ポリクオタニウム-11とは…成分効果と毒性を解説

皮膜形成 ヘアスタイリング 泡質改善 帯電防止
ポリクオタニウム-11
[化粧品成分表示名称]
・ポリクオタニウム-11

[医薬部外品表示名称]
・ビニルピロリドン・N,N-ジメチルアミノエチルメタクリル酸共重合体ジエチル硫酸塩液

化学構造的にジメチルアミノエチルメタクリレート(∗1)とビニルピロリドンの共重合体(∗2)を硫酸ジエチルで部分的に四級化(∗3)した四級アンモニウム塩であり、水溶性のカチオン性高分子(∗4)です。

∗1 ジメチルアミノエチルメタクリレート(メタクリル酸ジメチルアミノエチル)は、メタクリル酸とジメチルアミノエタノールのエステルです。

∗2 重合体とは、複数の単量体(モノマー:monomer)が繰り返し結合し、鎖状や網状にまとまって機能する多量体(ポリマー:polymer)であり、2種類の単量体を用いて生成された重合体は共重合体(コポリマー:copolymer)と呼びます。

∗3 四級化(quaternization)とは、第三級アミンのアルキル化で第四級アンモニウム化合物に合成することをいいます。

∗4 カチオン性高分子とは、陽イオン界面活性能(カチオン性)を有した高分子化合物のことです。

化粧品に配合される場合は、

これらの目的で、ヘアムース製品、ヘアジェル製品、アウトバストリートメント製品、シャンプー製品、コンディショナー製品などに使用されています。

皮膜形成

皮膜形成に関しては、乾燥した毛髪においてベタつきがなく、滑らかで弾性に優れた光沢のある水溶性の皮膜を形成するため、ヘアトリートメント製品、ヘアコンディショナー製品、シャンプー製品、アウトバストリートメント製品、ヘアスタイリング製品などに配合されます(文献2:2016;文献5:2017)

皮膜形成によるヘアスタイリング

皮膜形成によるヘアスタイリングに関しては、ポリクオタニウム-11には弾性に優れた皮膜形成能があり、2%濃度以上の配合において毛髪のカールを保持する毛髪保持性能を示すことから(文献5:2017)、ヘアスタイリング製品に使用されています。

泡質改善

泡質改善に関しては、滑らかでクリーミーな感触の安定した泡を促進する目的でヘアムースに使用されています(文献5:2017)

帯電防止

帯電防止に関しては、まず前提知識として帯電防止について解説します。

水道水やシャンプーは一般的に弱酸性(pH5-6)であることから、ぬれた毛髪の表面はマイナスに帯電しており、一方で陽イオン界面活性剤は以下の図のように、

陽イオン界面活性剤の構造図

親水基部分がプラスの荷電をもっている構造であることから、親水基部分がマイナスに帯電した毛髪表面に静電的に吸着します。

そして、疎水基(親油基)部分は外側を向くため、毛髪表面が親油基で覆われることでなめらかになり、その結果として静電気の発生をおさえ(帯電防止)、すすぎや乾燥後の摩擦を低減し、毛髪のくし通りがよくなります(文献3:1990;文献4:2010)

ポリクオタニウム-11は、陽イオン界面活性能をもつカチオン性高分子であり、また化学構造的にそのカチオン性だけでなく、ピロリドン環構造が毛髪タンパク質のペプチド結合に対して親和性を高めるため、実質的な帯電防止効果が高いことが知られています(文献5:2017)

具体的な帯電防止による効果として、洗髪後のブラッシングまたは櫛の使用によって生じる静電気の発生の抑制、毛髪の柔軟化目的でヘアトリートメント製品、ヘアコンディショナー製品、シャンプー製品、アウトバストリートメント製品などに配合されます(文献5:2017)

実際の配合製品数および配合量に関しては、海外の2001年の調査結果になりますが、以下のように報告されています。

ポリクオタニウム-11の配合製品数と配合量の比較調査結果(2001年)

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ポリクオタニウム-11の安全性(刺激性・アレルギー)について

ポリクオタニウム-11の現時点での安全性は、

  • 外原規2006規格の基準を満たした成分が収載される医薬部外品原料規格2006に収載
  • 20年以上の使用実績
  • 皮膚刺激性:ほとんどなし-軽度
  • 眼刺激性:2%濃度以下においてほとんどなし-軽度
  • 皮膚感作性(アレルギー性):ほとんどなし
  • 光毒性:ほとんどなし
  • 光感作性:ほとんどなし

