(トシルアミド/ホルムアルデヒド)樹脂とは…成分効果と毒性を解説

皮膜形成
(トシルアミド/ホルムアルデヒド)樹脂
[化粧品成分表示名称]
・(トシルアミド/ホルムアルデヒド)樹脂

[慣用名]
・トルエンスルホンアミドホルムアルデヒドレジン

化学構造的にトルエンスルホンアミドとホルムアルデヒドの重縮合物(∗1)であり、トルエンスルホンアミド樹脂(合成高分子)です。

∗1 重縮合(縮合重合)とは、複数の単量体(モノマー:monomer)が互いの分子内から水やアルコールなどの小分子を取り外しながら結合(縮合)し、それらが連鎖的につながって高分子・多量体(ポリマー:polymer)を生成(重合)する反応のことをいいます。この反応から生成される化合物を重縮合物と呼びます。

化粧品における成分表示名称は「(トシルアミド/ホルムアルデヒド)樹脂」ですが、マニキュアやネイルカラーは雑貨に分類されるものもあり、雑貨の場合には「トルエンスルホンアミドホルムアルデヒドレジン」と記載されます。

化粧品に配合される場合は、

これらの目的でネイル製品に使用されています。

皮膜形成

皮膜形成に関しては、(トシルアミド/ホルムアルデヒド)樹脂はネイルエナメルの主成分として用いられるニトロセルロースとの相溶性がよく、皮膜に良好なツヤを付与し、製品の流動性、爪への密着性および水に対する耐久性を向上させることから(文献2:1989;文献3:1990)、被膜形成助剤としてネイルカラー、マニキュア、ネイルコートなどネイル製品に使用されています。

実際の使用製品の種類や数および配合量は、海外の2002-2004年の調査結果になりますが、以下のように報告されています。

(トシルアミド/ホルムアルデヒド)樹脂の配合製品数と配合量の調査結果(2002-2004年)

スポンサーリンク

(トシルアミド/ホルムアルデヒド)樹脂の安全性(刺激性・アレルギー)について

(トシルアミド/ホルムアルデヒド)樹脂の現時点での安全性は、

  • 30年以上の使用実績
  • 皮膚刺激性:ほとんどなし
  • 眼刺激性:ほとんどなし-わずか
  • 皮膚感作性(塗布後乾燥状態):ほとんどなし
  • 皮膚感作性(塗布後乾燥前・液状状態):皮膚接触に限りごくまれに皮膚感作の可能性あり
  • 光毒性:ほとんどなし
  • 光感作性:ほとんどなし

このような結果となっており、化粧品配合量および通常使用下において、一般的に安全性に問題のない成分であると考えられます。

皮膚感作性については、(トシルアミド/ホルムアルデヒド)樹脂はネイル製品に使用されますが、爪に塗布し乾燥するまで皮膚に触れなければ、皮膚感作はほとんど起こらないと考えられます。

以下は、この結論にいたった根拠です。

皮膚刺激性および皮膚感作性(アレルギー性)について

Cosmetic Ingredient Reviewの安全性データ(文献1:1986)によると、

  • [ヒト試験] 50人の被検者の無傷および擦過した皮膚に10%(トシルアミド/ホルムアルデヒド)樹脂を含むジメチルフタレート溶液を対象にHRIPT(皮膚刺激&感作試験)を実施したところ、この試験物質は皮膚刺激剤および皮膚感作剤ではなかった(Industrial Biology Research and Testing Laboratories,1985)
  • [ヒト試験] 18人の被検者に9.6%(トシルアミド/ホルムアルデヒド)樹脂を含むネイルエナメル溶液を単回閉塞パッチ適用し、パッチ除去後に皮膚刺激性を評価したところ、この試験物質は皮膚刺激剤ではなかった(Cosmetic Toiletry and Fragrance Association,1980)
  • [ヒト試験] 97人の被検者に6%(トシルアミド/ホルムアルデヒド)樹脂を含むネイルストレングスナー溶液を対象にHRIPT(皮膚刺激&感作試験)を実施したところ、誘導期間において2人の被検者に軽度の紅斑が観察されたが、試験期間を通じていずれの被検者も皮膚感作反応は観察されなかった(Cosmetic Toiletry and Fragrance Association,1978)
  • [ヒト試験] 148人の被検者に5%(トシルアミド/ホルムアルデヒド)樹脂を含むネイルカラー溶液を対象にHRIPT(皮膚刺激&感作試験)を実施したところ、試験期間を通じていずれの被検者も皮膚刺激および皮膚感作反応を示さなかった(Cosmetic Toiletry and Fragrance Association,1980)
  • [ヒト試験] 8,093人の患者に様々な化粧品成分を対象に48時間パッチテストを実施したところ、16人の患者は(トシルアミド/ホルムアルデヒド)樹脂(濃度不明)に皮膚反応を示した(H. J. Eiermann et al,1982)

