PVPとは…成分効果と毒性を解説

皮膜形成 分散 増粘 泡質改善
PVP
[化粧品成分表示名称]
・PVP

[医薬部外品表示名称]
・ポリビニルピロリドン

[慣用名]
・ポビドン

化学構造的にビニルピロリドン(Vinylpyrrolidone:VP)の重合体(∗1)であり、水溶性のノニオン性合成樹脂(ポリビニル系ポリマー:合成高分子)です(∗2)

∗1 重合とは、複数の単量体(モノマー)が結合して鎖状や網状になる反応のことをいい、単量体(モノマー)が結合して鎖状または網状になった化合物を重合体(ポリマー)といいます。

∗2 ノニオン性(非イオン性)とは、水に溶けてもイオン性を示さないという意味です。

一般的には、医薬品分野および食品分野においてカプセル壁剤、錠剤の結合剤およびコンタクトレンズの装着液、日用品分野おいてスティックのり基剤などをはじめとして、様々な工業用途に汎用されています(文献2:2013;文献3:2005)

化粧品に配合される場合は、

これらの目的で、メイクアップ化粧品、ヘアスプレー製品、シート&マスク製品、スキンケア化粧品、ボディ&ハンドケア製品、洗顔料、シャンプー製品、ボディソープ製品など様々な製品に汎用されています。

皮膜形成

皮膜形成に関しては、皮膚および毛髪への密着性に優れ、水に溶解させた後に塗布し乾燥すると耐久性のある硬めの皮膜を形成することから、毛髪やまつ毛の形状・セット維持目的でマスカラ、ヘアジェル、ヘアスプレーなどに使用されています(文献4:1972;文献5:1990)

PVPの皮膜は乾燥した空気中では脆いため、化粧品に使用する場合は一般的にグリセリンソルビトールなど多価アルコール(∗3)を可塑剤(∗4)として併用します(文献6:2016)

∗3 多価アルコールとは、非常に高い吸湿性と保水性をもっているため化粧品に最も汎用されている保湿剤であり、名称に「アルコール」がついているので勘違いしやすいですが、一般的なアルコール(エタノール)は一価アルコールで、多価アルコールと一価アルコールは区別されます。

∗4 可塑(かそ)とは、柔らかく形を変えやすいという意味であり、可塑剤とは柔軟性や耐候性を改良するために添加される物質のことです。

水溶性であり、アニオン系増粘剤であるカルボマーに相溶する数少ないポリマーであるため、ヘアジェルなどカルボマーで増粘している製品に多用される傾向があります(文献7:2016)

また、同様に水に溶解させた後に顔に塗布、乾燥すると適度な耐久性のある皮膜を形成し、皮膚に適度な緊張を与えるとともに老廃物を除去する目的でピールオフタイプのパック基剤としても配合されています(文献5:1990)

分散

分散に関しては、PVPには顔料分散性向上が広く知られており(文献3:2005;文献8:2009)、顔料分散性向上目的でアイライナー、口紅、コンシーラーなどに使用されています。

また、疎水性の炭素同素体であるフラーレンを水溶化するために、PVPでフラーレンを包摂し水溶化する技術が用いられており(文献11:2011;文献12:1994)、水溶性フラーレンが使用される場合はフラーレンとともにPVP、BGが併用されます。

ただし、PVP包摂化合物は水溶化と表現されることが多いものの、厳密には粒子として水中に分散していると考えられています(文献11:2011)

増粘による粘度調整・乳化安定化

増粘による粘度調整・乳化安定化に関しては、粘性は非常に低いもののpHや粘度に影響なく使用できることから(文献6:2016;文献9:2005)、粘度調整および乳化安定化を目的にメイクアップ化粧品、乳化系スキンケア化粧品などに使用されています。

泡質改善

泡質改善に関しては、PVPには気泡膜を強化する効果があり(文献5:1990)、1993年には日本メナード化粧品によってエアゾール製品(∗5)にPVPを添加した場合に濃度依存的な泡硬度および泡膨張率の向上が報告されていることから(文献10:1993)、泡質を改善し泡の寿命を調整する目的でエアゾール製品、洗顔料、シャンプー製品、ボディソープ製品などに配合されています(文献13:2012)

∗5 エアゾール製品とは噴射式の製品のことです。

実際の配合製品数および配合量に関しては、海外の2013および2017-2018年の調査結果になりますが、以下のように報告されています。

以下表におけるリーブオン製品は、付けっ放し製品(スキンケア製品やメイクアップ製品など)を表しており、またリンスオフ製品というのは、洗い流し製品(シャンプー、ヘアコンディショナー、ボディソープ、洗顔料、クレンジングなど)を指します。

PVPの配合製品数と配合量の比較調査結果(2013および2017-2018年)

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PVPの安全性(刺激性・アレルギー)について

PVPの現時点での安全性は、

  • 外原規2006規格の基準を満たした成分が収載される医薬部外品原料規格2006に収載
  • 40年以上の使用実績
  • 皮膚刺激性:ほとんどなし
  • 眼刺激性:ほとんどなし
  • 皮膚感作性(アレルギー性):ほとんどなし
  • 光毒性:ほとんどなし
  • 光感作性:ほとんどなし

