ポリビニルアルコールとは…成分効果と毒性を解説

皮膜形成 増粘 乳化
ポリビニルアルコール
[化粧品成分表示名称]
・ポリビニルアルコール

[医薬部外品表示名称]
・ポリビニルアルコール

[慣用名]
・PVA、ポバール

酢酸ビニルの重合体(∗1)であるポリ酢酸ビニルを加水分解して得られる水溶性の合成樹脂(ポリビニル系ポリマー:合成高分子)です。

∗1 重合とは、複数の単量体(モノマー)が結合して鎖状や網状になる反応のことをいい、単量体(モノマー)が結合して鎖状または網状になった化合物を重合体(ポリマー)といいます。

一般には、生体への安全性や生分解性(∗2)の高さから、液体のり(PVAのり)、切手の裏糊、洗濯のり、使い捨てコンタクトレンズの基材としても汎用されています(文献2:1990;文献3:2000;文献4:2012)

∗2 生分解性とは、環境中の微生物・酵素の働きによって最終的に無害な物質まで分解される性質のことです。ポリビニルアルコールは微生物による分解が確認されている代表的な生分解性プラスチックであり、生分解性が広く知られています(文献5:1977;文献6:2000)。

化粧品に配合される場合は、

これらの目的で、メイクアップ化粧品、シート&パック製品、スキンケア化粧品、ボディ&ハンドケア製品などに使用されています。

皮膜形成

皮膜形成に関しては、水に溶解させた後に顔に塗布、乾燥すると適度な耐久性と柔軟性のある皮膜を形成し、皮膚に適度な緊張を与えるとともに老廃物を除去する目的でピールオフタイプのパック基剤として配合されています(文献7:1990)

また、ポリビニルアルコールを含む複数の皮膜形成剤を組み合わせることで、涙や汗に対しては化粧崩れを防止し、かつ洗顔など水を用いる行為によって落とすことができる特徴を実現させることから、マスカラ、まつ毛美容液に使用されています(文献8:2010;文献9:2006)

増粘

増粘に関しては、ポリビニルアルコールは水に容易に膨潤(∗3)することで粘性が高まる性質のため(文献10:1990)、重合度および加水分解度によって粘度を調整した耐久性のある皮膜形成を兼ね備えた増粘剤として、アイシャドー、アイライナー、アイブロー、口紅、チーク、ファンデーション、ハンドクリーム、乳液、フェイスクリームなどに使用されています。

∗3 膨潤とは、水分を含んで膨れる(膨張する)ことです。

顔料分散・乳化安定化

顔料分散・乳化安定化に関しては、ポリビニルアルコールはポリ酢酸ビニルを加水分解(鹸化)することで得られますが、加水分解によって構造中に親水性の水酸基と疎水性の残存酢酸基をもつことによる界面活性能があり(文献11:2013)、増粘を兼ね備えた乳化の安定化目的で乳液、フェイスクリーム、ハンドクリームなどに、増粘を兼ね備えた顔料の分散安定化目的でアイシャドー、アイライナー、アイブロー、口紅、チーク、ファンデーションなどに使用されています(文献10:1990)

実際の配合製品数および配合量に関しては、海外の2014年の調査結果になりますが、以下のように報告されています。

以下表におけるリーブオン製品は、付けっ放し製品(スキンケア製品やメイクアップ製品など)を表しており、またリンスオフ製品というのは、洗い流し製品(シャンプー、ヘアコンディショナー、ボディソープ、洗顔料、クレンジングなど)を指します。

ポリビニルアルコールの配合製品数と配合量の比較調査結果(2014年)

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ポリビニルアルコールの安全性(刺激性・アレルギー)について

ポリビニルアルコールの現時点での安全性は、

  • 外原規2006規格の基準を満たした成分が収載される医薬部外品原料規格2006に収載
  • 30年以上の使用実績
  • 皮膚刺激性:ほとんどなし
  • 眼刺激性:ほとんどなし
  • 皮膚感作性(アレルギー性):ほとんどなし

