ポリプロピルシルセスキオキサンの基本情報・配合目的・安全性
化粧品表示名 | ポリプロピルシルセスキオキサン |
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INCI名 | Polypropylsilsesquioxane |
配合目的 | 皮膜形成 など |
1. 基本情報
1.1. 定義
以下の化学式で表されるプロピルトリクロロシランの重合体(∗1)であり、三次元網目状に架橋したケージ構造と部分ケージ構造の混合物(シリコーンレジン:シリコーン樹脂)です[1][2]。
∗1 重合体とは、複数の単量体(モノマー:monomer)が繰り返し結合し、鎖状や網状にまとまって機能する多量体(ポリマー:polymer)のことを指します。
2. 化粧品としての配合目的
- 皮膜形成
主にこれらの目的で、メイクアップ製品、化粧下地製品、日焼け止め製品、コンシーラー製品などに使用されています。
以下は、化粧品として配合される目的に対する根拠です。
2.1. 皮膜形成
皮膜形成に関しては、ポリプロピルシルセスキオキサンは揮発性油剤に溶解しており、油剤の揮発により耐水性、耐皮脂性、撥水性(∗2)を有した柔軟な皮膜を形成することから[3][4]、皮膜を形成することにより化粧持続性を向上させる目的でメイクアップ製品、化粧下地製品、日焼け止め製品、コンシーラー製品などに使用されています。
∗2 撥水性とは水をはじく性質のことです。
ポリプロピルシルセスキオキサンを溶かし込む溶媒としては、主にシクロペンタシロキサン、イソドデカンのいずれかが使用されているため、これらが併用されている場合はポリプロピルシルセスキオキサンの溶媒である可能性が考えられます。
3. 混合原料としての配合目的
ポリプロピルシルセスキオキサンは混合原料が開発されており、ポリプロピルシルセスキオキサンと以下の成分が併用されている場合は、混合原料として配合されている可能性が考えられます。
原料名 | DOWSIL MQ-1640 Flake Resin |
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構成成分 | トリメチルシロキシケイ酸、ポリプロピルシルセスキオキサン |
特徴 | トリメチルシロキシケイ酸(MQレジン)とポリプロピルシルセスキオキサン(Tプロピルレジン)を混合した、柔らかい皮膜を形成する皮膜形成剤 |
4. 配合製品数および配合量範囲
実際の配合製品数および配合量に関しては、海外の2016-2017年の調査結果になりますが、以下のように報告されています(∗3)。
∗3 以下表におけるリーブオン製品は、付けっ放し製品(スキンケア製品やメイクアップ製品など)を指し、またリンスオフ製品は、洗い流し製品(シャンプー、ヘアコンディショナー、ボディソープ、洗顔料、クレンジングなど)を指します。
5. 安全性評価
- 15年以上の使用実績
- 皮膚刺激性:ほとんどなし(データなし)
- 眼刺激性:詳細不明
- 皮膚感作性(アレルギー性):ほとんどなし(データなし)
このような結果となっており、化粧品配合量および通常使用下において、一般に安全性に問題のない成分であると考えられます。
以下は、この結論にいたった根拠です。
5.1. 皮膚刺激性および皮膚感作性(アレルギー性)
15年以上の使用実績がある中で重大な皮膚刺激および皮膚感作の報告がみあたらないため、化粧品配合量および通常使用下において、一般に皮膚刺激性および皮膚感作性(アレルギー性)はほとんどないと考えられますが、詳細な安全性試験データがみあたらず、データ不足のため詳細は不明です。
5.2. 眼刺激性
試験結果や安全性データがみあたらないため、現時点ではデータ不足により詳細不明です。
6. 参考文献
- ⌃日本化粧品工業連合会(2013)「ポリプロピルシルセスキオキサン」日本化粧品成分表示名称事典 第3版,927.
- ⌃W.F. Bergfeld, et al(2017)「Safety Assessment of Polysilsesquioxanes as Used in Cosmetics(∗4)」, 2022年5月4日アクセス.
∗4 PCPCのアカウントをもっていない場合はCIRをクリックし、表示されたページ中のアルファベットをどれかひとつクリックすれば、あとはアカウントなしでも上記レポートをクリックしてダウンロードが可能になります。 - ⌃ダウ・東レ株式会社(2017)「DOWSIL 670 Fluid」Technical Data Sheet.
- ⌃ダウ・東レ株式会社(2020)「DOWSIL 680 ID Fluid」Technical Data Sheet.