α-ヒドロキシ酸(AHA)の基本情報・配合目的・安全性

α-ヒドロキシ酸

慣用名称 α-ヒドロキシ酸、AHA
配合目的 角質剥離収れんpH調整緩衝 など

1. 基本情報

1.1. 定義

ヒドロキシ酸(hydroxy acid)とは、1分子中にカルボキシ基(-COOH)とヒドロキシ基(-OH)をもつ有機化合物の総称であり[1]、以下のα-ヒドロキシ酸の化学構造式をみてもらうとわかりやすいと思いますが、

αヒドロキシ酸の化学構造

ヒドロキシ酸のうち、カルボキシ基(-COOH)が結合している炭素原子(C)を基準にし、この炭素原子(C)にヒドロキシ基(-OH)が結合しているものをα-ヒドロキシ酸(alpha hydroxy acid:AHA)とよんでいます(∗1)[2a]

∗1 化学構造図はα-ヒドロキシ酸のものですが、「R」の位置に炭素原子(C)が結合しその炭素原子にヒドロキシ基(-OH)が結合したものはβ-ヒドロキシ酸に分類されます。

1.2. 歴史

古くから、α-ヒドロキシ酸の一種である乳酸が存在するサワーミルクをクレオパトラが浴び、またα-ヒドロキシ酸の一種である酒石酸が存在する古くなったワインでフランス宮廷の女性たちが洗顔したと言い伝えられていますが[2b][3]、皮膚に対するα-ヒドロキシ酸の効果が科学的に報告されたのは、1974年の魚鱗癬の劇的な治癒効果によってでした[4]

その後1980年代には、医療分野において肌荒れ(ドライスキン)やニキビ(尋常性ざ瘡)のような角質肥厚を呈する皮膚に対して、α-ヒドロキシ酸を塗布した際のピーリング効果や光老化皮膚のシワ改善効果が知られるようになり[5][6]、1990年代には米国においてα-ヒドロキシ酸を用いたケミカルピーリング(∗2)が流行しました。

∗2 ケミカルピーリングとは、薬剤を皮膚に塗布することにより、皮膚を剥脱し、創傷治癒機転による皮膚の再生をはかる治療法です[7]

日本においては1994年に厚生省の許可が下りたことをきっかけに流行しましたが、トラブルが多発した経緯があり、2000年以降は医師の診療下でのみケミカルピーリングが行われています。

このような背景から、安全性を重視し濃度やpHを調整したα-ヒドロキシ酸が化粧品にも用いられるようになりました。

1.3. 種類

化粧品に用いられる主なα-ヒドロキシ酸は、

名称 分子量 含有動植物
グリコール酸 76.05 サトウキビ、未熟なブドウの果実
乳酸 90.08 サワーミルク
リンゴ酸 134.09 リンゴ
酒石酸 150.09 ブドウ酒
クエン酸 192.13 柑橘類の果実

これら5種類です[8][9a]

2. 化粧品としての配合目的

化粧品に配合される場合は、

  • コルネオデスモソーム分解促進による角質剥離作用
  • 収れん作用
  • 酸性によるpH調整
  • アルカリ剤との併用による緩衝

主にこれらの目的で、あらゆる製品に汎用されています。

分子量が小さいほど皮膚浸透性が高く、低濃度で効率よく機能を発揮することから、角質剥離作用としてはグリコール酸が最も使用頻度が高く、次いで乳酸が用いられる傾向があります。

ただし、化粧品においては安全性が最優先されるため、一般に刺激性が低く低濃度の配合で有効性を発揮させることをコンセプトとしてグリコール酸や乳酸を軸にしながらも他のα-ヒドロキシ酸を組み合わせたり、他の角質剥離作用をもつ成分を組み合わせる設計が用いられています[9b]

配合目的の詳細なメカニズムは、各α-ヒドロキシ酸ページを参照してください。

3. 安全性評価

α-ヒドロキシ酸の皮膚刺激性、皮膚感作性(アレルギー性)、眼刺激性などは化粧品配合量および通常使用下において、一般的に安全性に問題のない成分であると考えられます。

ただし、角質剥離目的で配合されている場合は、バリア機能が低下している皮膚や体調や外的要因によって不安定な状態にある皮膚においては皮膚刺激を示す可能性があるため、注意が必要であると考えられます。

安全性評価の詳細は、各α-ヒドロキシ酸ページを参照してください。

4. 参考文献

  1. 大木 道則, 他(1994)「ヒドロキシ酸」化学辞典,1149.
  2. abC.P. Clark Ⅲ(1996)「Alpha Hydroxy Acids in Skin Care」Clinics in Plastic Surgery(23)(1),49-56. DOI:10.1016/S0094-1298(20)31140-8.
  3. 正木 仁(1999)「α-ヒドロキシ酸の作用」皮膚科診療プラクティス5 スキンケアの実際,121-123.
  4. E.J. Van Scott & R.J. Yu(1974)「Control of Keratinization With a-Hydroxy Acids and Related Compounds」Archives of Dermatology(110)(4),586-590. DOI:10.1001/archderm.110.4.586.
  5. M.V. Dahl & A.C. Dahl(1983)「12% lactate lotion for the treatment of xerosis. A double-blind clinical evaluation」Archives of Dermatology(119)(1),27-30. DOI:10.1001/archderm.1983.01650250031011.
  6. E.J. Van Scott & R.J. Yu(1989)「Alpha hydroxy acids: procedures for use in clinical practice」Cutis(43)(3),222-228. PMID:2523288.
  7. 古川 福実, 他(2008)「日本皮膚科学会ケミカルピーリングガイドライン(改訂第3版)」日本皮膚科学会雑誌(118)(3),347-356. DOI:10.14924/dermatol.118.347.
  8. 日光ケミカルズ株式会社(2016)「α-ヒドロキシ酸」パーソナルケアハンドブックⅠ,42.
  9. ab前田 憲寿, 他(1999)「抗シワ・細胞賦活効果」Fragrance Journal臨時増刊(16),82-87.

5. α-ヒドロキシ酸一覧

  • 数字 A-Z ア-ンの順番に並べてあります。
  • 知りたいα-ヒドロキシ酸がある場合は「目的の行(ア行カ行など)」をクリックすると便利です。
医薬部外品表示名称 DL-リンゴ酸
配合目的 酸性によるpH調整 など
化学式 DL-リンゴ酸
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化粧品表示名称
医薬部外品表示名称
クエン酸
配合目的 酸性によるpH調整・pH緩衝、収れん など
化学式 クエン酸
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化粧品表示名称
医薬部外品表示名称
グリコール酸
配合目的 コルネオデスモソーム分解促進による角質剥離 など
化学式 グリコール酸
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化粧品表示名称
医薬部外品表示名称
酒石酸
配合目的 酸性によるpH調整、収れん など
化学式 酒石酸
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化粧品表示名称
医薬部外品表示名称
乳酸
配合目的 収れん、酸性によるpH調整・pH緩衝 など
抽出元イメージ 乳酸
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化粧品表示名称 リンゴ酸
配合目的 酸性によるpH調整 など
化学式 リンゴ酸
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