このような結果となっており、化粧品配合量および通常使用下において、一般的に安全性に問題のない成分であると考えられます。

以下は、この結論にいたった根拠です。

皮膚刺激性および皮膚感作性(アレルギー性)について

Cosmetic Ingredient Reviewの安全性データ(文献1:1983)によると、

  • [ヒト試験] 100人の被検者に2%ポリクオタニウム-11を含む製剤を24時間閉塞パッチ適用し、パッチ除去後に皮膚刺激性を評価したところ、この試験物質は非刺激剤と結論付けられた(Cosmetic Toiletry and Fragrance Association,1975)
  • [ヒト試験] 29人の被検者に0.3%ポリクオタニウム-11を含む製剤を24時間閉塞パッチ適用し、パッチ除去後にPII(Primary Irritation Index:皮膚一次刺激性指数)を0.0-4.0のスケールで評価したところ、PIIは0.52であり、すべての被検者にほとんど知覚できないおのから軽度の刺激反応がみられた(Cosmetic Toiletry and Fragrance Association,1979)
  • [ヒト試験] 150人の被検者に50%ポリクオタニウム-11を含むエタノール溶液を対象にHRIPT(皮膚刺激&感作試験)を半閉塞パッチにて実施したところ、誘導期間において合計1,421パッチのうち3パッチに一過性の皮膚刺激が観察されたが、他に有害な皮膚反応はなく、この試験物質は皮膚刺激剤および皮膚感作剤ではなかった(Toxigenics,1981)
  • [ヒト試験] 201人の被検者に9.5%ポリクオタニウム-11水溶液を対象にHRIPT(皮膚刺激&感作試験)を閉塞パッチにて実施したところ、この試験物質は実質的に非刺激剤であり、また皮膚感作剤ではなかった(Hill Top Research labs,1973)
  • [ヒト試験] 99人の被検者に0.5%ポリクオタニウム-11水溶液を対象にHRIPT(皮膚刺激&感作試験)を閉塞パッチにて実施したところ、誘導期間において軽度の皮膚刺激が観察されたが、チャンレンジ期間において皮膚感作の兆候はみられなかった(Research Testing Labs,1980)
  • [ヒト試験] 54人の被検者に1%ポリクオタニウム-11を含むヘアコンディショニング製品を3週間使用してもらったところ、陰性対照製品と同等の皮膚および頭皮への影響であった(Cosmetic Toiletry and Fragrance Association,1979)

と記載されています。

試験データをみるかぎり、共通して皮膚感作性なしと報告されており、また皮膚刺激性は非刺激-軽度の刺激が報告されていることから、皮膚感作性はほとんどなく、皮膚刺激性は非刺激-軽度の皮膚刺激を引き起こす可能性があると考えられます。

眼刺激性について

Cosmetic Ingredient Reviewの安全性データ(文献1:1983)によると、

  • [動物試験] 3匹のウサギの片眼に2%ポリクオタニウム-11を含むセットローション水溶液を点眼し、点眼後に眼刺激性を評価したところ、1日後で一時的な結膜刺激が観察されたが、2日目にはすべて消失した(Cosmetic Toiletry and Fragrance Association,1975)
  • [動物試験] 6匹のウサギの片眼に1%ポリクオタニウム-11を含む製剤を点眼し、点眼後に眼刺激性を評価したところ、1時間後ですべてのウサギの眼に一時的な結膜刺激が観察されたが、24時間後にはすべて消失した(Biosearch Labs,1978)
  • [動物試験] 6匹のウサギの片眼に0.38%ポリクオタニウム-11を含む製剤を点眼し、点眼後に眼刺激性を評価したところ、1時間後ですべてのウサギの眼に一時的な結膜刺激が観察されたが、24時間後にはほとんど消失し、48時間後にはすべて消失した(Biosearch Labs,1978)
  • [動物試験] 6匹のウサギの片眼に0.3%ポリクオタニウム-11を含む製剤を点眼し、点眼後に眼刺激性を評価したところ、いずれのウサギも眼刺激の兆候はみられなかった(Cosmetic Toiletry and Fragrance Association,1978)
  • [動物試験] 6匹のウサギの片眼に0.3%ポリクオタニウム-11を含む製剤を点眼し、点眼後に眼刺激性を評価したところ、いずれのウサギも眼刺激の兆候はみられなかった(Biosearch Labs,1979)
  • [動物試験] 3匹のウサギの片眼に0.05%ポリクオタニウム-11を含む製剤を点眼し、点眼後に眼刺激性を評価したところ、いずれのウサギも眼刺激の兆候はみられなかった(Leberco Labs,1977)

と記載されています。

試験データをみるかぎり、0.3%濃度以下において眼刺激なしと報告されており、0.3%-2%濃度の範囲で一過性の眼刺激が報告されているため、眼刺激性は非刺激-軽度の眼刺激を引き起こす可能性があると考えられます。

光毒性および光感作性について

Cosmetic Ingredient Reviewの安全性データ(文献1:1983)によると、

  • [ヒト試験] 31人の被検者に低分子量および高分子量のポリクオタニウム-11溶液を対象に光毒性試験および光感作性試験を伴うHRIPT(皮膚刺激&感作試験)を閉塞パッチにて実施したところ、この試験条件下において低分子量および高分子量のポリクオタニウム-11は光毒性および光感作性を示さなかった(Food and Drug Research Labs,1977)

と記載されています。

試験データをみるかぎり、光毒性および光感作性なしと報告されているため、光毒性および光感作性はほとんどないと考えられます。

∗∗∗

ポリクオタニウム-11は皮膜形成剤、帯電防止剤にカテゴライズされています。

成分一覧は以下からお読みください。

参考:皮膜形成剤 帯電防止剤

∗∗∗

文献一覧:

  1. Cosmetic Ingredient Review(1983)「Final Report on the Safety Assessment of Polyquaternium-11」Journal of the American College of Toxicology(2)(5),161-178.
  2. 猿渡 欣幸(2016)「毛髪との接着という観点から」日本接着学会誌(52)(5),122-126.
  3. 田村 健夫, 他(1990)「ヘアリンスの主剤とその作用」香粧品科学 理論と実際 第4版,456-460.
  4. 鐵 真希男(2010)「コンディショナーの配合成分と製剤」化学と教育(58)(11),536-537.
  5. Ashland(2017)「Gafquat 755」Technical Data Sheet.

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