– 個別事例 –

  • [個別事例] (トシルアミド/ホルムアルデヒド)樹脂を含む様々なネイルラッカーを使用した3人の女性が首、顔および/またはまぶたに皮膚炎を発症したため、パッチテストを実施したところ、いずれの女性も(トシルアミド/ホルムアルデヒド)樹脂に陽性反応を示した(A. Fisher,1981)

と記載されています。

試験データをみるかぎり、皮膚刺激性および皮膚感作性なしと報告されているため、皮膚刺激性および皮膚感作性はほとんどないと考えられます。

皮膚感作・皮膚反応については、(トシルアミド/ホルムアルデヒド)樹脂は、乾燥させた状態では皮膚に対する感受性が低下し、アレルゲンとしては非常に弱くなりますが、乾燥するまでの液状では指や足の爪領域で感作が起こることはめったにないものの、皮膚に触れると接触感作の原因物質となる可能性があると考えられており(文献1:1986)、個別の症例はこれに該当すると思われます。

このような背景から、マニキュアが皮膚に触れることで皮膚炎やかゆみを経験したことがある場合は、乾燥していない状態では皮膚に触れないよう配慮する必要があります。

眼刺激性について

Cosmetic Ingredient Reviewの安全性データ(文献1:1986)によると、

  • [動物試験] 6匹のウサギの片眼に(トシルアミド/ホルムアルデヒド)樹脂粉末100mgを適用し、眼はすすがず、適用1,24,48および72時間に眼刺激性を評価したところ、1,24および48時間で結膜の軽度の紅斑および軽度-中程度のめやにが観察されたが、72時間ですべて解消された。角膜および虹彩への影響は認められなかった。(トシルアミド/ホルムアルデヒド)樹脂はわずかな眼刺激剤であると結論づけられた(Younger Laboratories Inc,1974)
  • [動物試験] 3匹のウサギの片眼に80%(トシルアミド/ホルムアルデヒド)を含むブチルアルコールおよび酢酸ブチル混合液0.1mLを点眼し、点眼1,24,48および72時間に眼刺激性を評価したところ、1,24および48時間で結膜のわずかな紅斑およびめやにが観察されたが、72時間ですべて解消された。角膜および虹彩への影響は認められなかった。この試験条件下においてこの試験物質はわずかな眼刺激剤であると結論づけられた(Younger Laboratories Inc,1974)

と記載されています。

試験データをみるかぎり、わずかな眼刺激が報告されているため、眼刺激性はわずかな眼刺激を引き起こす可能性があると考えられます。

光毒性および光感作性について

Cosmetic Ingredient Reviewの安全性データ(文献1:1986)によると、

  • [ヒト試験] 30人の被検者に7%(トシルアミド/ホルムアルデヒド)樹脂を含むネイルカラー溶液を対象に光感作試験を伴うHRIPT(皮膚刺激&感作試験)を閉塞パッチにて実施したところ、この試験物質は光毒性剤および光感作剤ではなかった(Cosmetic Toiletry and Fragrance Association1,1979)

と記載されています。

試験データをみるかぎり、光毒性および光感作性なしと報告されているため、光毒性および光感作性はほとんどないと考えられます。

安全性についての補足

(トシルアミド/ホルムアルデヒド)樹脂は、1930年代にアメリカでネイルエナメルに使用されはじめ、現在に至るまで使用され続けていますが、(トシルアミド/ホルムアルデヒド)樹脂はホルムアルデヒドの縮合物であるため、遊離または加水分解によるホルムアルデヒド(ホルマリン)の存在が一時期問題となり、安全性の再評価の結果、ホルマリン量として0.2%までは化粧品への配合が認められることとなり、アメリカおよびEEC(European Economic Community:欧州経済共同体)でこの基準が設定されています(文献2:1989;文献3:1990)

国内においては法的規制はなかったものの、一次刺激性やアレルギーの懸念が高まったことから、実質的に1972年から1986年まで10年以上使用されておらず、1986年に欧米化粧品業界からの要請があり、安全性資料をもとに旧厚生省で審議された結果、ネイルエナメルに限定して使用することは問題ないと結論付けられ、現在においても使用がみられます(文献2:1989;文献3:1990)

∗∗∗

(トシルアミド/ホルムアルデヒド)樹脂は皮膜形成剤にカテゴライズされています。

成分一覧は以下からお読みください。

参考:皮膜形成剤

∗∗∗

文献一覧:

  1. Cosmetic Ingredient Review(1986)「Final Report on the Safety Assessment of Toluenesulfonamide/Formaldehyde Resin」Journal of the American College of Toxicology(5)(5),471-490.
  2. 八木田 喜昭(1989)「メーキャップ化粧品の原材料基準」色材協会誌(62)(11),673-682.
  3. 柴谷 順一, 他(1990)「最近の化粧品用樹脂の動向」色材協会誌(63)(4),217-225.

スポンサーリンク

TOPへ