PVPの基本情報・配合目的・安全性

PVP

化粧品表示名 PVP
医薬部外品表示名 ポリビニルピロリドン
部外品表示簡略名 PVP
INCI名 PVP
配合目的 皮膜形成増粘起泡補助 など

1. 基本情報

1.1. 定義

以下の化学式で表される1-ビニル-2-ピロリドン(vinylpyrrolidone:VP)の重合体(∗1)かつビニル系水溶性高分子です[1a][2]

∗1 重合体とは、複数の単量体(モノマー:monomer)が繰り返し結合し、鎖状や網状にまとまって機能する多量体(ポリマー:polymer)のことを指します。

PVP

1.2. 化粧品以外の主な用途

PVPの化粧品以外の主な用途としては、

分野 用途
日用品 接着剤・糊剤としてスティックのりに用いられています[3]
食品 錠剤形状食品の皮膜剤や結合剤として用いられています[4]
医薬品 安定・安定化、可溶・可溶化、基剤、矯味、結合、懸濁・懸濁化、光沢、コーティング、糖衣、粘稠化、賦形、分散、崩壊、溶解補助目的の医薬品添加剤として経口剤、外用剤、眼科用剤、歯科外用剤および口中用剤などに用いられています[5]

これらの用途が報告されています(∗2)

∗2 医薬品添加物においてPVPは「ポビドン(Povidone)」として区別されています。

2. 化粧品としての配合目的

化粧品に配合される場合は、

  • 皮膜形成
  • 親水性増粘
  • 泡持続性増強

主にこれらの目的で、メイクアップ製品、化粧下地製品、スキンケア製品、マスク製品、洗顔料、クレンジング製品、シャンプー製品、コンディショナー製品、トリートメント製品、アウトバストリートメント製品、まつ毛美容液、ヘアスタイリング製品、ボディケア製品など様々な製品に汎用されています。

以下は、化粧品として配合される目的に対する根拠です。

2.1. 皮膜形成

皮膜形成に関しては、PVPは水や有機溶剤に溶け、毛髪や皮膚への密着性に優れた光沢ある硬い皮膜を形成することから、メイクアップ製品、ヘアスプレーやヘアセット剤、パックなどに使用されています[1b][6][7a]

2.2. 親水性増粘

親水性増粘に関しては、PVPは吸湿性が高く、水に溶けて粘稠な水溶液を形成することから、粘度を調整し乳化物の安定性や懸濁液の分散性を保持する目的で様々な製品に使用されています[1c][8]

2.3. 泡持続性増強

泡持続性増強に関しては、PVPは気泡膜を強化し、気泡の持続性を調整する目的で洗浄系製品、ジェービング製品などに使用されています[7b]

3. 配合製品数および配合量範囲

配合製品数および配合量に関しては、海外の2013年および2017-2018年の調査結果になりますが、以下のように報告されています(∗3)

∗3 以下表におけるリーブオン製品は、付けっ放し製品(スキンケア製品やメイクアップ製品など)を指し、またリンスオフ製品は、洗い流し製品(シャンプー、ヘアコンディショナー、ボディソープ、洗顔料、クレンジングなど)を指します。

PVPの配合製品数と配合量の調査結果(2013年および2017-2018年)

4. 安全性評価

PVPの現時点での安全性は、

  • 食品添加物の指定添加物リストに収載
  • 医療上汎用性があり有効性および安全性の基準を満たした成分が収載される日本薬局方に収載
  • 外原規2021規格の基準を満たした成分が収載される医薬部外品原料規格2021に収載
  • 40年以上の使用実績
  • 皮膚刺激性:ほとんどなし
  • 眼刺激性:詳細不明
  • 皮膚感作性(アレルギー性):ほとんどなし
  • 光毒性(光刺激性):ほとんどなし
  • 光感作性:ほとんどなし

このような結果となっており、化粧品配合量および通常使用下において、一般に安全性に問題のない成分であると考えられます。

以下は、この結論にいたった根拠です。

4.1. 皮膚刺激性および皮膚感作性(アレルギー性)

