(アジピン酸/ネオペンチルグリコール/無水トリメリト酸)コポリマーとは…成分効果と毒性を解説

皮膜形成
(アジピン酸/ネオペンチルグリコール/無水トリメリト酸)コポリマー
[化粧品成分表示名称]
・(アジピン酸/ネオペンチルグリコール/無水トリメリト酸)コポリマー

化学構造的に多塩基酸(∗1)の一種であるアジピン酸、多価アルコール(∗2)の一種であるネオペンチルグリコールおよび多塩基酸の一種である無水トリメリト酸の共重合体(∗3)であり、オイルフリーアルキド樹脂(ポリエステル樹脂:合成高分子)(∗4)です。

∗1 多塩基酸とは塩基度が2以上の酸のことであり、酸1分子中に含まれる、電離しうる水素原子(水素イオン)の数をその酸の塩基度といいます。アジピン酸は塩基度2、無水トリメリト酸は塩基度3の多塩基酸ですが、塩基度2の多塩基酸は二塩基酸(ジカルボン酸)といい、塩基度3の多塩基酸は三塩基酸といいます。

∗2 多価アルコールとは、2個以上の水酸基(ヒドロキシ基)をもつアルコールを指し、水酸基の影響で非常に高い吸湿性と保水性をもっているため化粧品に最も汎用されている保湿剤です。名称に「アルコール」がついているので勘違いしやすいですが、一般的なアルコール(エタノール)は一価アルコールで、多価アルコールと一価アルコールは区別されます。二価(2個の水酸基をもつ意)以上を多価アルコールといい、ネオペンチルグリコールは二価アルコールでジオールとも呼ばれます。

∗3 重合体とは、複数の単量体(モノマー:monomer)が繰り返し結合し、鎖状や網状にまとまって機能する多量体(ポリマー:polymer)のことを指し、2種類以上の単量体(モノマー:monomer)がつながってできているものを共重合体(copolymer:コポリマー)と呼びます。

∗4 アルキド樹脂とは、一般的には塗料に用いられる樹脂で油変性アルキド樹脂を指し、油をまったく含まないアルキド樹脂をオイルフリーアルキド樹脂として区別しています。オイルフリーアルキド樹脂は、多価アルコールと多塩基酸から合成され、油変性アルキド樹脂より耐候性、耐薬品性、耐溶剤性に優れており、かつ光沢性の高い塗膜を形成します(文献2:1976;文献3:1991)。

化粧品に配合される場合は、

これらの目的でネイル製品に使用されています。

皮膜形成

皮膜形成に関しては、オイルフリーアルキド樹脂は耐候性、耐薬品性、耐溶剤性に優れており、また塗膜硬度が高く、さらに高い光沢性を有する塗膜を形成することから(文献2:1976;文献3:1991)、爪に均一なフィルムをつくる皮膜形成剤としてネイルカラー、ネイルコートなどネイル製品に使用されています。

実際の使用製品の種類や数および配合量は、海外の2015-2016年の調査結果になりますが、以下のように報告されています。

以下表におけるリーブオン製品は、付けっ放し製品(スキンケア製品やメイクアップ製品など)を表しており、またリンスオフ製品というのは、洗い流し製品(シャンプー、ヘアコンディショナー、ボディソープ、洗顔料、クレンジングなど)を指します。

(アジピン酸/ネオペンチルグリコール/無水トリメリト酸)コポリマーの配合製品数と配合量の調査結果(2015-2016年)

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(アジピン酸/ネオペンチルグリコール/無水トリメリト酸)コポリマーの安全性(刺激性・アレルギー)について

(アジピン酸/ネオペンチルグリコール/無水トリメリト酸)コポリマーの現時点での安全性は、

  • 10年以上の使用実績
  • 皮膚刺激性:ほとんどなし
  • 眼刺激性:詳細不明
  • 皮膚感作性(アレルギー性):ほとんどなし

このような結果となっており、化粧品配合量および通常使用下において、一般的に安全性に問題のない成分であると考えられます。

以下は、この結論にいたった根拠です。

皮膚刺激性および皮膚感作性(アレルギー性)について

Cosmetic Ingredient Reviewの安全性データ(文献1:2016)によると、

  • [ヒト試験] 52人の被検者に3.85%(アジピン酸/ネオペンチルグリコール/無水トリメリト酸)コポリマー溶液をパッチ適用し、パッチ除去後に試験部位の皮膚反応を評価したところ、この試験物質は皮膚刺激および皮膚感作性は示さなかった(Anonymous,2015)
  • [ヒト試験] 113人の被検者に7.98%(アジピン酸/ネオペンチルグリコール/無水トリメリト酸)コポリマー溶液0.2mLを対象にHRIPT(皮膚刺激&感作試験)を半閉塞パッチにて実施したところ、誘導期間において数人の被検者にほとんど知覚できない皮膚反応が観察されたが、皮膚刺激および皮膚感作ではないと結論づけられた(RCTS Inc,2011)
  • [ヒト試験] 213人の被検者に10%(アジピン酸/ネオペンチルグリコール/無水トリメリト酸)コポリマー溶液を対象にHRIPT(皮膚刺激&感作試験)を半閉塞パッチにて実施したところ、この試験物質は皮膚刺激および皮膚感作ではないと結論づけられた(Clinical Research Laboratories Inc,2011)
  • [ヒト試験] 107人の被検者に10.5%(アジピン酸/ネオペンチルグリコール/無水トリメリト酸)コポリマー溶液をパッチ適用し、パッチ除去後に試験部位の皮膚反応を評価したところ、皮膚刺激および皮膚感作性は示さなかった(Anonymous,2011)
  • [ヒト試験] 213人の被検者に13.9%(アジピン酸/ネオペンチルグリコール/無水トリメリト酸)コポリマー溶液0.2mLを対象にHRIPT(皮膚刺激&感作試験)を半閉塞パッチにて実施したところ、この試験物質は皮膚刺激剤および皮膚感作剤ではないと結論づけられた(TKL Research Inc,2011)
  • [ヒト試験] 108人の被検者に15%(アジピン酸/ネオペンチルグリコール/無水トリメリト酸)コポリマー溶液0.2mLを対象にHRIPT(皮膚刺激&感作試験)を半閉塞パッチにて実施したところ、この試験物質は皮膚刺激および皮膚感作ではないと結論づけられた(Clinical Research Laboratories Inc,2006)

と記載されています。

試験データをみるかぎり、共通して皮膚刺激および皮膚感作なしと報告されているため、皮膚刺激性および皮膚感作性はほとんどないと考えられます。

眼刺激性について

試験結果や安全性データがみあたらないため、現時点ではデータ不足により詳細は不明です。

∗∗∗

(アジピン酸/ネオペンチルグリコール/無水トリメリト酸)コポリマーは皮膜形成剤にカテゴライズされています。

成分一覧は以下からお読みください。

参考:皮膜形成剤

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文献一覧:

  1. Cosmetic Ingredient Review(2016)「Safety Assessment of Trimellitic Anhydride Copolymers as Used in Cosmetics」Final Report.
  2. 峯 繁夫(1976)「オイルフリーアルキド樹脂の現状と将来」色材協会誌(49)(5),297-302.
  3. 外村 貞一(1991)「アルキド樹脂」色材協会誌(64)(8),537-547.

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