このような結果となっており、化粧品配合量および通常使用下において、一般的に安全性に問題のない成分であると考えられます。

以下は、この結論にいたった根拠です。

皮膚刺激性および皮膚感作性(アレルギー性)について

Cosmetic Ingredient Reviewの安全性データ(文献1:1998)によると、

  • [ヒト試験] 12人の被検者に13%ポリビニルアルコールを含む製剤を対象に21日間累積刺激性試験を実施し、累積皮膚刺激性を評価したところ、全21回の累積刺激スコアは最大756のうち10であり、13%ポリビニルアルコールを含む製剤は軽度の皮膚刺激剤に分類された(Hill Top Research Inc,1984)
  • [ヒト試験] 100人の被検者に13%ポリビニルアルコールを含むピールオフフェイシャルマスクを対象にHRIPT(皮膚刺激&感作試験)を実施したところ、誘導期間において3人の被検者でほとんど知覚できない最小のかすかな紅斑が観察されたが、チャレンジ期間においては皮膚反応は観察されなかった(Cosmetic Toiletry and Fragrance Association,1976)
  • [ヒト試験] 54人の被検者(54人のうち21人は一過性の発赤またはざ瘡を有していた)に13%ポリビニルアルコールを含むピールオフフェイシャルマスクを対象にHRIPT(皮膚刺激&感作試験)を実施したところ、4例を除くすべての所見は臨床的に重要ではなかった。誘導期間において1人の被検者は最初の3回の適用後に紅斑を生じたが、これはマスク除去中に引っ張られた結果と考えられ、第2の被検者は7回目と10回目の適用時に一時的な紅斑が生じた。第3の被検者は4回目および5回目の適用後にわずかなかゆみと収れん作用を感じ、マスク使用に慣れていないと考えられた。第4の被検者は7回目の適用で両頬で多少の乾燥および紅斑が生じた(Cosmetic Toiletry and Fragrance Association,1977)
  • [ヒト試験] 104人の被検者に5%ポリビニルアルコールを対象にHRIPT(皮膚刺激&感作試験)を実施したところ、誘導期間およびチャレンジ期間の両方でいずれの被検者においても皮膚刺激およびアレルギー性接触感作を誘発しなかった(TKL Research,1991)
  • [ヒト試験] 52人の被検者に13%ポリビニルアルコールを含むフェイシャルマスクを対象に4週間使用試験(顔の半分に試験物質を塗布し反対側は対照マスクを週3回、合計12回適用)を実施した。使用の1,2および4週間後に皮膚反応を評価したところ、4人の被検者がそれぞれ1つの反応を示した。これら4つのうち2つはほとんど知覚できない反応で、3つ目はほとんど知覚できない乾燥であり、4つ目は軽度の刺激であった。これらの反応は試験製品による誘発とは考えられなかった(Industrial Bio-Test Lab Inc,1975)

と記載されています。

試験データをみるかぎり、ほとんど共通して皮膚刺激性および皮膚感作性なしと報告されていることから、皮膚刺激性および皮膚感作性はほとんどないと考えられます。

眼刺激性について

Cosmetic Ingredient Reviewの安全性データ(文献1:1998)によると、

  • [ヒト試験] 16人のドライアイ症候群に罹患していた被検者に4つの製剤を用いて試験した。1つは1.4%ポリビニルアルコールと0.5%クロロブタノールを含有し、残りは2つの対照製剤として1.4%ポリビニルアルコールを含む生理食塩水と1.4%ポリビニルアルコールに0.5%クロロブタノールを含む生理食塩水であった。6日ごとに被検者の両目の結膜嚢に試験溶液50μLを適用した。ポリビニルアルコールを含む市販製剤は1,3および5日目に、対照のポリビニルアルコール溶液は2,4および6日目に点眼され、点眼後に反応が記録された。16人のうち9人が対照のクロロブタノールとポリビニルアルコールを含む製剤で刺激および発赤を報告し、またこれらの9人は同時にクロロブタノールとポリビニルアルコールを含む市販製剤でも同一の反応を報告した。いずれの被検者もポリビニルアルコールのみを含む対照製剤では反応を報告しなかった(Fassihi and Naidoo,1989)
  • [動物試験] 6匹のウサギの結膜嚢に未希釈のポリビニルアルコールを単回注入し、注入後に眼をすすぎ、Draize法にしたがって刺激をスコアリングしたところ、刺激を生じなかった。また別の試験で6匹のウサギの眼に13%ポリビニルアルコールを含むピールオフマスクを適用したところ、眼刺激を生じなかった(Cosmetic Toiletry and Fragrance Association,1980)

と記載されています。

試験データをみるかぎり、共通して眼刺激性なしと報告されているため、眼刺激性はほとんどないと考えられます。

∗∗∗

ポリビニルアルコールは皮膜形成剤、安定化成分、界面活性剤にカテゴライズされています。

成分一覧は以下からお読みください。

参考:皮膜形成剤 安定化成分 界面活性剤

∗∗∗

文献一覧:

  1. Cosmetic Ingredient Review(1998)「Final Report On the Safety Assessment of Polyvinyl Alcohol」International Journal of Toxicology(17)(5_suppl),67-92.
  2. 守本 昭彦, 他(1990)「簡単なビニロンスポンジの合成:ポリビニルアルコール合成せんたくのりを用いた実験」化学と教育(38)(2),194-195.
  3. 山口 幸一(2006)「無溶剤系接着剤の動向」日本接着学会誌(42)(11),461-470.
  4. 佐野 研二(2012)「進化するコンタクトレンズ材料」化学と教育(60)(2),78-79.
  5. 鈴木 智雄, 他(1977)「ポリビニルアルコールの微生物分解とその含有排水処理への応用」日本農芸化学会誌(51)(7),R53-R58.
  6. 井上 義夫(2000)「生分解性プラスチック」化学と教育(48)(12),806-807.
  7. 田中 宗男, 他(1990)「美を演出する高分子(化粧品)」高分子(39)(11),802-805.
  8. 柿沢 英美(2010)「美しいまつ毛を創る!:マスカラ製品の化学」化学と教育(58)(8),374-375.
  9. 株式会社コーセー(2006)「易水洗型睫用化粧料」特開2006-257052.
  10. 田村 健夫, 他(1990)「合成高分子化合物」香粧品科学 理論と実際 第4版,151-153.
  11. 朝田 和孝, 他(2013)「ポリビニルアルコールを保護コロイドとして用いたアクリルエマルジョン粘着剤」日本接着学会誌(49)(12),454-462.

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