Cosmetic Ingredient Reviewの安全性データ[9a]によると、

  • [ヒト試験] 150名の被検者にPVPを対象にHRIPT(皮膚刺激性&感作性試験)を閉塞パッチにて実施したところ、誘導期間において5名の被検者(0.35%)に1度だけわずかな反応(刺激スコア最大8のうち2)が認められたが、チャレンジ期間においてはいずれの被検者においても皮膚反応は認められなかった(Toxigenics Inc,1981)
  • [ヒト試験] 27名に10%PVP水溶液を対象にHRIPT(皮膚刺激性&感作性試験)を実施したところ、いずれの被検者も試験期間を通じて皮膚刺激および皮膚感作反応は認められなかった(Harrison Research Laboratories Inc,1983)
  • [ヒト試験] 25名の被検者に2%PVPを含むファンデーション0.1mLを対象に48時間閉塞パッチを5回適用し、10日の無処置期間を経て未処置部位に48時間単一チャレンジパッチを適用した。パッチ除去1,24時間後に皮膚反応を評価したところ、いずれの被検者においても接触アレルギーの兆候は観察されなかった(Ivy Laboratories,1993)

このように記載されており、試験データをみるかぎり一部に一過性のわずかな皮膚刺激反応が報告されているものの、ほぼ共通して皮膚刺激および皮膚感作なしと報告されているため、一般に皮膚刺激性および皮膚感作性はほとんどないと考えられます。

4.2. 眼刺激性

試験結果や安全性データがみあたらないため、現時点ではデータ不足により詳細不明です。

4.3. 光毒性(光刺激性)および光感作性

Cosmetic Ingredient Reviewの安全性データ[9b]によると、

  • [ヒト試験] 10名の被検者に10%PVP水溶液を24時間パッチ適用し、片腕に約10cmの距離でUVAライト(約3.3J/c㎡)を照射した。照射直後,24および48時間後に光刺激性を評価したところ、いずれの被検者においても皮膚反応は認められなかった(Harrison Research Laboratories Inc,1983)
  • [ヒト試験] 31名の被検者に10%PVP水溶液0.2mLを対象に光感作試験(各パッチ除去後にUVAライトおよびUVBライトを15分間照射)をともなうHRIPT(皮膚刺激性&感作性試験)を実施したところ、誘導期間においてはすべての被検者でわずかな紅斑またはわずかな浮腫が観察されたが、PVPを適用していない対照部位でも同様の反応が認められた。チャレンジ期間において皮膚反応は認められなかったため、PVPは接触光感作剤ではないと結論づけられた(Harrison Research Laboratories Inc,1983)

このように記載されており、試験データをみるかぎり光刺激および光感作なしと報告されているため、一般に光毒性(光刺激性)および光感作性はほとんどないと考えられます。

5. 参考文献

  1. abc日本化粧品工業連合会(2013)「PVP」日本化粧品成分表示名称事典 第3版,99-100.
  2. 大木 道則, 他(1989)「ポリビニルピロリドン」化学大辞典,2249.
  3. 製品評価技術基盤機構 化学物質管理センター(2019)「のり(糊)のいろいろ」身の回りの製品に含まれる化学物質シリーズ 家庭用接着剤,13.
  4. 樋口 彰, 他(2019)「ポリビニルピロリドン」食品添加物事典 新訂第二版,338.
  5. 日本医薬品添加剤協会(2021)「ポビドン」医薬品添加物事典2021,556-559.
  6. 福原 信和(1972)「化粧品における水溶性高分子の利用」高分子(21)(5),250-253. DOI:10.1295/kobunshi.21.250.
  7. ab田中 宗男・熊谷 重則(1990)「美を演出する高分子(化粧品)」高分子(39)(11),802-805. DOI:10.1295/kobunshi.39.802.
  8. 日光ケミカルズ株式会社(2016)「合成水溶性高分子」パーソナルケアハンドブックⅠ,121-127.
  9. abB. Nair(1998)「Final Report On the Safety Assessment of Polyvinylpyrrolidone (PVP)」International Journal of Toxicology(17)(4_Suppl),95-130. DOI:10.1177/109158189801700408.

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