このような結果となっており、化粧品配合量および通常使用下において、一般的に安全性に問題のない成分であると考えられます。

以下は、この結論にいたった根拠です。

皮膚刺激性および皮膚感作性(アレルギー性)について

Cosmetic Ingredient Reviewの安全性データ(文献1:1998)によると、

  • [ヒト試験] 150人の被検者にPVPを対象にHRIPT(皮膚刺激&感作試験)を実施したところ、誘導期間において5人の被検者(0.35%)に1度だけわずかな反応(刺激スコア最大8のうち2)が認められたが、チャレンジ期間においては皮膚反応は認められなかった(Toxigenics Inc,1981)
  • [ヒト試験] 27人に10%PVP水溶液を対象にHRIPT(皮膚刺激&感作試験)を実施したところ、誘導期間およびチャレンジ期間に皮膚刺激および皮膚感作反応は認められなかった(Harrison Research Laboratories Inc,1983)
  • [ヒト試験] 25人の被検者に2%PVPを含むファンデーション0.1mLを対象に48時間閉塞パッチを5回適用し、10日の無処置期間を経て未処置部位に48時間単一チャレンジパッチを適用した。パッチ除去1,24時間後に皮膚反応を評価したところ、接触アレルギーの兆候は観察されなかった(Ivy Laboratories,1993)

と記載されています。

試験データをみるかぎり、共通して皮膚刺激性および皮膚感作性なしと報告されていることから、皮膚刺激性および皮膚感作性はほとんどないと考えられます。

眼刺激性について

Cosmetic Ingredient Reviewの安全性データ(文献1:1998)によると、

  • [ヒト試験] 白内障抽出後に25%PVP塩溶液で前眼房が改質され、術後に感染はなく、角膜浮腫の兆候は認められなかった。12人の患者は術後10日以内にわずかな炎症を生じたが、すぐに炎症は治まり後遺症もなかった。1例を除いて術後1日目にPVPが前眼房から消失しており、例外だった1例も3日目には消失していた。また、白内障の抽出中に硝子体を失った6例では硝子体とPVPの混合による合併症は認められなかった。1ヶ月から2年にわたるフォローアップ試験ではPVP関連の合併症は観察されなかった(Sarda et al,1969)
  • [ヒト試験] 25%PVP塩溶液を使用して前眼房を回復させた全層角膜移植手術25例および開放角緑内障の8例にPVP関連の合併症は報告されていない(Sardaet al,1969)

と記載されています。

試験データをみるかぎり、共通して眼刺激性なしと報告されているため、眼刺激性はほとんどないと考えられます。

光毒性および光感作性について

Cosmetic Ingredient Reviewの安全性データ(文献1:1998)によると、

  • [ヒト試験] 10人の被検者に10%PVP水溶液を24時間パッチ適用し、片腕に約10cmの距離でUVAライト(約3.3J/c㎡)を照射した。照射直後,24および48時間後に光毒性を評価したところ、皮膚反応は認められなかった(Harrison Research Laboratories Inc,1983)
  • [ヒト試験] 31人の被検者に10%PVP水溶液0.2mLを対象に光感作試験(各パッチ除去後にUVAライトおよびUVBライトを15分間照射)をともなうHRIPT(皮膚刺激&感作試験)を実施したところ、誘導期間においてはすべての被検者でわずかな紅斑またはわずかな浮腫が観察されたが、PVPを適用していない対照部位でも同様の反応が認められた。チャレンジ期間において皮膚反応は認められなかったため、PVPは接触光感作性を誘発しないと結論づけられた(Harrison Research Laboratories Inc,1983)

と記載されています。

試験データをみるかぎり、光毒性および光感作性なしと報告されているため、光毒性および光感作性はほとんどないと考えられます。

∗∗∗

PVPは皮膜形成剤、安定化成分にカテゴライズされています。

成分一覧は以下からお読みください。

参考:皮膜形成剤 安定化成分

∗∗∗

文献一覧:

  1. Cosmetic Ingredient Review(1998)「Final Report On the Safety Assessment of Polyvinylpyrrolidone (PVP)」International Journal of Toxicology(17)(4),95-130.
  2. 食品安全委員会(2013)「ポリビニルピロリドン」添加物評価書.
  3. 祝迫 浩一(2005)「医薬用途のポビドン」第一工業製薬社報 拓人(531),-.
  4. 福原 信和(1972)「化粧品における水溶性高分子の利用」高分子(21)(5),250-253.
  5. 田中 宗男, 他(1990)「美を演出する高分子(化粧品)」高分子(39)(11),802-805.
  6. 日光ケミカルズ(2016)「合成水溶性高分子」パーソナルケアハンドブックⅠ,121-127.
  7. 猿渡 欣幸(2016)「毛髪との接着という観点から」日本接着学会誌(52)(5),122-126.
  8. 堀内 照夫(2009)「水溶性高分子の物理化学的性質」表面技術(60)(12),746-753.
  9. 秋丸 三九男(2005)「化粧品」水溶性高分子の機能と応用,87-103.
  10. 松田 秀則(1993)「エアゾール泡沫化粧品」油化学(42)(10),775-783.
  11. 産業技術総合研究所(2011)「フラーレン(C₆₀)」ナノ材料リスク評価書 最終報告版.
  12. Y Yamakoshi, et al(1994)「Solubilization of fullerenes into water with polyvinylpyrrolidone applicable to biological tests」Journal of the Chemical Society, Chemical Communications(4),517-518.
  13. 鈴木 一成(2012)「ポリビニルピロリドン」化粧品成分用語事典2012,602-603.

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