの変性 真皮マトリックスの変性
日焼け現象発症時間 2-3日後 即時的
(1時間以内に赤みを帯び始める)

性質がまったく異なっています[8][9][10]

国内の紫外線量の目安としては、2016年に茨城県つくば局によって公開されている紫外線量観測データによると、以下の表のように、

茨城県つくば局における紫外線量(UVA,UVB)年間値(2016年)

2月-10月の期間中とくに4月-9月の期間は、UVAおよびUVBの両方増加する傾向にあるため[11]、UVAおよびUVB両方の紫外線防御が必要であると考えられます。

1989年にナリス化粧品によって報告されたラベンダーエキス(水-エタノール抽出)の紫外線吸収波長領域データによると、以下の表のように、

ラベンダーエキスの紫外線吸収波長

278nmに吸収極大および300-320nm付近にショルダーピークをもつことが明らかにされており[12]、ラベンダーエキス(水-エタノール抽出)にUVBおよびUVA吸収による紫外線防御作用が認められています。

ただし、一般に他の紫外線吸収剤を補助する目的で他の紫外線吸収剤と併用して日焼け止め製品などに使用されると考えられます。

3. 安全性評価

ラベンダー花エキスの現時点での安全性は、

  • 外原規2021規格の基準を満たした成分が収載される医薬部外品原料規格2021に収載
  • 20年以上の使用実績
  • 皮膚刺激性:ほとんどなし
  • 眼刺激性:詳細不明
  • 皮膚感作性(アレルギー性):ほとんどなし

このような結果となっており、化粧品配合量および通常使用下において、一般的に安全性に問題のない成分であると考えられます。

以下は、この結論にいたった根拠です。

3.1. 皮膚刺激性および皮膚感作性(アレルギー性)

一丸ファルコスおよび日光ケミカルズの安全性試験データ[13][14]によると、

  • [ヒト試験] 20人の被検者にラベンダー花エキス(スクワラン抽出)原液を24時間閉塞パッチ適用し、パッチ除去後にPII(Primary Irritation Index:皮膚一次刺激性指数)を評価したところ、PIIは0.0であり、この試験物質は皮膚刺激剤ではなかった(日光ケミカルズ,2020)
  • [ヒト試験] 56人の被検者にラベンダー花エキス(スクワラン抽出)原液を対象にHRIPT(皮膚刺激性&感作性試験)を実施したところ、この試験物質は皮膚感作なしと結論付けられた(日光ケミカルズ,2020)
  • [動物試験] 3匹のウサギの剪毛した背部に乾燥固形分濃度0.5%ラベンダー花エキス水溶液を塗布し、塗布24,48および72時間後に紅斑および浮腫を指標として一次刺激性を評価したところ、いずれのウサギも紅斑および浮腫を認めず、この試験物質は皮膚一次刺激性に関して問題がないものと判断された(一丸ファルコス,1999)
  • [動物試験] 3匹のモルモットの剪毛した側腹部に乾燥固形分濃度0.5%ラベンダー花エキス水溶液0.5mLを1日1回週5回、2週にわたって塗布し、各塗布日および最終塗布日の翌日に紅斑および浮腫を指標として皮膚刺激性を評価したところ、いずれのモルモットも2週間にわたって紅斑および浮腫を認めず、この試験物質は皮膚累積刺激性に関して問題がないものと判断された(一丸ファルコス,1999)

このように記載されており、試験データをみるかぎり共通して皮膚刺激なしと報告されており、また20年以上の使用実績がある中で重大な皮膚刺激および皮膚感作の報告がみあたらないため、一般に皮膚刺激性および皮膚感作性はほとんどないと考えられます。

3.2. 眼刺激性

安全性データがみあたらないため、現時点ではデータ不足により詳細は不明です。

4. 参考文献

  1. ab日本化粧品工業連合会(2013)「ラベンダー花エキス」日本化粧品成分表示名称事典 第3版,1067-1068.
  2. ab日本化粧品工業連合会(2008)医薬部外品の成分表示名称リスト.
  3. ジャパンハーブソサエティー(2018)「ラベンダー」ハーブのすべてがわかる事典,204-205.
  4. 北野 佐久子(2005)「ラベンダー」基本 ハーブの事典,205-211.
  5. abc林 真一郎(2016)「ラベンダー」メディカルハーブの事典 改定新版,184-185.
  6. R. Nurzynska-Wierdak・G. Zawislak(2016)「Chemical composition and antioxidant activity of lavender (Lavandula angustifolia Mill.) aboveground parts」Acta Scientiarum Polonorum. Hortorum Cultus(15)(5),225-241.
  7. 長島 司(2012)「ラベンダー」ビジュアルガイド精油の化学,137.
  8. 朝田 康夫(2002)「紫外線の種類と作用は」美容皮膚科学事典,191-192.
  9. 朝田 康夫(2002)「サンタン、サンバーンとは」美容皮膚科学事典,192-195.
  10. 須加 基昭(1997)「紫外線防御スキンケア化粧品の開発」日本化粧品技術者会誌(31)(1),3-13. DOI:10.5107/sccj.31.3.
  11. 国立環境研究所 有害紫外線モニタリングネットワーク(2016)「茨城県つくば局における紫外線量(UV-A,UV-B)月別値」,2021年8月13日アクセス.
  12. 株式会社ナリス化粧品(1989)「皮膚外用剤」特開平01-083013.
  13. 一丸ファルコス株式会社(1999)「活性酸素消去剤」特開平11-279069.
  14. 日光ケミカルズ株式会社(2020)「NIKKOL アロマスクワラン ラベンダー」安全性データシート.

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